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31~40話
門の向こうへ【中】
しおりを挟むその辺に放り出していたポシェットを引っつかみ、ヨルグに続いて家を飛び出す。
「すみません、リズをお借りします! 必ず無事に家まで送り届けますので!」
「じゃあ、いってきます!」
「おう。リゼット、『やる』と決めたからにゃあ途中で投げ出すんじゃねえぞ」
「うんっ!」
さあ急ぎ走って王城に向かおう、と構えた途端、ふわりと身体が宙に浮いた。
「すまない、今は時間が惜しい」
「ふぁっ!?」
浮遊感に驚いて咄嗟にしがみついたのは、ヨルグの太い首筋で。
そろりと下をうかがえば、ヨルグの左腕にお尻を乗せるようなかたちで抱き上げられていた。
いくら小柄なほうとはいえ、私を腕一本で軽々と……。
「走るぞ、しっかり掴まっていてくれ」
「! はいっ!」
耳の横で声がする。
あまりの近さに一瞬で頬が真っ赤になるのを感じつつ、覚悟を決めてぎゅっとヨルグにしがみついた。
速い、速い、速い!
みるみる街並みが流れていく。
千里眼を使ったときのようでいて、それよりもずっと安心感がある。両手で抱きしめたヨルグの温もり、落とさないようガッチリと支えてくれる力強い腕。
「先日出かけた湖で、ファングボアが出たのを覚えているか?」
「っ、はい!」
私を抱えて走りながら平然と話すヨルグに驚きつつ、舌を噛まないよう注意して返事をする。
「今思えば、おそらくあれは前兆だった。ファングボアは本来、あんなに標高の低い場所に出る魔獣ではないんだ」
「あれが……」
「湖のさらに先、連なった高山の遥かなる高嶺にドラゴンの棲み処がある。ドラゴンが棲み処を出る気配を察知して、周囲の魔獣たちの動きに異変が表れたのだろう。対魔獣を専門とする第三部隊の本隊は現在、異変の原因解明と人里に下りてきた魔獣の討伐のため、ドラゴンの棲み処方面へと遠征中だ」
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