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41~50話
45a、世継ぎを産むということ
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とうとう大きな屋敷を囲む塀の一端さえも見えなくなって、ようやく窓から顔を引いた。
街並みは止まることなく窓の外を流れていく。
グレニスへの恋心も、グレニスと出かけた思い出も、すべて置き去りにして遠ざかっていくかのようだ。
抱えた枕に涙が染みては大変とハンカチを取り出せば、クリーム色をした小花柄のハンカチに……そのイニシャルの群青色に、また止めどなく涙が溢れた。
———大丈夫。
私には、宝物のような思い出がある。
未来に何が待ち受けていようと、この思い出さえあれば生きていけるから。
そしてまだ知らぬ結婚相手と、これからの長い人生を歩むのだ。
生が尽きるまで……永遠に……。
…………。
……でもほら! 案外いい人の可能性もある!
優しくて、いい香りがするかもしれない。
他愛ないおしゃべりをしたり、一緒に出かけたり、楽しく日々を過ごせるかもしれない。
そしていずれはグレニスとしたように、
口付けを交わし、
抱き合って、
すべてをこの身に——————、無理だ。
今まで漠然としていた結婚へのイメージが……世継ぎを産むということが、俄然具体性を増して目の前に立ちはだかる。
あんな風に自分のすべてをさらけ出し相手のすべてを受け入れる、心と心を触れ合わせるような掛け替えのない行為を、グレニス以外の男性とするなんて。
考えられない。考えたくもない。
けれど結婚する以上、世継ぎを産むことは決して避けては通れないのだ。
街並みは止まることなく窓の外を流れていく。
グレニスへの恋心も、グレニスと出かけた思い出も、すべて置き去りにして遠ざかっていくかのようだ。
抱えた枕に涙が染みては大変とハンカチを取り出せば、クリーム色をした小花柄のハンカチに……そのイニシャルの群青色に、また止めどなく涙が溢れた。
———大丈夫。
私には、宝物のような思い出がある。
未来に何が待ち受けていようと、この思い出さえあれば生きていけるから。
そしてまだ知らぬ結婚相手と、これからの長い人生を歩むのだ。
生が尽きるまで……永遠に……。
…………。
……でもほら! 案外いい人の可能性もある!
優しくて、いい香りがするかもしれない。
他愛ないおしゃべりをしたり、一緒に出かけたり、楽しく日々を過ごせるかもしれない。
そしていずれはグレニスとしたように、
口付けを交わし、
抱き合って、
すべてをこの身に——————、無理だ。
今まで漠然としていた結婚へのイメージが……世継ぎを産むということが、俄然具体性を増して目の前に立ちはだかる。
あんな風に自分のすべてをさらけ出し相手のすべてを受け入れる、心と心を触れ合わせるような掛け替えのない行為を、グレニス以外の男性とするなんて。
考えられない。考えたくもない。
けれど結婚する以上、世継ぎを産むことは決して避けては通れないのだ。
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