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31~40話

戦いの前に【中】

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「優勝したときの約束、覚えてくれてるっすよね!?」

「えっ、ええ、もちろん……」

 『一緒に食事』のほうだろうか、いつの間にか派生していた『一日デート』のほうだろうか。
 コクコクと頷くと、ルークはニカッと明るい笑みを見せた。

「俺っ、チェリアさんのためなら隊長にだって勝ってみせるっす!」

 どうやら試合への緊張はないようだ。
 明るく、真っ直ぐで、強敵相手にも物怖じせず。今後のさらなる成長が期待される若き騎士。

 三年前に見たときは入団したてで初々しく、殻を付けたひよこみたいな感じだったのに……。
 弟の成長を見守るような気持ちで微笑ましくルークを見つめていると、背後からシフォルの声がかかった。

「――チェリアさん、優勝者とデートしてくださるという約束は僕にも有効ですか?」

「えっっっ!!?」

「チェリア、罠だ! 早まんな!!」

 ディノの制止が耳を滑る。

 ……この、モテモテのシフォルが?
 一歩お城を出れば一瞬で女性の群れに呑み込まれてしまうシフォルが?
 私とデートしたところで……なんの意味が???

 落ち着いて見えるけれど、シフォルも案外好きなのだろうか?
 まあ……顔を見ているだけでも眼福だし、所作は優雅で女性のエスコートも上手そうだし、苺スイーツの件といい素敵なお店もたくさん知っていそうだし。
 断る理由など一つもない。

「ええ、構わないわ」

「ありがとうございます。それはなんとしても勝たなくてはなりませんね」

 私の承諾ににっこりと微笑むシフォルの隣で、ディノはギリギリと眉間にシワを寄せ、野盗も逃げ出しそうな恐ろしい顔で吐き捨てた。

「くそっ! どいつもこいつも!!」



 これから試合に挑む三人を眺めながら、ふと思う。

「隊長と決勝戦って……普通に考えたら、初戦から勝ち抜いてきた二人のほうが不利よね? それまでの試合の疲れが溜まってるでしょう?」

 隊長が勝つよう仕向けられた試合なのではといぶかしむ私に、シフォルが小さな木箱を持ってきて見せてくれた。

「その点は問題ありません。決勝の挑戦者には、が支給されますから」

 開けられた箱の中には、夕陽色に透き通った指先大の宝石が収められていた。
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