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1~10話
休日のおでかけ【下】
しおりを挟む手を繋ぎたいなぁ、なんて考えながらヨルグが進むに任せてぼんやり歩いていると、公園に着いた。
「さすがにこの時間は静かだな」
「すごーい! 貸し切りだわ!」
王都で一番の広さを誇る王立中央公園。
季節ごとに色とりどりの花が咲き乱れる区画を横目に、誰もいない遊具コーナーへと駆け寄る。
「見て見て! これなんか、いつも子どもたちが取り合ってるのに!」
等間隔で打たれた膝の高さほどの杭の上に、足幅程度の細い板を渡した『板渡り』。
コースの途中がジグザグに曲がっていたり、坂になっていたり、ちょっと高い段差があったりと、子どもたちの挑戦心をくすぐる人気の遊具だ。
コースの端にぴょんと飛び乗って、ヨルグを手招く。
「ちょっとこっちに来てください!」
「ああ、そんなに動いては落ちてしまう……!」
そわそわと両手をさ迷わせるヨルグが、人ふたり分の距離を空けて前に立ったところで、さらに手招き。
「もっと近く近く!」
「いや、しかしこれ以上は……っ」
なにやら抵抗するようなことを呟きながらも、ヨルグは一歩、もう一歩と手招かれるまま前に進み出た。
目の前にあるヨルグの顔にぐっと顔を近づけて。
「なっ、何を――!」
「あぁーっ! これでもまだヨルグさんのほうが高い!」
「…………うん?」
「背の高さ! ヨルグさんってすごーく大きいですよね。あっ、でも背伸びすれば同じくらいに……!」
前のめりになった姿勢のまま爪先立ちをした瞬間、ぐらりと大きく重心が傾いだ。
「きゃあっ!」
「おっと!」
大木にでも抱きついたみたいに、危なげなくガッシリと抱きとめられる。
ふわりと鼻をくすぐる石鹸混じりの男性的な香り。
やわらかなシャツの布地越しに感じるのは、鍛えあげられた身体の硬さと、自分のものではない体温で――。
「ひゃあっ!? あっ、あのっ、ごめんなさい! わざとじゃないんですっ! ちょっとはしゃぎすぎちゃって……っ」
慌ててヨルグの胸から飛び退くと、意味もなく両手を振りながら言い訳を試みる。
本当の本当に、誓ってわざとではないのだ。そりゃあ『触れてみたいなぁ』とか『抱きついたらどんな感じかなぁ』とか考えなかったわけではないけれど、今回の件に関してだけは無実である。そこはわかってほしい。
「いや……構わない。これくらい別に、何度でも受けとめる」
「あぅ……ありがとうございます」
大接近を果たしてわかったのは、ヨルグの頬が意外にも血色がいいということだった――。
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