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第二筆 龍の過去!
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自信作『男一匹ウルフ大将』の貴重なブクマが剥げた。
この非情かつ残酷な現実に龍は頭を悩ませていた。
一体何が原因なのだ? 話のテンポか、女子率か、それとも全く別の原因か。
ちゃぶ台に置かれたノートパソコン、真っ白な画面は最新話の三十一話目であるが何も書けていない。
パソコンの黒いキーボードでさえ打てないのだ。龍は腕を組みながら白い画面をただただ見つめるのみだった。
「テコ入れしようとは思ったけども……どうすればいい……」
阿久津川龍太郎、齢二十五歳。
もう少しだけ、彼のことを掘り下げてみよう。
彼のWeb小説執筆の始まりは高校生の頃に遡る。
龍が高校生の頃『少年ダイビング』という週刊少年雑誌に『マスターカラテ迅』という作品があった。
霧島迅という空手家が最強を目指し、世界の格闘家達と戦うというありふれた内容である。
当初はリアル格闘技路線で打ち切り寸前の漫画であったが、徐々にサイキッカー同士の超能力バトル格闘漫画へと超展開を見せる。
普通ならこんな展開では打ち切りになってしまうだろう。ところが何故か読者に受けてしまい超人気カルト漫画となってしまった。
キャラクターの独特の体をうねったポーズは『迅立ち』と呼ばれ、今では世界的な人気漫画に成長している。
龍はこのヘンな漫画の大ファンだった。
何しろ、第一話から見続けているので熱狂的なファンである。
「俺は迅の漫画を描くぜ!」
そして、彼は二次創作で迅の漫画を書こうと思い立つが『恐ろしいまでに絵が下手くそ』だった。
びっくりするくらい下手だったのだ。
友人が、龍に犬を描いてみせたが「これってコモドドラゴン?」と言われるほどだ。
然らばどうする、龍よ。
「小説だ……小説を書くしかない!」
画力がなければ小説で二次創作を書けばいい、という逆転の発想だ。
しかし、二次創作は著作権など様々な問題があり投稿サイトには掲載できない。
だが、二次創作OKのサイトが一つだけあった。
それが『セレナーデ』という小説投稿サイトだった。
「うおおおおおっ! ドラゴン投稿ッ!」
龍は最初、おそるおそる作品を投稿した。
何しろ、迅は人気作品だ。キャラや世界観を壊すようなことをしでかしたら、同じファンといえどもフルボッコにされる。
それが二次創作の恐さなのであるが――。
「ひょ、評価されている……」
良い反応が返ってきていた。
迅達、主要キャラや世界観を崩さないよう努力した結果が評価されたのだ。
知らない人達から無言の評価ポイントは龍に自信を与えた。
この段階で、もし読者からクソミソな評価を与えられていたら龍は筆を折っていただろう。
他にも迅の二次創作を執筆したところ、これもまた評価されていた。
しかし、龍はこうも思い始めた。
「俺、オリジナルの作品を評価されたい!」
龍は薄々ながら自覚していた。
この評価は俺の作品ではなく、あくまでも『マスターカラテ迅』の人気であることを。
これがもしオリジナルな物語だったらどうなるか……。
そこで彼は大手小説投稿サイトである『ストーリーギルド』への作品投稿を決めたのだ。
セレナーデはそこそこ読者数はあるが、あくまでも二次創作メインの投稿サイト。
オリジナル作品を評価されるストーリーギルド、略してストギル。
ここなら「俺の作品を出すに相応しい舞台だ」と龍は考え、あわよくば自作がヒットし「書籍化してえ!」という夢を持ったのだ。
ところがどっこいだ!
「どうすればいい! どうすればいいんだ! 俺は!」
龍は激しくキーボードを叩き始めた。
オリジナル作品が全く評価されないのは前話で説明した通り。
「カチッ! カチッ! カチッ! カチッ! カチッ! カチッ!カチッ! カチッ!」
意味不明な擬音をたっぷり発音しながらキーボードを打つ。
打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ。
白い画面には物語の体をなさず、単語が羅列されていく……。
「どうやったら評価されるんだッ! うおーん! うおーん!」
遂には嗚咽して泣き始める龍。
そこには評価されないことにより、モンスターと化そうとしている男がいた。
どうするワナビスト龍、お前は魔物と化すのか。
「ハッ!?」
よかった。
龍の脳はクールで合理的な判断を下した。
彼は冷静に己を省みたのだ。
「そうだ! 俺はランキングトップの作品を読んだことがない!」
龍は己の内観だけを見つめていた。
自己満足に陥っていたのだ。
今思えば自分の作品はどこか『マスターカラテ迅』っぽい作風のものばかり。
異世界ファンタジージャンルに作品を投稿しているが、どうみてもバトルアクションものだ。
適当に「ファンタジーなら受けるだろう」という安易な気持ちで作品を出し続けていた。
「孫子だ! 孫子の兵法だ! 俺は『研究』が足りなかったッ!」
そう、古より孫子の兵法では『敵を知り己を知れば百戦してあやうからず』と説く。
龍はWebの読者がどのような作品を好み、どういう作品がトップにあるか全く研究していなかったのだ。
この非情かつ残酷な現実に龍は頭を悩ませていた。
一体何が原因なのだ? 話のテンポか、女子率か、それとも全く別の原因か。
ちゃぶ台に置かれたノートパソコン、真っ白な画面は最新話の三十一話目であるが何も書けていない。
パソコンの黒いキーボードでさえ打てないのだ。龍は腕を組みながら白い画面をただただ見つめるのみだった。
「テコ入れしようとは思ったけども……どうすればいい……」
阿久津川龍太郎、齢二十五歳。
もう少しだけ、彼のことを掘り下げてみよう。
彼のWeb小説執筆の始まりは高校生の頃に遡る。
龍が高校生の頃『少年ダイビング』という週刊少年雑誌に『マスターカラテ迅』という作品があった。
霧島迅という空手家が最強を目指し、世界の格闘家達と戦うというありふれた内容である。
当初はリアル格闘技路線で打ち切り寸前の漫画であったが、徐々にサイキッカー同士の超能力バトル格闘漫画へと超展開を見せる。
普通ならこんな展開では打ち切りになってしまうだろう。ところが何故か読者に受けてしまい超人気カルト漫画となってしまった。
キャラクターの独特の体をうねったポーズは『迅立ち』と呼ばれ、今では世界的な人気漫画に成長している。
龍はこのヘンな漫画の大ファンだった。
何しろ、第一話から見続けているので熱狂的なファンである。
「俺は迅の漫画を描くぜ!」
そして、彼は二次創作で迅の漫画を書こうと思い立つが『恐ろしいまでに絵が下手くそ』だった。
びっくりするくらい下手だったのだ。
友人が、龍に犬を描いてみせたが「これってコモドドラゴン?」と言われるほどだ。
然らばどうする、龍よ。
「小説だ……小説を書くしかない!」
画力がなければ小説で二次創作を書けばいい、という逆転の発想だ。
しかし、二次創作は著作権など様々な問題があり投稿サイトには掲載できない。
だが、二次創作OKのサイトが一つだけあった。
それが『セレナーデ』という小説投稿サイトだった。
「うおおおおおっ! ドラゴン投稿ッ!」
龍は最初、おそるおそる作品を投稿した。
何しろ、迅は人気作品だ。キャラや世界観を壊すようなことをしでかしたら、同じファンといえどもフルボッコにされる。
それが二次創作の恐さなのであるが――。
「ひょ、評価されている……」
良い反応が返ってきていた。
迅達、主要キャラや世界観を崩さないよう努力した結果が評価されたのだ。
知らない人達から無言の評価ポイントは龍に自信を与えた。
この段階で、もし読者からクソミソな評価を与えられていたら龍は筆を折っていただろう。
他にも迅の二次創作を執筆したところ、これもまた評価されていた。
しかし、龍はこうも思い始めた。
「俺、オリジナルの作品を評価されたい!」
龍は薄々ながら自覚していた。
この評価は俺の作品ではなく、あくまでも『マスターカラテ迅』の人気であることを。
これがもしオリジナルな物語だったらどうなるか……。
そこで彼は大手小説投稿サイトである『ストーリーギルド』への作品投稿を決めたのだ。
セレナーデはそこそこ読者数はあるが、あくまでも二次創作メインの投稿サイト。
オリジナル作品を評価されるストーリーギルド、略してストギル。
ここなら「俺の作品を出すに相応しい舞台だ」と龍は考え、あわよくば自作がヒットし「書籍化してえ!」という夢を持ったのだ。
ところがどっこいだ!
「どうすればいい! どうすればいいんだ! 俺は!」
龍は激しくキーボードを叩き始めた。
オリジナル作品が全く評価されないのは前話で説明した通り。
「カチッ! カチッ! カチッ! カチッ! カチッ! カチッ!カチッ! カチッ!」
意味不明な擬音をたっぷり発音しながらキーボードを打つ。
打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ。
白い画面には物語の体をなさず、単語が羅列されていく……。
「どうやったら評価されるんだッ! うおーん! うおーん!」
遂には嗚咽して泣き始める龍。
そこには評価されないことにより、モンスターと化そうとしている男がいた。
どうするワナビスト龍、お前は魔物と化すのか。
「ハッ!?」
よかった。
龍の脳はクールで合理的な判断を下した。
彼は冷静に己を省みたのだ。
「そうだ! 俺はランキングトップの作品を読んだことがない!」
龍は己の内観だけを見つめていた。
自己満足に陥っていたのだ。
今思えば自分の作品はどこか『マスターカラテ迅』っぽい作風のものばかり。
異世界ファンタジージャンルに作品を投稿しているが、どうみてもバトルアクションものだ。
適当に「ファンタジーなら受けるだろう」という安易な気持ちで作品を出し続けていた。
「孫子だ! 孫子の兵法だ! 俺は『研究』が足りなかったッ!」
そう、古より孫子の兵法では『敵を知り己を知れば百戦してあやうからず』と説く。
龍はWebの読者がどのような作品を好み、どういう作品がトップにあるか全く研究していなかったのだ。
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