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1~10話
4a、暗殺者の可能性もあります
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次の日もそのまた次の日も、鍛練後の抱擁は続いた。
早朝。
ルンルンと足取りも軽やかに鍛錬場へ向かう。
目は冴え渡って爛々と輝き、ワゴンを押していなければ連日小躍りしていたかもしれない。
鍛錬場ではいつも通り、グレニスが鍛錬の真っ最中だった。
「旦那様、おはようございます!」
「ああ、おはよう」
短い挨拶を済ませ鍛錬場の片隅に控える。
見るからにきつそうな動作の一つ一つがあの汗を生み出しているのかと思うと、鍛錬風景も俄然輝いて見えてくるというものだ。
見慣れた一連の動作が終わったのを見計らって、私はタオルとなみなみと果実水の入ったゴブレットを手に一目散にグレニスへと駆け寄った。
「お疲れ様です、旦那様!」
「ああ」
受け取った果実水を飲み干し、グレニスがふぅと息を吐く。
顎に伝うのは水だろうか、汗だろうか、ちょっと舐めて確認してみてもいいだろうか。
私は空になったゴブレットを受け取ると、そわそわと落ち着きなく居ずまいを正す。
グレニスは抱きしめることを罰の一種と考えているようなので、期待していることがバレてはいけない。
ぐっと表情筋を制して澄ました顔で待てば、期待を見透かしたかのようにグレニスの手が私を招いた。
「来い」
「し、失礼します……!」
ふぅぅぅぅと息を吐き出しきって、タオルとゴブレットを持つ手を広げ、万全の抱擁体勢でしずしずと腕の中に収まりに行く。
逞しい腕がぎゅうっと巻きついたのを合図に、思い切り息を吸い込んだ。
早朝。
ルンルンと足取りも軽やかに鍛錬場へ向かう。
目は冴え渡って爛々と輝き、ワゴンを押していなければ連日小躍りしていたかもしれない。
鍛錬場ではいつも通り、グレニスが鍛錬の真っ最中だった。
「旦那様、おはようございます!」
「ああ、おはよう」
短い挨拶を済ませ鍛錬場の片隅に控える。
見るからにきつそうな動作の一つ一つがあの汗を生み出しているのかと思うと、鍛錬風景も俄然輝いて見えてくるというものだ。
見慣れた一連の動作が終わったのを見計らって、私はタオルとなみなみと果実水の入ったゴブレットを手に一目散にグレニスへと駆け寄った。
「お疲れ様です、旦那様!」
「ああ」
受け取った果実水を飲み干し、グレニスがふぅと息を吐く。
顎に伝うのは水だろうか、汗だろうか、ちょっと舐めて確認してみてもいいだろうか。
私は空になったゴブレットを受け取ると、そわそわと落ち着きなく居ずまいを正す。
グレニスは抱きしめることを罰の一種と考えているようなので、期待していることがバレてはいけない。
ぐっと表情筋を制して澄ました顔で待てば、期待を見透かしたかのようにグレニスの手が私を招いた。
「来い」
「し、失礼します……!」
ふぅぅぅぅと息を吐き出しきって、タオルとゴブレットを持つ手を広げ、万全の抱擁体勢でしずしずと腕の中に収まりに行く。
逞しい腕がぎゅうっと巻きついたのを合図に、思い切り息を吸い込んだ。
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