異世界創造NOSYUYO トビラ

RHone

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3章  トビラの夢   『ゲームオーバーにはまだ早い』

書の4前半 スウィート 『この病、○年来の大流行みたいです』

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■書の4前半■ スウィート sweet

 何やら難しい事を考えた罰だろうか?

 いやお前、神なんか居ねぇって言った癖に罰って何だよ。罰ってのはどこに居るとも知れない、神さんが俺らに与えたもうモノだろうが。それともあれか?神なんか居ないに決まってるじゃん、などと俺が内心思った事にこの世界においては実はいらっしゃったりした『神様』って奴が腹を立てたとか。

 ……あ、頭が痛い……。

 こういう時、人は何故か神様の事をちょっと信じるのだな……。
 夕暮れ時にシーミリオン国の一番南端の町……レッドが言うには、ほとんどファマメント国属扱いだというスウィートという町に入る事が出来た俺達。
 とりあえず、久し振りに地に足ついての休息だ。今まで船に乗りっぱなしだったからな。

 宿屋を探してゆっくり休み、明日から具体的な行動を開始しようとか決めて、石造りの建物が並ぶ町の中心地を目指した。

 所が、なんか俺、具合が悪くなってきた。
 よくわからねぇが頭が締め付けられるような痛みが、ジクジクと段々強くなってきやがるんだよ。
 動けなくなる程ではないんだが……。疲れてるのかもなぁ、さっさと布団被ってセーブしちまいたい気分だ。

 町の営みを知らせる、煙突から立ち昇る筋がいくつもいくつも見える。
「にしては、煙突多すぎじゃない?」
 アベルが空へ伸びる多くの煙突を見上げている。
「理由はこれです」
 レッドはそう言って白い煙が吹き出している水路を指差した。近づいてみると……つんと、風に乗って硫黄のにおい……ま、まさかッ!
「スウィートは温泉観光地なんだ。おかげで独自の保護条約をいくつか他国のお得意様皇族なんかと交わしていてね、ファマメント国も迂闊に手を出せない町になってる」
 スウィートからそんなに離れていない場所に、西方大国ファマメントの北町ヘルトがある。
 シーミリオン国との国交が各国途絶えて久しく、一体何をしているのか分からない野放し状態なのにスウィートが今だにシーミリオン国属であるという現状は……ちょっと考えるとおかしいもんな。
 成る程温泉という素敵な特性を生かし、スウィートは独自に自分の町を守る対策を敷いてたわけか。
「という事は、当然あたし達も温泉を堪能できるってわけですね!」
 アインの嬉しそうな声に、俺は思わず苦笑い。

 わー、早くも温泉イベントが発生しましたよどうしましょう。

 しかし俺、頭が痛いのもあってテンションが上がらない。いつもなら我ながらアホかと思うくらいに逞しく想像力が働くんだが……。混浴か?とか、露天風呂はアリか?とか、覗きはやっぱり男のロマンだよなぁ、とか。

 ……十分だとか言うな。

 で、大型露天風呂完備百パーセント源泉掛け流しを謳う、ご立派な宿に俺達は泊まる事を決めた。
 いや何、今ん所金欠パーティじゃねぇからな。それに、観光にゃぁシーズンとかいうのがあるらしくて現在は町全体が休閑中なんだそうだ。当然だが、北の地の果てであるこんな所に冒険者が来る事なんか稀だ。
 そんなわけで俺達は、結構イイ宿屋に割と格安で泊めてもらえる事になった。


 服を脱ぎ寒い空気に生肌がさらされて、俺の頭痛は治るどころか酷くなる一方である。しかし弱音を吐いて具合が悪いなどと訴えるのは、男の子である俺には出来ない相談だ。どーせ寝て明日起きた頃には、こんな頭痛の一つや二つ治ってるに決まってるんだしな。
 ましてや温泉イベントだぞ……無視出来ねぇだろ、やっぱり。なぁ?
 風邪を引いたらお風呂には入らず、すぐに寝なさい。などという、定番的なママンからのアドバイスが脳裏にチラ付いたが……反対側でパパンが囁いているんだ。

 お前、温泉だぞ?男のロマンを堪能しないでどうするんだ!
 ……俺の脳内パパはなかなかのナイスガイだぜ。

 ぶえっくしょい。

「風邪か?」
「ち、違うわい!」
 俺は脳内ボケ突っ込みに連動していたテリーの言葉にどっきりして素早く反論していた。
 布一枚腰につけたテリーはさすが拳闘士だけあり、引き締まった肉体は男の俺から見ても惚れ惚れする。と、比較するように自分の腹を見てしまったのだがこれが意外にも割れていた。結構な筋肉である……ううむ、我ながらちょっとびっくり。
 鏡が無いから分からないが、戦士な肩書きである俺もそれなりにマッチョマンなのかもしれない。
 いまいちそれらに違和感を感じ無いのはゲームの仕様で、そのように俺の脳味噌が騙されているからだろうな。
 と、どうやらテリーは俺と同じような事を考えていたらしく、ふいと俺の布腰巻きを見下ろして聞いて来た。
「やっぱ、違うのか?」
 奴が何を見ているのか、俺には分かる。男だからな!
「え?違うのかよ!」

 何が『違う』のかはお察しください。

「いや、……同じだった」
「脅かすなよ……」
 息子のサイズまで設定可能だったらどうよ?そんな所まで心配して設定変更出来たら、このゲームもうRPGじゃねぇよ。

 さすが観光地。
 夜の露天風呂は見事なまでのライトアップが施されていた。青白い光の元を眺めるとガス灯が立っているな。レッド曰く、温泉地に湧き出す天然ガスを利用したものだという事だ。フツーは見えない方が色々と良いのだろうが、ロマンを追い求めるにはある程度、明るい方がいいよなッ。
 うむ、グッジョヴ温泉郷!寒さに身を竦めて風呂場へ向かうと、騒がしい、聞きなれつつある声が耳に付く。
「こらッ暴れるな!」
「いやん、そんな所掴まないでぇん」
「あ、ごめん」
 ばさばさ、バチャバチャ、嬌声と水が撥ねる音が聞こえてくる。積み上げられた岩と竹みたいなもので組まれた垣根の向こうが女風呂、しかもこちらと同じく露天であるのは間違いなさそうだ。

 しかし、何を暴れてるんだ?アインは。

「ヤトー?」
 と、声が掛かって俺は驚きつつも、何も後ろめたい事は無い、無いはずだと自分に言い聞かせて返事をした。
「何だー?」
「そっちにレッドいる?」
 俺はそう言われて周りを見渡した。あたりは湯気に包まれていて見通しは利かない。その間にもう一度クシャミ。
「さっさと湯船に浸かったらどうです?」
 と、静かな水音を立ててすでに湯に浸かっていたレッドがこっちに近づいて来る。居ないと思ったら、先に入ってたのかよ。その声が聞こえたようでアベルの言葉はそこで途絶えたな。
「アベル、そっちも客いねぇのー?」
 見渡してみたが、俺達のほかに露天風呂を使ってる奴の気配が無い。
「オフシーズンだとかで安くして貰った位だし、あたし達だけなんじゃないかい?」
 というマツナギの声がするから、あっちも彼女等だけなのだろう。俺はレッドに言われてさっさと湯船に浸かる事にした。マナーとして先に体を洗え?いやまぁ、最低限はちゃんと掛け湯してますから。
 体洗うっていうのはな、冒険者にとってある意味覚悟が必要なんだ。普段風呂には入れない生活が続くから中途半端に体を擦る様な真似はすべきでは無い。最低限の汚れを洗い流したのち静かに湯船につかる、それがこの世界におけるマナーだと思え。そもそも、石鹸とかも満足に常備している世界ではないのだぞ?
 ……女性陣は、よくわからんがな。

 お湯の温度は……実に丁度いい。白い濁り湯で、若干匂いがあるが慣れると何て事は無い。座り込むと自然とため息が洩れた。
 心なしか頭痛が収まった気がして足を伸ばす。
「僕に何か用ですか?」
 アベルから呼ばれた事を気にしてか、レッドが女湯に向けて少し声を張り上げた。人が他に居ないなら構わねぇよな。
「あのさー、ドラゴンって性別何なのー?」
 というアベルの問いかけに、俺とレッドは思わず顔を見合わせる。
 それはつまり小竜アインの性別はどっちだと、聞いていると云う事だろう。
 と、ひょこんと垣根の上から覗く赤い爬虫類の顔。
「こらーッ!覗くなー!」
 と、アベルが喚いているが、いやそれは……使いどころが微妙。

 覗かれてるのは俺達の方なんだが。

 しかし『彼女』が『リアル』な状態で覗いてきたら思わずテンションも上がるってもんだがこっちの世界だと爬虫類……失敬、小さなドラゴンだからな。何とも無く、俺達は彼女を見上げてつい手を上げて彼女に挨拶。……彼女だよな……?
「何だよアイン、それで俺達を牽制したつもりか?」
 テリーが長い髪を頭の上に結びなおしつつ、笑いながら靄の中から現れる。
「なんだ、ヤトがあっちを覗いてたんじゃないんだ」
 ナッツのそっけない言葉に、俺は一瞬思考がフリーズ。
「ど、どうして俺があっちを覗かにゃならんのですか?」
 ナッツさん、いつから俺をそんなキャラとして見ているんでしょうか!?
「ドラゴンの種類にもよりますが基本的には性別はありますよ」
 などと俺の事など無視して言ってレッドは顎に手をやって答えた。
「カルケード南方のドラゴンという事は……アインさんは何歳になります?」
 垣根の上で羽をばたつかせ、アインは答えた。
「今年で10歳だよー……にゃッ!」
 と、姿が引っ込む。尻尾でも引っ張られて、引き摺り下ろされたのだろう。
「尻尾は掴まないでって言ったでしょーッ」
「お黙りッ!あんたはまたそうやって……」
 何やらアベルのお小言が聞こえたが、水の撥ねる音でよく聞こえなくなった。そんな声を聞きつつ、テリーとナッツが静々とお湯に浸かる。あ、羽も湯船に付けても問題無いらしい。髪の毛と同じく後で手入すれば問題無いのとの事。また、リアルにおける銭湯や温泉の基本ルール、タオルをお湯に入れてはいけない問題とかもこっちでは特に存在しない。それと同時に、どうやって衛生を保っているのかは追及すべき問題じゃねぇって事な……。
「あのタイプのドラゴンだと、性別は無いかもしれませんね……」
 レッドは神妙な顔で空を見上げた。俺もつられて天を見上げたが湯気で曇ってて星が見える筈の空は群青色の天井になっているだけだった。
「爬虫類に近いわけだ、環境によっては性転換もするらしいよね」
「……」
 レッドは上げていた顔を下ろし、少し考えてからナッツに返した。
「ですが、中身はアインさんですからねぇ」
「はは……そうだった」
 ナッツは何時もの苦笑をしつつお湯を手でかき回す。突然、テリーは垣根の向こうに聞こえるよう大声で叫ぶ。
「今度覗いたら、スケベってお湯ぶッかけてやるからな!」
「酷いー!あたしとテリーの仲でしょー?」
「どんな仲だッ!」
 んー、なんだろうなぁアインさん、なんかテンション高いなぁ。

 しかし、女風呂から覗かれるとは思もわなんだ。セオリー無視がツボに入る俺としてはなかなかオツな展開だったぞ。そうだよな、もしかすると異性の裸を覗きたいという欲求があるのは、何も男性だけだとは限らんよな。
 はっはっは、覗きたいのなら覗くがいい!
 と、言ってやりたい所だが、それはそれでスケベ・変態扱いされる気がするので止めておく。



 のぼせたのか?違うな、明らかに頭痛がさっきより酷くなった。

 流石に男の子としての意地を突き通せなくなって来て、俺はたまらずベッドに倒れ込んでいた。これでイシュタル国みたいに畳にお布団だったら、まるで旅館だなぁという気持ちになっただろうが、露天風呂を出ればやはり異世界だ。
 普通に洋ベッド。靴履きっぱなし。いや、今は宿備えのサンダル的なの履いてるけど。
 ベッドに倒れこみ動かない俺、てゆーか……動きたくない俺。
「のぼせたのか?」
 やはりお決まりにテリーが聞いてくるが、それにも返答出来ない状態だ……。部屋に戻ってくる間もなんか千鳥足になりそうな所、根性で歩いてきたもんな、俺。頭が痛いし、視界が狭いし、方向感覚も怪しくなってきた。

 具合が悪い、具合が悪いんだよ。お願い、察して。

 と、何か尋常じゃ無い音がして俺は、ゆっくり首だけ回す。ベッドに横になった頭から見える倒れた視界の奥で、倒れかかって壁に手をついて踏ん張っているレッドの姿が見えた。
「テリー……僕等も、何か……体調が……」
 その背後からやはり壁を這って部屋まで辿りついたナッツは、明らかに蒼白い顔をしている。俺を含め三人がダウンした状況に、テリーは驚いて思わず部屋を見回してた。
「おいおいまさか、感染症じゃぁねぇだろうな?」
 メシはこれからだから食中毒じゃねぇぞ?リアルでたまに騒がれている、レジオネラ菌にでも集団感染した状態だってのか?しかし俺は、じくじく痛む頭で冷静に考えた。
 違う、こっちの世界にレジオネラ菌とかがいるかどうかは分からないが、この症状は風呂の所為じゃない。
 だって俺は街に入る前から具合が悪かった。
 倒れてしまってその場から動けない、レッドやナッツをベッドの所まで運んでいるテリー。同じように世話になるわけにはいかねぇと、俺はなんとか自力でサンダルを脱ぎ布団に攀じ登る。
 横になると若干楽だ。繰り返す頭痛に目を閉じて息を潜めていれば、ふいと額に触れる手に驚いて目を開ける。
「お前もか、熱があるぞ」
「隣……アベル達は?」
「……わかんねぇ、様子見てくるわ」
 気をつけろと、俺は素早く部屋を出ていったテリーを見送る。

 一体どうしてこんな事になってしまったのか原因はさっぱり分からないが、テリーだっていつまでも無事だとは限らないだろう。

「どうしたんだよ一体、いつから具合が悪かったんだ?」
 俺は隣のベッドに視線だけ向ける。翼があるから寝る時は常にうつ伏せのナッツは、横に向けた顔が向こうを向いていて……こっちに振り向く気配が無い。
 彼が激しく荒い息を繰り返している事に気が付き、俺は血の気が失せてきた。

 やべぇナッツの奴、俺より圧倒的に具合が悪そうだ。聞こえてくる呼吸音が何かおかしいよお前!

 そう思ったらいても立っても居られなくなって、俺は起き上がっていた。
 確かに具合は悪いが、俺は立てない程じゃぁ無い。ナッツ向こうのにあるベッドではレッドが顔を顰めて横になっている。
「レッド、お前は何時から具合が悪くなった?」
「……分かりません、風呂から上がった後からです、若干逆上せたかな……と思っていた程度なのですが突然、息が出来なくなる様な呼吸困難に襲われまして……」
 倒れた、ってのか。
「ダメだ、奴等もダウンしてやがる」
 テリーが慌てて戻ってきた。しかし、その後にマツナギが続いて来た。
「特にアベルの様子が酷いんだ……突然激しい動悸を起こして、」
 と、マツナギはナッツの様子を見て、まさにこんな感じだと蒼白な顔で黙り込む。
「何か分からんが、俺と彼女は何とも無いみたいだな」
「そんなん、わからねぇだろ?」
 俺はナッツのベッドに寄り掛かりつつ、乱れそうになる呼吸を懸命に整える。
「だからって黙ってても症状が良くなる訳じゃぁねぇだろうが。ナギ、アベルとアインもこっちの部屋に運ぼう。俺は医者ぁ探してくる、待っててくれるか?」
「ああ、わかった」
「おいヤト、てめぇ、大人しく横になってろ」
 テリーは俺にそう言い捨てて再び慌てて部屋を出て行った。確かに立ってるのが精一杯の状況じゃぁ足を引っ張るだけかもな。俺は素直に自分のベッドに戻り、そこに腰を下ろす。
 ジクジク痛む頭を抑え、俯いた。

 くそ、なんでこんな苦しい目に合わなきゃ行けねぇんだ。そういやこれ『ゲーム』とはいえ怪我すりゃ血が出るし、相当に痛いんだよな……という事を嫌が応にも思い出す。
 なんでそんなにリアルにする必要があるんだと思う反面、いやそうじゃなきゃダメだろうという気持ちもある。
 痛みはそのまま死や、自身の体調不調へ直接結びついている。逆に言えば、何度刺しても切りつけても死なない体であるなら、痛みなんか無くったってもいいはずだと、俺は思う。最初はあったとしてもその内に無意味なものとして、肉体の方で切り捨てて行くだろうと思うんだ。

 『これ』が、痛みを感じないゲームだったらどうなるか。

 当然、相手の痛みを感じる事の出来ない『キャラクター』が誕生しちまうんじゃねぇかな。
 死を恐れない、むちゃくちゃな『キャラクター』つまりはアイコン……そういう非現実なプレイヤーばっかりが蔓延る世界に成りかねない。
 死んだってどうせまたやり直せるとか、安易に考えるようになっちまうに違いないんだ。しかし世界がリアルであればある程、そうであってはいけないのだと俺は思うのだ。

 世界がリアルな中で、死だけがバーチャルである事は許されない。
 ゲームの中で死をバーチャルと考えるには、ゲーム自体がどこまでもバーチャルでなければいけない。

 そして、だからこそゲームはどこまでも、どんなに表現力が豊かになりリアルに混同されそうになっても、バーチャルである事から抜け出す事はできなかったんだ。
 しかし今俺達がやってるゲームは、今まで俺達が取り違えてきた仮想と現実の境を一気に吹き飛ばすまでのリアルを目の前に突きつけてきている。これはもうバーチャルだと一言で片付ける事の出来ない領域だ。というよりも『俺』が完全に仮想の中に入り込んでいる以上『俺』という存在も仮想だ。
 全ては現実的であるが故に、このゲームの中に仮想という物事は一つも無い。そしてそれは、逆転させても全く同じ意味になるわけだ。

 全ては仮想的であるが故に、このゲームの中に現実という物事は一つも無い、と。

 仮想と現実、その境がはっきりとしている時には、二つを掛け橋する経験に痛みはいらない。
 だが境界がわからないこの世界では……痛みも、苦しみも、より現実的に受け入れなければいけないのだと思う。

 ぶっちゃけちまえば。苦しみは『いらないもの』ではないって事だ。

 ゲームであるから娯楽性が高くなきゃいけない。娯楽の中に苦しみはいらないという考え方は近代的だよな。だが楽な事だけを追及し、苦悩を不要として斬り捨てられたゲームははっきり言って退屈なだけだ。
 何事にもある程度の苦痛があるからハマるんだと、俺は結構それを信条にしてるんだがどうよ?
 例えて言えばワンコインゲームや、リセットボタンが理論上存在しないオンラインゲーム。セーブの無いランダム配置の無限ダンジョン。そして鬼設定の裏シナリオ。

 失敗や敗北を恐れ、その緊張を楽しむ。

 決して勝利を楽しむのがゲーム、ではなかったはずだと思う。トランプゲームだってそうだ。ババ抜きは、一番にクリアする事より最後までババを持ってた方が割とドキドキして楽しいもんだろ?

 切られれば痛い。喉を締められれば苦しいし、悪いもん喰えば腹が下る。

 でもよぉ?今のこの状況は何なわけ?
 理由もはっきりしないこの苦痛。原因も分からないから、苦しみはより一層不安を伴なって折り重なってくる。自分が苦しいのも嫌なんだが、隣で俺よりもっと苦しそうにしている奴を見ているのが何より辛い。まさかとは思うが、こんな事で死にやしねぇよな?と、冗談半分残り本気で俺は心配だ。

 この世界はあまりにリアルだから、当然襲い掛かってくる痛みもリアルだ。

 死が、どこにあるのかなんて分かったもんじゃねぇ。
 テリー、さっさと医者を呼んで来いと俺は、ただただ祈るしかねぇのがまったくホント惨めだと思う。
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