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21~30話
23c、鼻呼吸だけで生きていく
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「…………」
だらだらと冷や汗を流しながら視線を逸らす。
グレニスは立ち止まってくれたけれど、もはや呼び止めるんじゃなかったとの後悔の方が大きい。
なんてことを口走ってくれたんだこの口は。もう嫌だ。この口取り外して捨てたい。鼻呼吸だけで生きていく。
……いや、いやいや待てよ? 希望を捨てるのはまだ早い。ここはガヤガヤと賑わう商店街。騒音に紛れて『何も聞こえていなかった』という可能性もなきにしもあら———
「どうした? リヴ」
「〰〰っ!」
聞かれてた……!
「あ、あのっ……! 大変失礼いたしました!!」
「いいや、謝る必要はない。気に入った」
「気に……?」
怒りも不快感も含まない、むしろどこか楽しげな声に、ぎゅっと瞑った目を恐る恐る開く。
「ああ。『グレン』と、そう呼べばいい」
「は……」
「俺もリヴと呼んでも?」
「え……」
フードに隠れて表情は見えないけれど、冗談を言っているわけではなさそうだ。
「そ、その呼び方、どうして……?」
「マノンがそう呼んでいるのを聞いた。俺が呼んではダメか?」
どこかでマニーと話すのを聞かれていたらしい。
何にせよ先にやらかしたのは私だ。断れようはずもない。
「いえ……、ダメじゃないです……。はい……」
だらだらと冷や汗を流しながら視線を逸らす。
グレニスは立ち止まってくれたけれど、もはや呼び止めるんじゃなかったとの後悔の方が大きい。
なんてことを口走ってくれたんだこの口は。もう嫌だ。この口取り外して捨てたい。鼻呼吸だけで生きていく。
……いや、いやいや待てよ? 希望を捨てるのはまだ早い。ここはガヤガヤと賑わう商店街。騒音に紛れて『何も聞こえていなかった』という可能性もなきにしもあら———
「どうした? リヴ」
「〰〰っ!」
聞かれてた……!
「あ、あのっ……! 大変失礼いたしました!!」
「いいや、謝る必要はない。気に入った」
「気に……?」
怒りも不快感も含まない、むしろどこか楽しげな声に、ぎゅっと瞑った目を恐る恐る開く。
「ああ。『グレン』と、そう呼べばいい」
「は……」
「俺もリヴと呼んでも?」
「え……」
フードに隠れて表情は見えないけれど、冗談を言っているわけではなさそうだ。
「そ、その呼び方、どうして……?」
「マノンがそう呼んでいるのを聞いた。俺が呼んではダメか?」
どこかでマニーと話すのを聞かれていたらしい。
何にせよ先にやらかしたのは私だ。断れようはずもない。
「いえ……、ダメじゃないです……。はい……」
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