王子は公爵令嬢を溺愛中

saku

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レイラが女の子と男の子の居る所にたどり着くと、レイラは女の子の前に立ち、男の子に声を張り上げる。

「貴方! 掴んでいる、その子の手を離しなさい! 嫌がっているでしょう!!」

「何だ!? 僕はこの子に話をしているんだ!! 関係ない奴は出てくるな!」

レイラが、女の子の手を掴んでいた男の子の手を離した。
男の子は、苛立った様にレイラの手を振り払う。

(あら? この子……前にお父様が言っていた子ではなかったかしら?)

レイラは、女の子に掴みかかっていた男の子の事を見たことがあった。以前、カーチスがパーティーで「隣国のあの公爵は、国で横領をしているんだよ?」と、言っていた所の子じゃないかと思った。その人達を指しながら、父がその事を言っていたからレイラははっきりと覚えていたのだ。

「何だお前? この民達みたいに、怖気づいてしまったのか? それとも、僕に惚れたのか? 残念ながらお前みたいな眠そうな瞳をしている奴より、僕はこの子みたいな子が好みなんだよ!」

惚れてもいないのに何故かフラれてしまったレイラは、つい言い返してしまっていた。

「ふっ。何言ってらっしゃるの? 貴方みたいな屑なんて、好きになるわけないでしょう?  私が好きなのはっ……!」

(……あれ?私、今何を思ったの? なんで、ユーリ様の顔が出てくるのかしら? 物語では、ユーリ様が私の事好きになることなんて無いじゃない……。だから、私はユーリ様の事を好きになるのは止めようと……)

「なんだと! よくも、僕を馬鹿にしてくれたな!! 女だからって、容赦はしないぞ!! ……おい! こいつをボコボコにしろ!!」

馬鹿にされた怒った男の子は、自分の後ろに居る護衛にそんな事を命令した。男の子の後ろに居た護衛達は命令を聞き、渋々レイラの方に向かって来ようとする。

「お嬢ちゃん。恨むんだったら、自分を恨みな?」

「俺達は、命令されたら断れねーんだよ。ごめんな? お嬢ちゃん」


ニヤニヤとした顔をした、男達の手がレイラに伸ばされ様としたのを見て、これまで周りにいた人達が此方に向かってこようとした時だった……。

「へぇ~。君たちは、誰に手を出そうとしているのかな?」

レイラの耳に、聞きなれた声が聞こえた。
取り囲んでいた人の壁が左右に分かれ。笑顔のユーリと、今にも襲いかかりそうなぐらい物凄く怖い顔をしたヴィオラが現れた。
ユーリとヴィオラの後ろでは、ユーリの従者と護衛の人達が呆れたようにため息をついているのが見えた。

(……何故かしら。ユーリ様、笑顔なのに凄く怖いわ。ヴィオラは、絶対お説教を後からされてしまうわね。)

「レイラ? 何故勝手に行ったかは、後からゆっくりと聞こうか?」

(ユーリ様、凄く怒ってらっしゃる!! あぁ、お説教はヴィオラだけではなかったわ!!)

ヴィオラは、レイラを怒った表情で睨み付けていたので怒られるとレイラも思っていたけれど、笑顔だったユーリは声を聞いてレイラは怒っているのだと気づいた。

「誰だお前達!! いきなり入ってきて!!」

自分の事を無視されたと思った男の子は、ユーリを指差しながら喚き散らしている。

(この子。隣国である、王族の顔を覚えていないのかしら?  普通は、公爵家なんだから隣国の事も勉強するはずなのに……。)

「なんだ!? この騒ぎは!」

「あっ! お父様!!」

人波をかき分け。重そうなお腹を揺らしながら、一人の男性がこちらに走ってきた。

「一体、何をしているんだ?」

「お父様。僕はこの子とお話をしたいだけなのに、こいつたちが邪魔するんです!」

「こいつたち? 邪魔するなら、排除すればいいであろう?」

男の子がそう言いながら、こちらを指差す。男性は、こちらを向いた途端。最初は偉そうな態度だったのに、みるみるうちに顔が青ざめていった。
自分の息子が、誰を指差したのか気づいたのだ。

「で、殿下?」

「お久しぶりですね。デーブリ殿」

「お、お久しぶりでございます。……それよりも、こんな所に何故殿下が?」

「僕の婚約者とお出かけをしていたんですが、貴方のご子息が無理やり女の子を連れて行こうとしていましてね? その上、僕の婚約者に手を上げようともしていまして……今、その話し合いをしている所なのです。」

「も、申し訳ございません!! こいつには、きちんと言い聞かせますので!! 失礼いたします」

「あぁ。そうだ、デーブリ殿。お伝えするの忘れていたんですが、先ほど隣国からすぐ戻るよにと使者がきていましたよ? 急いだ方が宜しいかと。……それより、ここは貴方の故郷ではない。他国で、排除などと言ったふざけた事を言われるのは止めた方が良いかと。貴方の身を滅ぼすだけだ」

ユーリにそう言われると、デーブリは青ざめた顔でもう一度「……ご忠告ありがとうございます。失礼します」と、言い残し。男の子の手を引きながら去って行ってしまった。
この後、デーブリは横領などの罪が見つかり。公爵の座を剥奪されたと、レイラはユーリに教えて貰ったのだった。



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