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1〜10話
終わりは始まりの音を奏で【下】
「何を……言って……」
二人きりの室内。
足首に繋がれた鎖。
どこも拘束されている様子はないのに、私を助ける素振りのない相手。
この状況を生み出した犯人に思い至り、ザァッと血の気が引く。
この人は、味方ではない——。
体温を感じさせない手袋越しの手のひらが、するりと私の頬を撫でて離れた。
「今だけは、他の男のために泣くのを許してあげる」
頬に涙の温度が伝う。
何が悲しくて泣いているのかもわからないのに。
シヴュロスは私の涙から目を逸らすかのように、くるりと踵を返して歩きだした。ゆったりとした歩調に合わせ、波打つように揺れる暗紫のローブが遠ざかっていく。
扉を出ていく背中を呆然と見送りかけ、はっと気づいてベッドを飛び出す。
「待って!」
「大丈夫、時間ならいくらでもある。今日から君はここで暮らすんだ——一生ね」
「シヴュロス、待っ——!」
閉じていく扉へと駆け寄れば、足首を繋ぐ鎖がガシャンと張って倒れ込んだ。
残り数歩の距離。
必死に伸ばした指先の向こう。
分厚い扉が、静かに私と外界とを隔てた。
どうして。
どうしてこんな目に合わなきゃいけないの。
こんなはずじゃなかった。
もう少しで幸せを掴めるはずだったのに。
どうして。
どうして。
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
ぐわんぐわんと視界が揺れる。
受け入れがたい現実から逃れるように、ぷつりと意識が暗転した。
…………
………………
……………………
エンドロールはまだかしら?
——ん? エンドロールって何?
バッドエンドになっちゃったから、セーブポイントからやり直さないと。
——セーブポイント??
攻略対象、ルート分岐、正ヒロイン……知らない記憶の奔流が思考を呑み込む。
この世界ではないどこか。睡眠時間を削って働く日々に、鏡に映る疲れきった顔。
本よりも薄い板の中で繰り広げられる、現実味のない鮮やかな恋模様。
——ああ、そうか。
どうやら私は、乙女ゲームの正ヒロインとして転生したらしい。
二人きりの室内。
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どこも拘束されている様子はないのに、私を助ける素振りのない相手。
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頬に涙の温度が伝う。
何が悲しくて泣いているのかもわからないのに。
シヴュロスは私の涙から目を逸らすかのように、くるりと踵を返して歩きだした。ゆったりとした歩調に合わせ、波打つように揺れる暗紫のローブが遠ざかっていく。
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「待って!」
「大丈夫、時間ならいくらでもある。今日から君はここで暮らすんだ——一生ね」
「シヴュロス、待っ——!」
閉じていく扉へと駆け寄れば、足首を繋ぐ鎖がガシャンと張って倒れ込んだ。
残り数歩の距離。
必死に伸ばした指先の向こう。
分厚い扉が、静かに私と外界とを隔てた。
どうして。
どうしてこんな目に合わなきゃいけないの。
こんなはずじゃなかった。
もう少しで幸せを掴めるはずだったのに。
どうして。
どうして。
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
ぐわんぐわんと視界が揺れる。
受け入れがたい現実から逃れるように、ぷつりと意識が暗転した。
…………
………………
……………………
エンドロールはまだかしら?
——ん? エンドロールって何?
バッドエンドになっちゃったから、セーブポイントからやり直さないと。
——セーブポイント??
攻略対象、ルート分岐、正ヒロイン……知らない記憶の奔流が思考を呑み込む。
この世界ではないどこか。睡眠時間を削って働く日々に、鏡に映る疲れきった顔。
本よりも薄い板の中で繰り広げられる、現実味のない鮮やかな恋模様。
——ああ、そうか。
どうやら私は、乙女ゲームの正ヒロインとして転生したらしい。
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