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エピソード
異世界創造脳腫瘍『彼女のソウゾウシュ』
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正直に言って、医学大学から送られてきた封書にはギョッとした。
しばらく呆然と、B5サイズの書類ならすっぽり入りそうなその大きな封筒を、表にしたり裏にしたりして『間違い』を探して見たりもしたていたけれど……。
やはり何度見ても、プリントアウトされたゴシック体で私の名前が書いてある。
住所も、郵便番号から番地まで正確だった。
近くに同じ名前の人が住んでいて、間違いの荷物が届いた事は今まで一度も無かったはずだ。
とするとやはりこれは、私宛てに届いた封書なのだ。
父の仕事関係の封書と、母のお得意先のお店からのはがきと、市役所から送られてくる重要そうな茶封筒と。あと、携帯の利用明細。
ばっさり積み上げられた郵便物の山の上に場違いな大きな封筒はあまりにも目立つ。
普段は放置したままのこの山に私が目を止めたのは、このクリーム色の大きな封筒があったからだ。
そして案の定それはまるで宿命であるかのように、私宛ての郵便物だったりする。
ならばさっさとその中身を確めてみればいいのに、私はどうやらその封書の中身を見たくないらしい。
嫌な予感がするのだって、実際にはものぐさな気持ちから出たものだろう。
いっそ捨ててしまえばいいかもしれないと、僅かに丸めては見るものの……。
折り曲げて破り捨てる勇気も無く、かといって家にはシュレッダーも無い。
ただゴミ箱に入れるだけでは、きっと家の人に見つかってしまうかもしれない。
そうしたらきっと、もっと面倒な事になるような気がして、そんな風に思うと軽くゴミ箱に投げ入れるる事も出来なくなってしまう。
だからと言って、誰もひっくり返す事の無いような生ゴミ袋の奥にわざわざ書類を突っ込むのもバカバカしく……。
散々どうでもいい逡巡をしてから私はハサミを見つけてきて封書を開けた。
二つに折られた紙を取り出して広げて見て、唐突に合点がいって思わずため息が洩れる。
と同時にやっぱり疑問が浮かび上がって来た。
それにしたって某大学付属病院からこうやって『結果』が送られてくるのは腑に落ちないじゃないか、と。
私が『それ』を見出したのは一体何時の頃だっただろう。
記憶する所子供の頃だったと思う。
だが『それ』が『それ』だと気が付いたのは最近だった。
『それ』があるというのは、子供の頃から朧気には分かっていたが、それが一体何であるのかは分からなかったし、理解しようともしなかった。
理解、する必要性が多分無かった。
理解すれば何か変わるというものではなかったし、理解しなければ受け入れられない程私を悩ませているわけでもない。
多分『それ』は私が意識しなくとも空気を吸って吐いて、呼吸しているのと同じくらい自然に私の中に備わっていて。『それ』があっても無くても、多分私が生きていく上ではさほど意味もなく。
でも『それ』があるから、私はヒマだと思った事がない。
無意識が、何か勝手に何かをやっているのだ。
勝手に?
無意識が?
それは、私の意思には関係なく?
それはきっとありえないのだと気が付いた時私は『それ』が『それ』だと、気が付いたのかもしれない。
何かおかしいと気が付いた時少しだけ怖くなった。
そんなわけで私は自分の内面について、気が付けば貪欲に資料を読み漁っていた。私がおかしいのか、周りもおかしいのか。
ああいや、周りも『おかしい』ならそれはもう『おかしい』とは言わないらしい。
それは、当たり前という結論になる。
一番始めに読み始めたのは多分フロイトだろう。
しかしあまりにも直球過ぎて、私には幾分難しい内容だった。
その後フロイトを例にあげて夢や記憶や脳の事を解説する新書の類を読んで見て、そうやってからもう1度、分からなかった所を読み返して見る。
すると、どうやら私のようなケェスは『夢』の所為ではないらしい。
『それ』は夢とは違う、そう、今ならはっきり言える。
コレは『それ』は、私の脳内の妄想に過ぎない。
正体が知れれば怖くは無い。
大体にして、私にスタンスというものがあるならばきっと、そういう事だ。
どちらかと言えば怖いもの知らずで、怖い状況すら楽しむように心がけている所がある。
私はきっとマイペースで、きっとどうしようもない楽天家だ。
でも、だって仕方が無いじゃない?
物事をマイナスに考えていたって何か良い事があるだろうか?
プラスに考えていた方が人間絶対的に気が楽だと思わない?
そんな事を言うと友人たちは大抵苦笑いを浮かべる。
それが出来れば人間苦労はしないんだそうだ。
ふうん?
プラスに考える事が出来ない、って事?
私にはそれが出来ない事の方がよくわからない。要は気の持ちようって事なのだろうと思っているけどそれは存外難しいという事か。
……私はそういう心構えが出来るほど、気持ちが強いって事だろうか?
いやいや、これの方が益々あやしい。
そんな事は無い、そんな事はないと、私は自分に呪文のように言い聞かせ、自分はきっと世間では並か並以下だと思い込むようにしている。
ただ前向きに、強気に構えるのがプラス思考だとは私は思わない。
きっとプラス思考の楽天家は ずるい のだと思う。
自分の気持ちが落ち込まないように巧妙に、取り繕っている。
だから私は、世間様はもっとスゴいものだと根拠も無く決め付けているし、それに比べて自分は卑しいモノだから、もう下を見下ろす必要も無く上を向いていられると思い込んでいるのだ。
そんなわけで。
『それ』についてしっかりと、他人に相談したのは今回が全く始めてだったりするのだ。
親にも、友達にも、親友にも、日記帳にも、妄想系の匿名掲示板にも。
誰にも明かした事が無い。
子供の頃から気が付いていて特に悩むべき事でもなく、私にとっては極々自然で何も疑問に思う事が無かった事だというのに。
なんでそれを相談する事になったかといえば……。
頭痛だ。
私は、偏頭痛持ちだった。
ただ世の女性はかなりの割合で、慢性的な頭痛に悩まされているものだと聞いた。私もそういう一人だろうと、そうやって思って安心していた。
ところがどっこい。
人生も下り坂、会社の健康診断をフルコース受けなきゃいけない年齢になってしまって、初『人間ドッグ』なるものを体験する事になってしまった。
偏頭痛を除けば私は健康体が売りの一つである。
風邪だって三日で治す。
体型も生まれてこの方ずーっと『普通』をキープしている。血圧は低いほうだが病気と云うほどでもない。
視力が弱いがこれは病気とは違う。たぶん。
保険会社の人が満面の笑みで新商品を進めて来る、そういう健康優良体なのだ。
だが病はドコに潜んでいるかわからないものだ。
僅かでも、血糖値とか足のしびれとか肩こりとか、体から何らかのサインが出ていれば『これは何かおかしい』と気がつける自負はあって、そうったものが特にない。
何も無ければきっと自分は健康なのだと思うだろう。
私は、まさにそういう人だったのだ。
精密検査必要アリ と診断されてよく分からない施設に通されて、写真を撮るのかレントゲンなのか、エコーなのかはっきりしない。
説明はされたはずだけれどもその時は流石に、健康だけが取柄だと思っていたからショックだったりして、大半は反対側の耳から抜けていったように記憶に無い。
大体、大きな病院に来る事自体何年振りだろう。
友達や親兄弟や、親戚のお見舞いに訪れて以来だ。
こんな立派な病院にお世話になった記憶は数えると、小学生の時に足の骨にヒビを入れた時くらいだろう。
弟が貧弱だったから肺炎でしょっちゅう入院していたのを、付き添いをやらされた記憶の方が大きい。
もう日が暮れる。
ドッグは一日じゃ終わらないという話は本当らしい。
しかし何か手違いがあって、わたわたと、もがいている気分がする。
夕方頃にようやく医者の一人と向き会って、状況を説明された事をありありと憶えている。
あの日の夕焼けはやけに明るく綺麗だったと、どこか生々しく思い出せてしまうのだ。
青白いレントゲン写真?だろうか。
始めてナマで見た、おそらくこれは脳の輪切り写真。
しかもどうやらおかしい事は一目瞭然だ。素人目にもはっきり分かる。
もっともっとドキドキしてもよかったのに、なぜだか私は自分で思う程異様に冷めていて、目の前の写真をとても観客的に見ていた。
逃げてるんじゃない。
懸命に、プラスに考えようとして私は自分が、健康体だと信じていた事を思い出す。
でも逃げたりはしない。
「脳腫瘍ですか」
私が言った言葉に少し若そうな、否、若く見えるだけかもしれない脳外科の先生は苦笑した。
「まだ何も言っていないよ」
「でもこの写真、私の頭のものですよね?」
「違う人のものかもしれないだろう」
「管理番号が同じです」
写真の端の方に振られた番号と、先生が机の上に投げている私のカルテの冒頭についている番号が同じなのだ。
見えてしまったのだから仕方が無いだろう。
そして、目ざとく気が付いてしまったのだから。
「鋭いねぇ、君、レントゲン写真見た事あるの?ドラマでとか?」
どこか茶化して言う先生に、
私は、
正直に打ち明ける事にした。
そういう事なのだ。
私の中の腫瘍は私が健康体を自覚するには少々、大きすぎたそうだ。
普通なら多分とっくの昔に……。
死んでる?
もしくは、どこか思いも寄らない所に障害が出て胸を張って健康だとはいえない体になっていた?
でも私は何とも無いのだ。
私の頭の中の丁度真ん中の、少し前部分に野球ボール程もある巨大な脳腫瘍があるなんて、写真に撮ってほらこれが証拠だと突き出されても……。
実感が湧いてこない。
「やっぱりこれ、取らないとまずいんでしょうか」
「うーん、」
唸り声を上げて先生は困ったように無精ひげが残る顎をさする。
「ちょっとスグには結論は出ないなぁ。とりあえずここまで大きくて他に転移も見られないから、……悪性ではないいんだろうけど、はっきりとは言えないね」
人間ドッグの最終日、結局私の『担当医』になってしまった脳外科の先生は、更に困った風に頭を掻いた。
「他に悪い所も特に無いのに手術するのはちょっとなぁ。リスクがあまりにも高すぎるんだ。場所が悪い、脳だ」
「取れない場所なんですか?」
「問題のクレプスを新皮質が覆い隠している、恐らく健全な脳を切り開かないと除去できない。どういったバイパスが掛かっているかはこれから調べるが、無駄な神経を傷つける事になるリスクが高い……手術したから障害が出た、なんて事になったら元も子も無いだろう?」
普通だったら多分ついていけない話だろうけれど、私には自分の腫瘍が頭を切り開いて簡単に取り除く事が出来る場所には無い事を理解できた。
『それ』をいつしか理解しようとして、私は気が付けば精神学やら脳科学やら、それらの本をすっかり読み込んでいたからだ。
それらの事情を先生には正直に打ち明けてあった。
どんな本を読んでいるかも伝えてある。
それを話したら更に困ったように苦笑していたが、一体その苦笑はどういう意味なのかはよく分からない。
「という事は、あとは薬か何かで……」
「そうなるだろうなぁ、とりあえずそこに『それ』がある事を自覚して、注意して日常を送ってもらうしかない。ええと……偏頭痛だけか」
「ああ、はい」
そう言えば、偏頭痛持ちだった。
時たまに、考える事すら出来なくなるほどの頭痛が襲ってくる事がある。ただそれほど困っている事ではないのだ。
思い返せば頭痛も昔からの付き合いで……。
小学生の頃にはすでに時たまに来る頭痛に悩まされていた覚えがある。
ただ、あの頃は生理痛と偏頭痛との区別がつけられなかったから、どうなのかははっきりとは分からない。
市販の頭痛薬を少し飲めば途端に良くなる。
替わりに胃がムカムカするのくらいならどうって事は無い。
頭痛は別に突然襲ってくるわけではないから、ピークになる前に処置してしまえば快適に過ごせるのだ。
だから、
ああ、そういえば確かに偏頭痛持ちだけれども、いつのまにかそれが当たり前の事になっていて、頭が痛くなる事がしごく自然な事のように何の疑問も無く付き合ってきた。
だから先生からそれを改めて言われ酷く、虚を突かれた気分になる。
「病は気から、とも言うし」
少し笑って先生は私をまっすぐ見据えてきた。
多分私が気負って、気丈に振舞っているのだと思っているのだろう。
実際、
多分その通り。
「あまり心配しないでいつも通りに生活する事が大切だね」
そうは言っても。
これだけの証拠をつきつけられてしまったら、一体全体どうやっていつも通りの生活が送れると言うのだろう。
私はもしかしたら明日にも倒れてしまう様な体だという事を自覚してそれで、不安を抱いた日常を送らない様にいつも通り、と言われても……。
普通無理だろうそれは、と思う。
でも先生は、その言葉以外にどんな事を患者に言えばいいというのだろう。
きっと、それが精一杯なのだ。
私はそんな意味を深く汲んで冷静を装う。
病院を出て途端に、洩れるため息。
すっかり『それ』については相手にされていなかった事にはたと、今更気が付く。
ようするに脳腫瘍の事ではなくて……。誰かが、私の中で、私の意思とは多分無関係に繰り広げている妄想の話。
じゃぁやっぱり『それ』はただの私の妄想なんだろう。
心とか記憶というものは酷く曖昧で、はっきりと確実に、相手にその意図を伝える事が上手く出来ない。
いや、
手で触れる事、目で見える事、
あの青白いレントゲン写真でさえ、
それが真実で事実だと、何が一体保証しているというのか。
全てはその私たちの脳が電気信号として受け取っている情報を元に、統計的に『それは有る』と裏づけをしているだけだ。
ともすれば、目に見える全て。
聞こえる声や音も全て。
触れたぬくもりも、冷たさも痛さも心地よさも。
全部、脳の抱く幻想のようにも思える。
だったらどうだ?
私の妄想に過ぎない、いや、妄執にも近い『それ』と云うものは、もしかすると他人と共有出来ていないだけで実は、私にとっては紛れもない事実である可能性だってある。
むしろ、
『それ』の方が、私にはあまりにもはっきりと現実味があって。
今更、これがただの妄想の産物には思えなかったり。
ともすれば一体……現実とは何で、妄想とは何だろう。
夢のようで夢ではない『それ』は妄想なのか、現実なのか。
私はどれが現実だと言い切る自信をすっかり無くしていて、今まで無意識ですらあった『それ』に意識的にコンタクトしてみる。
もし私が勝手に『それ』に干渉できて、『それ』を『変革』させる力があるならば。
『それ』の主人は私だ。
と同時に『それ』は、私の中に自然と備わったものではなくて、私自身が生み出した間違いの無い妄執の産物であろう。
『それ』という妄想は、やはり妄想であってそれ以外の何でもない。
ならば私は『それ』と決別する、努力をしなければいけないのだろう。
なぜならば『それ』は、本来備えてはいけないものだからだ。
こんなものを自ら抱えて、この世界で平凡には暮らしていけない。
『それ』があると知った今、そしてそれが他の人はあまり持ち合わせていないと知った今。
世界という、平均的に均された場所に属するために私は異端を名乗る程強くは無い。
だがしかし、
もし、
『それ』が私の意思には関係なく、勝手に私の中にあるのなら。
その時は、一体どうすればいいのだろう。
『それ』が私の物では無かった場合。
所有権が私に無いのに、私に備わっている場合、
そう、それが……一番恐しい。
そんなふうに思える。
だから私は意識的に『それ』に呼びかけて見るのだ。
そして『それ』が、私の思う通りに動くのか。
それとも、私の意思に関係なくそこにあるのか。
確めに行こう。
真昼間に会社を早上がりすると、なんだかとても後ろめたい気分になる。
別に具合が悪いわけではないけれど、なんだか頭の中が無闇やたらにグチャグチャしていて仕事が手につかない。
そんな精神状態でやっぱり、事ははっきりさせた方がいいのだろうと思い知る。
だからとりあえず急ぎの仕事を終わらせて早退する事にした。
特に今は忙しい時期でも無いし、迷惑は掛からないと算段したのだ。明日から祝日が挟まって連休……。
丁度いい、決着をつけよう。
特に予定も無いから部屋に篭って。
私は台所でグラスに水道水を注ぎ、それをもって自分の部屋へ向う。
常備している、頭痛薬を1錠。
昼ご飯は食べて帰ってきた。飲むならば今だ。
別に頭が痛いわけではないけれど、頭痛薬は大抵眠気を呼ぶ。
すっかり肌寒くなった秋の中場、温い服を脱ぐのに若干の抵抗がある。
グラスを掴み掌の中の白い錠剤を口に放り込み、すぐさま水を飲み干す。
冷たい流れが喉を伝い、途端私は観念して服を脱ぎ、冷たくなっている寝巻きに素早く着替え大またに自分のベッドへ向った。
お風呂にも入らずに、入り込む布団はずいぶんと寒い。
あ、お風呂に入れば良かったんだと布団を被って暫く経ってから気が付いたが、もう起き上がる気力は無かった。
暖かかった体温が奪われていくと眠くなるという。お風呂に入って一時的に体温を上げると安眠しやすいのはその所為だと、何かの本で読んだ。
だけどそう、今まで温くかった体に冷たいパジャマを着込み冷たい布団を被る事で、私の体温はゆっくりと下がりそれがどこか気持ちよく……。
眠くなる。
さあ、ここからだ。
完全に眠ってしまったら『それ』へ、私が干渉できたという記憶事態があやふやになる。
まだ私の意識のあるうちに『それ』へ干渉し『それ』を変革しなければ。
私の頭の中にある、
『それ』は、
言うなれば、ソウゾウシュ。
妄想か、それ以外か、私にはまだ良くわからない。
『それ』は何時の間にか私という意識と同居して、すっかり私の頭の中に居座っている。
でも何も困った事は無かったのに。
『それ』と、気がつくまで。
この妄想が私のものか。
それともアナタのものか。
もし私の物で無いのなら……『それ』は妄想し、創作し、想像する脳腫瘍。
異世界創造脳腫瘍
私の、
私の中のソウゾウシュ。
END & NEXT PARANOIA>
しばらく呆然と、B5サイズの書類ならすっぽり入りそうなその大きな封筒を、表にしたり裏にしたりして『間違い』を探して見たりもしたていたけれど……。
やはり何度見ても、プリントアウトされたゴシック体で私の名前が書いてある。
住所も、郵便番号から番地まで正確だった。
近くに同じ名前の人が住んでいて、間違いの荷物が届いた事は今まで一度も無かったはずだ。
とするとやはりこれは、私宛てに届いた封書なのだ。
父の仕事関係の封書と、母のお得意先のお店からのはがきと、市役所から送られてくる重要そうな茶封筒と。あと、携帯の利用明細。
ばっさり積み上げられた郵便物の山の上に場違いな大きな封筒はあまりにも目立つ。
普段は放置したままのこの山に私が目を止めたのは、このクリーム色の大きな封筒があったからだ。
そして案の定それはまるで宿命であるかのように、私宛ての郵便物だったりする。
ならばさっさとその中身を確めてみればいいのに、私はどうやらその封書の中身を見たくないらしい。
嫌な予感がするのだって、実際にはものぐさな気持ちから出たものだろう。
いっそ捨ててしまえばいいかもしれないと、僅かに丸めては見るものの……。
折り曲げて破り捨てる勇気も無く、かといって家にはシュレッダーも無い。
ただゴミ箱に入れるだけでは、きっと家の人に見つかってしまうかもしれない。
そうしたらきっと、もっと面倒な事になるような気がして、そんな風に思うと軽くゴミ箱に投げ入れるる事も出来なくなってしまう。
だからと言って、誰もひっくり返す事の無いような生ゴミ袋の奥にわざわざ書類を突っ込むのもバカバカしく……。
散々どうでもいい逡巡をしてから私はハサミを見つけてきて封書を開けた。
二つに折られた紙を取り出して広げて見て、唐突に合点がいって思わずため息が洩れる。
と同時にやっぱり疑問が浮かび上がって来た。
それにしたって某大学付属病院からこうやって『結果』が送られてくるのは腑に落ちないじゃないか、と。
私が『それ』を見出したのは一体何時の頃だっただろう。
記憶する所子供の頃だったと思う。
だが『それ』が『それ』だと気が付いたのは最近だった。
『それ』があるというのは、子供の頃から朧気には分かっていたが、それが一体何であるのかは分からなかったし、理解しようともしなかった。
理解、する必要性が多分無かった。
理解すれば何か変わるというものではなかったし、理解しなければ受け入れられない程私を悩ませているわけでもない。
多分『それ』は私が意識しなくとも空気を吸って吐いて、呼吸しているのと同じくらい自然に私の中に備わっていて。『それ』があっても無くても、多分私が生きていく上ではさほど意味もなく。
でも『それ』があるから、私はヒマだと思った事がない。
無意識が、何か勝手に何かをやっているのだ。
勝手に?
無意識が?
それは、私の意思には関係なく?
それはきっとありえないのだと気が付いた時私は『それ』が『それ』だと、気が付いたのかもしれない。
何かおかしいと気が付いた時少しだけ怖くなった。
そんなわけで私は自分の内面について、気が付けば貪欲に資料を読み漁っていた。私がおかしいのか、周りもおかしいのか。
ああいや、周りも『おかしい』ならそれはもう『おかしい』とは言わないらしい。
それは、当たり前という結論になる。
一番始めに読み始めたのは多分フロイトだろう。
しかしあまりにも直球過ぎて、私には幾分難しい内容だった。
その後フロイトを例にあげて夢や記憶や脳の事を解説する新書の類を読んで見て、そうやってからもう1度、分からなかった所を読み返して見る。
すると、どうやら私のようなケェスは『夢』の所為ではないらしい。
『それ』は夢とは違う、そう、今ならはっきり言える。
コレは『それ』は、私の脳内の妄想に過ぎない。
正体が知れれば怖くは無い。
大体にして、私にスタンスというものがあるならばきっと、そういう事だ。
どちらかと言えば怖いもの知らずで、怖い状況すら楽しむように心がけている所がある。
私はきっとマイペースで、きっとどうしようもない楽天家だ。
でも、だって仕方が無いじゃない?
物事をマイナスに考えていたって何か良い事があるだろうか?
プラスに考えていた方が人間絶対的に気が楽だと思わない?
そんな事を言うと友人たちは大抵苦笑いを浮かべる。
それが出来れば人間苦労はしないんだそうだ。
ふうん?
プラスに考える事が出来ない、って事?
私にはそれが出来ない事の方がよくわからない。要は気の持ちようって事なのだろうと思っているけどそれは存外難しいという事か。
……私はそういう心構えが出来るほど、気持ちが強いって事だろうか?
いやいや、これの方が益々あやしい。
そんな事は無い、そんな事はないと、私は自分に呪文のように言い聞かせ、自分はきっと世間では並か並以下だと思い込むようにしている。
ただ前向きに、強気に構えるのがプラス思考だとは私は思わない。
きっとプラス思考の楽天家は ずるい のだと思う。
自分の気持ちが落ち込まないように巧妙に、取り繕っている。
だから私は、世間様はもっとスゴいものだと根拠も無く決め付けているし、それに比べて自分は卑しいモノだから、もう下を見下ろす必要も無く上を向いていられると思い込んでいるのだ。
そんなわけで。
『それ』についてしっかりと、他人に相談したのは今回が全く始めてだったりするのだ。
親にも、友達にも、親友にも、日記帳にも、妄想系の匿名掲示板にも。
誰にも明かした事が無い。
子供の頃から気が付いていて特に悩むべき事でもなく、私にとっては極々自然で何も疑問に思う事が無かった事だというのに。
なんでそれを相談する事になったかといえば……。
頭痛だ。
私は、偏頭痛持ちだった。
ただ世の女性はかなりの割合で、慢性的な頭痛に悩まされているものだと聞いた。私もそういう一人だろうと、そうやって思って安心していた。
ところがどっこい。
人生も下り坂、会社の健康診断をフルコース受けなきゃいけない年齢になってしまって、初『人間ドッグ』なるものを体験する事になってしまった。
偏頭痛を除けば私は健康体が売りの一つである。
風邪だって三日で治す。
体型も生まれてこの方ずーっと『普通』をキープしている。血圧は低いほうだが病気と云うほどでもない。
視力が弱いがこれは病気とは違う。たぶん。
保険会社の人が満面の笑みで新商品を進めて来る、そういう健康優良体なのだ。
だが病はドコに潜んでいるかわからないものだ。
僅かでも、血糖値とか足のしびれとか肩こりとか、体から何らかのサインが出ていれば『これは何かおかしい』と気がつける自負はあって、そうったものが特にない。
何も無ければきっと自分は健康なのだと思うだろう。
私は、まさにそういう人だったのだ。
精密検査必要アリ と診断されてよく分からない施設に通されて、写真を撮るのかレントゲンなのか、エコーなのかはっきりしない。
説明はされたはずだけれどもその時は流石に、健康だけが取柄だと思っていたからショックだったりして、大半は反対側の耳から抜けていったように記憶に無い。
大体、大きな病院に来る事自体何年振りだろう。
友達や親兄弟や、親戚のお見舞いに訪れて以来だ。
こんな立派な病院にお世話になった記憶は数えると、小学生の時に足の骨にヒビを入れた時くらいだろう。
弟が貧弱だったから肺炎でしょっちゅう入院していたのを、付き添いをやらされた記憶の方が大きい。
もう日が暮れる。
ドッグは一日じゃ終わらないという話は本当らしい。
しかし何か手違いがあって、わたわたと、もがいている気分がする。
夕方頃にようやく医者の一人と向き会って、状況を説明された事をありありと憶えている。
あの日の夕焼けはやけに明るく綺麗だったと、どこか生々しく思い出せてしまうのだ。
青白いレントゲン写真?だろうか。
始めてナマで見た、おそらくこれは脳の輪切り写真。
しかもどうやらおかしい事は一目瞭然だ。素人目にもはっきり分かる。
もっともっとドキドキしてもよかったのに、なぜだか私は自分で思う程異様に冷めていて、目の前の写真をとても観客的に見ていた。
逃げてるんじゃない。
懸命に、プラスに考えようとして私は自分が、健康体だと信じていた事を思い出す。
でも逃げたりはしない。
「脳腫瘍ですか」
私が言った言葉に少し若そうな、否、若く見えるだけかもしれない脳外科の先生は苦笑した。
「まだ何も言っていないよ」
「でもこの写真、私の頭のものですよね?」
「違う人のものかもしれないだろう」
「管理番号が同じです」
写真の端の方に振られた番号と、先生が机の上に投げている私のカルテの冒頭についている番号が同じなのだ。
見えてしまったのだから仕方が無いだろう。
そして、目ざとく気が付いてしまったのだから。
「鋭いねぇ、君、レントゲン写真見た事あるの?ドラマでとか?」
どこか茶化して言う先生に、
私は、
正直に打ち明ける事にした。
そういう事なのだ。
私の中の腫瘍は私が健康体を自覚するには少々、大きすぎたそうだ。
普通なら多分とっくの昔に……。
死んでる?
もしくは、どこか思いも寄らない所に障害が出て胸を張って健康だとはいえない体になっていた?
でも私は何とも無いのだ。
私の頭の中の丁度真ん中の、少し前部分に野球ボール程もある巨大な脳腫瘍があるなんて、写真に撮ってほらこれが証拠だと突き出されても……。
実感が湧いてこない。
「やっぱりこれ、取らないとまずいんでしょうか」
「うーん、」
唸り声を上げて先生は困ったように無精ひげが残る顎をさする。
「ちょっとスグには結論は出ないなぁ。とりあえずここまで大きくて他に転移も見られないから、……悪性ではないいんだろうけど、はっきりとは言えないね」
人間ドッグの最終日、結局私の『担当医』になってしまった脳外科の先生は、更に困った風に頭を掻いた。
「他に悪い所も特に無いのに手術するのはちょっとなぁ。リスクがあまりにも高すぎるんだ。場所が悪い、脳だ」
「取れない場所なんですか?」
「問題のクレプスを新皮質が覆い隠している、恐らく健全な脳を切り開かないと除去できない。どういったバイパスが掛かっているかはこれから調べるが、無駄な神経を傷つける事になるリスクが高い……手術したから障害が出た、なんて事になったら元も子も無いだろう?」
普通だったら多分ついていけない話だろうけれど、私には自分の腫瘍が頭を切り開いて簡単に取り除く事が出来る場所には無い事を理解できた。
『それ』をいつしか理解しようとして、私は気が付けば精神学やら脳科学やら、それらの本をすっかり読み込んでいたからだ。
それらの事情を先生には正直に打ち明けてあった。
どんな本を読んでいるかも伝えてある。
それを話したら更に困ったように苦笑していたが、一体その苦笑はどういう意味なのかはよく分からない。
「という事は、あとは薬か何かで……」
「そうなるだろうなぁ、とりあえずそこに『それ』がある事を自覚して、注意して日常を送ってもらうしかない。ええと……偏頭痛だけか」
「ああ、はい」
そう言えば、偏頭痛持ちだった。
時たまに、考える事すら出来なくなるほどの頭痛が襲ってくる事がある。ただそれほど困っている事ではないのだ。
思い返せば頭痛も昔からの付き合いで……。
小学生の頃にはすでに時たまに来る頭痛に悩まされていた覚えがある。
ただ、あの頃は生理痛と偏頭痛との区別がつけられなかったから、どうなのかははっきりとは分からない。
市販の頭痛薬を少し飲めば途端に良くなる。
替わりに胃がムカムカするのくらいならどうって事は無い。
頭痛は別に突然襲ってくるわけではないから、ピークになる前に処置してしまえば快適に過ごせるのだ。
だから、
ああ、そういえば確かに偏頭痛持ちだけれども、いつのまにかそれが当たり前の事になっていて、頭が痛くなる事がしごく自然な事のように何の疑問も無く付き合ってきた。
だから先生からそれを改めて言われ酷く、虚を突かれた気分になる。
「病は気から、とも言うし」
少し笑って先生は私をまっすぐ見据えてきた。
多分私が気負って、気丈に振舞っているのだと思っているのだろう。
実際、
多分その通り。
「あまり心配しないでいつも通りに生活する事が大切だね」
そうは言っても。
これだけの証拠をつきつけられてしまったら、一体全体どうやっていつも通りの生活が送れると言うのだろう。
私はもしかしたら明日にも倒れてしまう様な体だという事を自覚してそれで、不安を抱いた日常を送らない様にいつも通り、と言われても……。
普通無理だろうそれは、と思う。
でも先生は、その言葉以外にどんな事を患者に言えばいいというのだろう。
きっと、それが精一杯なのだ。
私はそんな意味を深く汲んで冷静を装う。
病院を出て途端に、洩れるため息。
すっかり『それ』については相手にされていなかった事にはたと、今更気が付く。
ようするに脳腫瘍の事ではなくて……。誰かが、私の中で、私の意思とは多分無関係に繰り広げている妄想の話。
じゃぁやっぱり『それ』はただの私の妄想なんだろう。
心とか記憶というものは酷く曖昧で、はっきりと確実に、相手にその意図を伝える事が上手く出来ない。
いや、
手で触れる事、目で見える事、
あの青白いレントゲン写真でさえ、
それが真実で事実だと、何が一体保証しているというのか。
全てはその私たちの脳が電気信号として受け取っている情報を元に、統計的に『それは有る』と裏づけをしているだけだ。
ともすれば、目に見える全て。
聞こえる声や音も全て。
触れたぬくもりも、冷たさも痛さも心地よさも。
全部、脳の抱く幻想のようにも思える。
だったらどうだ?
私の妄想に過ぎない、いや、妄執にも近い『それ』と云うものは、もしかすると他人と共有出来ていないだけで実は、私にとっては紛れもない事実である可能性だってある。
むしろ、
『それ』の方が、私にはあまりにもはっきりと現実味があって。
今更、これがただの妄想の産物には思えなかったり。
ともすれば一体……現実とは何で、妄想とは何だろう。
夢のようで夢ではない『それ』は妄想なのか、現実なのか。
私はどれが現実だと言い切る自信をすっかり無くしていて、今まで無意識ですらあった『それ』に意識的にコンタクトしてみる。
もし私が勝手に『それ』に干渉できて、『それ』を『変革』させる力があるならば。
『それ』の主人は私だ。
と同時に『それ』は、私の中に自然と備わったものではなくて、私自身が生み出した間違いの無い妄執の産物であろう。
『それ』という妄想は、やはり妄想であってそれ以外の何でもない。
ならば私は『それ』と決別する、努力をしなければいけないのだろう。
なぜならば『それ』は、本来備えてはいけないものだからだ。
こんなものを自ら抱えて、この世界で平凡には暮らしていけない。
『それ』があると知った今、そしてそれが他の人はあまり持ち合わせていないと知った今。
世界という、平均的に均された場所に属するために私は異端を名乗る程強くは無い。
だがしかし、
もし、
『それ』が私の意思には関係なく、勝手に私の中にあるのなら。
その時は、一体どうすればいいのだろう。
『それ』が私の物では無かった場合。
所有権が私に無いのに、私に備わっている場合、
そう、それが……一番恐しい。
そんなふうに思える。
だから私は意識的に『それ』に呼びかけて見るのだ。
そして『それ』が、私の思う通りに動くのか。
それとも、私の意思に関係なくそこにあるのか。
確めに行こう。
真昼間に会社を早上がりすると、なんだかとても後ろめたい気分になる。
別に具合が悪いわけではないけれど、なんだか頭の中が無闇やたらにグチャグチャしていて仕事が手につかない。
そんな精神状態でやっぱり、事ははっきりさせた方がいいのだろうと思い知る。
だからとりあえず急ぎの仕事を終わらせて早退する事にした。
特に今は忙しい時期でも無いし、迷惑は掛からないと算段したのだ。明日から祝日が挟まって連休……。
丁度いい、決着をつけよう。
特に予定も無いから部屋に篭って。
私は台所でグラスに水道水を注ぎ、それをもって自分の部屋へ向う。
常備している、頭痛薬を1錠。
昼ご飯は食べて帰ってきた。飲むならば今だ。
別に頭が痛いわけではないけれど、頭痛薬は大抵眠気を呼ぶ。
すっかり肌寒くなった秋の中場、温い服を脱ぐのに若干の抵抗がある。
グラスを掴み掌の中の白い錠剤を口に放り込み、すぐさま水を飲み干す。
冷たい流れが喉を伝い、途端私は観念して服を脱ぎ、冷たくなっている寝巻きに素早く着替え大またに自分のベッドへ向った。
お風呂にも入らずに、入り込む布団はずいぶんと寒い。
あ、お風呂に入れば良かったんだと布団を被って暫く経ってから気が付いたが、もう起き上がる気力は無かった。
暖かかった体温が奪われていくと眠くなるという。お風呂に入って一時的に体温を上げると安眠しやすいのはその所為だと、何かの本で読んだ。
だけどそう、今まで温くかった体に冷たいパジャマを着込み冷たい布団を被る事で、私の体温はゆっくりと下がりそれがどこか気持ちよく……。
眠くなる。
さあ、ここからだ。
完全に眠ってしまったら『それ』へ、私が干渉できたという記憶事態があやふやになる。
まだ私の意識のあるうちに『それ』へ干渉し『それ』を変革しなければ。
私の頭の中にある、
『それ』は、
言うなれば、ソウゾウシュ。
妄想か、それ以外か、私にはまだ良くわからない。
『それ』は何時の間にか私という意識と同居して、すっかり私の頭の中に居座っている。
でも何も困った事は無かったのに。
『それ』と、気がつくまで。
この妄想が私のものか。
それともアナタのものか。
もし私の物で無いのなら……『それ』は妄想し、創作し、想像する脳腫瘍。
異世界創造脳腫瘍
私の、
私の中のソウゾウシュ。
END & NEXT PARANOIA>
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