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21~30話
30a、無知で恥ずかしい
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「もう起き上がっても平気なのか?」
「はい、大分楽になりました」
言葉だけではまだ心配なのだろう。グレニスは私の肩を抱き寄せて自分の身体に凭れさせた。
果実水の入ったコップを手渡されたので、ありがたく頂戴する。
「———っぷは」
白ぶどうのまろやかな甘味がするりと喉を落ちる。
「……落ち着いたばかりですまないが、さっきの話について詳しく聞いてもいいだろうか?」
「話?」
質問に答えるのはやぶさかではないけれど、何か話していただろうか?
「モーグ男爵と別れた直後に言っていた、『スターシュ伯爵と同じ』という言葉の意味について」
「あ……」
そういえばあの時、ぐらぐらと揺れる意識の中で臭いが記憶と一致して、ついスターシュの名を口走ってしまったのだった。
しかしこれを説明すると、間接的にスターシュのことも『くさい』と言ってしまうことになるので、グレニスの気分を害さないだろうか……。
「大きな声では言えないが、モーグ男爵にはとある容疑がかかっていてな。何か気がついたことがあるのなら、なんでも教えてほしいんだ」
言いあぐねる私へ、グレニスが告げる。
確かにモーグは嫌な感じのする人物ではあったけれど、まさか犯罪者かもしれないだなんて。
そういうことなら、何もかも話してしまった方がいいだろう。私の感じた『くさかった』という感想がなんの役に立つかはわからないけれど。
「はい、大分楽になりました」
言葉だけではまだ心配なのだろう。グレニスは私の肩を抱き寄せて自分の身体に凭れさせた。
果実水の入ったコップを手渡されたので、ありがたく頂戴する。
「———っぷは」
白ぶどうのまろやかな甘味がするりと喉を落ちる。
「……落ち着いたばかりですまないが、さっきの話について詳しく聞いてもいいだろうか?」
「話?」
質問に答えるのはやぶさかではないけれど、何か話していただろうか?
「モーグ男爵と別れた直後に言っていた、『スターシュ伯爵と同じ』という言葉の意味について」
「あ……」
そういえばあの時、ぐらぐらと揺れる意識の中で臭いが記憶と一致して、ついスターシュの名を口走ってしまったのだった。
しかしこれを説明すると、間接的にスターシュのことも『くさい』と言ってしまうことになるので、グレニスの気分を害さないだろうか……。
「大きな声では言えないが、モーグ男爵にはとある容疑がかかっていてな。何か気がついたことがあるのなら、なんでも教えてほしいんだ」
言いあぐねる私へ、グレニスが告げる。
確かにモーグは嫌な感じのする人物ではあったけれど、まさか犯罪者かもしれないだなんて。
そういうことなら、何もかも話してしまった方がいいだろう。私の感じた『くさかった』という感想がなんの役に立つかはわからないけれど。
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