【完結】愛し合って結婚した訳じゃない、レス夫婦の私と彼の事情

福重ゆら

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01. 愛し合ってる訳じゃない、レスな夫婦

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 夫の凪くんは、大学時代の同級生だ。

 研究室が一緒で、朝から明け方まで一緒に研究室にこもることもしばしば。
 ある日、雑談中に私がしていたスーパーのバイトが『シフトも休みも自由で研究と両立しやすい』という話をしたら、凪くんも入ってきて、バイト先まで一緒になった。

 2人とも親元を離れた一人暮らしで、研究のためにバイト時間をどうにか減らしたくて、お互い仕送りとバイト代で賄っていた家賃光熱費の節約のためルームシェアまで始めてしまった。

 とはいえお互い研究室で仮眠を取ることも多かったので、家で一緒に過ごした記憶は少ない。
 家はたまの仮眠をとる場所兼物置き、みたいな感じだった。

 4畳半のワンルームだったのでベッドは1つしか置かなくて、たまたま2人一緒に家にいる時は、2人一緒にそれを使った。
 2人で寝るには狭かったけれど、2人とも研究とバイトに追われてドロドロに疲れていて、ベッドに入るなり睡魔に襲われたから、狭さも気にならなかった。

 そんな生活を、大学3年の終わりから大学院2年まで続けた。
 バイトとルームシェア以外にも、学会や実験のため、国内外問わずあらゆる場所に一緒に出かけたし、私の中で、凪くんは『戦友』という感じだった。

 だから就職して引っ越しする時、引越し先でもルームシェアの継続を申し出された時は驚いた。

「幸いなことに俺とミヤは就職先も近いしさ。……それに、ミヤはもはや俺の半身で、離れることを考えるだけで、身も心も引き裂かれるような気持ちになるんだよ」

「『半身』……」

 ずっと戦友だと思っていたけど、『半身』という言葉はびっくりするほど、私の中の、凪くんという存在にぴったり当てはまった。
 そこにいるのが当たり前で、いなくなると思うと、身も心も引き裂かれるような気持ちになる。

「……確かに、私もそうかも。凪くんが半身みたいになってる」

 そんな訳で、私は凪くんとのルームシェアを継続することにした。
 その後、凪くんと私の関係を、お互い親や周囲への説明が難しくてどうしようかと悩んだ時、『配偶者だと説明するのが楽だから、結婚しよう』と提案された。

 子供の頃は、いつか誰かと好き合って交際して、愛し合って結婚するような気がしていた。
 だけど、既に凪くんという半身を持つ私には、そんな機会はきっと一生訪れないだろうと思った。

 だから私は、凪くんの提案に頷いた。

 こうして、私と凪くんは、『愛し合ってる訳じゃない、セックスレス夫婦』となった。


 ……そこまでは、よかったのだ。


 ◇


 凪くんは、私と結婚する前は、忙しすぎて一次的に性欲がなくなっていたらしい。
 だから、私とルームシェアしようが結婚しようが、性に関する問題は発生しないと思っていたそうだ。
 だけど、凪くんが就職した会社は、働き方改革で朝は9時に始まり、夜は19時に追い出される。

 そんな規則正しくワークライフバランスの取れた生活を続けるうち、ライフに余裕ができた凪くんに、性欲が復活したのだそうだ。


 ◇


 ある日、凪くんが、真っ青な顔で私に言った。

「俺、これ以上ミヤといるの、無理かもしれない」

「え? どうしたの。何かあった?」

「……うん。……俺、セックスが、したいんだ」

「……私、してもいいけど」

 本心だった。
 今まで誰ともしたいと思ったことはなかったけど、凪くんと2人で狭いベッドで寝るのも平気だったぐらいだから、凪くんに触れられる忌避感みたいなものはなかった。

 凪くんは私の半身だ。
 凪くんとするセックスは、自分で自分の身体をマッサージしたりお風呂で身体を洗ったりするみたいなものだろうと思って、私はそう言ったのだけど、凪くんの顔はますます真っ青になった。

「ううん、……出来ないんだ」

「出来ない? 私がそういう対象じゃないってこと?」

「ううん、違う」

「ふぅん。じゃあ、他にセックスしたい子がいるの?」

「ううん、いない」

「じゃあ、身体に何らかの問題があって、セックス出来ないとか?」

「身体は問題ない。けど……、精神に問題がある、んだと思う」

「どういうこと?」

「実は……」

 凪くんはものすごく長い長い沈黙のあと、口を開いた。

「俺、……酷いセックスしか出来ないんだ。……レイプみたいな」
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