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41~50話
45b、世継ぎを産むということ
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「どうしよう……」
当てのない呟きは馬車の音に消え、血の気を失った指先が冷えていく。
決められたものは仕方ない、貴族の娘に生まれた務めと、そう割り切れると思っていたのに。
想いを伴わない行為はきっと、この夢のような思い出を土足で踏みにじり、無遠慮に穢すだろう。
覚えていたはずのグレニスの温度を書き換えられ、段々と香りの記憶さえも薄れ。行為を重ねるほどに壊されていく思い出が、いつか私の心までも蝕むだろう。
自分が甘かった。
何もわかっていなかったのだ。
愛を営む行為の尊さも、愛を伴わない行為の残酷さも。
愛してもいない人と、子をなさなければ———
「…………ん?」
ふと思い当たって首を傾げる。
そういえば昨夜、グレニスは避妊をしていただろうか?
避妊には薄い皮膜のような避妊具で陰茎を被うか、事前に特別な薬を服用する必要があると習った。
私は薬なんて持っていないし、グレニスも、そのどちらもしていなかったように思う。
「もしかして……」
ぎゅっと枕を抱きしめれば、ふんわりとした感触が優しく腹を圧す。
どきどきと鼓動が高鳴って、高揚感に頬が染まる。
もしかすると———昨日のあの行為で、子どもが出来ていたりするのだろうか?
当てのない呟きは馬車の音に消え、血の気を失った指先が冷えていく。
決められたものは仕方ない、貴族の娘に生まれた務めと、そう割り切れると思っていたのに。
想いを伴わない行為はきっと、この夢のような思い出を土足で踏みにじり、無遠慮に穢すだろう。
覚えていたはずのグレニスの温度を書き換えられ、段々と香りの記憶さえも薄れ。行為を重ねるほどに壊されていく思い出が、いつか私の心までも蝕むだろう。
自分が甘かった。
何もわかっていなかったのだ。
愛を営む行為の尊さも、愛を伴わない行為の残酷さも。
愛してもいない人と、子をなさなければ———
「…………ん?」
ふと思い当たって首を傾げる。
そういえば昨夜、グレニスは避妊をしていただろうか?
避妊には薄い皮膜のような避妊具で陰茎を被うか、事前に特別な薬を服用する必要があると習った。
私は薬なんて持っていないし、グレニスも、そのどちらもしていなかったように思う。
「もしかして……」
ぎゅっと枕を抱きしめれば、ふんわりとした感触が優しく腹を圧す。
どきどきと鼓動が高鳴って、高揚感に頬が染まる。
もしかすると———昨日のあの行為で、子どもが出来ていたりするのだろうか?
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