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一章「四宝組編」
第二十話 それぞれの生きる道
しおりを挟む「我々の負けです」
朱欄は哭龍の首を抱えて言った。
「俺の勝ち、か」
辛勝。いや、また一人じゃ勝てなかった、決闘なのにいいのかな。真冬はそんなことを考えつつ、仰向けに寝かされ心紅に治癒魔法をかけられている。
「哭龍は、死んだのか?」
「気を失っていますが、生きています」
首だけになっても生きてるとはな、とんでもない生命力だ。ってことは目覚めるのか、起きたら、いちゃもんつけられそうだな。相当帰りたかったみたいだし。
「殺しますか?」
朱欄は淡々とした口調で言った。
「殺すわ」
心紅が即答した。
「待て心紅、雨が降ってきた、とりあえず中に戻ろう」
真冬は移動できる程度に回復してもらい、一同は魔法陣部屋に移動した。
「······」
部屋ではブレイドが待っていた。右肩には包帯を巻いている。首に右腕を包帯で吊るしてある。こちらを見ているが、敵意はないようで二本の大剣は背中にさしている。
「ブレイン」
「······ブレイドだ」
クロジカに背負われていたロアが目を覚ました。ブレイドに敵意がないことを感じ取ったのか、クロジカから降りると天雲の剣の破片を拾い始めた。ナナもそれを手伝う。
「哭龍さんは負けたのか」
「ええ、負けました」
朱欄にそれだけ聞くと、ブレイドは真冬に向かって膝をついた。
「なんの真似だよ」
「勝った者がボスとなる」
短い会話のあと、ブレイドは倒れている構成員を担いで部屋を出て行った。その様子をどこかで窺っていたのか構成員たちもわらわらと部屋に入り負傷者を連れていく。
俺が四宝組の組長か、なんだか実感わかないな。まぁ、これで俺が追われることも、ナナが狙われることもなくなったから良しとするか。
「真冬よ」
「起きたのか」
朱欄に抱えられた、首だけの哭龍が目を覚ました。その顔はどこかスッキリとしている。
「俺の負けだ、まさか負けるとは思ってもいなかったぞ」
「まぁな、勝つ勝つ言ってたけど、本当は勝てるなんて思ってなかった。伯龍からもらった手袋のお陰だよ」
「それは違うぞ、俺は伯龍から四宝組を受け継いだ。お前は伯龍の力を受け継いだ。条件は同じだ」
「そう言われると、そんな気がしてきた」
「単純な奴め」
二人は決闘前の調子に戻っている。
「俺を殺さないのか?」
「ナナは殺さないか?」
「殺さない、負けたからな、それにもう俺に手を貸す者もおるまい」
その言葉に朱欄が、ピクリと僅かに反応したが、誰も気づかなかった。
「そっか、なら殺さない」
「ふん、身内に甘いところも伯龍に似たようだな」
「綺麗事ばかり言ってられないからな」
「真冬よ、一つ頼みがある。もちろん負けた身だ、優しさに付け込むつもりもない、聞き流すだけでもいい」
「なんだよ?」
「あの異世界のゲートに俺を投げ入れてくれないか」
「······」
どうしてもか、あんな不安定な代物にすがるくらいか、それほどまでに故郷に恋焦がれているのか。
「悪さしないか?」
「しない、竜人として、伯龍の息子として約束しよう」
「わかった、でもさ、あんなもので異世界に行けるのか?」
「確率は低いが、行ける場合もあるだろう」
「だろうって、失敗したらどうなるんだ?」
「次元の狭間に囚われて朽ち果てるだけだ」
「自己責任か」
このために殺された奴らからしたら、行かせたらダメなんだよな。
でも、俺はそこまで綺麗事を並べられるほどいいやつじゃない。
「そういうことなら、わかった、兄貴の最後の願いだ」
「すまん」
一連の会話を聞いていた朱欄が口を開く。
「心紅さん、私のコアを返してもらえませんか?」
「ダ。······真冬、どうする?」
拒否しかけた心紅が、真冬の様子を窺ってくる。
「返してやれ」
「わかったわ」
そう言うと心紅はコアを朱欄に投げ渡した。朱欄はそれを胸で受ける。コアは朱欄の体内に吸い込まれるように消えた。
「ありがとうございます」
朱欄は礼をすると、真剣な面持ちで真冬を見据える。
「崩紫さん」
「ん? なんだ?」
「私も哭龍さんと一緒に行きたいのですが······」
「一緒に、ね」
数千年前の創設当初から四宝組を支えてきた大幹部。朱欄を失うのはこれからの四宝組にとって大きな痛手になるのは確かだ。
それでも真冬は言う。伯龍から受け継いだ言葉を。
「『好きに生きろ』」
「ハッ! ありがとうございます!」
朱欄はさらに深い礼をする。
これは、他の奴らにも聞かないといけないな。選別ってわけじゃないが、哭龍だからついてきた連中もいるだろうし。
そもそも、俺にボスとか向いてないだろ。俺はそんなに物事を深く考える人間じゃない。口より先に手が出る人間は、やはり手の役をやらなければならないだろう。
「なぁ、心紅」
「なにかしら?」
「四宝組の組長になってくれないか?」
「いいわよ、って。え?」
即答した心紅だが、内容を理解したのか驚いた声を出した。
「それはなりませんよ、崩紫さん」
朱欄か口を挟む。
「おいおい、最初にわがまま聞いてやったのは誰だと思ってるんだ」
「······すいませんでした、出過ぎた真似を。ならば情報操作して、魔女が長になるようにいたします」
「その子は銀鏡心紅って名前だ。魔女だけど名前で呼んでやってくれ」
「失礼しました、銀鏡さん」
「構わないわ」
心紅が真冬に詰め寄る。
「いいのかしら?」
「一番信頼できるからな、任せたい」
「なんだか、都合がいい女みたいね。私はそんなにチョロくないわよ」
「だよな、ごめん、今のことは忘れてくれ」
「嫌とは言ってないわ。裏社会に君臨するのも魔女的に悪くないもの」
「本当か、助かる!」
「その言葉が聞きたかったのよ」
「では、情報操作してまいります。いつ異世界の門ゲートが消滅するかもわからないので、終わりしだい出立してもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わない。ただ見送りだけはさせてほしい」
「畏まりました」
部屋全体に礼をすると、朱欄は出て行った。
「ふぅ、これで一段落かぁ」
真冬はその場に座り込む。ドッと疲れが溢れ出す。緊張の糸が切れたのだ。尋常じゃない疲労感だが、これは心地のいい疲労感だ。一仕事終えたあとの爽やかさがある。
「真冬殿!」
「ナナ、よかったな。もう大丈夫だ」
「うん! ありがとう! 真冬殿は私の英雄だ!」
ナナの満面の笑みを受けて、真冬は満足する。
「それで、これからどうするんだ?」
「博士のところに連れていく」
ナナの代わりに答えたのはロアだ。両手に抱えているのは天雲の剣の破片の山だ。
そんな持ち方をしたら危ないだろう、あとで風呂敷にでも包んでやらないと。
「帰るのか」
「ああ、家族も心配している」
「ロアがついてれば安心だな。なにか手伝えることはあるか? その剣を直すとか」
「いや、この剣は、博士のことろに持っていく。元々そこで作られた剣だからな」
「そっか」
「改めて俺からも礼を言う。崩紫真冬」
「真冬だって言っ······て、あれ?」
今、ちゃんと言えたか?
「友の名を間違えるわけがないだろう」
「ふっ、次会うときも同じことが言えるかな」
「待て、時間を置くのは狡いぞ」
そんな話をしていると、包帯でぐるぐる巻きにされた鬼武健太が走りよってきた。
「崩紫さん!」
「誰だお前······あ、あの時のか」
「はい! 俺勘違いしてましたッ!」
九十度の礼を見せる。その態度は真摯そのものだ。
「どういうことだ?」
「あの時は、崩紫さんのことを四宝組を裏切った卑怯者だと思ってました。でも違ったんですね。組を乗っ取るなんて、俺なんかとは格が違う」
「そんなもんじゃないけどな、それに悪かったな、その右腕、あの時は手加減できなくてさ」
真冬は、健太の失った右腕の位置に目をやる。
「これはケジメだと思ってます。それに不意打ちしておいてこのザマなんですから」
「あら、戦闘中にしたけがをケジメに使うなんて、貴方こそ卑怯者ね」
真冬の背中の傷を癒していた心紅が、顔を覗かせて言った。
「う、そ、それは」
「左腕も切り落としなさい、それがケジメってもんでしょう?」
「ぐぅ······」
「心紅」
「冗談よ」
心紅は真冬の背中に消えた。
「まぁ、これからよろしく頼むよ。腕もなんとかならないか考えておくからさ」
「はい! お気遣い痛み入ります!」
健太は入口で頭だけを出して様子を窺っていた茂籠と交流して去っていった。
「それで、真冬」
「な、なんでしょうか、心紅さん」
心紅の真面目な声に、真冬はついかたくなってしまった。
「プロポーズ、嬉しかったわ」
よく考えたら、いろいろ段階をすっ飛ばしていることに、真冬は今更ながらも気がつく。
「いきなり結婚しても大丈夫かな?」
「私は七年間も貴方を見てきたから、やっとって感じだけど。真冬はそうじゃないものね」
「時間は関係ないと思うが」
「でも結婚するとなると学校もやめないといけないわね」
「そういうのがあったか、なら別に結婚は後ででもいいよ、心紅が卒業してからにしよう。今は婚約だけってことでさ」
「それって結婚を前提にしたお付き合いってことよね?」
「ああ」
「そう、ならいいわ」
心紅は納得したように、真冬の背中を軽く叩く。どうやら背中からの治療は終わったようで前に回ってきた。右腕にもう一度、治癒魔法をかけ始める。
「ん?」
真冬の目の前に一枚の紙が落ちてくる。落ちる前に左手でキャッチした。
手紙だ、なんとなく裏側を見ると、差出人は書いてないが、宛先は書いてあった。
『崩紫真冬さんへ』
俺宛か、どれ。真冬は封を切る。手紙は二枚ある。一枚目を見て真冬は固まる。
『銀鏡心紅に読ませるな』
それだけが大きく書かれていた。
心紅に読ませるな? どういうことだ。真冬は疑問に思いながらも二枚目を見る。
『銀鏡心紅の部屋、そのクローゼットの奥を調べろ』
またしても大きな文字で書かれていた。
心紅の部屋を調べろ? 何の話だ?
「真冬、その手紙は?」
「え、いや、なんでもないよ」
真冬は手紙をクシャクシャに丸めてポケットにしまった。
「情報操作、引き継ぎ、終了致しました」
タイミングよく朱欄が帰ってきた。
「永鳥さん、早かったな」
「急ぎましたので、では、屋上に参りましょう」
「ああ」
部屋にいた全員で屋上に向かった。心紅からの視線がキツかったが、真冬は知らないふりをしてやり過ごした。
屋上にはすでに、四宝組の構成員たちがいた。けが人や、最低限の警備員だけを残して、ほぼ全ての四宝組の構成員たちがそこにいた。
「鬱陶しい雨だ、『天候制御ウェザーコントロール』」
哭龍が呪文を唱えると、本部ビルの真上にある雲が押しのけられて大穴があいた。
「まず、この一年、俺のわがままに付き合ってもらい、感謝する」
場は完全に静まり返ってる。
「あとのことは、永鳥から聞いているようにしろ。真冬をよろしく頼むよ」
「ハッ!」
全体からの揃った声を受け、哭龍は真冬に目を向ける。それに合わせて、哭龍の首を持つ朱欄も体の向きを合わせる。
「俺は好きに生きたつもりだ、謝罪するつもりはない、だが······」
「け、バカ兄貴が、素直に「行ってきます」くらい言えないのかよ」
「クク、そうだな、それでは······行ってきます」
「行ってらっしゃい」
ぶっきらぼうな二人の会話が終わると、朱欄は紐で哭龍の首を体に括り付ける。
そして、両腕を炎の翼に変化させて、美しい舞のように空を飛ぶ。
かなりの高度になり、炎の燃え盛る音のみが静寂に抗う。
不完全な異世界への門ゲートが、形状を変えては円形に戻るを繰り返している。
「朱欄、ここまででいいぞ。投げ入れよ」
「それは聞けません」
「伯龍に頼まれたからか?」
「······亀城さんが本部ビル前の守護を、ブレイドさんが四宝組に使えることを、そして私が哭龍さんに使えることを、それぞれ伯龍さんより命じられています。ですが、これは私たちの意志でもあります」
「ならば、もう言うことはない。ともに行こう、異世界へ」
「ハッ!」
二人は門ゲートの中へと消えていった。門ゲートは目的を達したように閉じて消えた。
______
それから数日が経過した心紅の就任式当日。
修理された旧魔法陣部屋にて、四宝組の構成員全員が集まっている。
「私がボスになるのを、良しとしない人もいるでしょう。なので私と一騎打ちをして勝つことができたら組をあげてやることにするわ」
演壇に立った心紅は、挨拶もせずに、開口一番にそう言い放った。その言葉に、腕のある構成員たちは、我先にと挙手した。
「多いわね、何人かしら?」
「さすがの多さに魔女だとかいう小娘も戸惑っている」と、反対派の構成員たちが、ヒソヒソと話し始めた。
心紅の隣にいる真冬が眉をぴくりと動かす。
肝心の心紅は顔色一つ変えずにこうつぶやく。
「真冬、救急車を呼んでおいて、四ダースほど」
「そんなに呼べないよ」
真冬は呆れ顔でスマホを取り出す。そして「組の人間が病院なんか使えるか」と。ツッコミを入れた。
そのための闇医者なのだ。
机と椅子を端に寄せて、人の輪の中心に心紅が立つ。
「誰からかしら?」
「俺だ!」
現れたのは少年だった。バックラーを背負った、銀色の鎧を着た少年だ。
「······誰?」
「亀城玄道の息子だ!」
「······」
心紅が「そいつ誰?」って顔で真冬を見ている。真冬は溜息をつき、真面目な顔で心紅の耳元でつぶやく。
「亀城玄道ってのは、俺が殺した幹部の一人だ」
「そう、それだけわかれば十分よ」
心紅は両手を軽く広げる以外は何もしない。
「本当にやるのか? だいいちに心紅は戦えるのかよ」
「はぁ、これもデモンストレーションの一つよ。私は魔女な上に天才なんだから任せておきなさい。真冬はドンと影の支配者をしていればいいのよ」
「わ、わかったよ。でも心紅が殴られたら、俺はキレるからな」
「ヒヒ、嬉しいこと言ってくれるのね」
そんな話を聞いていたバックラーの少年は、苛立ちを隠さずに吠える。
「やるのか! やらないのか!」
「ちょっとは待ちなさいよ。五体満足でいられる時間が短くなるわよ」
「おい心紅」
「冗談よ」
「さて」と。心紅はバックラーの少年を片手でチョイチョイっと煽る。それにつられ少年は駆け出した。
「あ、名前聞いてなかったわ」
「亀城優玄かめきゆうげんだ!」
優玄がバックラーで殴りかかる。
心紅が指をパチンと鳴らす、手元に現れた紙が光を放つ。
次の瞬間、煙とともに巨大な蜘蛛が現れた。
「鎖蜘蛛チェーンスパイダー、彼を無力化しなさい。殺さないように、ね」
数十分後。
死屍累々、先ほど挙手した人間はもれなく、鎖でぐるぐる巻きにされている。
「強いんだな、そいつ」
「上級魔物って言ったでしょ? 魔力的にも魔人にかなり近い個体よ」
そう言うと心紅は構成員たちに向き直る。
「文句があるなら、いつでも一騎打ちしてあげるわ。それでいいかしら?」
「は、ハッ!」
「じゃあ、解散、これからよろしくね」
「ハッ!!」
持ち場に戻る構成員たちを尻目に、真冬は気になっていることを話し出す。
「三百人くらいか? 前は五百人くらいいたんだけどな」
「あの鎌柄アンって人が、クロジカと戦ったあと私兵とともに行方不明になっているわ」
「そうか、鎌柄の部下だけで百人くらいいたんだっけな。半数以上倒してたけど」
「クロジカもかなり殺したらしいから、ほとんどの部下を失ったと見てよさそうね。でも火血刀も持ち出したままだから油断ならないわ」
「『裏切り者には死を』か」
「刺客を送ろうかしら、正直、それどころじゃないんだけど」
「送らなくていいよ、俺もそのルールに追い詰められたわけだしな。これを機についてきたいやつだけ、ついてこさせればいい」
「わかったわ。あと鮫島って人も行方がわからないままよ」
「あー、いいよ、あいつも探さなくて。どうせ追いつけやしない」
「そう、わかったわ」
それにしても、こんなに心紅が張り切ってくれるとは思わなかった、いや、張り切っただけでここまでできるわけじゃないか、心紅には才能もあるんだ、近い将来、裏社会に君臨する魔女になりそうだ。
______
さらに数日後、銀鏡宅のリビングでは激しい戦闘が繰り広げられていた。
「はああ!」
「ふっ!」
ロアとナナが、リビングで争っている。
「二人とも何やってるんだ!」
騒ぎを聞きつけた真冬が2階から降りてきた。
「いや、ちょっとな、はぁ!」
「おわっ! 真冬殿! そう! ちょっとだ! とあ!」
ナナは徒手空拳と不規則に鞭打つ髪触手を使い、果敢に攻めている。
対するロアは、変則の構えで、髪触手をかわし、ナナの拳を捌いている。
「やめろ二人とも、何があった」
「止めるな、ただの喧嘩だ」
「そうだぞ真冬殿! いたっ! このっ! これは二人の戦いなのだ!」
「家を荒らすと心紅が怒るぞ」
真冬のその言葉に、二人はピタリと動きを止めた。
「何をしている、真鍋、片付けるぞ」
「そうだぞ真冬殿!」
「こいつら······」
真冬は部屋の片付けをしながら、二人の話を聞くことにした。
「ナナが研究所に帰りたくないって?」
「そうだ。博士からも連れて帰ってこいと言われているんだが」
「でもさ! 一度は私のことを諦めたんだから、帰らなくてもいいじゃんか!」
「状況が違うだろう」
「やだ! 帰らない! 一人で帰ってよ!」
「聞き分けのない妹め」
「クソ頑固お兄ちゃん!」
「言いすぎだぞっ!」
「はいはい、わかったから、立つな、座れ」
真冬は、二人をなだめる。
どうしたものか、ていうか、これは普通にナナのわがままみたいなものだろう。説得してやるか。
「ナナ、いい話がある。ナナも満足するし、博士って人も、きっと満足する」
「そんな話があるなんて! どんな話なんだ! 早く聞かせてくれ!」
ナナは目を輝かせている。
「一度帰って、元気な姿を博士に見せたら、また遊びに来ればいいんだよ」
さも、名案のように真冬は語る。きっと博士はナナを心底心配しているはずと、一目見れば安心してくれるよと、そうしたら遊びに来ればいい、何日でも泊めてあげるから、と。さっき言ったことを、言い方を変えて雄弁に語った。
「なるほど! くぅ! 思い至らなかった! さすがは私の英雄殿だ!」
同じ状況で他の子供に試せば、きっと駄々をこね続けただろう。しかし、相手は、疑えないように作られた人造人間、ナナ・トランス、手のひらにポンと拳を落として、すんなり納得した。
「そうと決まれば善は急げだな!」
「なんだ、もう行くのか」
「ああ! 早く行って早く帰ってくるのだ! 待っててくれ真冬殿!」
「わかった、待ってるよ」
「真冬、助かった」
それからの二人の行動は早かった、荷物という荷物も持たず、手早く身支度を済ませると玄関前に集合した。
「それで、研究所はどこにあるんだ?」
「真冬殿には言ってなかったっけ? グンマだよ」
ニッポンには六大都市というものがある。それぞれがホッカイドウ、トウキョウ、キョウト、オオサカ、オキナワ、そしてグンマ。魔物にも負けずに繁栄している。
他にも生き残っている都市は多々あるが、だいたいが六大都市からの援助を受けたりするのが前提で成り立っているところが多い。
特にグンマは魔物が多いことで有名だ。必然的にそこに住む人間の戦闘力も高い、猟師グループの総本山がある都市としでもある。
「トウキョウから出たことないからわからないが、二人で大丈夫なのか? 心紅にいえば、四宝組から護衛くらいなら出してもらえると思うが」
「問題ない、グンマまで行けば、兄弟も迎えに来るだろう」
余計な心配だったようだ、ロアがいれば大丈夫だ。
「この剣もらっちゃっていいのか?」
「いいよ、さすがに一本は持ってないとな」
ナナが背負っているバットケースの中には、日本刀が一本入っている。ロアに渡すと無くすため、ナナに持ってもらうことにしたのだ。
「じゃあ、真冬殿、行ってきます!」
「ああ、行ってらっしゃい」
真冬は二人を玄関先で見送って、部屋に戻った。
現在の時刻は、もう少しで昼といったところだ。心紅は学校に行っているはずだ。
「心紅の部屋、クローゼットの奥······ね」
真冬は、差出人不明の手紙を、ポケットから取り出して眺める。
現在の真冬は無職だ。『組員は能力者であるべし』。能力を使うことができない真冬は組織にいられないのだ。
女マスター、そして今回の戦いで能力が使えなくなった者は資金援助を受けて闇社会から足を洗った。真冬もそれに倣って四宝組を正式な手続きを済ませて辞めてきたのだ。
まさか俺が、四宝組を辞める日が来るとはな、なんとなくだったが心紅に組を任せて正解だった、俺があのまま三代目をやっていたら、就任式の時に、能力のことをツッコまれただろうし、能力なしで、あいつらに勝てたかどうかもわからないからな。そんなことを考えつつ、気づけば真冬は、心紅の部屋のドアノブを握っていた。
「あれ?」
やっぱり気になっていたか、俺。
まぁ、何かの間違いだろう。クローゼットの奥だけ、さっさと確認して、このモヤモヤを解消させてしまおう。真冬はドアノブをひねる。
現在、クロジカと鎖蜘蛛は四宝組にいる。心紅が学校に行っている間の代理として活躍しているようだ。
よく考えたら、心紅には学業もある。裏社会のドンとして君臨しつつ、それをクラスメイトに気取らせないような二重生活を強いらせてしまっている。後でまた聞いてみよう。そう考えている間も、真冬は部屋を進む。
クローゼットを開く。ハンガーに衣服がかけられている。
何もないな······、やっぱりイタズラだったか、誰かが腹いせにやったんだな。真冬はそう結論づけク ローゼットを閉めようとした、その時。
「ん?」
真冬は気づいた。クローゼットの奥の壁が『特に綺麗になっている』ことに。
取っ手も何もないので、端っこを軽く押してみる。動きそうな感じがした、少しずつ力を加えていく。
ガコッ。奥の壁が開いた。部屋だ、クローゼットの奥に隠し部屋があったのだ。
確かに、考えてみればおかしな話だった、広い一軒家の二階に部屋が二つしかないわけがない。一階にはリビングやダイニングキッチンの他にも、和室があったりした。三階も物置みたいな広い空間が目に入ったが、奥には、これまた広い書斎があった。
部屋に入る。薄暗くて周りがよく見えない。
「隠し部屋か······、こんなところで心紅は何をしていたんだ? ······!?」
「······」
真冬は身震いした。薄暗い部屋の奥に誰かがいる。
こちらを眺めていた影は、走り寄ってくる。とても早い。
真冬は拳を構えるが、能力を使えないことに気づいた。
「くそっ!」
背の低い影は、真冬の懐まで来ていた、もう間に合わない。
「あはは! ビビっちゃって可愛いですね。私ですよ、崩紫さん」
「あ、え? 闇園!?」
闇園一花が、そこにいた。
真冬は一花の能力を思い出し、納得した。あの魔物の能力を使えば密室に入るなど容易いことなのだ。
「なるほどな、あの手紙も闇園が送ったものか」
「そうですよ、他に誰がいるっていうんですか?」
「そうだな、それでこの部屋で俺になんの用だ」
「能力、なくなったそうじゃないですか」
「正しくは使えなくなっただ、また使えるようになるかは分からないけどな」
「へー、それじゃあ」
一花は、顔の右半分を骨の仮面で隠した。ゾッとする笑みを浮かべた。
「殺しやすいですね」
「······なッ!?」
真冬が動いた時には遅かった、右腕の付け根部分の空間が裂けた。それだけで真冬は身動きが取れなくなってしまった。
「動かないでくださいね、下手に動けば右腕が体からさよならしちゃいますからね」
「なんの真似だ!」
「え? いや、こうやって空間ごと裂いちゃえば、人体なんて簡単に切断できますよっていう強者アピールですよ」
「闇園が強いのは知ってるから、これを取れよ」
「えー、どうしよっかなあー、あむ」
一花は空間からパフェを取り出し一口食べた。
「そのくらいにしろ」
「はーい」
一花が横に移動すると、空間が大きく裂けて、中から清十郎が現れた。
「風間さん」
心紅の回復薬を探しに来たのか、まぁ今の状態なら分けてやれるが。
清十郎が現れると一花は真冬を拘束していた、空間の割れ目を閉じた。真冬は肩をぐるぐると回して傷がないか確かめる。何ともなっていない。
「『崩壊の鎧』といったな」
清十郎の言葉は真冬が予想していたものとは違った。
「あれがどうしたんだ?」
どこかで哭龍との戦いを見られていたのか。
「あれの正式名称は『気合武装』という」
「『気合武装』か、勝手に『崩壊の鎧』って呼んでたな。というか、なんでそのことを」
「俺も能力こそ違うが、『気合武装』の能力者だからだ」
風間さんの能力を初めて聞いた。そうか鎧を着るタイプの能力者なのか。
「同じ能力を持つよしみか?」
「違うが、似たようなものだな。『気合武装』を使える者は強い」
確かに、あれは俺でも強いと思う。自傷以外で傷を負ったことがない。
「そこの一花も応用のきく能力だ」
「もぐもぐ?」
二つ目のパフェに手をつけ始めていた一花が首を傾ける。
「単刀直入に言う、俺の一行パーティーに加われ」
「パーティ······、誕生日会に参加してほしいってわけか?」
「ふざけるな」
「はい」
仲間になれってことだよな、でもこれって、なんか風間さんに認められたみたいで嬉しいな。
「あ、せいじゅ······。ごくん。清十郎!」
二つ目のパフェを食べ終えて、三つ目を取り出した一花が清十郎を呼び止めた。
「なんだ」
「どうやら、崩紫さん能力を使えなくなっているようです。さっき脅した時も能力を使わなかったから、本当です」
「崩紫、本当か?」
「はい、うんともすんとも」
「そうか、今の話は聞かなかったことにしろ」
話はこれで終わりだ、と。清十郎は踵を返す。それと同時に空間が裂ける。
「心紅に闇園の目を治せるか聞かなくていいんですか?」
「異世界の魔女に、新世界の能力をどうこうする力はない」
何から何まで調べ済みってわけかよ。
「それに一花の力が必要になった。蛸との契約はまだ破棄するわけにはいかなくなった」
「そういうことです! もぐ!」
「何があるんだ、こらから」
「お前にはもう関係のないことだ」
「清十郎、そろそろ来ますよ」
「崩紫、もし仮に能力が復活した場合は一花に連絡しろ。その力についても教えてやる」
清十郎は空間の隙間の中に消えた。
「ではこれで、あ、崩紫さん」
一花は電話番号を書いた紙を崩紫に渡す。
「呪いが解けてよかったですね」
「能力と向き合う覚悟はできたんだけどな」
「呪いとは別に、これから······このあとですね。頑張ってください」
「どういう意味だ?」
「『もし愛に質量があったのなら、崩紫さんは圧死しています』」
「は?」
「では、またお会いしましょう」
一花はペコリとお辞儀をすると、ふわりとしたバックステップで空間の隙間に消えた。
一花が消えたのとほぼ同時に、背後の隠し扉が開いた。
「なんで真冬がこの部屋にいるのよ」
学校に行っているはずの心紅がそこにいた。セーラ服を着ている、息が荒い。
走ってきたのか? なんでこの部屋に入ったことが分かった? 真冬はそんなことを考え押し黙ってしまった。
「······隠し事はできないってわけね」
心紅は自嘲気味に言った。まるで探偵の推理によって観念した犯人ように心紅は口を開く。
「そうよ、隠し撮りしてたのよ、七年間! アルバムだって、沢山あるわ」
心紅がバンと部屋の明かりをつける。壁一面に真冬の写真が貼られていた。
「え? ええ!?」
一番新しいものだろう、タンスの上に目立つように置いてある写真には、全裸の真冬に抱きついている心紅が写っている。真冬を匿った当日のものだろう。
「なによ、いまさら、そんな顔して······見てたんでしょ!」
なぜか心紅は逆ギレしている。
「いやー、心紅さん、俺は、その、まだ······、見てなかったんだけど」
「え!」
「いや、だから、部屋の中まだ見てなかったんだけど。暗かったし······」
伯龍の部屋にいたとき並の静寂が二人を包む。
「やっちゃったわね。また」
「ああ、やっちゃったな」
「ああ、あ、あああ」
心紅は膝から崩れ落ちた、精神的ダメージが『精神耐性』を超えたのだ。
俺に写真なんてものは一枚もないと思っていた。それがこんなに沢山あるなんて、伯龍が写り込んでいるものもある。
「俺さ」
「!?」
心紅は肩を震わせる。恐る恐る青ざめた顔で真冬の顔を除き見る。目尻には涙が溜まっている。
「嬉しいよ、写真なんて一枚も撮ってもらったことがなかった。伯龍はそういう文化には疎かったからな」
「······そ、そう、ならいいわ」
何がいいのだろう?
いつしか心紅はいつもの調子を取り戻していた。凛とした表情で額や目尻をハンカチで拭う。
「それで学校は?」
「抜け出してきたわ」
「あのなぁ、で、なんで俺がここに入ったことが分かった?」
「それはこれよ」
心紅の部屋に戻ってクローゼットの上を指さした。
監視カメラが設置してあった。
「隠しカメラかよ」
「そうよ、隠し部屋には設置してなかったけど、大体の部屋に設置してあるわ。スマホからでも監視ができるようになっているわ」
心紅の徹底ぶりに真冬は感嘆の声を漏らす。
そして、頭をポリポリとかいてから。
「改めて、よろしく頼む」
「ええ、こちらこそよろしくね。ヒヒっ」
美少女は魔女っぽく笑うのだった。
四宝組編・完。
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