不能だと噂の騎士隊長が『可能』なことを私だけが知っている(※のぞきは犯罪です)

南田 此仁

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41~50話

あのときの騎士【下】

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「……ヨルグさんは、私の両親に会いましたか?」

「ああ、遠巻きに見ただけだが、リズによく似ていたのを覚えている。意志が強そうな母君と、人がよさそうな父君で、どちらもリズのことをとても愛しているのが伝わってきた」

「…………えへへ」

 まさか、ヨルグと両親の思い出を共有できる日が来るとは思わなかった。
 胸がじんとするほど嬉しくて、引き絞られるほどに懐かしくて、じわりとにじんだ涙を誤魔化すようにヨルグへと笑顔を向ける。

「あの日からずっと、リズを愛しているんだ」

「ヨルグさん……」

 もう心変わりを疑う余地などない。
 長く、一途で、真摯な愛情。

「『幼い私』じゃなくても、大丈夫ですか?」

「……誤解しないでほしい……。好意を抱いたのは十年前だが……するようになったのは、あくまでも成長したリズと出逢って以降だ……」

 負傷してうめく怪我人のごとく、ヨルグが声を絞り出すようにして説明してくれる。
 突然どうしてしまったのだろう。

「欲情……するんですか? 私に?? ハンカチにじゃなくって?」

「当たり前だろう……、ハンカチはリズを思い描くための手段に過ぎない。『不能の噂』を耳にしたのかもしれないが、それも『リズ以外には興味がない』というだけの話だ」

 とうとう頭を支えている力まで失ったのか、ヨルグは私の腰を抱いたまま、肩口に頭をもたれてきた。
 やわらかな黒髪に頬と首筋をくすぐられ、そわそわとした気持ちで首をすくめる。

「本当に『私』だけでいいんですか? ハンカチになれなくても?」

「ああ、そのままでいてくれ。ハンカチになられては困る」

 肩口で話されるのがくすぐったくて、押し留めるようにやんわりとヨルグの頭に手を添える。

 そうか、ヨルグは私に欲情するのだったのか。

「じゃあ、えっと……シテいいですよ?」

 そう言った瞬間、ヨルグがガバッと顔を上げた。
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