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31~40話

終わりを告げる安静【下】 ※

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「昨日の礼に、今日は俺が洗ってやるよ」

「……それって、本当に私へのお礼かしら」

 なんだかディノ側にメリットがありそうな気がするのは気のせいだろうか。

「片手じゃ背中も洗いにくいだろ? まあ任せとけって」

 風呂椅子に座る私の正面に跪いたディノは、石鹸を泡立てた手のひらをぬるんと私の背に滑らせた。

「ひゃうっ!? 待っ……! なんで前からなのよっ!?」

 半分抱きしめられるような格好で背中を洗われ、大きな手のひらの這う感触にゾクゾクと背筋を反らせる。

「チェリアも前からだったろ?」

「それは傷口の処置があったからで……っ! ちょっと! ひぁ……っ、変な触りかた、しないでっ!」

 触れていない部分からさえも体温の伝わる近さ。
 逞しい腕のなかに捕らわれて感じるのは、言い様のない安心と、逃げ出したいような衝動。

 大きな手のひらはぬるぬると存分に私の背中を撫であげると、つるりと脇腹を辿って胸の膨らみに到達した。

「あっ、またそん――っ! んんっ!」

 抗議に開きかけた口を慌てて手で押さえる。
 石鹸の泡をまとった手のひらは、にゅるんと抵抗なく胸を包み込んで、感触を楽しむようにやわやわと膨らみを揉みしだく。

「チェリア……口を塞ぎてぇならこっちだ」

 顔を寄せられ、口を押さえた手の甲に熱い吐息がかかる。
 有無を言わせぬようでいて、乞い願うような声音。熱を孕んだ眼差し。
 その先に待ち受けているものを、私は知っている。

 見つめられ、視線に奪われて。
 恐る恐る手を外した私は、唇に熱を受け止めた。




 荒い呼吸が耳を打ち、くちゅくちゅと口腔をかき混ぜられる音が頭の中に反響する。

「――っぷは! ディノ、んぅ――っ!」

「っは、チェリア……、鼻で息しろ」

「っは、んむぅ……っ! んふっ……、ふ……っ!」

 無骨な指先に胸の先端を摘ままれ、くりくりとしごいて、押し潰され。
 鋭い刺激にビクビクと反応を示すたび、ディノが口づけのなかで笑う。
 笑われているのに、ちっとも嫌な気持ちがしないのはなぜだろう。

 繋がった手を強く握りしめ、右腕で太い首筋にすがる。
 暴かれ、絡めて、呑み込んで。

 脇腹を撫でおろした手のひらがぬるんとお尻の下に潜り込んだかと思うと、口づけも解かないまま左腕一本で、ぐんっと抱きあげられた。

「んむ!?」

 見開いた目がアンバーの瞳に捕まる。
 こんなに至近距離から見つめられては、私の裏腹な心の奥まで見透かされてしまいそうで恐ろしい。

 安心するのに、ドキドキして。
 逃げ出したいのに、もっと触れてほしくて。

 ディノは私を抱えたまま浴槽を跨ぐと、ざぷんとお湯に浸かった。
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