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10~11章後推奨 番外編 ジムは逃げてくれた

◆BACK-BONE STORY『ジムは逃げていた』

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◆BACK-BONE STORY『ジムは逃げていた』
 ※ オチです 読んでおきたい人はどうぞ ※



 さて。

 物語をものすごくシリアスで締めくくりたい貴方は、ここから先は読まない方がよいでしょう。

 でも、多分このままでは色々と腑に落ちない事があると思うわ。
 うん、大体察している人もいるかもしれないけれど、結局どうなのか。

 答えが欲しい貴方は、この先をずっとスクロールして……
 最後のオチをご確認しても良いでしょう。 



 あたしは……正直推奨しないけどね。



















「グリーン・モンスターは死んだんだからな?」

 あたしは間違いなく呆れて、そいつを見ていただろう。
 照れ笑いをして頭を掻いた、あれ、誰よ?
 え?
 ちょっとまって?

「だから、間違っても今後俺の事、ジムだなんて呼ぶんじゃないぞ?」

 なんかどっかで見た事ある顔してるけどあれって誰だっけー?

 あたしは途端に額を押さえた。
 多分、アベールイコの方も別の意味で頭痛がして額を押さえているだろう。
 まずった。
 あたし、活字嫌いなのよね。新聞の見出ししか見てなかった。

 どうしてちゃんと内容を読まなかったんだろう!?

「と言う訳で、いやぁ、始めまして~?」
 わざとらしくアイツは笑いながら手を差し伸べた。

 アイツは大大会優勝者として城に上がった訳なのね、だらしない格好は出来ないのよ。だから……。
 きっちりとした身なり格好に、あたしはちょっと目を白黒させて身を乗り出してしまっていた。

 あんなに切るのを嫌がったあのうざったい前髪をさっぱりさせて、あたしの前にいけしゃぁしゃぁと、現れた男、おかげで一瞬誰だかわからなかったが……おかげで別の誰かを思い出して、あたしは酷く合点しちゃった訳。

「という訳でアベル、この首輪外すために魔導都市に行くんだよな?」

 確かに、あたしはこれから何とかして魔導都市ランを目指すつもりだったわよ?
 昔お世話になった……メルア先生に会う為に。
 でもテリーがさ、一応大大会の結果を待ってからにしろとか言いながら、問答無用でセイラードにアタシを案内した訳よ。
 方向音痴で人の後ろを付いて行く事しかできないあたしには、ここがセイラードである事など着いてからも暫く分からなかった位だし、テリーがそういう方針なら従うしかない。
 テリーが待てというのなら、あたしはここで待つしかない。あたしには今、選択権が無いのは承知している。
 本当は殴って首絞めてさっさと東国に逃げるわよと言いたい所だけれど、テリー相手にそんな態度はちょっと、まだ完全に打ち解けてなかったので出来なかったのだ。あとまぁ、一応ジワジワと事態に向けての衝撃があって、色々と打ちのめされていたから呆然としている時間は貴重でもあった。

 まさか、テリー。
 あんたこの展開分かっててここにあたしを連れてきた?
 ようやくそれに気が付いたあたしだ。
 遅い、あたし、気が付くの遅い……ッ!
 自分が情けなくなって、そういう理由で泣きたくなってきた。

 緑がかった瞳を持った青年の差し出された手を、あたしはしかたなく握り返してやった。
 力いっぱい。
 そう、この赤い髪と赤い目に生まれた曰く持つあたしが力いっぱい。
「イダダダッ!お前、骨折れるッ!怪力で握るなッ!」
「握力足りてないのよ、自分の力不足をあたしの所為にするな!」
「なんだよ少しは驚けよお前!」
 顔を顰めた青年をあたしは睨む。
「驚いてるわよ!」
 強引に青年の手を振り払うようにして解き、あたしは指を差して叫んでいた。

 心の中で弾ける喜びを隠す為に。

「誰よあんた、さっさと名前名乗りなさいよ!」

 青年は握りこまれた右手を擦りながら目を細めた。
「うん、そうだな。俺達今、始めて会う……事になるわけだしな」
 軽薄に笑って青年は答える。
「俺の名前ね ……ヤトだ」



 そう、これが答え。

 大体分かってたでしょ?あたしも……途中からリコレクトしてて怪しいなぁとは思ってたけどさ。

 でも勘違いしないで欲しい。
 あたしとアイツはこの流れがあるから……色々と関係性はズタズタなのである。
 ズタズタよ?お互いにもう、気安く触れ合うことすら出来ない位に後ろめたくて堪らないの。

 あたしは無言で、近くに来いとジェスチャーする。青年、ヤトは何だろうと一歩あたしに近づいてきた。
「ちょっとさ、」
 と小さく囁いてからあたしは、思いっきり近づいた相手の左頬を平手打ち。
「ぐほぅッ!」
 ヤトは奇妙な呻き声を洩らしながら口と鼻から血を吹きつつ、張り倒れる。
 ああ、相変わらず貧弱な奴ッ!相変わらずとか思っちゃいけないのだろうけど、この思いはそう簡単には欺けない。
「……一発どつかせて」
「ど、どついてから言うなアホッ!このアホッ!」
 そんなあたし達の様子を……苦笑というか呆れ顔というか。

 楽しそうにテリーが、ちょっと離れた所から見ていたりした。



                                      終わり。
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