4 / 165
1~10話
家は食べ物ではありません【上】
「もしかして私、ちっちゃくなっちゃった――!!?
――なーんてね! 夢でしょ、夢!」
大袈裟な一人芝居をカラカラと笑い飛ばす。
突然見知らぬ場所にワープして、そのうえ自分が小さくなっただなんて。
こんな非現実的な状況、夢としか考えようがない。
きっと疲労の蓄積した状態でアルコールを摂ったのがよくなかったのだ。
まさかビール一杯で寝落ちしてしまうとは。
……それにしても、一体どこからが夢だったのだろう。
チェーンの取れた巨大なペンダントトップ――おじいちゃんの遺骨入りカプセル――に視線を落とす。
「夢の中でくらい、遺骨じゃなくておじいちゃん本人が出てきてくれればいいのに……」
寄る辺ない呟きが、空気に溶けて消える。
滲みそうになる涙をぐっと堪えて顔を上げると、カプセルをしっかりと脇に抱え直して改めて周囲を観察した。
明るい空間。
愛らしいぬいぐるみたち。
頭上遥か高くには、浮き彫り細工を施された優美な天井が見える。
うん。これはきっと、『楽しい』夢。
最近は僅かな睡眠時間にも悪夢にうなされるばかりだったので、こうした楽しい雰囲気の夢というのは実に久しぶりだ。
これも会社を辞めた効果だろうか?
「せっかくなら、思いっきり楽しまないとね!」
一人きりの生活でめっきり増えてしまった独り言を唱えつつ、とりあえず手始めにと、目の前のふわふわなお腹にもう一度飛び込んだ。
もふんっ
「んーっ、この子も抱き心地最高ぅぅ!」
手当たり次第抱きついて、ふわっふわの毛並みに埋まりながら思う存分頬擦りをする。
昔から、可愛いものが好きなのだ。夢の中ならば誰の目を気にすることもない。
「……ん? 屋根?」
ふと見上げたぬいぐるみ山脈の隙間に、建物の屋根らしきものが見えた。
どうやらこの空間にはぬいぐるみ以外の物もあるらしい。
もふもふと毛足に撫でられながらぬいぐるみの間を抜けてみれば、そこには立派な洋館があった。
「すごーい……」
大きくて瀟洒な、西洋風の館。
門や庭はなく、いきなりデーンッと建物だけがある。
チョコレートブラウンの外壁のすべすべとした手触りを確認した私は……おもむろに口を開いて、壁に噛りついた。
ガチッ!
「ったーい!」
口を押さえて痛みに悶絶する。
だって……だって、お菓子の家かと思ったのだ!
楽しげな夢の中で、大好きなぬいぐるみに囲まれて、美味しそうなチョコ色の――とくれば、憧れのお菓子の家が出てきてくれてもいいはずじゃないか!
――なーんてね! 夢でしょ、夢!」
大袈裟な一人芝居をカラカラと笑い飛ばす。
突然見知らぬ場所にワープして、そのうえ自分が小さくなっただなんて。
こんな非現実的な状況、夢としか考えようがない。
きっと疲労の蓄積した状態でアルコールを摂ったのがよくなかったのだ。
まさかビール一杯で寝落ちしてしまうとは。
……それにしても、一体どこからが夢だったのだろう。
チェーンの取れた巨大なペンダントトップ――おじいちゃんの遺骨入りカプセル――に視線を落とす。
「夢の中でくらい、遺骨じゃなくておじいちゃん本人が出てきてくれればいいのに……」
寄る辺ない呟きが、空気に溶けて消える。
滲みそうになる涙をぐっと堪えて顔を上げると、カプセルをしっかりと脇に抱え直して改めて周囲を観察した。
明るい空間。
愛らしいぬいぐるみたち。
頭上遥か高くには、浮き彫り細工を施された優美な天井が見える。
うん。これはきっと、『楽しい』夢。
最近は僅かな睡眠時間にも悪夢にうなされるばかりだったので、こうした楽しい雰囲気の夢というのは実に久しぶりだ。
これも会社を辞めた効果だろうか?
「せっかくなら、思いっきり楽しまないとね!」
一人きりの生活でめっきり増えてしまった独り言を唱えつつ、とりあえず手始めにと、目の前のふわふわなお腹にもう一度飛び込んだ。
もふんっ
「んーっ、この子も抱き心地最高ぅぅ!」
手当たり次第抱きついて、ふわっふわの毛並みに埋まりながら思う存分頬擦りをする。
昔から、可愛いものが好きなのだ。夢の中ならば誰の目を気にすることもない。
「……ん? 屋根?」
ふと見上げたぬいぐるみ山脈の隙間に、建物の屋根らしきものが見えた。
どうやらこの空間にはぬいぐるみ以外の物もあるらしい。
もふもふと毛足に撫でられながらぬいぐるみの間を抜けてみれば、そこには立派な洋館があった。
「すごーい……」
大きくて瀟洒な、西洋風の館。
門や庭はなく、いきなりデーンッと建物だけがある。
チョコレートブラウンの外壁のすべすべとした手触りを確認した私は……おもむろに口を開いて、壁に噛りついた。
ガチッ!
「ったーい!」
口を押さえて痛みに悶絶する。
だって……だって、お菓子の家かと思ったのだ!
楽しげな夢の中で、大好きなぬいぐるみに囲まれて、美味しそうなチョコ色の――とくれば、憧れのお菓子の家が出てきてくれてもいいはずじゃないか!
あなたにおすすめの小説
男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~
花虎
恋愛
魔術大国カリューノスの現国王の末っ子である第一王女エレノアは、その見た目から妖精姫と呼ばれ、可愛がられていた。
だが、10歳の頃男の家庭教師に誘拐されかけたことをきっかけに大人の男嫌いとなってしまう。そんなエレノアの遊び相手として送り込まれた美少女がいた。……けれどその正体は、兄王子の親友だった。
エレノアは彼を気に入り、嫌がるのもかまわずいたずらまがいにちょっかいをかけていた。けれど、いつの間にか彼はエレノアの前から去り、エレノアも誘拐の恐ろしい記憶を封印すると共に少年を忘れていく。
そんなエレノアの前に、可愛がっていた男の子が八年越しに大人になって再び現れた。
「やっと、あなたに復讐できる」
歪んだ復讐心と執着で魔道具を使ってエレノアに快楽責めを仕掛けてくる美形の宮廷魔術師リアン。
彼の真意は一体どこにあるのか……わからないままエレノアは彼に惹かれていく。
過去の出来事で男嫌いとなり引きこもりになってしまった王女(18)×王女に執着するヤンデレ天才宮廷魔術師(21)のラブコメです。
※ムーンライトノベルにも掲載しております。
拝啓、聖騎士様。もうすぐ貴方を忘れるから離縁しましょう
花虎
恋愛
「はぁ?嫁に逃げられたぁ!?」
世界を救った召喚聖女リナリアと彼女を守り抜いた聖騎士フィグルドは世界に祝福されて結婚した。その一年後、突然リナリアは離縁状を置いてフィグルドの元を去った。
両想いで幸せだと思っていたフィグルドは行方不明になった妻を探し出すが、再会した彼女は、自分に関する記憶を全て、失っていた。
記憶を取り戻させたいフィグルドに対して、リナリアは困惑する。
「……でも、私は貴方のことを忘れたくて忘れたのかもしれないですよ?」
「もし君が、俺のことを忘れたくて忘れたとしても……、記憶を取り戻せなくても……俺は君に心を捧げている」
再び愛する彼女と共に生きるため、記憶の試練が始まる――――。
夫のことだけ記憶を失った妻の聖女リナリア(21)×両想いだと思い込んでいた夫の聖騎士フィグルド(24)のすれ違い追いかけっこラブコメ
「俺にしがみつくのはやめろ」と言われて恋が覚めたので、しがみつかずにリリースします。相容れないとほざくあなたは、今、私に捨てられましたわ
西野歌夏
恋愛
前世でフラれた記憶を思いだしたフローラ・ガトバンは、18歳の伯爵令嬢だ。今まさにデジャブのように同じ光景を見ていた。
エイトレンスのアルベルト王太子にまつわるストーリーです。
※の付いたタイトルは、あからさまな性的表現を含みます。苦手な方はお気をつけていただければと思います。
2025.5.29 完結いたしました。
ハードモードな異世界で生き抜いてたら敵国の将軍に捕まったのですが
影原
恋愛
異世界転移しても誰にも助けられることなく、厳しい生活を送っていたルリ。ある日、治癒師の力に目覚めたら、聖堂に連れていかれ、さらには金にがめつい師によって、戦場に派遣されてしまう。
ああ、神様、お助けください! なんて信じていない神様に祈りを捧げながら兵士を治療していたら、あれこれあって敵国の将軍に捕まっちゃった話。
敵国の将軍×異世界転移してハードモードな日々を送る女
-------------------
続以降のあらすじ。
同じ日本から来たらしい聖女。そんな聖女と一緒に帰れるかもしれない、そんな希望を抱いたら、木っ端みじんに希望が砕け散り、予定調和的に囲い込まれるハードモード異世界話です。
前半は主人公視点、後半はダーリオ視点。
こんにちは、最強騎士にお持ち帰りされたダメエルフです~もう逃げられません~
西野和歌
恋愛
おちこぼれエルフのシャーリーは、居場所を求めて人の国にて冒険者として活躍する事を夢見ていた。
だが、魔法も使えず戦闘ランクも最低のお荷物エルフは、すぐにパーティーを解雇される日々。
そして、また新たに解雇され一人になったシャーリーが、宿の食堂でやけ酒をしていると、近づく美貌の男がいた。
誰もが見惚れるその男の名はウェダー。
軽い調子でシャーリーを慰めるついでに酒を追加し、そのまま自分のベッドにお持ち帰りした。
初めてを奪われたエルフは、ひたすらハイスペックエリートの騎士に執着されるうちに、事件に巻き込まれてしまう。
これは、天然ドジな自尊心の低いシャーリーと、自らに流れる獣の血を憎みつつ、番のシャーリーを溺愛するウェダーの物語です。
(長文です20万文字近くありますが、完結しています)
※成人シーンには☆を入れています。投稿は毎日予定です。※他サイトにも掲載しています。
王宮の万能メイド、偏屈魔術師を餌付けする
葉山あおい
恋愛
王宮で働く勤続八年のメイド、エレナ・フォスター。仕事は完璧だが愛想がない彼女は、いつしか「鉄の女」と呼ばれ恐れられていた。
そんな彼女に下された辞令は、王宮の敷地内にありながら「魔窟」と呼ばれる『北の塔』の専属メイドになること。そこの主である宮廷魔術師団長・シルヴィス・クローデルは、稀代の天才ながら極度の人嫌い&生活能力ゼロの偏屈男だった!
ゴミ屋敷と化した塔をピカピカに掃除し、栄養失調寸前の彼に絶品の手料理を振る舞うエレナ。黄金色のオムレツ、とろける煮込みハンバーグ、特製カツサンド……。美味しいご飯で餌付けされた魔術師様は、次第にエレナへの独占欲を露わにし始めて――?
意地悪な聖女や侯爵夫人のいびりも、完璧なスキルで華麗に返り討ち。平民出身のメイドが、身分差を乗り越えて幸せな花嫁になるまでの、美味しくて甘いシンデレラストーリー。
山に捨てられた元伯爵令嬢、隣国の王弟殿下に拾われる
しおの
恋愛
家族に虐げられてきた伯爵令嬢セリーヌは
ある日勘当され、山に捨てられますが逞しく自給自足生活。前世の記憶やチートな能力でのんびりスローライフを満喫していたら、
王弟殿下と出会いました。
なんでわたしがこんな目に……
R18 性的描写あり。※マークつけてます。
38話完結
2/25日で終わる予定になっております。
たくさんの方に読んでいただいているようで驚いております。
この作品に限らず私は書きたいものを書きたいように書いておりますので、色々ご都合主義多めです。
バリバリの理系ですので文章は壊滅的ですが、雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。
読んでいただきありがとうございます!
番外編5話 掲載開始 2/28
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。