王子は公爵令嬢を溺愛中

saku

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レイラは家に帰ると、すぐさま部屋に籠った。
部屋に入るまで侍女が着いてきていたけれど、レイラは一人になりたいと言って下がらせた。
レイラは部屋に入ると、フラフラとベッドまで行き。うつ伏せに寝転がる。

「なんなの~!? あれは!!」

(ユーリ様って、私と同い年のはずでしょ!? なのに、あの色気は何!?)

前世の事を思い出してから、ユーリはレイラと同い年なのに大人の人と喋っているみたいにしっかりとしてるから、王族って教育がきちんとしているんだなと、レイラは思ってたけれど違う様な気がしてきていた。
馬車の中でのユーリの色気は、普通子供でもあそこまで出ない。

(なんなの!! ユーリ様のあの色気は!! あんな事を言われたら、頷くしかないじゃない!!)

レイラは、馬車の中のユーリを思い出していた……。
ガーネットと別れたレイラ達は、ガーネットが帰るのを見送るとユーリはレイラの手を握りしめ。馬車へと向かった。
馬車の所で別れるかと思いきや、ユーリが乗ってきた馬車にユーリとレイラが。レイラが乗ってきた馬車に、ヴィオラとユーリの従者が乗った。

『ユ、ユーリ様!?』と、レイラが声を上げたがユーリは『最後まで、一緒に居たいんだがダメかい?』と、囁いた。そんな事をユーリに言われたレイラは、断れる筈が無かった。顔が熱くなりながらも、ユーリと一緒に馬車に乗ったレイラは、ユーリとは向かい合わせか隣に座るどちらかと思っていた。
だが、違った。ユーリは馬車に乗り込むと、レイラを自分の膝へと座らせた。

『ユーリ様!? 私、一人で座ります!!』

『……レイラ。先ほどの事を話し合おうか?』

ユーリから放たれた一言に、レイラはビクッと体が強ばってしまった。レイラは分かっていた。
あれだけ、ヴィオラに注意されていたのに無視して一人で危ない所に向かってしまった。ユーリ達が来なかったら、あれだけの人数に小さいレイラが勝てたかも分からない……。

『ユーリ様、ごめんなさい……。』

しょんぼりと落ち込んでいるレイラの頭を、ユーリは優しく撫でる。

『レイラ。もう、勝手に一人で行動してはダメだよ?』

『……はい』

『今度、一人で勝手に行動したらどうなるか分かっているね?』

『ふぇっ!?』

『どうしようか~? レイラから甘えてもらう事にしようか?』

『えっ、えぇぇぇぇぇ!?』

『それとも、ここに口付けが良いかい?』

ユーリはレイラの頬に手を伸ばすと、指で唇を撫でる。
その事を思い出しただけで、レイラは恥ずかしくなり。手元にあった枕で顔を隠す。

「いや~。別れ際に、さらっとかっこいい事言えるなんてさすがユーリ様ですね! それに、お嬢様と同い年と思え無いくらいしっかりしてらっしゃいますもんね!」

「ヴィオラ、一言余計よ!  『レイラに何かあったら嫌だから、勝手に行かないでくれ。レイラが大切なんだ。』って、別れ際に寂しそうな顔で言われたら頷くしかないじゃない……。」

(ヴィオラってば、私と同い年と思えないって言ってたけれど、それは私が子供っぽいって言いたいのかしら……。あれ? 私部屋入る時に、一人にして欲しいと侍女達に頼んでいた筈なのに、今誰と喋ってるのかしら……。)

声がした方を向くと、ニコニコした笑顔でベッドの側にヴィオラが立っていた。

「ヴィオラ! 一人にしてって言ったじゃない!」

「何言ってるんですか? お嬢様が、ユーリ様の言葉に恥ずかしくて部屋に籠る事は分かっていました。ですが、そろそろ夕飯のお時間なので準備して下さい」

(ううっ……。さすがヴィオラね。確かに、夕飯の時間に遅れてお父様達を待たせるのは悪いけれど……。)

「この頃、ヴィオラの対応が酷いと思うわ!!」

「……? 何言っているんですか?」

ヴィオラは、可愛らしい顔で首を傾げていた。
ヴィオラは、イケメンではなく。男とは思えないほど、可愛らしい顔立ちをしているからか。いつもレイラは、その可愛さで負けてしまうのだ。そして、ヴィオラもその事を分かりながらやっていた。

「お嬢様が、最初に言われたんですよ? 『従者だからって、畏まらなくていいわ。一緒に住んでいるんだから、家族と同じよ!』って」

(……えぇ。確かに、言ったわ!! だって、お父様自身が働いてくれている人たちを、家族の様に大事にしているから私も真似をしたかった時があったわ)

「でも、少しは私を大事にしてくれてもいいと思うわ?」
 
「何言っているんですか? お嬢様の事、大事にしているじゃないですか」

不思議そうに、ヴィオラは首を傾げる。

「えっ!? 大事にって、お兄様の従者みたいにお昼の休憩の時に沢山のお菓子をくれたり、私の首根っこを掴んで連れていかないことよ!?」

「お菓子は、レオン様と違ってお嬢様は出した分だけ全て食べて仕舞われるのでダメです。首根っこを掴んで連れていくのは、お嬢様が逃げなければいいのです。」

「うっ……言い返せないわ。」

「準備出来ましたので行きましょう。」

「そうね。お父様達が待ってらっしゃるわね」


レイラはそう言うと、ヴィオラが開けた扉へと歩きだした。
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