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1~10話
カプセルころりんすっとんとん【下】
退職を一緒に喜んでくれる家族もいない。
仕事漬けだった三年の間に、大学生活を謳歌している友人たちともすっかり疎遠になってしまった。
誰かもわからない父親と、幼い自分を置いて出ていった母親は、この世界のどこかで生きているかもしれないけれど――自分にとっての『家族』はおじいちゃんだけ。
一人きりで自由を喜ぼうとするほどに、掴む手を失った風船のような、広い宇宙にぽいと放り出されてしまったかのような、言い知れぬ孤独感が襲ってくる。
体育座りの膝に顔を埋め、自分を抱きしめるようにぎゅっと脚を抱え込む。
「……おじいちゃんも、あんな会社辞めて正解だったって言ってくれるでしょ……?」
答えを求めて胸元へと手をやれば、プツンと微かな感触がして、首から重みが消えた。
コトンッ……
「!」
一年前から肌身離さず身に着けている、おじいちゃんの遺骨入りペンダント。
チタンで出来たカプセル型のペンダントトップが、切れたチェーンから滑り落ちた勢いのままコロコロと転がっていく。
「おじいちゃんっ!」
私を一人にしないで!!
慌ててカプセルへと手を伸ばす。
指先がカプセルを捉えたものの、変な体勢でバランスを崩し、そのまま倒れ込むと思った――瞬間。
もふっ
「……?」
顔面が、ひどくふわふわなものに埋まった。
ふわふわ、もふもふ
顔の周囲を手で探れば、やわらかな感触がふわふわと手のひらを押し返す。
んん? こんな触り心地の物、和室にはなかったはずだけど……。
手を付いてよいしょと顔を起こすと、そこには真っ白な毛並みの『壁』があった。
膝立ちのまま、後ずさって壁を見上げる。
「…………ぬいぐるみ?」
私が突っ伏した『壁』はどうやら、私の身長の倍ほどもある巨大なウサギのぬいぐるみ――の、お腹だったようだ。
「可愛いけど、なんでこんな所に……あっ! おじいちゃんは!?」
慌てて下を見れば、それはすぐに見つかった。
いやむしろ、見落とすほうが難しい。
足元に転がるチタンのカプセルをよいしょと拾いあげる。
見慣れたはずのそれはなぜか、私の顔よりも大きくて、ずしりと重い。
「何これ……」
巨大なぬいぐるみに、巨大なカプセル。
周囲を見渡せば先ほどまでいたはずの和室はなく、同じような巨大なぬいぐるみたちに囲まれている。
ここがどこなのかはわからない。
けれど、一つだけはっきりしていることは……。
「もしかして私、ちっちゃくなっちゃった――!!?」
仕事漬けだった三年の間に、大学生活を謳歌している友人たちともすっかり疎遠になってしまった。
誰かもわからない父親と、幼い自分を置いて出ていった母親は、この世界のどこかで生きているかもしれないけれど――自分にとっての『家族』はおじいちゃんだけ。
一人きりで自由を喜ぼうとするほどに、掴む手を失った風船のような、広い宇宙にぽいと放り出されてしまったかのような、言い知れぬ孤独感が襲ってくる。
体育座りの膝に顔を埋め、自分を抱きしめるようにぎゅっと脚を抱え込む。
「……おじいちゃんも、あんな会社辞めて正解だったって言ってくれるでしょ……?」
答えを求めて胸元へと手をやれば、プツンと微かな感触がして、首から重みが消えた。
コトンッ……
「!」
一年前から肌身離さず身に着けている、おじいちゃんの遺骨入りペンダント。
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「おじいちゃんっ!」
私を一人にしないで!!
慌ててカプセルへと手を伸ばす。
指先がカプセルを捉えたものの、変な体勢でバランスを崩し、そのまま倒れ込むと思った――瞬間。
もふっ
「……?」
顔面が、ひどくふわふわなものに埋まった。
ふわふわ、もふもふ
顔の周囲を手で探れば、やわらかな感触がふわふわと手のひらを押し返す。
んん? こんな触り心地の物、和室にはなかったはずだけど……。
手を付いてよいしょと顔を起こすと、そこには真っ白な毛並みの『壁』があった。
膝立ちのまま、後ずさって壁を見上げる。
「…………ぬいぐるみ?」
私が突っ伏した『壁』はどうやら、私の身長の倍ほどもある巨大なウサギのぬいぐるみ――の、お腹だったようだ。
「可愛いけど、なんでこんな所に……あっ! おじいちゃんは!?」
慌てて下を見れば、それはすぐに見つかった。
いやむしろ、見落とすほうが難しい。
足元に転がるチタンのカプセルをよいしょと拾いあげる。
見慣れたはずのそれはなぜか、私の顔よりも大きくて、ずしりと重い。
「何これ……」
巨大なぬいぐるみに、巨大なカプセル。
周囲を見渡せば先ほどまでいたはずの和室はなく、同じような巨大なぬいぐるみたちに囲まれている。
ここがどこなのかはわからない。
けれど、一つだけはっきりしていることは……。
「もしかして私、ちっちゃくなっちゃった――!!?」
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