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41~50話
47d、大事な話
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それからじっと私を見つめると、口を開きかけてはつぐみ、つぐんではまた開き、言いづらそうに逡巡する素振りを見せる。
いつも堂々として決断力のあるグレニスが、こんな風に何かを躊躇うなんて珍しい。
「あの……?」
「…………そんなに、結婚が嫌か?」
「……」
グレニスの言葉に、すぐには返事をすることができなかった。
だってその言い方ではまるで、私に他の男性との結婚を受け入れてほしいと言っているようではないか。
万が一子どもが出来ていたとき、グレニスの子だと言い出させないためだろうか……。
理由なんてわからないけれど、いくら大好きなグレニスに頼まれようとこれだけは譲れない。
「嫌です」
きっぱりと答えれば、グレニスの眉間のシワがぐっと深まる。
「何もかも捨て、修道院に入ろうと思うほどにか?」
「はい」
「……っはぁ、なぜそこまで……」
グレニスは片手で顔を覆い、ガックリと項垂れた。
私が結婚を拒むたび落胆の色を濃くするグレニスに、ミシミシと恋心が軋む。
「……手紙にも、俺を好きだと書いていたじゃないか」
「っだから! グレンが好きだから……」
他の男性と子をなすことなど考えられなくて。
そんなことを言えばさらに不快な顔をされるかもしれない。そう思うと、恐くてそれ以上言葉を続けられない。
「ならなぜ結婚を拒む!? 一度は了承したことだろう!」
「! 了承した覚えなんてないんです! 本当に私、何も……っ」
傷の広がりを抑えるように服の胸元をきつく握りしめ、ぶんぶんと首を振る。
どうしてもグレニスにだけは誤解されたくなくて。私が好きなのも———結婚したいと思うのも、グレニスただ一人なのだと信じてほしくて。
俯きそうになる顔を上げて必死にグレニスを見つめれば———視線の先で苦しげに歪んでいく表情に、ぶちぶちと心のねじ切れる音がした。
いつも堂々として決断力のあるグレニスが、こんな風に何かを躊躇うなんて珍しい。
「あの……?」
「…………そんなに、結婚が嫌か?」
「……」
グレニスの言葉に、すぐには返事をすることができなかった。
だってその言い方ではまるで、私に他の男性との結婚を受け入れてほしいと言っているようではないか。
万が一子どもが出来ていたとき、グレニスの子だと言い出させないためだろうか……。
理由なんてわからないけれど、いくら大好きなグレニスに頼まれようとこれだけは譲れない。
「嫌です」
きっぱりと答えれば、グレニスの眉間のシワがぐっと深まる。
「何もかも捨て、修道院に入ろうと思うほどにか?」
「はい」
「……っはぁ、なぜそこまで……」
グレニスは片手で顔を覆い、ガックリと項垂れた。
私が結婚を拒むたび落胆の色を濃くするグレニスに、ミシミシと恋心が軋む。
「……手紙にも、俺を好きだと書いていたじゃないか」
「っだから! グレンが好きだから……」
他の男性と子をなすことなど考えられなくて。
そんなことを言えばさらに不快な顔をされるかもしれない。そう思うと、恐くてそれ以上言葉を続けられない。
「ならなぜ結婚を拒む!? 一度は了承したことだろう!」
「! 了承した覚えなんてないんです! 本当に私、何も……っ」
傷の広がりを抑えるように服の胸元をきつく握りしめ、ぶんぶんと首を振る。
どうしてもグレニスにだけは誤解されたくなくて。私が好きなのも———結婚したいと思うのも、グレニスただ一人なのだと信じてほしくて。
俯きそうになる顔を上げて必死にグレニスを見つめれば———視線の先で苦しげに歪んでいく表情に、ぶちぶちと心のねじ切れる音がした。
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