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21~30話
23d、鼻呼吸だけで生きていく
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「リヴ、もう一度呼んでくれ」
「えっ」
向かい合ってぐっと腰を抱き寄せられる。
グレニスの胸に手をついて見上げれば、フードの中の温かな瞳が見えた。
「もう一度」
こんなに真っ直ぐに期待されていては、適当なことを言ってはぐらかすこともできず。
「……………………グ……、グレン」
「ああ。リヴ?」
「はい……」
お願いだ。どうか私にもフードを被せてほしい。
熱い。顔が熱い。
グレニスの空いた片手がするりと頬を撫で、すりすりと耳朶を弄ぶ。
うぅ、くすぐったい。なんだろうこの状況は。
「それで? 何か用があったんじゃないのか?」
「え……? あっ、屋台! 屋台に寄りたかったんです!」
本来の目的を思い出した私は、グレニスの服の胸元を握りしめて訴えた。
買ってもらった肉串を手に、ほくほくと道を進む。
腰を抱かれたままなのが気になるけれど、今は肉に集中だ。
あいにく近くのベンチには先客がいたので、すぐそこの広場へ行き噴水の縁に腰を下ろした。
「んー、いい香り!」
屋台の店主の話によれば、なんでも南国から取り寄せた珍しいスパイスを使っているのだとか。
「ふむ……独特な香りだが、美味そうだな」
グレニスの手にも肉串が一本。
存分に香りを堪能して、いざ噛りつかんと大きく口を開けた瞬間。微かに『きゃー』という声が聞こえた気がした。
「ちょっと持っていてくれ」
グレニスに差し出された肉串を反射的に受け取る。
「え? ど……」
急にどうしたのかと尋ねる隙もなく、あっと言う間にグレニスの後ろ姿が遠ざかって人混みに消えた。
「えっ」
向かい合ってぐっと腰を抱き寄せられる。
グレニスの胸に手をついて見上げれば、フードの中の温かな瞳が見えた。
「もう一度」
こんなに真っ直ぐに期待されていては、適当なことを言ってはぐらかすこともできず。
「……………………グ……、グレン」
「ああ。リヴ?」
「はい……」
お願いだ。どうか私にもフードを被せてほしい。
熱い。顔が熱い。
グレニスの空いた片手がするりと頬を撫で、すりすりと耳朶を弄ぶ。
うぅ、くすぐったい。なんだろうこの状況は。
「それで? 何か用があったんじゃないのか?」
「え……? あっ、屋台! 屋台に寄りたかったんです!」
本来の目的を思い出した私は、グレニスの服の胸元を握りしめて訴えた。
買ってもらった肉串を手に、ほくほくと道を進む。
腰を抱かれたままなのが気になるけれど、今は肉に集中だ。
あいにく近くのベンチには先客がいたので、すぐそこの広場へ行き噴水の縁に腰を下ろした。
「んー、いい香り!」
屋台の店主の話によれば、なんでも南国から取り寄せた珍しいスパイスを使っているのだとか。
「ふむ……独特な香りだが、美味そうだな」
グレニスの手にも肉串が一本。
存分に香りを堪能して、いざ噛りつかんと大きく口を開けた瞬間。微かに『きゃー』という声が聞こえた気がした。
「ちょっと持っていてくれ」
グレニスに差し出された肉串を反射的に受け取る。
「え? ど……」
急にどうしたのかと尋ねる隙もなく、あっと言う間にグレニスの後ろ姿が遠ざかって人混みに消えた。
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