王子は公爵令嬢を溺愛中

saku

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ユーリは、デーブリ達が去ると絡まれていた女の子とレイラの側に行き、心配そうな表情をしながら女の子に声を掛けた。

「大丈夫だったかい?」

「はい。ありがとうございます。」

その様子を見ながらレイラは考えていた。

(この子、どこかで見たことあるんだけど何処でみたのかしら? もう少しで思い出せそうなのに……。)

女の子の事を何処かで見たことがあったが、レイラは思い出せないでいた。
ユーリは、その女の子を見たことがあったらしい。

「君。もしかして、マーフィー男爵のご令嬢かな?」

「はい! 私、ガーネット・マーフィーと申します! 助けてくださり、ありがとうございました!」

ユーリに頭を下げると、ガーネットがレイラの方を向く。
レイラはガーネットと視線が合った。
ガーネットの、ふわふわとした桃色の髪の毛が風に靡き紫色の瞳が此方を真っ直ぐと見てくる。そう、レイラはその容姿の女の子の事を一番知っていたのだ。
衝撃で、一瞬レイラは言葉が出なかった。

「あ、貴女に怪我がなくて良かったわ」

つい、ガーネットにそんな事を言ってしまったレイラだったが、レイラの心の中は大変だった。

(あぁぁぁ!! 思い出した!! ガーネット・マーフィーって、あの物語でヒロインだった子だわ!! そういえば、 物語の中にユーリ様が街に行ったとき。ヒロインにしつこく迫っていた男が居て、助けてあげるのが最初にあったわ!! 何で忘れていたのかしら!! ……そして、何故私の前に居るヒロインはユーリ様を見るのではなく、私をキラキラとした目で見ているのかしら!?)

そう。何故かガーネットは、紫色の瞳をキラキラと輝かせながらレイラを見ているのだ。それにはレイラもつい、動揺をしてしまった。
そんな光景を不思議に思ったのか、ユーリやヴィオラも首を傾げている。

「ど、どうしたの? マーフィー様」

「あ、あの! 私の事、ガーネットと呼んでくださいませんか?」

「じゃぁ、ガーネット様。私の事もレイラと呼んでくださいますか?」

「はい! レイラ様!!」

(違うのよ、ガーネット様。今の言葉を本当はユーリ様に言わなければいけなかったの!! 私ではないのよ!! ……もしかして、ガーネット様を助けたのが私だったから、物語がおかしくなってしまったのかしら? でも、困っていたガーネット様をそのままになんて出来なかったし……。) 

レイラが考えて込んでいると、後ろに居たユーリとヴィオラがこそこそと小さな声で話をしていた。

「よかったね、レイラ……。お友達出来たみたいで」

「殿下。その言い方ですと、お嬢様にお友達がいないような言い方になってしまいますよ。」

(聞こえているわよ!? ユーリ様もヴィオラも失礼ね!!)

レイラだけではなく、ガーネットまでその話し声が聞こえていた。それを聞いたガーネットは、レイラに向かって嬉しそうに笑った。

「私、レイラ様のお友達になれて嬉しいです!!」

(えっ。ガーネット様に犬の様なしっぽと耳が見えるのは、私だけなの!?)

何故かガーネットが、レイラを見ながら嬉しそうにしっぽ振っているのが見える。
そんなガーネットが可愛らしく思ったレイラは、優しく微笑んだ。

「私も……ガーネット様とお友達になれて嬉しいわ」

もし物語の様に進んだら、ユーリやガーネットとも居れなくなってしまうかもしれない。そう思うと、レイラは悲しくなってしまった。だが、それとは別に嬉しさもあった。ガーネットは、レイラにとって初めて出来た友達でもあるのだ。
レイラがユーリの婚約者だからなのか、レイラには友達が居なかった。レイラに近づいてくる令嬢達は、隙を見てレイラから婚約者の座を奪おうとする人達ばかりなのだ。
ガーネットはそんな素振りもなく、レイラと楽しそうに話をしている。ガーネットとは、時間が許す限り沢山話をした。
話の中で、ガーネットがやはり同じ学園に入学する事が分かった。

(物語が始まって、ユーリ様とガーネット様が結ばれたら私は潔く身を引くから、それまでの間はガーネット様と友達で居たいわ……。)

「……さて、レイラも疲れただろう? そろそろ帰ろうか」

「あっ! ごめんなさい、レイラ様。引き留めてしまって……。では、私は失礼します! レイラ様、またお会い出来るのを楽しみにしています!!」

「えっ、ガーネット様……まっ!」

ガーネットはユーリが言った一言を聞くと、レイラ達に挨拶をする。レイラがガーネットを引き止める前に、ガーネットはそそくさと帰って行ってしまった。

(待って、ガーネット様! 一人にしないで~! ユーリ様のこの笑みは、怒ってらっしゃる笑みなの!!  ガーネット様が居なくなっまったら、ユーリ様にお説教されまうわ!!)

「さぁ、レイラ行こうか」

「ユーリ様? 落ち着いてください」

「大丈夫。落ち着いているから」

ユーリに手を引かれながら、レイラは馬車に戻るのであった……。
家に着くまでの間、レイラはユーリの膝の上に座らされ。1人で勝手に、危ない所には行かないと約束をさせられたのだった。
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