不能だと噂の騎士隊長が『可能』なことを私だけが知っている(※のぞきは犯罪です)

南田 此仁

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61~70話

見たかったもの【下】 ※

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「んむぅっ! んぅ、んん――――っっっっ!!!!」

 口づけが呼吸を奪う。
 きつく抱きしめられてのけ反ることもできず、しがみついたヨルグの背にグッと爪を立てる。

 上り詰めて、上り詰めて。
 注がれた精がボタボタとあふれ出てシーツを汚す。

 まぶたの裏が明滅する。唇が腫れぼったい。抱きしめる腕は汗ですべるし、ぐしゃぐしゃになった髪が頬にまとわりつく。

「――っぷはぁ! っはぁ、っはぁ、はぁ……っ」

 大きく肩を上下させながら、頭を支える力もなくぐったりとヨルグにもたれかかる。
 思考が霞がかって、膜を隔てたように感覚が遠のいていく。

 武骨な指先が、頬に張りついた髪をすくってそっと耳にかけてくれた。

「…………」

 ヨルグを見上げ、ありがとうの気持ちを込めてニコリと微笑む。
 そしてそのまま、スルリと意識を手放した。







 一晩中求められて力尽き、泥のように眠っても、習慣というものは身体に染み付いているらしい。
 いつも通り薄暗い早朝に目が覚めた。

 隣を見て、ヨルグがいることに一瞬驚く。
 ――そうだ、結婚!

 二晩ではまだ慣れないけれど、これからはヨルグの隣で迎える朝が『日常』になっていくのだ。
 これから続く日々を思えば、嬉しさに頬が緩む。

 昨日はヨルグのほうが先に起きていたけれど、今日はまだぐっすりと眠っている。
 切れ長の目が閉じているせいか、ヨルグの寝顔はずいぶんと無防備に見えた。

 私だけが見られる姿……。

 思えば、のぞきだって最初は、近しい人間にしか見せない『寝顔』が見たくて始めたのだ。
 片想い時代の私の悲願。
 それを今、誰よりも近い場所で――ヨルグの腕のなかから、見つめている。

 感慨深い気持ちでしばしヨルグの寝顔を見つめていた私は、ハッとお店のことを思い出して跳ね起きた。

「ん……、リズ」

 起き上がった私の腰を抱き寄せるように、ヨルグの腕に意思が籠る。

「ヨルグさ――」

 朝の挨拶をしようとして、あまりにもひどい掠れ声に自分の喉を押さえた。
 ンンッと咳払いして、改めて発声を試みる。

「あー。あ、あー……」

「…………――っ! すまない、すぐに水を持ってくる!」

 壁のひび割れから吹き込むすきま風のような私の声。
 これでは客商売に支障をきたすと気づいたのだろう。青ざめて飛び起きたヨルグは、下穿き一枚の姿で階下へと駆けていった。
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