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7章 白旗争奪戦 『神を穿つ宿命』
書の5前半 世界の裏側『おいでませ魔導都市』
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■書の5前半■ 世界の裏側 welcome to RAN!
俺は今、夕飯のシチューとにらめっこしている。
ふっと視線を斜め前に座るサトーに向けて……奴がにやりと笑ったのに気が付き再び自分の皿へ。
「どうした?」
「……いや……な」
シチューだ、全員同じ鍋から盛られたものを食べている。
パンもナイフで切り分けたものをめいめい手に取った。マグカップおよびスプーンなどはなんとかテリーのと取り替える事に成功。
それでも俺は、この中に怪しい薬が入っていないという保証が見いだせない。
何かしらのトリックで俺のシチューにだけ薬が混ぜられているような気がする……。
根拠は無いが。
「ヤト、事情は聞いているよ」
ナッツが苦笑しながらとん、とテーブルに丸薬の入った小さな小瓶を置いた。
「例え仮死状態になってもこれで復活させてあげるから」
救命丸かよッ。
「その前に毒消しとかのシーズニングは無いのか?」
「出来なくも無いけど……多分不味くなるよ?」
俺は観念してシチュー皿を掴んだ。
「畜生、ナッツ……何かあったらその時は頼んだぞッ!」
と言うわけで、俺は今ベッドに運び込まれている。
体全体がしびれているのでしゃべれない。
視線だけでこの野郎と、注射器を構えているサトーに訴えております。
「ちょっとでいいんです、ほんの少しだけッ」
「君も大概しつこいねぇ、」
ナッツだけが生命線だ。
テリーらは俺が夕食ん中に毒盛られてしびれたのをベッドに運び込んで、どっか行っちまいやがった。
ナッツだけがなんとかサトーの前に立ちはだかっている。
「これで大切な僕らの人柱なんだから」
な、ナッツさん酷いーッ!
……はッ、まさか……俺の意識が無いとでも思って酷い事言ってる?……いや、違うよな。
動かないけど眼球僅かに動くもんな。首から下が動かんのだ。声帯も含むでしゃべれない。えげつない毒だぞ。俺の意識がしっかりあるのだ……すげぇ嫌な痺れ薬である。しかしサトーの奴本当に魔導師なのかって疑問が湧くよな?薬品ばっかり使いやがって。
サトーは黄色マントすなわち……最下位の弟子の位だ。大して魔法なんざ行使出来ない。というか、サトーがそう言ってた。実際、魔法で俺を何とかしようとして全然ダメだったのだ。
俺は潜在魔力の高さの所為で、相性によっては魔法を受け付けない『場合がある』らしい。絶対的な耐性があるという訳では無いらしいがな。で、そういう相性的にどうもサトーと合わないらしい。
合わなくて結構だ、万々歳だよ。
そういう人間は非常に稀である、とか言う。
……奴は、そんな稀な俺を研究したくて仕方がないらしい。
魔導師というのは魔法を使う事より魔法研究に重きを置く連中だ、希少な検体見付けると大体目を爛々と輝かせてにじり寄ってくる。
「色々と大変なんだ、だからレッドと一緒にここに戻って来ているんだから……彼を少し休ませてやってよ」
「だってぇ、血をちょっと欲しいだけなんですよッ?」
「だったら眠り薬でも混ぜればいいのに。これって人体実験用の高価な痺れ薬じゃないか。どうしてこんな物騒なのを使うんだ?」
げ、やっぱり想像通り最悪な毒でやんの。
「相手はヤトさんです、万全に挑まないとまた逃げられますぅッ!」
あー、そーいや逃げたんだったなぁ。
てゆーか逃げるだろ普通。……レッドの魔王討伐しませんかの誘いに安易に乗ったのは、こいつから逃げる為だった事も思い出す。
思うに、その辺りも完全にレッドの手のひらの上だよなぁ俺。ちょっと切なくなってきた。
「そんなに急ぐ事じゃぁないだろう?彼はまだ若いじゃないか。現役引退してからじゃぁ遅いのかい?」
「何年待てばいいんですかそれは!」
「君は人生長いだろう?隠したって分かるよ」
くりくり栗毛のサトーの頭をナッツはぽんと軽く、叩いたな。サトーは慌てて避けようとしたが遅い、どうしてサトーが避けようとしたのかはよく分からんけど……。もしかすると角でも生えてるんだろうか?
「君は精吸鬼種だろう?血が欲しいのはそっちの理由じゃぁないのかい?」
ちなみに俺。
サトー・シバタが人間じゃねぇのは勿論、知ってますから。
だから拒否してんだ。
本当に研究するなら血の数滴位くれてやる。こちとら無駄に血ぃ流しまくってきたからな。今更惜しくなんかねぇわッ。
でもアイツは絶対研究だけで終わらないぞ、俺の血を悪用するに違いないのだ。
正体と目的を見抜かれて、流石にこの場では無理と悟ったか。サトーは無事に退散していったぜ。
ふぅ、流石はナッツ。助かった。
痺れて動けない俺の為に解毒剤を調整しつつ、独り言か。それとも意識は覚醒している俺に向けてか呟いた。
「お前は本当にモテるよねぇ」
「……」
反論したい所なんだが声が出ねぇ、身じろぎもできねぇ!
「とても多くの人から求められている。なら立ち位置交換するか?と言われたら僕は断るけれどね……でも、悪くはない事だろう?」
俺が反論出来ない事をいい事に、ナッツは小さなフラスコで薬を混ぜながら笑う。
「……ギルとの一件といい、お前が無茶しないでくれたのはうれしいよ。人柱の件、半分は冗談だけどもう半分は本気の本当にお前が必要って意味だからな。……何事も、自分一人の問題にしないでくれよ」
ちぇ、早速レッドの野郎、俺の現状について軍師同士で話し合ったな?
あいつ俺に強い事言えないもんで、ナッツを使って釘さして来やがった。
「お前を失いたくないのはお前だけじゃない。僕ら全員だし……今まで出会った多くの人達みんなそうだ。勿論、サトー君だってね」
動けない俺を起き上がらせ、出来上がったらしい飲み薬を……どーすんだろ?経口接種だよな?
……長いスポイトみたいなものを取り出し吸い出して……。俺の喉に差し込むんですかッ!
しかし痺れていて感覚がないので全く抵抗できません俺ッ!
ここで間違って肺の方に薬を流し込む、とかいう典型的な医療ミスは犯さないだろうからいいけどさぁ……。
じわっと、胸の奥の方で何かが広がった感覚がある。
「例によってこれ、睡眠薬入ってるんだ、」
……え、ちょ、何ィッ!?
「サトー君は僕が見張っておくから……ちょっと休みなよ。あぁそうそう。……エントランスからログを取っておいた方がいい」
ナッツは困った顔で俺を再び横たえながら言った。
「マツナギの修羅場がまだ終わってないんだよね」
そりゃどういうこった?
「……アベルさ。……納得してないみたいだね」
どうして俺はこう、いっつもベッドに縛り付けられてばかりなのだろう?
今回は血ぃ流してないのにッ。またナッツさんのお薬のお世話になってますよ。
「……やっぱり人間ってのが貧弱な種族だからまずいのか」
「そういえば、テリーさんも船旅になると殆どここにいますもんね」
とメージンが応える。ナッツが調合する酔い止めは副作用として、眠くなるのだそうだ。
さて。
ここはお察しの通りエントランスである。
トビラの中で寝ている時にくる事が出来る……ゲームで言う所のポーズというかメニューというか。そういう一時的な待避場所だな。
で、ここで俺達テストプレイヤー8人目であるメージンと顔を合わせる事が出来る。
擬似体験的だけどな……って、このゲーム事態が疑似体験か。はははは……。ややこしい。
寝ている間も時間は、プレイヤーに平等に流れている。当たり前だな、寝てる分歳を取らんという訳じゃない。
だが、俺達トビラのゲームプレイヤーがこの疑似世界に流れている時間を、そのまま体感したんでははっきり言ってたいした事をやってられない。
一日が24時間、それはトビラの中に用意された異世界でも同じだ。ええと名前は……八精霊大陸、だったな。
八精霊大陸でも一日は24時間で365日数えると一年経過する。割と空を見上げて夜空に瞬く星の配置も同じだったりする。星座の名前や星の名前も同じだったりするんだ。
まぁそれはともかく。
異世界すなわち八精霊大陸と俺らのリアルで、流れている時間が同じだとすると色々と不都合がある。
何せ俺ら、現実で寝ている間しかこちらの世界にログイン出来んからな。あっちの世界では人それぞれではあるが約14時間は覚醒していて約8時間しか眠らない。
しかも、夢を見ている間はその中の半分未満だという。
トビラ、このゲームMFCの仕組みの核として忘れちゃならない。
俺達は夢を見ている。夢を見る間にゲームとしてこの世界をプレイしている。
約4時間が限度だ。これ以上はリアル寝てられんという事情がある。寝過ぎるのは体に悪いからな。
MFCシステム上出来ないと考えてもらっていいだろう。
とすると、仮想異世界である八精霊大陸で過ごす4時間がリアルと同じ速度であると、遊んでいる場合じゃなくなる。仮想異世界がリアルであるが故に無理が生じる訳だな。
へたすりゃマップ移動だけで一日費やすだろ。一日どころじゃない、一週間マップ移動という事すらあり得る。
ともすりゃ、こっちの世界の時間が早周りなのかというとそうでもない。
旗を立て、仮想異世界に降り立った俺達に仮想異世界に流れる時間は無意味だ。というか……もう少し俺が理解しているニュアンスで言い直せばだな、戦士ヤトに流れている時間ではなくそのヤトに寄り添う青い旗。すなわち俺という意識、サトウハヤトにとって無意味なのだ。
だからヒマな展開はスキップする。
スキップした展開の詳細は、リコレクトというコマンドで『思い出す』
寝ている間は手持ちぶさたになる。
体が動かない……だから、エントランスという待避場に俺という意識を持って行く事が出来るんである。
逆に言えば戦士ヤトが覚醒中だとエントランスに入る事は出来ない。例外として今回のテストプレイで特別にバックアップを担当するメージンだけが、例えてコントローラーのポーズボタンを押す様な事が出来る。
八精霊大陸を疑似体験する俺達の時間、および世界の時間そのものをメージンだけが止められるのだ。
仮想異世界で体感する時間は、リアル俺達には無意味だ。ならばこの異世界で、俺達は現実社会縛られて突破出来ない時間の壁を無意味なものにする事が可能なのかというと……そうじゃぁない。
一見すると突破しているように見えるだろ?
どっかの漫画とかにあるよな、時間を引き延ばす修行の場とかさ。ああいう感覚でこの異世界を利用できるように、一見すると思うかも知れない。
しかしそれは不可能だ。
現実で俺の意識が覚醒する。
すると、異世界の経験は全てことごとく夢となる。
夢として記録されている。
……夢だ、全ての出来事を覚えておく事さえ実に困難な、昼頃にはすっかり全部忘れちまうようなあの、ぼんやりとしたものとなってしまう。
ではその記録された夢はどのよう現実で展開するかというと、展開が出来ないのだな。
夢を文字や音や映像にダイレクトに変換できないのと全く同じ理屈で、夢は夢として格納されている。
俺達の脳の中に。
夢の中でしか展開できないログがぼんやりと残るだけだ。
現実の俺達の手には小さなメモリスティクが残り、これだけが見た夢のトビラをこじ開け、もう一度異世界へ行く鍵になるんだ。
鍵をなくしたら二度と行けない。
思い出す事が出来なくなる。
はは、なんだか笑える。
ファンタスティックだと思わないか?これ、リアルに起こっている事なんだぜ?本当にそういう現実がゲームとして実現してるんだ。
この異世界の中にいる限り、俺達はこの現実とはかけ離れた仮想に騙されて浸っている。
現実で、メモリスティックの小ささに慄き、あんな小さなものをぞんざいにポケットに入れて持ち歩く自分に肝が冷える思いをするってのに……。
そんな事、現実じゃぁ覚えていねぇ。だから何だと、鍵という存在の『大きさ』を理解出来なくなってしまうのだ。
異世界の中にあり、俺は俺であって俺じゃない。
リアル-サトウハヤトとは違う。
だから俺は俺とはかけ離れたキャラクターを演じる事が出来ている。
今俺はエントランスにいる。実際、エントランスにいなくても俺は、こういう不可思議な思考をする事が可能だ。
でもこんな事、考える機会は圧倒的に減ってきた。
それだけ俺は戦士ヤトとして世界に……騙されている。戦士ヤトな思考でいっぱいいっぱいになりつつあるのだな。……俺に限らない、みんなそうだろうと思う。
今はエントランスにいるからこんな事を思うのだろうと俺は、思う。
エントランスは異世界の延長だ。決してリアルではない。こういう思考が出来るのがその理由だ。
「……って事は、メージンも別キャラって事か?」
ふいと気が付いて俺は、エントランスの暗闇に浮かび上がる端末に座り込んでいるメージンを振り返った。
詰め襟学生服の、癖のある猫っ毛の少年だ。
眼鏡の下にそばかすがある、現実の世界のメージンすなわちタカハシーランそのまんまの姿でここにいる。
「何か言いましたか?」
「いや、メージンも一応トビラに入ってるんだよな?」
「ええ、そうしないと時間軸合わせるのが難しいので……でもヤトさん達の方法とはまた別みたいですよ、あまり深い所に行くと今度は高松さん達の声が届かなくなりますので」
メージン、というのは。
現実のタカハシランとは別なんだよな。実際同じだとしてもだ。
俺サトウハヤトと戦士ヤトの関係に似て無くもない。
メージンというのは元来バーチャルの人格なんだ。ウェブ上などで認知されている人格……すなわちキャラクターアイコンである。それが一人の人物とイコールである必要が無いのだな、ウェブ上のアイコンなど現実とは無縁な仮想だ。
タカハシーランのハンドルネームだとしても、現実のタカハシーランとメージンを同一に扱う必要すら本来無い。
俺は高橋嵐とやらとの面識は無かった。彼がどんな人間であるのかは『リアル』知らなかったのだ。
俺が知っていたのは仮想現実の最も足るものとして長らく認知されてきたオンライン上などの仮想世界のアイコン『メージン』だ。
メージンを知っていた事イコール、嵐の経歴という訳じゃない。
何故なら仮想現実においては嘘もまかり通るからだ。
だから仮想だ。現実とは違うと誇張しておかなきゃ行けない訳である。
取り違えちゃ行けない。
取り違えそうでも……混ぜちゃ行けない事だったんだと、不思議とこの仮想異世界で思っちまう。
バカだな、どうせここでの認識は全部夢になっちまうのに。
重要な事に気が付いても、俺はそれを現実に持ち帰れないんだ。
正直惜しいと思う。だけど……出来ないんだからしょうがない。
人はゲームの中で何かを知った、出来たと勘違いしているのかもしれない。
現実に干渉しうる仮想世界が何かと、青少年に毒だと警告する業界一部が訴えているのは本当はそこの所だと思う。
ゲームを叩いてるんじゃなくて……何かを取り違えさせる仕組みそのものを警告しているんだ。
ともすりゃ、別にゲーム・マンガ・アニメに限った話じゃねぇのにな。ドラマ・小説、どんなメディアにも備わっている事だろうに。比較的前者が突飛な仮想を突きつける事が多いのは認めるけれど。
高松さんはどうしてこんなゲームを開発する事にしたのだろう?
それは……もしかすると勘違いをさせない為かもしれない。
近年ゲームの性能が上がってしまっていろんな事が疑似体験出来るようになった。
映像や音はリアルで……展開される物語がリアルになったように錯覚する。
それに伴って勘違いする連中が増えているというのも事実だ。どっぷりはまり込んでしまって抜け出せない連中もいる。俺も……そうならなかったとは言い切れない。
そうなるだろう可能性は持っていた。
てゆーかぶっちゃけ、恋愛対象が明らかに仮想だもんな。現実に向いてないもんな。
……前言撤回、俺はリアルで仮想にどっぷりです。
「なぁメージン」
俺は、開かれた窓を眺める前に彼を振り返る。
「俺の事、どう思う?」
「と、言うと?」
「現実の佐藤凪、今の戦士ヤト。ぶっちゃけどう思う?半分現実と半分仮想に身を置くお前は俺の事、どう思うんだ?」
「……それは、ヤトさんがどう思われたいかという事でしょうか?」
切り返し方、上手いよなぁ。
この冷静な対応があるからまさかメージンがリアル学生だとは思いつかなかったんだけど。
「滑稽か?」
メージンは少しだけ笑った。
「人の事は言えません、必死に背伸びして振る舞う僕の事、ヤトさんこそ滑稽だと思っているんでしょう?」
「まさか、俺は逆に凄いと思ったよ。……いや。リアルなんて関係ねぇのか……」
俺は苦笑して頭を掻いた。
流れる時間と同じく……馬鹿な事を聞いたな、俺。
「ここに来ると無駄な事考えちまうんだよなぁ、何でか」
言い訳気味に呟いて頭に乗せていた手を除ける。
だから割と、俺……セーブもスキップしてたんだ。
あえてエントランスに入らない事が多い。
でも今回はナッツがエントランスでログ見てろって言うから来たんだったな。
「悪いなメージン、変な話しちまって……アベルのログCC取りたいんだけど」
「了解です」
何事もなかったかのようにメージンは一つ頷いて俺の前の窓に、景色の一つを呼び出した。
空が映し出される。
満天の星空だ、魔導都市は比較的山の斜面にあるから空は嫌が応にも広く開けている。空気も澄んでいて……星が近い。
どこかで見た事のある空。
不思議だ、オリオンベルトにカシオペア座、あの無駄に眩しいのはおおいぬ座の一等星。
リアルで見上げていた夜空と同じ景色。
リアル-サトウハヤトの実家は比較的田舎でな、盆地だから空はここまで広くはないけれど……街明かりの少ない、こういう景色は経験ある。
今の生活では見る事は出来ない。都会に住んでるもんな、夜も眠らずとネオンが煌々としている上にスモッグに空が霞んでいる。
月さえ綺麗に見えないんだ。
まぁ、月は色々あってあんまり拝みたくない気持ちがあるんだけど……。ああ、もしかするとだから空なんか久しく見上げていないのかも知れない。
今モニターに映し出されている空を俺が見上げている錯覚に騙され、俺はそんな事を考えていた。
俺は今、夕飯のシチューとにらめっこしている。
ふっと視線を斜め前に座るサトーに向けて……奴がにやりと笑ったのに気が付き再び自分の皿へ。
「どうした?」
「……いや……な」
シチューだ、全員同じ鍋から盛られたものを食べている。
パンもナイフで切り分けたものをめいめい手に取った。マグカップおよびスプーンなどはなんとかテリーのと取り替える事に成功。
それでも俺は、この中に怪しい薬が入っていないという保証が見いだせない。
何かしらのトリックで俺のシチューにだけ薬が混ぜられているような気がする……。
根拠は無いが。
「ヤト、事情は聞いているよ」
ナッツが苦笑しながらとん、とテーブルに丸薬の入った小さな小瓶を置いた。
「例え仮死状態になってもこれで復活させてあげるから」
救命丸かよッ。
「その前に毒消しとかのシーズニングは無いのか?」
「出来なくも無いけど……多分不味くなるよ?」
俺は観念してシチュー皿を掴んだ。
「畜生、ナッツ……何かあったらその時は頼んだぞッ!」
と言うわけで、俺は今ベッドに運び込まれている。
体全体がしびれているのでしゃべれない。
視線だけでこの野郎と、注射器を構えているサトーに訴えております。
「ちょっとでいいんです、ほんの少しだけッ」
「君も大概しつこいねぇ、」
ナッツだけが生命線だ。
テリーらは俺が夕食ん中に毒盛られてしびれたのをベッドに運び込んで、どっか行っちまいやがった。
ナッツだけがなんとかサトーの前に立ちはだかっている。
「これで大切な僕らの人柱なんだから」
な、ナッツさん酷いーッ!
……はッ、まさか……俺の意識が無いとでも思って酷い事言ってる?……いや、違うよな。
動かないけど眼球僅かに動くもんな。首から下が動かんのだ。声帯も含むでしゃべれない。えげつない毒だぞ。俺の意識がしっかりあるのだ……すげぇ嫌な痺れ薬である。しかしサトーの奴本当に魔導師なのかって疑問が湧くよな?薬品ばっかり使いやがって。
サトーは黄色マントすなわち……最下位の弟子の位だ。大して魔法なんざ行使出来ない。というか、サトーがそう言ってた。実際、魔法で俺を何とかしようとして全然ダメだったのだ。
俺は潜在魔力の高さの所為で、相性によっては魔法を受け付けない『場合がある』らしい。絶対的な耐性があるという訳では無いらしいがな。で、そういう相性的にどうもサトーと合わないらしい。
合わなくて結構だ、万々歳だよ。
そういう人間は非常に稀である、とか言う。
……奴は、そんな稀な俺を研究したくて仕方がないらしい。
魔導師というのは魔法を使う事より魔法研究に重きを置く連中だ、希少な検体見付けると大体目を爛々と輝かせてにじり寄ってくる。
「色々と大変なんだ、だからレッドと一緒にここに戻って来ているんだから……彼を少し休ませてやってよ」
「だってぇ、血をちょっと欲しいだけなんですよッ?」
「だったら眠り薬でも混ぜればいいのに。これって人体実験用の高価な痺れ薬じゃないか。どうしてこんな物騒なのを使うんだ?」
げ、やっぱり想像通り最悪な毒でやんの。
「相手はヤトさんです、万全に挑まないとまた逃げられますぅッ!」
あー、そーいや逃げたんだったなぁ。
てゆーか逃げるだろ普通。……レッドの魔王討伐しませんかの誘いに安易に乗ったのは、こいつから逃げる為だった事も思い出す。
思うに、その辺りも完全にレッドの手のひらの上だよなぁ俺。ちょっと切なくなってきた。
「そんなに急ぐ事じゃぁないだろう?彼はまだ若いじゃないか。現役引退してからじゃぁ遅いのかい?」
「何年待てばいいんですかそれは!」
「君は人生長いだろう?隠したって分かるよ」
くりくり栗毛のサトーの頭をナッツはぽんと軽く、叩いたな。サトーは慌てて避けようとしたが遅い、どうしてサトーが避けようとしたのかはよく分からんけど……。もしかすると角でも生えてるんだろうか?
「君は精吸鬼種だろう?血が欲しいのはそっちの理由じゃぁないのかい?」
ちなみに俺。
サトー・シバタが人間じゃねぇのは勿論、知ってますから。
だから拒否してんだ。
本当に研究するなら血の数滴位くれてやる。こちとら無駄に血ぃ流しまくってきたからな。今更惜しくなんかねぇわッ。
でもアイツは絶対研究だけで終わらないぞ、俺の血を悪用するに違いないのだ。
正体と目的を見抜かれて、流石にこの場では無理と悟ったか。サトーは無事に退散していったぜ。
ふぅ、流石はナッツ。助かった。
痺れて動けない俺の為に解毒剤を調整しつつ、独り言か。それとも意識は覚醒している俺に向けてか呟いた。
「お前は本当にモテるよねぇ」
「……」
反論したい所なんだが声が出ねぇ、身じろぎもできねぇ!
「とても多くの人から求められている。なら立ち位置交換するか?と言われたら僕は断るけれどね……でも、悪くはない事だろう?」
俺が反論出来ない事をいい事に、ナッツは小さなフラスコで薬を混ぜながら笑う。
「……ギルとの一件といい、お前が無茶しないでくれたのはうれしいよ。人柱の件、半分は冗談だけどもう半分は本気の本当にお前が必要って意味だからな。……何事も、自分一人の問題にしないでくれよ」
ちぇ、早速レッドの野郎、俺の現状について軍師同士で話し合ったな?
あいつ俺に強い事言えないもんで、ナッツを使って釘さして来やがった。
「お前を失いたくないのはお前だけじゃない。僕ら全員だし……今まで出会った多くの人達みんなそうだ。勿論、サトー君だってね」
動けない俺を起き上がらせ、出来上がったらしい飲み薬を……どーすんだろ?経口接種だよな?
……長いスポイトみたいなものを取り出し吸い出して……。俺の喉に差し込むんですかッ!
しかし痺れていて感覚がないので全く抵抗できません俺ッ!
ここで間違って肺の方に薬を流し込む、とかいう典型的な医療ミスは犯さないだろうからいいけどさぁ……。
じわっと、胸の奥の方で何かが広がった感覚がある。
「例によってこれ、睡眠薬入ってるんだ、」
……え、ちょ、何ィッ!?
「サトー君は僕が見張っておくから……ちょっと休みなよ。あぁそうそう。……エントランスからログを取っておいた方がいい」
ナッツは困った顔で俺を再び横たえながら言った。
「マツナギの修羅場がまだ終わってないんだよね」
そりゃどういうこった?
「……アベルさ。……納得してないみたいだね」
どうして俺はこう、いっつもベッドに縛り付けられてばかりなのだろう?
今回は血ぃ流してないのにッ。またナッツさんのお薬のお世話になってますよ。
「……やっぱり人間ってのが貧弱な種族だからまずいのか」
「そういえば、テリーさんも船旅になると殆どここにいますもんね」
とメージンが応える。ナッツが調合する酔い止めは副作用として、眠くなるのだそうだ。
さて。
ここはお察しの通りエントランスである。
トビラの中で寝ている時にくる事が出来る……ゲームで言う所のポーズというかメニューというか。そういう一時的な待避場所だな。
で、ここで俺達テストプレイヤー8人目であるメージンと顔を合わせる事が出来る。
擬似体験的だけどな……って、このゲーム事態が疑似体験か。はははは……。ややこしい。
寝ている間も時間は、プレイヤーに平等に流れている。当たり前だな、寝てる分歳を取らんという訳じゃない。
だが、俺達トビラのゲームプレイヤーがこの疑似世界に流れている時間を、そのまま体感したんでははっきり言ってたいした事をやってられない。
一日が24時間、それはトビラの中に用意された異世界でも同じだ。ええと名前は……八精霊大陸、だったな。
八精霊大陸でも一日は24時間で365日数えると一年経過する。割と空を見上げて夜空に瞬く星の配置も同じだったりする。星座の名前や星の名前も同じだったりするんだ。
まぁそれはともかく。
異世界すなわち八精霊大陸と俺らのリアルで、流れている時間が同じだとすると色々と不都合がある。
何せ俺ら、現実で寝ている間しかこちらの世界にログイン出来んからな。あっちの世界では人それぞれではあるが約14時間は覚醒していて約8時間しか眠らない。
しかも、夢を見ている間はその中の半分未満だという。
トビラ、このゲームMFCの仕組みの核として忘れちゃならない。
俺達は夢を見ている。夢を見る間にゲームとしてこの世界をプレイしている。
約4時間が限度だ。これ以上はリアル寝てられんという事情がある。寝過ぎるのは体に悪いからな。
MFCシステム上出来ないと考えてもらっていいだろう。
とすると、仮想異世界である八精霊大陸で過ごす4時間がリアルと同じ速度であると、遊んでいる場合じゃなくなる。仮想異世界がリアルであるが故に無理が生じる訳だな。
へたすりゃマップ移動だけで一日費やすだろ。一日どころじゃない、一週間マップ移動という事すらあり得る。
ともすりゃ、こっちの世界の時間が早周りなのかというとそうでもない。
旗を立て、仮想異世界に降り立った俺達に仮想異世界に流れる時間は無意味だ。というか……もう少し俺が理解しているニュアンスで言い直せばだな、戦士ヤトに流れている時間ではなくそのヤトに寄り添う青い旗。すなわち俺という意識、サトウハヤトにとって無意味なのだ。
だからヒマな展開はスキップする。
スキップした展開の詳細は、リコレクトというコマンドで『思い出す』
寝ている間は手持ちぶさたになる。
体が動かない……だから、エントランスという待避場に俺という意識を持って行く事が出来るんである。
逆に言えば戦士ヤトが覚醒中だとエントランスに入る事は出来ない。例外として今回のテストプレイで特別にバックアップを担当するメージンだけが、例えてコントローラーのポーズボタンを押す様な事が出来る。
八精霊大陸を疑似体験する俺達の時間、および世界の時間そのものをメージンだけが止められるのだ。
仮想異世界で体感する時間は、リアル俺達には無意味だ。ならばこの異世界で、俺達は現実社会縛られて突破出来ない時間の壁を無意味なものにする事が可能なのかというと……そうじゃぁない。
一見すると突破しているように見えるだろ?
どっかの漫画とかにあるよな、時間を引き延ばす修行の場とかさ。ああいう感覚でこの異世界を利用できるように、一見すると思うかも知れない。
しかしそれは不可能だ。
現実で俺の意識が覚醒する。
すると、異世界の経験は全てことごとく夢となる。
夢として記録されている。
……夢だ、全ての出来事を覚えておく事さえ実に困難な、昼頃にはすっかり全部忘れちまうようなあの、ぼんやりとしたものとなってしまう。
ではその記録された夢はどのよう現実で展開するかというと、展開が出来ないのだな。
夢を文字や音や映像にダイレクトに変換できないのと全く同じ理屈で、夢は夢として格納されている。
俺達の脳の中に。
夢の中でしか展開できないログがぼんやりと残るだけだ。
現実の俺達の手には小さなメモリスティクが残り、これだけが見た夢のトビラをこじ開け、もう一度異世界へ行く鍵になるんだ。
鍵をなくしたら二度と行けない。
思い出す事が出来なくなる。
はは、なんだか笑える。
ファンタスティックだと思わないか?これ、リアルに起こっている事なんだぜ?本当にそういう現実がゲームとして実現してるんだ。
この異世界の中にいる限り、俺達はこの現実とはかけ離れた仮想に騙されて浸っている。
現実で、メモリスティックの小ささに慄き、あんな小さなものをぞんざいにポケットに入れて持ち歩く自分に肝が冷える思いをするってのに……。
そんな事、現実じゃぁ覚えていねぇ。だから何だと、鍵という存在の『大きさ』を理解出来なくなってしまうのだ。
異世界の中にあり、俺は俺であって俺じゃない。
リアル-サトウハヤトとは違う。
だから俺は俺とはかけ離れたキャラクターを演じる事が出来ている。
今俺はエントランスにいる。実際、エントランスにいなくても俺は、こういう不可思議な思考をする事が可能だ。
でもこんな事、考える機会は圧倒的に減ってきた。
それだけ俺は戦士ヤトとして世界に……騙されている。戦士ヤトな思考でいっぱいいっぱいになりつつあるのだな。……俺に限らない、みんなそうだろうと思う。
今はエントランスにいるからこんな事を思うのだろうと俺は、思う。
エントランスは異世界の延長だ。決してリアルではない。こういう思考が出来るのがその理由だ。
「……って事は、メージンも別キャラって事か?」
ふいと気が付いて俺は、エントランスの暗闇に浮かび上がる端末に座り込んでいるメージンを振り返った。
詰め襟学生服の、癖のある猫っ毛の少年だ。
眼鏡の下にそばかすがある、現実の世界のメージンすなわちタカハシーランそのまんまの姿でここにいる。
「何か言いましたか?」
「いや、メージンも一応トビラに入ってるんだよな?」
「ええ、そうしないと時間軸合わせるのが難しいので……でもヤトさん達の方法とはまた別みたいですよ、あまり深い所に行くと今度は高松さん達の声が届かなくなりますので」
メージン、というのは。
現実のタカハシランとは別なんだよな。実際同じだとしてもだ。
俺サトウハヤトと戦士ヤトの関係に似て無くもない。
メージンというのは元来バーチャルの人格なんだ。ウェブ上などで認知されている人格……すなわちキャラクターアイコンである。それが一人の人物とイコールである必要が無いのだな、ウェブ上のアイコンなど現実とは無縁な仮想だ。
タカハシーランのハンドルネームだとしても、現実のタカハシーランとメージンを同一に扱う必要すら本来無い。
俺は高橋嵐とやらとの面識は無かった。彼がどんな人間であるのかは『リアル』知らなかったのだ。
俺が知っていたのは仮想現実の最も足るものとして長らく認知されてきたオンライン上などの仮想世界のアイコン『メージン』だ。
メージンを知っていた事イコール、嵐の経歴という訳じゃない。
何故なら仮想現実においては嘘もまかり通るからだ。
だから仮想だ。現実とは違うと誇張しておかなきゃ行けない訳である。
取り違えちゃ行けない。
取り違えそうでも……混ぜちゃ行けない事だったんだと、不思議とこの仮想異世界で思っちまう。
バカだな、どうせここでの認識は全部夢になっちまうのに。
重要な事に気が付いても、俺はそれを現実に持ち帰れないんだ。
正直惜しいと思う。だけど……出来ないんだからしょうがない。
人はゲームの中で何かを知った、出来たと勘違いしているのかもしれない。
現実に干渉しうる仮想世界が何かと、青少年に毒だと警告する業界一部が訴えているのは本当はそこの所だと思う。
ゲームを叩いてるんじゃなくて……何かを取り違えさせる仕組みそのものを警告しているんだ。
ともすりゃ、別にゲーム・マンガ・アニメに限った話じゃねぇのにな。ドラマ・小説、どんなメディアにも備わっている事だろうに。比較的前者が突飛な仮想を突きつける事が多いのは認めるけれど。
高松さんはどうしてこんなゲームを開発する事にしたのだろう?
それは……もしかすると勘違いをさせない為かもしれない。
近年ゲームの性能が上がってしまっていろんな事が疑似体験出来るようになった。
映像や音はリアルで……展開される物語がリアルになったように錯覚する。
それに伴って勘違いする連中が増えているというのも事実だ。どっぷりはまり込んでしまって抜け出せない連中もいる。俺も……そうならなかったとは言い切れない。
そうなるだろう可能性は持っていた。
てゆーかぶっちゃけ、恋愛対象が明らかに仮想だもんな。現実に向いてないもんな。
……前言撤回、俺はリアルで仮想にどっぷりです。
「なぁメージン」
俺は、開かれた窓を眺める前に彼を振り返る。
「俺の事、どう思う?」
「と、言うと?」
「現実の佐藤凪、今の戦士ヤト。ぶっちゃけどう思う?半分現実と半分仮想に身を置くお前は俺の事、どう思うんだ?」
「……それは、ヤトさんがどう思われたいかという事でしょうか?」
切り返し方、上手いよなぁ。
この冷静な対応があるからまさかメージンがリアル学生だとは思いつかなかったんだけど。
「滑稽か?」
メージンは少しだけ笑った。
「人の事は言えません、必死に背伸びして振る舞う僕の事、ヤトさんこそ滑稽だと思っているんでしょう?」
「まさか、俺は逆に凄いと思ったよ。……いや。リアルなんて関係ねぇのか……」
俺は苦笑して頭を掻いた。
流れる時間と同じく……馬鹿な事を聞いたな、俺。
「ここに来ると無駄な事考えちまうんだよなぁ、何でか」
言い訳気味に呟いて頭に乗せていた手を除ける。
だから割と、俺……セーブもスキップしてたんだ。
あえてエントランスに入らない事が多い。
でも今回はナッツがエントランスでログ見てろって言うから来たんだったな。
「悪いなメージン、変な話しちまって……アベルのログCC取りたいんだけど」
「了解です」
何事もなかったかのようにメージンは一つ頷いて俺の前の窓に、景色の一つを呼び出した。
空が映し出される。
満天の星空だ、魔導都市は比較的山の斜面にあるから空は嫌が応にも広く開けている。空気も澄んでいて……星が近い。
どこかで見た事のある空。
不思議だ、オリオンベルトにカシオペア座、あの無駄に眩しいのはおおいぬ座の一等星。
リアルで見上げていた夜空と同じ景色。
リアル-サトウハヤトの実家は比較的田舎でな、盆地だから空はここまで広くはないけれど……街明かりの少ない、こういう景色は経験ある。
今の生活では見る事は出来ない。都会に住んでるもんな、夜も眠らずとネオンが煌々としている上にスモッグに空が霞んでいる。
月さえ綺麗に見えないんだ。
まぁ、月は色々あってあんまり拝みたくない気持ちがあるんだけど……。ああ、もしかするとだから空なんか久しく見上げていないのかも知れない。
今モニターに映し出されている空を俺が見上げている錯覚に騙され、俺はそんな事を考えていた。
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