異世界創造NOSYUYO トビラ

RHone

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9章  隔たる轍    『世界の成り立つ理』

書の5前半 死と熱の向こう『漕ぎ出せ!よもつひらさか!』

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■書の5前半■ 死と熱の向こう Southern country in the distance

「ワイズ、例のアレに参加していたのは誰になるんだい?」
 と、突然ナッツがワイズに話をふった。がしかしだ、例のアレでは何の事だかわっぱりわかりません!
 所が身内話のようで、ワイズにはしっかり意図が伝わっている。
「さあねぇ、でも間違いなく僕の把握しているナドゥではないし、かといって王族が出てくるのも信じがたい」
「……と言う事は、DSである可能性が高い……かな」
「何の話をしているんだ?」
 マツナギが怪訝な顔で聞いた。
「てゆーか、そのディーエスって何の略だ」
 デュアル画面とか制作者システムとかだったら数世代前の、某携帯ゲームハードの事なのだが。
「……ゴミ箱の事だって言ってたのを聞いた事がある」
 俺の横やりに律儀に答えてくれたのはアービスであるが、その答えがまた難解だな。DSはゴミの事?何のこっちゃい。
「それはダストシュート、という所でしょうか?……なぜそんな名前に」
「さぁ、そこまでは私にも分からないけど……なんだか自嘲気味に言っていたのを覚えている。DSなんて呼びにくいから、何の略なんだって聞いた事があるんだ。その時にそんな風に言っていたと思う。ああ、それで面倒だったらナドゥでもいいとか言われたんだ。ディーとか呼ぼうかと思ったんだけど……」
 ゴミ箱じゃぁ酷いよな、そんな名前であんまり呼ばれたくはないよなぁ……と、苦笑いするアービスをナッツ正面から見据えて訊ねた。
「君をディアス国四方騎士団の北魔槍団長に据えたのは、経過はともあれ、画策したのはナドゥ・DSなんだよね?少なくとも、君という存在を作ったのはナドゥ」
 アービスは小さく頷く。
「……と云う事は、系統としてはランドール様と同じという事ですかな」
「どうだろう?それにしては『大人しすぎる』と思わないかい?」
 テニーさんとナッツも何やら通じ合っている不思議な会話を漏らした。
 お前ら何を話している?何が同じ、系統だって?
「訳わかんねぇぞ、はっきり解りやすく話せよお前ら」
 人が沢山いるから、あっちこっちで好き勝手話が進みやがる。
「ランドールにぶっちゃけた所で。どうせ認めないか……そんなのは関係無いと突っぱねるかの二択だ。軽く想像できるぜ」
 明らかにテニーさんと距離を置いた所に控えていたテリーが何やらぼやいてる。何やらまどろっこしい気持ちになっている気配を感じるぞ、普段大抵の事には動じず構えているコイツが相当にイラついてる、テリーとはそれなりに長い仲だからな……しかし、何を言いたいのか意味は、さっぱりだが。
「……この事は……出来るなら秘密にしてもらいたい。誰よりもランドール様に秘密にして頂きたい事だ」
 テリーの様子については、勿論実の兄というテニーさんも察するところがあるのだろう。意を決した様子で少し頭を下げて切り出した。
「ランドールに?」
 だから、何をだって?
「あの方は……サウターである事はご存じであろう」
 サウターというのは南国人という意味だな。ウチのパーティーだとレッドがそうだ。具体的にはカルケード国出身の人達を指すのだが、一部フレイムトライブという魔種との混血二代以降を意味する、人間よりも有能な種族の事を指す場合もある。要するに、カルケード国の住民がすべてフレイムトライブである訳ではないって意味だ。南方に住む人、出身の人、南国カルケードに縁がある人らひっくるめて『サウター』だ。
「本人にはそのように説明している、実際……彼はサウターだ。しかし恐らくあの強靱な精神と肉体はフレイムトライブという理由付けでは収まりきらない」
 確かに……あいつやけに怪力っぽいよなぁ。それに恐ろしくタフだというのは理解出来る。
 テリーが舌打ちして、なかなか口を開かない兄に痺れを切らしたように言った。
「はっきり説明するつもりなんだろ?言ってやれよ。奴はファマメント政府が唆されて飼うハメになっている『王の器』だってな」
 なんだって?ナニの器?

 どーにも色々混み合った話があるらしい。
 個人の趣味とか、家庭の事情とか、そういうレヴェルから発しているのは間違い無いのだが……。
 それがどうも、国家レベルの問題にまで発展してややこしーくなっているのではなかろうか。

 唐突にも思えるのだが、実はランドールという人物についての『問題』は南国カルケードに飛び火するのだと言う。だから、テニーさんはランドールの事をサウターと言ったのか。
 というよりも、簡単に纏めて短く言えば奴は、南国カルケードと西国ファマメントの超水面下における――政治的駆け引きの絡んだ……とってもデリケートな問題の結果だ――というテニーさんの話である。
 だから奴は外見が南国人……サウター。そもそもの生れは南方、カルケードでありそれが、何かこう、表沙汰には出来ない政治も絡んだややこしい事情が在って……ファマメント国の北のはずれ、オーンという町の出身と云う事になっている……と。
 詳細説明は勘弁してくれとテニーさん、土下座する勢いで頭を下げてきた。
 そこまでお願いされると聞きにくい。でもまぁランドールの都合なんて理解したって、現状何か分かる訳ではないと思う。……というか、問題で重要な項目であればすでに、事情は分かっているだろうナッツが明らかにするはずだ。
 ランドールが西方人にして南国人であるという事情は、最終的に世界の経済と実力を二分すると言って過言ではない、二大国の覇権争いまで根を下ろす大問題らしい……との、テニーさんの談である。
 って言われても、想像し辛いってのが俺の正直な感想。
 世界に国が8つ在る訳ですが、それぞれに歴史があって、文化の違いがある。それらが比較的平和に、出来れば戦争とかの無い時代を求めている訳だろう?今は比較的ドンパチはしてない方だと云われている。
 そのかわり魔王とか、自分らの欲を優先して国を乱す奴らが居る。
 だからそういう勢力を叩く為に魔王討伐隊とかいうのが結成されているわけだ。
 俺達は魔王討伐隊であって、その都合国や世界に相反する勢力と戦っている。決して国を相手どって戦っているいるわけじゃないし、俺らの後ろに何かしらの国家権力が控えている訳じゃない。少なくとも、俺らを魔王討伐隊と認定し身分を保証している遠東方イシュタル国にそういう意図はないだろう。
 でも、ランドールの方は違う。奴の後ろには確実にどこかの国が付いている。それはファマメントだろうと思っていたが、実はそうだとは限らないって事か?でも、カルケードがバックに居るっていうのも想像しにくいんだよな……今の王さま、あのミスト王だぞ?もしかしてその前、先代の頃の話なのだろうか?あるいは魔王八逆星に属していたが今は脱落、消え去った偽王アイジャンの仕業とか?

 魔王の後ろに国があるのか、それとも国の背後に魔王がいるのか?

 ランドールの立ち位置はそういうきな臭い問題を喚起するようで、なんだかなぁ。
 ……とにかく、なんだか釈然としない。

「国を治める者達の野心は、巧妙に隠している通りそれなりに高いのでしょう」
 すると、レッドがそんな釈然としてない俺の顔を見て言った。
「西方には、一つに纏まる事が平和に繋がる……という、幻想に近い理想的な考え方が根付いています。また南方は昔から境界を引く事を嫌う、実現している平等論があります。分りますね?」
 ああ、おバカな俺にもそれは分るよ。あれだろう?魔物が虐げられていた時代を終わらせた、魔物は生物の一つであるのだから等しく人権を認めるべきであるっつー革命を起こしたっていう……あの有名な伝説だろ?
 その革命があるから、今世界は魔種も人間も関係なく……ある程度の差別とかはあるけれど……仲良く出来てるといわれる。
 南国の偉大なる王、テトラシュタ王が南国に願った平等の思想は、今も強く南国に受け継がれているはずだと、レッドは言いたいのだろう。
「方法は違うとしても、いずれ世界は一つに纏まるべきだ……という思惑が双方にあるのでしょう」
「……ファマメント国と、カルケード国にか?」
「ええ、そして……その時主導を握るのはどちらか、という争いを水面下で行っている。ランドールさんはその争いの為の重要な人物という事ですね?」
「それ以上は何も説明は出来ない」
 テニーさんはもう一度頭を下げて来た。
 レッドの予測が当たりだとするなら……そうだな、テリーが言った器、王の器?それがランドールだというのならソイツは、いずれ国を一つに纏めた時に立てるべき新しい王……みたいなニュアンスにも感じられる。
 二つの国の覇権争いではあるが、どちらかの王がすべての頂点に君臨するのではなく……その時は新しい王を選んでそいつに統治させるつもりって事か?んで、ソイツの後見人ポジションを取り合ってる感じだろうか?
 ファマメント国で比較的偉いくてデカい公族である、ウィン家のテニーさんがランドールにへりくだる訳だ。奴は世間一般的には公にされていないが、ファマメントにおいてランドール・Aは大切な……何だろう。
 『駒』って事か?
 とにかく、ファマメント政府から厳重に、ランドールを大事に扱うように言いつかっているのは間違い無さそうだよな。テニーさん個人として、ではなく……ウィン家として、なのかもしれない。その辺りの事情はどうにも教えてくれないようだが。
 それについては、テリーも知ってんのかな。
 なら、いずれ奴の口から聞き出してやる。
 俺はそんな事を思いつつもふいと、思った。

 しかし、そんなに大切なら檻にでも入れて大切にしまっておけばよかろうに……と。

 檻って言い方は行き過ぎかもしれんが、上手い事言いくるめて城とかに軟禁しておくとか、出来なかったんだろうか?
 実際そうしたい所は山々だと思うんだよなぁ……その、西方の出身地になってるオーンって町がランドール曰く、大蜘蛛の所為で壊滅したから軟禁に失敗した、とかなんだろうか?
 でもほら、解るだろ?ランドールはあの性格だ。大人しくお家に籠れるタイプじゃねぇ。しかも誰も奴の暴走を止められない。何分、自分の町を滅ぼした怪物への報復っていう、相手が怪物だからこそある程度は正しい事をやっている訳だし。
 故郷を破壊された頭に来た、復讐してやる!とランドール様は決起なさったわけですが、それを例えば『復讐した所で死んだ人達は戻ってこないのよ?』と宥め賺してもいいのだろう。その理屈にランドール納得してくれればいいだろうが、恐らくそんな口先三寸では奴を止める事は出来なかったのだ。
 オーンを破壊した存在が『物騒』であるとすると、野放しにしておく訳にもいかない。討伐しなきゃいけないというのもガチな話であるはずで……少なからず、ナッツやワイズらはあのウリッグという大蜘蛛に何か心当たりがあるっぽい素振りである。
 ランドールが蜘蛛の怪物を絶対倒すと宣言してくれている、それを止める言葉および力がファマメント政府には無かったのだろうな。
 そこでウィン家の当主やら、天使教のエラい人やらがランドールの付き人として舵取りを任された。
 恐らくはそう言う訳ですよ。

「じゃぁ、つまり……あのランドールという人は……」
 アービスの問いが終わる前にワイズが答えた。
「君と同じく、都合良く『作られた』人という事になると思うよ。実際……ランドールの家系は僕らにもよく分からないのさ、見事にオーンが壊されてうやむやにされたからねぇ」
「つまり、ナドゥからか?」
 恐らくそう云う事だとナッツとワイズが同時に頷いた。

 アービスから聞いた、ディアス国における奴の暗躍。その話を聞く限り、ランドールの件もどこかきな臭いな。
 ナドゥ・DSはディアス国内で政治や商家を操ってどうやら、酷い事をやっている様だ。アービスの故郷マリアも、ディアスの商家ロダナムによって文化や生活習慣を完全に破壊されて貧困の差が広がり……子供を売り飛ばすような親が出ているらしいからな。
 マリアはディアスの半植民地と化している。いや、もっと酷いだろう。植民地であれば管理はされるが、正式に植民地ではないから搾取される一方であるようだ。
 しかも、マリアを狂わせた要因は他の地域に飛び火する危険性を持っている。
 端的に言えば……薬だ。
 もちろん、使い方によっては薬品として優秀な効能がある。転じて毒になるのは、薬って奴のの避けがたい側面だよな。
 ナッツも使っている睡眠薬『ロダナム』は元々高級品で中々手に入る薬ではなかったんだそうだ。しかし最近価値が下がって比較的手に入りやすくなった……との事。その理由がマリアにあった訳である。
 ロダナム薬……ナッツ曰く、主成分はモルヒネ。
 つまり、阿片だよ。文化的に底辺だったマリアに商家ロダナム家が入ってケシの花栽培させて、阿片作らせていきなり大量の金と、西方文化を意図的に氾濫させやがったのだ……それは、ようするにナドゥ・DSの仕業である。マリアに悪徳商家ロダナム家を招いて薬を作らせて半植民地化したら、結果的に町全体がどういう風になっていくのかと云う事を、あのおっさんが予測出来てないとは思えない。
 これが全て商家ロダナムの商売の仕方だというのなら、俺らが口を出す事じゃない。マリアを統治している連中の手腕の問題で、ディアス国の落ち度であるだろう。
 しかし事実として、ロダナム家を操って阿片なんぞ作らせているのはナドゥ・DSだ。ディアス国の北魔槍騎士団長を形だけとはいえ務めていたアービスは、ディアス国にナドゥの介入がある事を認めている。ディアス国にも魔王八逆星たる者達の魔の手はしっかり伸びていてるという事だ。

 実験用の人材を堂々とお手軽に得る方法として、マリアを貧困に貶めて人身売買を募り搾取する。ついでに人の自由を奪いやすい希少な薬品も大量に生産させる。その生産物の管理をあえて緩めておけば……苦痛を取り除くのに強い薬能を示すロダナム薬は容易く地域に浸透して人々を犯すだろう。
 一石二鳥だ……と、アービスに向かってナドゥ・DSは、その様に平然と答えたというのだ。

 そうだとするなら、間違いなくナドゥとDSは別人であるように思える。
 あのおっさんはここまで自分本位だっただろうか?確かに実験の為ならなんでもやらかすような雰囲気はあったが、俺が知っているナドゥは何か、自分の為ではない何かの目的を持って動いていた様に思えるんだよな。
 自分の望む事以外、何がどうなっても良いと思っているようには……感じられなかったんだよ。
 
 人や家族、国、果ては世界。
 それがぶっ壊れてもどうでもいいと明言しているなら最初から憎む事が出来る。
 ところが、どうにもそうじゃない気配があるから俺は、刃を向けるに困っていたのだ。
 シーミリオン国の政治腐敗を淘汰してみたり、南国カルケードに君臨した魔王かつ偽王アイジャンをやっつけるのに荷担してみたり。それから、世界を破壊するのは『大陸座』の方だという推測をして、それでもってレッドを魔王軍側に引き抜く為、唆したりもしている。
 俺も仲間に誘うつもりだったみたいな事言ってたしな。
 で、実際そのナドゥが考えている『世界を破壊するのは大陸座』って推測は……ちょっと当っていたりする訳で……。
 もしかして、ナドゥのオッサンは悪人を装ってはいるが世界を安寧に導くいい人側だったりするのだろうか?とか、さ。

 ところがアービスの話を聞くに、DSという奴はどうにも危険だ。
 ナドゥに、推測通り三つの側面があるとして……それぞれに少し性格や求める事が違うというのならば……。
 間違いなくDSは悪だ。自分本位の為に全てを壊しても良いって考えを持っている。そういう奴は断罪しなけりゃいけんだろ。
 止めてやんなきゃいけねぇんだ
 ああ、もう。ばかめ、面倒な事しやがってと正直舌打ちしてしまうけれど。

 ナドゥは、自分の側面の一つに危険な思想を持っている事が紛れている事を知らないのだろうか?
 今度会ったら、そこんところはっきり問いただしてやらなきゃいけないな。というか、まず本当にナドゥとDSが別人格かどうかってギミックをはっきりさせないとなんだけど。あと、リュステルな。
 ユーステルとキリュウが帰りを待っている、リュステル・シーサイドは間違いなくナドゥの事であるのか、とか聞き質しておかねばなるまい。
 何にせよこれ以上、赤旗バグをばらまかれてたまるか!


 ワイズがため息を漏らす。
「色々と調べたい所なんだけど、実際問題うちの坊ちゃんの『出生』てのは政府上層部極秘事項でして。政府と天使教は同じようで別の組織ですからねぇ。詳細についてはまるっきり教えてくれない。仕方がないので独自に調べた訳ですよ。坊ちゃんの経歴、そしてオーンで何があったのかという謎」
 緊迫した口調だが、やっぱり口元は笑っている。緊張感の無い奴だ。
「その謎に迫るに、リオさんらの力添えがありましてねぇ。なんとか関係のある人物をつきとめて、その名前を知るに『ナドゥ』という名前に当ってしまってこれはびっくり、と言う訳ですよ」
「どうしてでしょう?」
 なんだか話がややこしくて、俺にはレッドがなぜワイズが『びっくり』と表現した事に『どうして?』と聞いたのかすぐに理解できなかった。
 何が、どうしてなんだ?
 すると、ワイズは微妙に黙り込んで口の端を引き上げた。
「んー……と、つまり」
 レッドは要点を確実に突き、暴く為に先回りして言ったな。
「魔王八逆星としてか、あるいはそれ以外でか。ナドゥという名前の人物に誰か、心当たりがあったと言う事でしょうか?」
 的確なつっこみだ。成る程、レッドが尋ねたのはそこか。
 そう言われれば腑に落ちないな。
 要するに……ランドールパーティー達は魔王八逆星の連中とはそんなに、顔を合わせてはいないんである。ギルとは対峙した、とは聞いているが俺達みたいに全員顔を突き合わせて名乗り合ったりしている訳では無い。
 ランドールパーティ側は、構成している魔王の奴らの名前も、顔もよくわかっていないはずだ。
 唯一今隣にいる、ディアス騎士団長という肩書きを持っているアービスがその一翼を担っている程度は把握していたらしいが……アービスがそんな事を言っていたと思う。
 とにかく、魔王八逆星の中にナドゥ・DSという名前の人物がいて、関わっているらしいというソースを得たのはつい最近のはずである。アービスに会って、魔王についての情報を引き出している中で初めてその名前を聞いているはずだ。
 とすると、ワイズが驚く順番が違う。
 オーンの魔法使いの名前を見付けたのはもっと前であるはずなのだから、ナドゥという名前である事にその時驚くのは『おかしい』。
 疑惑渦巻く中、ナッツは再びアービスに尋ねた。 
「話を聞く所、君が団長をやるようになったのは世界に魔王八逆星が現れだした頃で、すなわちそれは……第一次魔王討伐隊を派遣した後、そういう事になる」
 ……詳しい年表はよく分からないが、今問題になっている赤い旗のバグを持っている『魔王』というのが現れたのはここ10年程前の話だというな。
 八逆星が各国で暗躍するようになったのはそれよりも少し後という経過であるらしい。
 ようするに、最初の魔王討伐隊が失敗した事について、魔王八逆星という徒党の出現と跋扈が『肯定』した形だ。
 第一陣魔王討伐隊は大陸座の勅命でもって結成され、各国の代表が集う形で秘密裏に行われたらしい……が。

 それが、誰も戻ってこなかったと云われる。

 今、それが魔王に破れた、という認識に成りつつ在る。

 おバカと自覚する俺ですが、ナッツ達天使教の奴らが何を話しているのか何となく把握して顔を上げた。ええと、この書の冒頭に戻る。

「『アレ』ってお前ら、もしかして……第一次魔王討伐隊の事を言ってるのか?つまり……第一次魔王討伐隊の中にナドゥという名前があったってのか?ところがディアス代表がDSだったって事……かよ?」 
 あえて否定はせず、ナッツは静かに俺の言葉に返答する。
「だとするなら、少なくともDSは魔王討伐に向かってその後、行方不明じゃない。ディアス国に戻っているという話になるんだけど、ね」
 俺達はつい、アービスを仰いでしまった。
 ナッツの示唆するところ、すなわちディアス国の政治は、かなり深いところまで奴、あるいは魔王八逆星連中に握られているんじゃないかって事くらい、バカな俺でも危惧する。
「お前ん所の国、もしかして相当にヤバかったりするのか?」
「私は軍人だ。政治の事は……分からない。今は自分でも反省している、私は……上から命令された事を実行していただけだから」
「……魔王討伐隊第一陣についての詳細は明らかにされておりませんが……もしかすると、ファマメント国で統括されていたのでしょうかね?」
 レッドの言葉に、ナッツとワイズが同時に苦笑して少しだらけていた身を起こした。
「僕らで第二陣をやってる訳だからいつまでも黙りは無理だよねぇ」
「ですな、ぶっちゃけますか代理」
「そろそろ、潮時かな」



 と言う訳で、順を追って天使教が今まで口をつぐんでいた事実についても聞く事になったのだった。
 途中、理解力のない俺やアベルの疑問応答、それからやけに専門的な所までおよぶレッドのツッコミなどがあったので全部はやらん。というかツッコミ部分まで俺ちゃんと憶えてられない。
 と言う事で、要約して結論から言うか。

 ナッツとワイズは、最初っから魔王討伐隊第一陣の面子を知っている。一部面識さえあると云う。

 魔王討伐隊第一陣。
 これは、大陸座の勅命でもって結成されたものだという。
 しかし世間的にはそのような集団の存在は隠されているという事は、今までにも繰り返し説明した通りだ。
 魔王なんてものが世の中にある、それが知れただけで世の中という物は不安を得て乱れるものだ。
 だから、魔王ギガースの事、これを討つべく編成された魔王討伐隊第一陣の事は……当時、世間一般には知らされていなかったのだ。
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