219 / 277
51~60話
53b、甘酸っぱい臭い
しおりを挟む
「夕食はもう食べたのか?」
「まられしゅ……」
ここ最近はグレニスが毎日帰宅していると聞いたので、夕食を食べずに待っていることにしたのだ。
「先に食べていていいんだぞ? では夕食を済ませてから、俺の部屋で話をしようか」
「あい……」
グレニスは突き出た唇にもう一度口付けを落とすと、ようやく満足したように私の頬を解放した。
私の実家にいたときとは違い、グレニスはくつろいだ様子で瞬く間に皿を空にしていく。
変に気を遣わずいつも通りの姿でいてくれることが嬉しい。
私も無理に合わせて急ぐことはせずに、自分のペースでのんびりと料理を堪能する。
喫食速度は速いけれど、グレニスは食べる量も多いので、結果的に二人ともほとんど同じタイミングで食事を終えることとなった。
余所見していたことを怒られるのかと覚悟して部屋に行ってみれば、なんのことはない。
この数週間何をして過ごしていたのかだとか、これからここで暮らすうえで何が必要かだとか、本当に『話』をするために呼んだだけのようだ。
「グレンは、もうお城に泊まり込まなくていいんですか?」
ソファに座る、グレニスの膝の上。
逞しい腕に抱きしめられて、肩口に頬をすり寄せながら会話する。
「ああ、追っていた事件は一応の決着を見たからな。後処理などまだまだやることは山積みだが、とりあえず帰宅できる程度には落ち着いた」
「それって……スターシュ伯爵の件……ですよね?」
「そうだ。どこまで聞き及んでいるか知らないが、ユベル=スターシュは麻薬の原料として栽培禁止植物に指定されているカヒを無断栽培。デルマン=モーグがそれを精製、密売していた」
「……」
おおよそ新聞記事に書かれていた通りだ。
「まられしゅ……」
ここ最近はグレニスが毎日帰宅していると聞いたので、夕食を食べずに待っていることにしたのだ。
「先に食べていていいんだぞ? では夕食を済ませてから、俺の部屋で話をしようか」
「あい……」
グレニスは突き出た唇にもう一度口付けを落とすと、ようやく満足したように私の頬を解放した。
私の実家にいたときとは違い、グレニスはくつろいだ様子で瞬く間に皿を空にしていく。
変に気を遣わずいつも通りの姿でいてくれることが嬉しい。
私も無理に合わせて急ぐことはせずに、自分のペースでのんびりと料理を堪能する。
喫食速度は速いけれど、グレニスは食べる量も多いので、結果的に二人ともほとんど同じタイミングで食事を終えることとなった。
余所見していたことを怒られるのかと覚悟して部屋に行ってみれば、なんのことはない。
この数週間何をして過ごしていたのかだとか、これからここで暮らすうえで何が必要かだとか、本当に『話』をするために呼んだだけのようだ。
「グレンは、もうお城に泊まり込まなくていいんですか?」
ソファに座る、グレニスの膝の上。
逞しい腕に抱きしめられて、肩口に頬をすり寄せながら会話する。
「ああ、追っていた事件は一応の決着を見たからな。後処理などまだまだやることは山積みだが、とりあえず帰宅できる程度には落ち着いた」
「それって……スターシュ伯爵の件……ですよね?」
「そうだ。どこまで聞き及んでいるか知らないが、ユベル=スターシュは麻薬の原料として栽培禁止植物に指定されているカヒを無断栽培。デルマン=モーグがそれを精製、密売していた」
「……」
おおよそ新聞記事に書かれていた通りだ。
応援ありがとうございます!
22
お気に入りに追加
1,243
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる