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21~30話
30b、無知で恥ずかしい
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こくりと唾を飲み込んで、口を開く。
「モーグ男爵から、スターシュ伯爵と同じ臭いがしたんです」
「臭い?」
「はい、嫌な感じの……」
「具体的にはどんな臭いだ?」
臭いの内容なんて聞いてどうするのだろう?
首をひねりながらも、とりあえず聞かれるままに答える。
「えっと……果物に似た感じの、ただ甘酸っぱい臭いなんですけど……。その臭いを嗅ぐと、なんだか直接頭の中を刺激されるような、ものすごく気持ちの悪い感じがするんです」
「そのせいで気分が悪くなったのか」
グレニスの言葉にコクンと頷く。
「———以前青い顔をして庭にうずくまっていたのも、叔父上が屋敷に来た日だったな。それも臭いが原因か?」
大した記憶力だ。あれ以降スターシュが来る日には、洗濯場に籠って顔を合わせないようやり過ごしていたのに。
「はい、そうです……。スターシュ伯爵より、モーグ男爵の臭いの方が何倍も強かったですけど」
「ふむ、俺には葉巻の臭いしか感じられなかったが……不快な甘酸っぱい臭い、か。それも、叔父上からも同様に……」
懸念していたスターシュを悪臭呼ばわりしたことに関しては何も気にしていないようだ。
それ以上に気にかかることがあったのか、グレニスは顎に手をかけて俯き、何やら難しい顔で考え込んでいる。
グレニスに半身を預けたまま、のんびりと果実水を飲みながら考えごとが終わるのを待つ。
カウンターの奥からは、ふんわりと甘い香りが漂ってきた。
「モーグ男爵から、スターシュ伯爵と同じ臭いがしたんです」
「臭い?」
「はい、嫌な感じの……」
「具体的にはどんな臭いだ?」
臭いの内容なんて聞いてどうするのだろう?
首をひねりながらも、とりあえず聞かれるままに答える。
「えっと……果物に似た感じの、ただ甘酸っぱい臭いなんですけど……。その臭いを嗅ぐと、なんだか直接頭の中を刺激されるような、ものすごく気持ちの悪い感じがするんです」
「そのせいで気分が悪くなったのか」
グレニスの言葉にコクンと頷く。
「———以前青い顔をして庭にうずくまっていたのも、叔父上が屋敷に来た日だったな。それも臭いが原因か?」
大した記憶力だ。あれ以降スターシュが来る日には、洗濯場に籠って顔を合わせないようやり過ごしていたのに。
「はい、そうです……。スターシュ伯爵より、モーグ男爵の臭いの方が何倍も強かったですけど」
「ふむ、俺には葉巻の臭いしか感じられなかったが……不快な甘酸っぱい臭い、か。それも、叔父上からも同様に……」
懸念していたスターシュを悪臭呼ばわりしたことに関しては何も気にしていないようだ。
それ以上に気にかかることがあったのか、グレニスは顎に手をかけて俯き、何やら難しい顔で考え込んでいる。
グレニスに半身を預けたまま、のんびりと果実水を飲みながら考えごとが終わるのを待つ。
カウンターの奥からは、ふんわりと甘い香りが漂ってきた。
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