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プロローグ 敵同士でありながら惹かれ合った男と女の末路
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トールとナンナは炎に包まれる砦の中にいた。
共に致命傷を負い、身動ぎ一つ出来ないでいる。
炎が2人を襲うのも時間の問題だろう。
トールは後悔と諦念の滲む表情を浮かべた後、ひとつ息を吐いた。
そして、トールは真剣な顔で、ナンナを見つめた。
「ナンナ……オレは、お前に惹かれていた」
「は? 何をバカな。……わたし達は敵同士じゃないか」
「ああ、オレはバカだよな。戦場でお前の姿を見る度、お前が振るう剣に、風に靡く黒髪に、その海のような青い瞳に、ずっと惹かれていたんだ」
「……!」
ナンナは目を見開いた。
トールは自嘲を声に滲ませ、続けた。
「もっとバカなのは、あんな奴らに忠誠を誓って、お前に剣を向けたことだな。……どうせ裏切られるなら、とっととお前を攫って逃げればよかった」
ナンナは呆気に取られたように固まっている。
しかしその後、我に返ると、ナンナはその形の良い唇を開いた。
「……トール。私も……同じ気持ちだった」
「……!」
今度はトールが目を見開く番だった。
ナンナは続ける。
「君を初めて見た時からずっと、君に惹かれていた」
するとトールが、彼にしては珍しい、柔らかな笑みを浮かべて口を開いた。
「……そうか。こんな死に方、馬鹿馬鹿しいと思っていたが。こうやって……愛しい女と一緒に死ねるのは、案外幸せかもしれないな」
「ははっ、確かに。こんな状況じゃなかったら、君にこんなことを伝える機会なんてなかっただろうね。その点で言えば、今の状況に感謝だな」
ナンナは蕩けるような笑顔を浮かべて言った。
トールはそれを見て、幸せそうに笑う。
しかし無情にも、炎は2人に襲いかかろうとしていた。
トールとナンナは真剣な表情で見つめ合う。
「ナンナ、柄にもないことを言うが、……愛している」
「わたしも愛しているよ、トール」
「来世で結ばれよう」
「ああ」
トールは震える手を伸ばす。
ナンナも痛みを堪えながら、手を伸ばした。
2人の手が重なり合う。
ーーーそして、トールとナンナの瞳は、ゆっくりと閉じられていった。
◇◇◇
炎に包まれた砦で2人が命を落とした後。
ーーーナンナは過去の映像を走馬灯のように見ていた。
ナンナの眼前には、ナンナがトールと相対した場面が次々と映し出されていく。
最後に、想いが通じ合った場面を写した後、ナンナの視界は暗くなった。
そして、次に視界が明るくなった時、ナンナは眼下に広がる光景を見ていた。
見慣れぬ部屋で、少し変わった姿になったトールと自分が、他愛の無い口喧嘩をしている。
その時。
ーーーナンナの視界が白く弾けた。
◇◇◇
ーーーナンナが目覚めると、ふかふかのベッドの上にいた。
ベッドの上に座るトールの足の上に、ナンナが四つん這いの状態で覆い被さり、2人は見つめ合っている。
「ナンナ!」
「トール!」
「オレたち、死んだんじゃなかったのか?」
「最期の願いが叶って、生まれ変わったんだろうか?」
ナンナは考える。
生まれ変わったにしては、トールの金色の髪も、薄茶色の瞳も、顔の造形も、死んだ時と変わらなかった。
しかし、服は見慣れないもので、更に傷や汚れは消え去り、トールのトレードマークだった頬の傷も消えていた。
死んだ時より幼くなっているようで、声にはあどけなさが残り、戦場で鍛え上げた筋肉がすっかりなくなり、……かなりほっそりしていた。
トールは言った。
「……天国かもしれないな」
「確かに」
2人で顔を見合わせ、クスクスと笑い合う。
すると、トールがナンナの耳に手を添え、唇が触れるだけのキスをした。
ナンナの心臓が跳ねる。
「ずっと……こうしたかった」
「……わたしも」
ナンナの言葉で、トールの薄茶色の目に獰猛な色が灯り、今度は食べられるようなキスをされる。
ナンナはあまりの幸福感と少しの息苦しさで、思わず口を空けた。
すると、ナンナの唇のわずかな隙間から、トールの舌が差し込まれ、ナンナの歯列をなぞったあと、ナンナの舌を捉える。
ナンナはその気持ちの良さに、自然と舌を絡めてしまった。
その時。
『……ょっとまっ……』
ナンナの頭の中で声が響いたが、ナンナはトールに夢中で気付かなかった。
2人で唇を貪り合う最中、トールの手がナンナのシャツの中に入る。
トールがナンナの腹や背を撫でる手に、ナンナはくすぐったさと期待にビクリと震える。
ーーーその手が、ナンナの胸に触れた時だった。
「ちょおっとまったああああああああああああああああああああ」
ナンナの体は、何者かに乗っ取られた。
共に致命傷を負い、身動ぎ一つ出来ないでいる。
炎が2人を襲うのも時間の問題だろう。
トールは後悔と諦念の滲む表情を浮かべた後、ひとつ息を吐いた。
そして、トールは真剣な顔で、ナンナを見つめた。
「ナンナ……オレは、お前に惹かれていた」
「は? 何をバカな。……わたし達は敵同士じゃないか」
「ああ、オレはバカだよな。戦場でお前の姿を見る度、お前が振るう剣に、風に靡く黒髪に、その海のような青い瞳に、ずっと惹かれていたんだ」
「……!」
ナンナは目を見開いた。
トールは自嘲を声に滲ませ、続けた。
「もっとバカなのは、あんな奴らに忠誠を誓って、お前に剣を向けたことだな。……どうせ裏切られるなら、とっととお前を攫って逃げればよかった」
ナンナは呆気に取られたように固まっている。
しかしその後、我に返ると、ナンナはその形の良い唇を開いた。
「……トール。私も……同じ気持ちだった」
「……!」
今度はトールが目を見開く番だった。
ナンナは続ける。
「君を初めて見た時からずっと、君に惹かれていた」
するとトールが、彼にしては珍しい、柔らかな笑みを浮かべて口を開いた。
「……そうか。こんな死に方、馬鹿馬鹿しいと思っていたが。こうやって……愛しい女と一緒に死ねるのは、案外幸せかもしれないな」
「ははっ、確かに。こんな状況じゃなかったら、君にこんなことを伝える機会なんてなかっただろうね。その点で言えば、今の状況に感謝だな」
ナンナは蕩けるような笑顔を浮かべて言った。
トールはそれを見て、幸せそうに笑う。
しかし無情にも、炎は2人に襲いかかろうとしていた。
トールとナンナは真剣な表情で見つめ合う。
「ナンナ、柄にもないことを言うが、……愛している」
「わたしも愛しているよ、トール」
「来世で結ばれよう」
「ああ」
トールは震える手を伸ばす。
ナンナも痛みを堪えながら、手を伸ばした。
2人の手が重なり合う。
ーーーそして、トールとナンナの瞳は、ゆっくりと閉じられていった。
◇◇◇
炎に包まれた砦で2人が命を落とした後。
ーーーナンナは過去の映像を走馬灯のように見ていた。
ナンナの眼前には、ナンナがトールと相対した場面が次々と映し出されていく。
最後に、想いが通じ合った場面を写した後、ナンナの視界は暗くなった。
そして、次に視界が明るくなった時、ナンナは眼下に広がる光景を見ていた。
見慣れぬ部屋で、少し変わった姿になったトールと自分が、他愛の無い口喧嘩をしている。
その時。
ーーーナンナの視界が白く弾けた。
◇◇◇
ーーーナンナが目覚めると、ふかふかのベッドの上にいた。
ベッドの上に座るトールの足の上に、ナンナが四つん這いの状態で覆い被さり、2人は見つめ合っている。
「ナンナ!」
「トール!」
「オレたち、死んだんじゃなかったのか?」
「最期の願いが叶って、生まれ変わったんだろうか?」
ナンナは考える。
生まれ変わったにしては、トールの金色の髪も、薄茶色の瞳も、顔の造形も、死んだ時と変わらなかった。
しかし、服は見慣れないもので、更に傷や汚れは消え去り、トールのトレードマークだった頬の傷も消えていた。
死んだ時より幼くなっているようで、声にはあどけなさが残り、戦場で鍛え上げた筋肉がすっかりなくなり、……かなりほっそりしていた。
トールは言った。
「……天国かもしれないな」
「確かに」
2人で顔を見合わせ、クスクスと笑い合う。
すると、トールがナンナの耳に手を添え、唇が触れるだけのキスをした。
ナンナの心臓が跳ねる。
「ずっと……こうしたかった」
「……わたしも」
ナンナの言葉で、トールの薄茶色の目に獰猛な色が灯り、今度は食べられるようなキスをされる。
ナンナはあまりの幸福感と少しの息苦しさで、思わず口を空けた。
すると、ナンナの唇のわずかな隙間から、トールの舌が差し込まれ、ナンナの歯列をなぞったあと、ナンナの舌を捉える。
ナンナはその気持ちの良さに、自然と舌を絡めてしまった。
その時。
『……ょっとまっ……』
ナンナの頭の中で声が響いたが、ナンナはトールに夢中で気付かなかった。
2人で唇を貪り合う最中、トールの手がナンナのシャツの中に入る。
トールがナンナの腹や背を撫でる手に、ナンナはくすぐったさと期待にビクリと震える。
ーーーその手が、ナンナの胸に触れた時だった。
「ちょおっとまったああああああああああああああああああああ」
ナンナの体は、何者かに乗っ取られた。
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