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1~10話
3c、鼻が忙しいので
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使用人食堂ではマナーを気にする必要もなく、あちこちからカチャカチャとカトラリーの触れる音が聞こえてくる。
「ねえ、マニーも鍛錬に付き添ったことある?」
「ええ、何度もあるわよ」
マニーは一年先輩なので、私より色々と仕事の勝手もわかっている。
「その時って、その……どんな感じだった?」
「どんなって言われても……ただ脇に控えて、飲み物とタオルをお渡ししただけよ」
「それだけ? タオルを渡したあとは?」
「んー、あとは鍛錬で使われた小道具を片付けたり地面をならしたりするくらいね。ほら、重たい道具なんかは旦那様がご自分で片付けてくださるでしょ?」
「ええ、そうね……」
こんなことを言えばまた大いなる誤解を与えそうなので口が裂けても言えないが、やはり抱きしめられるのは通常業務ではなかったようだ。
あの時の言動を思い返してみるに、グレニスはなぜか私を抱きしめることが私にダメージを与える手段だと思っているようだったけれど……正直、まったく意味がわからない。なんならご褒美でしかない。
本人の人柄についてはよく知らないけれど、他のメイドたちの反応を見ていても触れること自体が罰になるほどグレニスが嫌われているとは考えづらい。
グレニスは一体何がしたかったのだろう?
鍛錬はグレニスが宿直などで不在の日を除き、決まって毎日行われるという。
それは明日以降も、また今朝のようなことをされる可能性があるということで。
私は期待にだくだくと込み上げる唾液を、ちぎったパンと共に飲み込んだ。
「ねえ、マニーも鍛錬に付き添ったことある?」
「ええ、何度もあるわよ」
マニーは一年先輩なので、私より色々と仕事の勝手もわかっている。
「その時って、その……どんな感じだった?」
「どんなって言われても……ただ脇に控えて、飲み物とタオルをお渡ししただけよ」
「それだけ? タオルを渡したあとは?」
「んー、あとは鍛錬で使われた小道具を片付けたり地面をならしたりするくらいね。ほら、重たい道具なんかは旦那様がご自分で片付けてくださるでしょ?」
「ええ、そうね……」
こんなことを言えばまた大いなる誤解を与えそうなので口が裂けても言えないが、やはり抱きしめられるのは通常業務ではなかったようだ。
あの時の言動を思い返してみるに、グレニスはなぜか私を抱きしめることが私にダメージを与える手段だと思っているようだったけれど……正直、まったく意味がわからない。なんならご褒美でしかない。
本人の人柄についてはよく知らないけれど、他のメイドたちの反応を見ていても触れること自体が罰になるほどグレニスが嫌われているとは考えづらい。
グレニスは一体何がしたかったのだろう?
鍛錬はグレニスが宿直などで不在の日を除き、決まって毎日行われるという。
それは明日以降も、また今朝のようなことをされる可能性があるということで。
私は期待にだくだくと込み上げる唾液を、ちぎったパンと共に飲み込んだ。
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