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21~30話
24b、いつもありがとうございます
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グレニスが毎朝欠かさず厳しい鍛練をこなしているのを知っている。
登城したあとも、警護の傍ら見学で目にしたような訓練を積み重ね、有事とあらば命を賭して戦うのだろう。
人々の平和のために自身のすべてを懸けるだなんて、なかなか真似できることではない。
そのうえこの性格、この容姿。
「グレ……グ、グレンは、モテますよね……?」
「まあ多少騒がれはするが……、騎士の華やかな面しか見ようとしない者たちにいくら懸想されようと意味はない」
ワインを一口飲んで、グラスを置く。
「泥臭いんだ、騎士は」
泥……くさい……?
「汗も甲冑も、いい香りですよ……?」
「ふっ、リヴはそうだな」
フードから見える口元は緩やかに弧を描いて、伸びてきた大きな手のひらが、宝物にでも触れるみたいに優しく私の頬を包み込んだ。
「だから俺は———」
グレニスは今、一体どんな顔をして私を見ているのだろう。
触れられたままの頬に意識を散らしながら、この逆上せてしまいそうな空気をどうにかしたくて話題を探す。
「あっ、あのっ、えっと……あっ! 劇は何を観るんですか!?」
「ああ、……これだ」
頬から離れた手にほっと息をつく。
もっと触れていてほしかった気がするのには、まだ気付かないふりをして。
グレニスは懐から二枚のチケットを出して渡してくれた。
登城したあとも、警護の傍ら見学で目にしたような訓練を積み重ね、有事とあらば命を賭して戦うのだろう。
人々の平和のために自身のすべてを懸けるだなんて、なかなか真似できることではない。
そのうえこの性格、この容姿。
「グレ……グ、グレンは、モテますよね……?」
「まあ多少騒がれはするが……、騎士の華やかな面しか見ようとしない者たちにいくら懸想されようと意味はない」
ワインを一口飲んで、グラスを置く。
「泥臭いんだ、騎士は」
泥……くさい……?
「汗も甲冑も、いい香りですよ……?」
「ふっ、リヴはそうだな」
フードから見える口元は緩やかに弧を描いて、伸びてきた大きな手のひらが、宝物にでも触れるみたいに優しく私の頬を包み込んだ。
「だから俺は———」
グレニスは今、一体どんな顔をして私を見ているのだろう。
触れられたままの頬に意識を散らしながら、この逆上せてしまいそうな空気をどうにかしたくて話題を探す。
「あっ、あのっ、えっと……あっ! 劇は何を観るんですか!?」
「ああ、……これだ」
頬から離れた手にほっと息をつく。
もっと触れていてほしかった気がするのには、まだ気付かないふりをして。
グレニスは懐から二枚のチケットを出して渡してくれた。
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