ワナビスト龍

理乃碧王

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第十七筆 お前の令嬢はもう死んでいる!

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 渾身の令嬢ものを否定された龍。
 まるぐりっとが何故怒っているのかさっぱりピーマンだった。

「何故だ! 俺の令嬢ものの何がダメだったのだ! タイトル! タグ! 今の俺に死角はないッ!」

 龍は頭を抱えながらメッセージを送信する。

 ギアドラゴン:まるぐりっと様。私はタイトルやタグに「令嬢」「溺愛」「辺境伯」のハッピーセットを入れましたよ。

 まるぐりっと@「塩対応令嬢」書籍化とコミカライズ決定!:そこが問題じゃねえ! お前の令嬢は令嬢じゃない!

 ギアドラゴン:へ?

 まるぐりっと@「塩対応令嬢」書籍化とコミカライズ決定!:タイトルが全然キュンとできねーだろ! ギャグ小説か? これは!

 ギアドラゴン:それはこの小説のことなのでは……。

 まるぐりっと@「塩対応令嬢」書籍化とコミカライズ決定!:メタ発言はいいんだよ! ともかく『お前のセンスは絶望的に古い』!

「うっ!」

 龍の心はグサリと刺された。
 まるぐりっとの言葉は正論だったからだ。
 あのタイトルはどうみてもギャグだ。それに古いプロレスネタが多すぎる。

 でも、この古いプロレスネタが多いのに理由がある。
 龍が極端にまで昭和から平成初期のサブカルが好きなのだ。

 おそらく龍が愛好する『マスターカラテ迅』の連載が昭和61年から始まっていることが起因している。
 漫画内に出てくるネタが古いため、そのネタを調べて知るうちに気に入ってしまった。
 温故知新とはよくいったものだが、龍のセンスが絶望的にオールドファッションだった。
 そんなこんなで、まるぐりっとのダメ出しは続く。

 まるぐりっと@「塩対応令嬢」書籍化とコミカライズ決定!:後、このあらすじ!

 ギアドラゴン:あ、あらすじ?

 ここで諸君、ぷりちぃ☆ドラゴン先生の新作『ライオン令嬢 (略称)』のあらすじを読んでみよう。

――――――

【あらすじ】

 時は異世界! 世界は『社交ダンス』の炎に包まれた!
 リキドーザーン王国に男爵家令嬢「クリスティーナ・ジェリーコ」がいた!
 彼女は金色の長い髪をなびかせ、人々より「ライオン令嬢」と呼ばれる物凄い美人!

 このクリスティーナは公爵家シンジャポンの倅、アントンと婚約を結んだ!
 それは偏に父フナッキや兄のジャド、ゲドの政治的な謀略である!
 所謂一つの政略結婚! でも二人は愛し合っちまった!

 ところがどっこいだ!
 アントンはクリスティーナに婚約破棄を告げた!
 なんと! アントンには実はもう一人婚約者がいたのだ!
 その名は「四次元令嬢、サミラ・シューティング」であった!

 ブック破りの婚約破棄! こいつぁたまげた! セメントだ!
 よしなに、と悲観に暮れるクリスティーナ!
 そこに! ゼブラ柄の貴族服を着た身長209cmの大男が現れた!

 彼の名は「フレッド・バーバリオ」!
 体格に恵まれたフレッドはデカい! 説明不要ッ!
 フレッドは王国内で「ジャイアント辺境伯」と呼ばる貴族だ!

 おっきいことはいいことだ!
 この物語は「明るく、楽しく、激しい恋愛」を極める「溺愛道」である!

 二人の愛は永久に不滅です!

――――――

 まるぐりっと@「塩対応令嬢」書籍化とコミカライズ決定!:出だしのこれはなんだ? 世紀末か? それと「!」←これ使い過ぎ!

 ギアドラゴン:まるぐりっと様も「!」を使い過ぎでは……。

 まるぐりっと@「塩対応令嬢」書籍化とコミカライズ決定!:黙れ! それと辺境伯の身長はなんだ! デカ過ぎろだろ!

 ギアドラゴン:女子は背の高い男子が好きではないのですか。

 まるぐりっと@「塩対応令嬢」書籍化とコミカライズ決定!:お前な、女性がみんな背の高い男性が好きだと思うか?

 ギアドラゴン:…………。

 龍は何も言えなかった。
 それを表すために「…………」の文字を送るしかなかった。

 まるぐりっと@「塩対応令嬢」書籍化とコミカライズ決定!:異世界恋愛ってのは『女性』が読むんだよ! こんなタイトルとあらすじで女性読者がクリックするか? しねーだろ! 読者層を意識して書きやがれ! 商業作家になりたいんだろ!

 至極真っ当なご意見。
 龍が闘魂込めて執筆したライオン令嬢ではあるが、このような内容では誰向けかわからない。
 異世界恋愛を読みたい女性か、それともギャグを読みたい人なのか、または昭和のプロレスが好きな層なのか。

 どちらにせよ、内容が闇鍋のようで読者の多くは食指が働くことはないだろう。
 読むとしたら、ありきたりなテンプレに飽きた人か、とりあえず笑いたい人、昭和のプロレスファンというニッチな層しかいない。
 内容がマニアック過ぎるのだ。

 まるぐりっと@「塩対応令嬢」書籍化とコミカライズ決定!:おめえもマウザと同じ失敗をしているな! 自分が好きなものを書くだけで、読者層を全然絞れてねえ!

 まるぐりっとより、強筆敵ともマウザの名前が出た。
 マウザは異世界令嬢教の信徒となり、教義通りに作品を改稿したため、一気に総合評価ポイントが上昇した。
 それがまるぐりっとの目から見れば、失敗だと言うのだ。

「え?」

 龍の目は点となり、まるぐりっとに尋ねた。

 ギアドラゴン:マウザと同じ失敗?

 まるぐりっと@「塩対応令嬢」書籍化とコミカライズ決定!:あいつの作品を思い出してみな。異世界恋愛なのに、どう考えても『野郎が好みそうなものばかり』だったろ。

 ギアドラゴン:……と言いますのは?

 まるぐりっと@「塩対応令嬢」書籍化とコミカライズ決定!:お前も覚えておけ、異世界恋愛は『女子がキュンキュンする内容』でなければならないんだ。それがどうだい? 主人公が戦うバトルものだったり、エロい男が好みそうなビキニアーマーと――あんな不純物を混ぜ込みやがって! 上等な少女漫画に劇画キャラをぶちまける行為に等しい!

 ギアドラゴン:ポイントが上がったと喜んでましたが……。

 まるぐりっと@「塩対応令嬢」書籍化とコミカライズ決定!:ストーリーの内容はお前と違ってまともだから、そこそこポイントは稼げるだろうよ。でも、中途半端な作品はすぐに頭打ちになるぜ!

 ギアドラゴン:そ、そんな。

 まるぐりっと@「塩対応令嬢」書籍化とコミカライズ決定!:気になるなら、自分の目で見たらどうだい。

 早速、龍はストギル内の検索機能を使用。
 マウザの『戦鬼令嬢 (略称)』は、現在の総合評価は500ポイントを少し越えている。
 龍が教えてもらったときと殆ど変わっていない。

 ギアドラゴン:まるぐりっと様、戦鬼令嬢の総合評価は500ポイント弱でした。これのどこがおかしいのですか。

 まるぐりっと@「塩対応令嬢」書籍化とコミカライズ決定!:更新しているのに、ポイントが全然上がってなかっただろ?

「あッ!」

 そう、マウザの戦鬼令嬢は毎日更新しているがポイントが全然上がっていない。
 まるぐりっとの述べるように『頭打ち』の状態がそこにあった。

 まるぐりっと@「塩対応令嬢」書籍化とコミカライズ決定!:それが半端な作品の答えだ。お前はそうなりかけていたんだよ。

 ギアドラゴン:お、俺はどうすれば……。

 まるぐりっと@「塩対応令嬢」書籍化とコミカライズ決定!:簡単な話さね。ライオン令嬢を消して、新作を書きな。

 ギアドラゴン:そ、それはまさかッ!

 まるぐりっと@「塩対応令嬢」書籍化とコミカライズ決定!:そうさ! 『新作ガチャ』だよ!
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