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1~10話
甘いもののあとには、しょっぱいもの【上】
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「んぁー、美味しーっ」
箱の中に入っていたのは、抱きしめて寝られそうな大きさのリーフパイと、ガラスのように美しい飴細工のバラ、薄くスライスされたサラミとチーズに、数種類のナッツ。
やっぱり、ネズミだと思われているような気がしないでもない。
箱ごと持ち上げるのは無理だったので中身を数回に分けて運び込み、食堂の長テーブルの上にずらりと並べて置いた。
逸る気持ちを抑えてひとまず当初の目的であったランニングをこなし、今は食堂で薄切りサラミ――といっても私にとっては五センチほどの厚みがある――に噛りついているところ。
もっちゃ、もっちゃ、もっちゃ
「んぐ。っはぁー、染みる……」
フルーツの糖分しか摂れていなかった身体に、サラミのほどよい塩分が染み渡る。
ビート板ほどの大きさのスライスが、サラミとチーズそれぞれ三枚ずつ。
この夢が一体いつまで続くのかは知らないけれど、これならしばらくは塩分に事欠かなそうだ。
「でも、さすがに喉渇いてきちゃった……」
寝起きからランニングをして塩分まで摂ったことで、すっかりと喉が渇ききってしまった。
このドールハウスに水は通っていないので、水分補給には家主のフルーツを食べるしかない。
せめてフルーツをここに持ち戻れれば、好きな時に水分補給できるのだけど……。
そんなことを考えながらぼんやりとテーブルの上を見ていると、包装紙とともに畳んで置いていたリボンが目についた。
「――そうだ、リボン!」
リボンを紐代わりにしてフルーツを背負えば、両手も自由になるし、ここまで持ってこられるのではないだろうか!?
そうすれば、果汁を絞ってジュースにして置いておくことだってできる。
……うん、試してみる価値はある。朝食を終えたら早速実践だ!
サラミにチーズ、パイも数口ずつ噛って満足すると、残りをしまっておくべく席を立った。
傷みやすそうな物もないし、とりあえず元の箱に入れておくので大丈夫だろう。
ちなみに、飴細工のバラは勿体なくて手付かずのまま。とても綺麗なので、これはこのままテーブルに飾っておいてもいいかもしれない。
そして飴細工とは別の理由で、ナッツも観賞用である。
あれは無理だ。噛ったら歯が持っていかれる。
食堂の隅に置いていた箱に食料を詰め込んで元通り蓋をすると、リボンを広げてくるくると輪にまとめ、自分の肩にたすき掛けにした。
「一丁、フルーツ調達に行きますか!」
箱の中に入っていたのは、抱きしめて寝られそうな大きさのリーフパイと、ガラスのように美しい飴細工のバラ、薄くスライスされたサラミとチーズに、数種類のナッツ。
やっぱり、ネズミだと思われているような気がしないでもない。
箱ごと持ち上げるのは無理だったので中身を数回に分けて運び込み、食堂の長テーブルの上にずらりと並べて置いた。
逸る気持ちを抑えてひとまず当初の目的であったランニングをこなし、今は食堂で薄切りサラミ――といっても私にとっては五センチほどの厚みがある――に噛りついているところ。
もっちゃ、もっちゃ、もっちゃ
「んぐ。っはぁー、染みる……」
フルーツの糖分しか摂れていなかった身体に、サラミのほどよい塩分が染み渡る。
ビート板ほどの大きさのスライスが、サラミとチーズそれぞれ三枚ずつ。
この夢が一体いつまで続くのかは知らないけれど、これならしばらくは塩分に事欠かなそうだ。
「でも、さすがに喉渇いてきちゃった……」
寝起きからランニングをして塩分まで摂ったことで、すっかりと喉が渇ききってしまった。
このドールハウスに水は通っていないので、水分補給には家主のフルーツを食べるしかない。
せめてフルーツをここに持ち戻れれば、好きな時に水分補給できるのだけど……。
そんなことを考えながらぼんやりとテーブルの上を見ていると、包装紙とともに畳んで置いていたリボンが目についた。
「――そうだ、リボン!」
リボンを紐代わりにしてフルーツを背負えば、両手も自由になるし、ここまで持ってこられるのではないだろうか!?
そうすれば、果汁を絞ってジュースにして置いておくことだってできる。
……うん、試してみる価値はある。朝食を終えたら早速実践だ!
サラミにチーズ、パイも数口ずつ噛って満足すると、残りをしまっておくべく席を立った。
傷みやすそうな物もないし、とりあえず元の箱に入れておくので大丈夫だろう。
ちなみに、飴細工のバラは勿体なくて手付かずのまま。とても綺麗なので、これはこのままテーブルに飾っておいてもいいかもしれない。
そして飴細工とは別の理由で、ナッツも観賞用である。
あれは無理だ。噛ったら歯が持っていかれる。
食堂の隅に置いていた箱に食料を詰め込んで元通り蓋をすると、リボンを広げてくるくると輪にまとめ、自分の肩にたすき掛けにした。
「一丁、フルーツ調達に行きますか!」
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