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終わりなく続くかに思える【上】
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「……くしゅっ!」
陶製の浴槽からじわじわと冷えが回り、ぶるりと身震いして浴槽を出る。
しんみり落ち込ませてももらえないなんて……。
浴室の壁に据えられた鏡を見れば、まばゆいほどの美少女がこちらを見返していた。
「リリティナ……」
ゆるやかに波打つピンクブロンド、澄んだマリンブルーの瞳に、影が落ちるほど長いまつげ。透き通るような白い肌は頬だけほんのりと色づいて、前世の不健康な青白さとは似ても似つかない。バラの花びらのような唇は、グロスなんてなくてもぷるぷるツヤツヤだ。
小柄な体躯、華奢な手脚、庇護欲をそそる風貌でありながらも、輝く瞳の奥には芯の強さを感じさせる。
さすがは乙女ゲームの主人公。エフェクトがかかっているのかと思うほどきらきらしくて、鏡を見ているのが眩しい。
「こんなに可愛く生まれ変わったのに、結局恋人はできずじまいね」
この容姿をもってしても恋人ができないとは、もはや私が私である限り、一生恋愛なんてできないのではないかとすら思えてくる。
ただ心から誰かを愛し、愛されたいだけなのに……。
監禁さえされなければ、今頃レイナード殿下と婚約を交わせていたのだろうか。
――いいや、好感度が上がり切らなかった結果のバッドエンドなのだ。そんな未来なんて存在しないのだろう。
それに実は婚約者がいたのだと知ってしまった今、偽りの上に築かれた関係はすべてが虚構のように思える。もし無事にここを出られたとしても、今さらレイナードとの幸せな結婚なんて思い描けそうにない。
不意に、ポロッと水滴が落ちた。
ポロ、ポロ……。
すべらかな頬の上を、透明な雫が転げ落ちていく。
「涙……?」
婚約できなかったことが、泣くほど悲しくて? ……違う、これは『今の私』の涙じゃない。
胸の奥深くにポッカリと空いた虚空が、存在を訴えるかのようにズキズキと痛みを放つ。
「ちゃんと恋、してたものね……」
胸に添えた手をきゅっと握りしめる。
前世を思い出した今となってはもう、失恋なんて『見慣れた結末のひとつ』になってしまったけれど。
この世界しか知らなかった頃のリリティナにとっては、生まれて初めて、心のすべてを捧げた恋だったのだ。
陶製の浴槽からじわじわと冷えが回り、ぶるりと身震いして浴槽を出る。
しんみり落ち込ませてももらえないなんて……。
浴室の壁に据えられた鏡を見れば、まばゆいほどの美少女がこちらを見返していた。
「リリティナ……」
ゆるやかに波打つピンクブロンド、澄んだマリンブルーの瞳に、影が落ちるほど長いまつげ。透き通るような白い肌は頬だけほんのりと色づいて、前世の不健康な青白さとは似ても似つかない。バラの花びらのような唇は、グロスなんてなくてもぷるぷるツヤツヤだ。
小柄な体躯、華奢な手脚、庇護欲をそそる風貌でありながらも、輝く瞳の奥には芯の強さを感じさせる。
さすがは乙女ゲームの主人公。エフェクトがかかっているのかと思うほどきらきらしくて、鏡を見ているのが眩しい。
「こんなに可愛く生まれ変わったのに、結局恋人はできずじまいね」
この容姿をもってしても恋人ができないとは、もはや私が私である限り、一生恋愛なんてできないのではないかとすら思えてくる。
ただ心から誰かを愛し、愛されたいだけなのに……。
監禁さえされなければ、今頃レイナード殿下と婚約を交わせていたのだろうか。
――いいや、好感度が上がり切らなかった結果のバッドエンドなのだ。そんな未来なんて存在しないのだろう。
それに実は婚約者がいたのだと知ってしまった今、偽りの上に築かれた関係はすべてが虚構のように思える。もし無事にここを出られたとしても、今さらレイナードとの幸せな結婚なんて思い描けそうにない。
不意に、ポロッと水滴が落ちた。
ポロ、ポロ……。
すべらかな頬の上を、透明な雫が転げ落ちていく。
「涙……?」
婚約できなかったことが、泣くほど悲しくて? ……違う、これは『今の私』の涙じゃない。
胸の奥深くにポッカリと空いた虚空が、存在を訴えるかのようにズキズキと痛みを放つ。
「ちゃんと恋、してたものね……」
胸に添えた手をきゅっと握りしめる。
前世を思い出した今となってはもう、失恋なんて『見慣れた結末のひとつ』になってしまったけれど。
この世界しか知らなかった頃のリリティナにとっては、生まれて初めて、心のすべてを捧げた恋だったのだ。
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