不能だと噂の騎士隊長が『可能』なことを私だけが知っている(※のぞきは犯罪です)

南田 此仁

文字の大きさ
16 / 213
1~10話

芝生の上で【中】

しおりを挟む

 徐々に明るさを増していく空に、一面の緑が青々と輝く。
 広大な芝生の上にも見渡す限り人影はない。

「ここも貸し切りですね!」

「ああ、そうだな」

 屈み込んだ私の足元にハンカチを敷こうとしてくれるのを断り、広い芝生の真ん中にゴロリと寝そべる。
 日中にこんなことをすれば駆け回る子どもたちに踏まれるのがオチだ。

 広い空を見上げながら大きく伸びをして。

「んーーーーーっ、気持ちいいーーっ」

 幼い頃はよく友達と一緒に原っぱで遊んだものだ。遊び疲れるとその場にコロンと寝転んで、ちょっとうたた寝のつもりがみんなして眠りこけ、心配して探しにきた大人たちに怒られたこともしばしば。

「ヨルグさんもどうですか? ――あっ、朝露が染みてきた!」

 じわりと背中に染みる冷たい感触さえも楽しくてケラケラと笑う。
 朝露が染みてしまうからどうだろうと思ったけれど、ヨルグもゴロリと隣に寝そべってくれた。

「たしかにこれは気持ちがいいな。芝生はやわらかく、視界は一面の空だ」

「ね! まるで空まで貸し切り――」

 見上げた遥か上空を、一羽の鳥が悠々と横切っていく。

「――ふふっ、空はあの子の貸し切りだったみたい!」

「だな」



 青く澄んだ空にゆっくりと流れていく雲を見つめる。

 なんて贅沢な時間だろう。
 数えきれないほどたくさんの人が暮らす王都で、街中も、公園も、自分たちだけの貸し切りになるなんて。

「こんなことなら、もっと早くから早朝に出かけておけばよかったです。静かで、空気も気持ちいいし」

 深く息を吸い込めば、たっぷりの草花の香りと、去っていく夜の尻尾と寝起きのお日さまの混ざった心地よい空気で満たされる。

「……人通りの少ない時間にリゼット一人で出歩くのは危険だ。何かあったとき、誰にも助けを求められない」

「あー、そっか……」

 深夜の外出が危険なことは子どもでも知っている。
 今は『朝』だから安全だと考えていたけれど、人目のなさでいえば危険度は深夜と変わらないのだ。

 しょんぼりと肩を落とす私に、ヨルグは続けて言った。
しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください

無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

処理中です...