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番外編
4b、私は冬の景色をわかっていない
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たっぷりと雪をすくって大きめの雪玉を握り、ポスッと雪の地面に乗せる。
ゴロゴロと転がしながら大きくしていくイメージだったけれど、雪に乗せるたび一々分厚く雪がくっついてしまって、その都度押し固め直さないと球体を維持できない。
よいしょ……きゅっきゅっ
よいしょ……きゅっきゅっ
なんとか胴回りほどの不恰好な雪玉を作り上げ、同じようにして今度は頭大ほどの雪玉を作ると、最初の雪玉の上に乗せた。
仕上げに指で目の穴を開けようと思ったけれど、押し固められた表面が固くて歯が立たなかったのでこれで完成とする。
「できた……!」
雪だるま!
満足して立ち上がったと同時に、ガバリと後ろから抱きすくめられた。
「ガル様?」
「はぁ……白いコートにしたのは失敗だったな」
フードから露出した頬を温かな吐息がくすぐる。
ガルの言葉に自分を見下ろせば、コートの袖口にも裾にも大量の雪が付き、すでに溶けた一部が染み込みはじめている。
この分では恐らく、高そうな毛皮のコートがシミになってしまうだろう。
「あ……ごめんなさい、私———」
「雪の精霊に仲間と間違え連れ去られそうだ」
「———え?」
「愛らしすぎる」
「……」
ガルの憂慮はコートのシミではなかったらしい。
「夢中になって何を作っていたんだ?」
ガルが私の視線を追って前方を見る。
「これ……雪だるまです」
「だるま? 雪人形のようなものか?」
「あ、はい」
私を抱きしめるガルの腕に掴まり、コクコクと頷く。
そうか、『だるま』はこの世界にはないんだ。
「枝とか木の実でもあれば顔が付けられるんですけど……」
「そこの森にいくらでもあるだろう。取りに行くか?」
「行きたいです!」
ガルは私についた雪をパタパタと払うと、ひょいと抱き上げて森へ入った。
ゴロゴロと転がしながら大きくしていくイメージだったけれど、雪に乗せるたび一々分厚く雪がくっついてしまって、その都度押し固め直さないと球体を維持できない。
よいしょ……きゅっきゅっ
よいしょ……きゅっきゅっ
なんとか胴回りほどの不恰好な雪玉を作り上げ、同じようにして今度は頭大ほどの雪玉を作ると、最初の雪玉の上に乗せた。
仕上げに指で目の穴を開けようと思ったけれど、押し固められた表面が固くて歯が立たなかったのでこれで完成とする。
「できた……!」
雪だるま!
満足して立ち上がったと同時に、ガバリと後ろから抱きすくめられた。
「ガル様?」
「はぁ……白いコートにしたのは失敗だったな」
フードから露出した頬を温かな吐息がくすぐる。
ガルの言葉に自分を見下ろせば、コートの袖口にも裾にも大量の雪が付き、すでに溶けた一部が染み込みはじめている。
この分では恐らく、高そうな毛皮のコートがシミになってしまうだろう。
「あ……ごめんなさい、私———」
「雪の精霊に仲間と間違え連れ去られそうだ」
「———え?」
「愛らしすぎる」
「……」
ガルの憂慮はコートのシミではなかったらしい。
「夢中になって何を作っていたんだ?」
ガルが私の視線を追って前方を見る。
「これ……雪だるまです」
「だるま? 雪人形のようなものか?」
「あ、はい」
私を抱きしめるガルの腕に掴まり、コクコクと頷く。
そうか、『だるま』はこの世界にはないんだ。
「枝とか木の実でもあれば顔が付けられるんですけど……」
「そこの森にいくらでもあるだろう。取りに行くか?」
「行きたいです!」
ガルは私についた雪をパタパタと払うと、ひょいと抱き上げて森へ入った。
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