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本編後推奨あとがきとオマケの章
番外編短編9『目覚めし8つ目のプレイヤー』
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番外編短編9『目覚めし8つ目のプレイヤー』
これを言ったらヤトさん達、大いに驚いていたんですが実は、……親が動画共有サービスクリエイターなんですよね。具体的に誰なのか、っていうのは、会社にも明かすことはできません。何しろウチの親はそれをちゃんとした職業として成り立たせてる人だから。
背景をオープンにしている人も居るけど、父はそれとなく隠している方かな。顔出しは基本NGでアバターを立てて動画を作っている。
まさか、結婚していて子供がいて、子供も同じような事をしているなんて誰も知らないだろう。同時に、僕の親も動画サービスクリエイターだとは誰も気には気が付いていないようだ。
僕も、父も、お互い接点が在る事は世間に知られないように細心の注意を払っているからね。
だからこそ、僕は高校生なのにゲーム攻略動画を沢山作って上げる事が出来るんです。ノウハウを父から得ているし、機材なども揃える事が出来る。都合、父とは同じ機材を使う事は無いのでそこは……まぁ、家庭環境に恵まれていた、という感じかな。
存外両親は僕がゲーム好きなのに大賛成なんだ、いや……本当のことを言うと、ね。
僕は、ゲームはあんまり好きじゃなかった方だと思う。
一時期毛嫌いしていた頃もあったかな、小学生時代の反抗期頃かな?同級生たちがちょっと、そういうメディアと距離を取りたがる時があるんだけど……そういうの、分からないかな。僕の世代とヤトさん達の世代では色々違うかもしれないのだけども。
僕の父がどういう方面に向けた動画サービスクリエイターなのかは勿論、ここでも明かす訳にはいかないんだけど、ゲーム好きなのは明言されているとして実はゲームとはあまり関係無い方向かな。どうにも身バレを恐れて大好きなゲームネタでは動画を作れないと思って居る所が父にはあるかもしれない。もっとも、依頼されればプレイ動画も作るみたいだけどね。
僕の両親は互いにゲーマー同士なんだよ、そう、母もすごいゲームをする人だ。
とすると、環境が見えてくるよね?そう、僕は子供の頃からゲームに囲まれて育ったんだよ。新旧殆どの家庭用ゲーム機があって、同級生らからは無駄に羨ましがられていたな。
でも、僕には、それが……ゲームが在る自分の家っていう環境があまりにも当たり前すぎたんだ。他人がうらやむ理由がよく分からなかった。
少し年齢が上がって、そういう事を理解できるようになった時には、ゲームってそこまで楽しいものだろうか?っていう感覚が生まれ出た後だった。
抑制を一切受けずに育ったからでしょう、とレッドさんが言っていました。僕も、正しくそうだと思います。何時でもそこにあって何時でも遊べる、しかも両親が遊んでいてそれを見ていて僕は、自分でそれを遊んでみようという意欲がさほど湧かなかったんです。
むしろ、面白いよと勧めて来る両親に反発心の方が働いてしまって……それで、僕はどちらかというとゲームは嫌いな方だったと思います。
それがどうして今みたいな事になっちゃったのか、結局、ゲーマーの子はやっぱりゲーマーだと言えばそれまでなのかもしれません。僕には、潜在的にゲームにハマってしまう因子が在ったと言えばそれまででしょう。
お分かりですね、僕は新作ゲームで攻略をするのではなく、すでにやりつくされたであろう昔のゲームを再攻略する方向で『メージン』なんて渾名が付いてるんですから。
そうなんです、別段両親に唆された訳でもなくて、家の事情が事情なだけにテレビよりも動画サイトを見るような環境だったのでごく偶々、レトロゲームと呼ばれる部類のプレイ動画配信を見ていたんです。
ドット数の粗いそのゲームは、極めて単純でとても簡単そうに見えたんですよね、そしてその動画のプレイヤーがこれまた操作がヘタで。後から知るにそういうコンセプトの動画だったんですが、中学生に上がりたての僕にはそういうのがよく分かっていなかった。
その、レトロゲームがですね、僕の家にあったんですよ!
当時の機種で、当時のソフトで、動かせる環境にしてあるゲーム部屋があって僕は、その簡単そうに見えたレトロゲームのパッケージが自分の家に在る事に気が付いて……興味本位で動かして見る事にしたんです。まだ両親への反抗期から抜けて居なくて、ゲームばっかりしてるなんてダサいと思って居る頃なので両親が出かけている間にこっそりとやりました。
それは、ロードナンラーっていうゲームなんですけど……きっと分からない人が多いとは思うんですが気になる人は調べてみてください。とても古いゲームなんですが、アクション要素よりはパズルゲームに近くて、でもテクニックも必要不可欠。
動画で見たゲームとは音が違うからよく見たら、ちょっと違うバージョンの様でした。後で調べるに沢山の派生作品やバージョンがあるようでしたが、最早そんな事はどうでもよくなっていましたね。
こういう答えのある難問を解く、最短最高点を目指してひたすら解く、っていうゲームにはまり込んでしまう自分の特性を僕は、そのゲームで知ったんです。単純でやれることが限られている、今世のなかにあるゲームはその解答が極端に限られているか、無限に存在するかの両極端過ぎる気がするんですよね、だから『最適解』を求めようとする僕には『つまらなく』感じてしまうのかもしれません。これは後から考えた理由なので、本当の所はよくわからないんですよね……でも、レトロゲームと今日呼ばれているジャンルにド嵌りしてしまったのは確かな事でした。
昔っからゲームが好きで、昔のゲームも数多くコレクションしていた両親はそりゃぁもう、大喜びですよ。今のゲームに全く興味を示さなくなってしまった息子が、事も在ろうか昔自分たちが夢中になったゲームに夢中なんですから。これを喜ばないゲーマーの親は居ない、との両親の談です。
すっかりそうやって、ゲームに虜にされた事を僕は、偽る必要が無かったんですよ。
ゲームを嫌いだと言って、そうやって僕は両親に悲しい思いをさせてきました。関係を険悪にしたのは両親ではありませんでした、一方的に僕の方だったんですから。
その事をこの頃にはもう、僕は分かっていたんです。
ゲームなんて好きに成れそうにない、何をやってもつまらないし興味もわかない。
そういう息子の事、両親は相も変わらず自分のペースで接してくれていたんです。隙あらばゲームは楽しい物なんだぞとめげずに勧めて来る、そういう親なんですよ。だから僕も辟易していた時期があったのでしょう。
いつもいつもゲームの事ばかり話をしている。
時に僕を置いてきぼりでゲームの話に花を咲かせているのに、うんざりしているのはいつも僕の方でした。
きっと、羨ましかったんですよね……。
二人の話について行くには、僕のゲーム知識は圧倒的に少なかった。勿論、どういう意味なのか訊ねていれば喜んで説明してくれるし、何なら元ネタのゲームそのものを引っ張り出しかねないんですが、いや……思い出すにそこまで至れり尽くせりなのが嫌だったのかもしれません。
僕にはやる事が沢山あった。学生なんですから宿題は毎日あるし、生真面目な性格だったから先生に言われた通りの予習復習も欠かさなかった。
気が付いたら自主的に勉強する習慣が在って、僕にはゲームよりもそっちを守る事の方が大事だったんです。困った事に一度も親から勉強しろなんて言われた事がありませんね……たまにはサボってゲームしてもいいんだぞと、誘惑して来るような親です。
とにかく、そういう生真面目が幸いして塾などにかよく必要は無く、中学校に上がっても授業から遅れる事は無かったのですが……だからと言って一般人と話が合うかというとこれが、実は全くの不得手でしたね。
僕の家、テレビを全くと言って良いほど見ないんです。先ほども言いましたよね、動画サイトばかり見ている。勿論それで世間の話題に追いつく事は可能なんですが、でも……やっぱり両親がゲーム関係や仕事の動画関連ばかりを見ているともなればどうしたってピントが合いません。
両親の会話には付いていけないのに、動画サイトで得たゲームに関する知識や情報量は一般的な人を完全に凌駕していて僕の立ち位置はどちらかと言えば『ゲームオタク』である事を自覚し始めたのが中学生という時代です。
ゲームをしていないのに、ゲームは好きに成れそうにないのに。
そう云った苛立ちがゲーム好きの両親への反発となって表れていたのでしょうね。
歩み寄りたかったのは僕の方でした。
自分たちの生き方を変えるつもりが無く、いつでも自由で楽しそうで……僕は、そういう子どもの苛立ちに気兼ねしない、自分が信じた事を真っ直ぐ貫く両親が、多分……大好きだったんです。
いつもゲームばっかりしている、僕の事をそっちのけでゲームばっかりしているから僕は、その強力なライバルと戦う必要が在ると思っていたのかもしれません。ゲーム達から両親を奪う為に、拗ねた態度を取って気を引こうとしていたのかも。
でも、戦って勝つ必要なんてなかったんですよね。
戦う相手を嫌いになってどうするんでしょうか、嫌いだからそれを『殴る』のでしょうか?
それとも暴力を振るう口実として『嫌い』になってしまったのか?
それが、僕にとって立ちふさがる壁であるのなら、それを超えて向こう側を目指すなら……嫌いになって、その壁に近づきたくないと思う様では物事は解決には向かいませんよね?
一つのレトロゲームに見事にハマってしまって、どうしてもそのゲームで『最適解』を見つけたくて、僕は……正直に両親に訴えればよかったんです。
見つけた、僕が好きなゲームはこれだ、って。
そんな古いゲームが?なんて、そんな疑問を僕に投げかけるような事を両親はしませんでした。
そうだろう、それはかつて難しすぎてクソゲーなどと云われた事もあったが今にも通じる名作だよ。
何より、遊んだ人が楽しいと思えた作品が『楽しい』の正解だ。
そうして、勉強しつつ親が集めて大事にしてきたゲームを僕は、時に攻略情報などをネットの海から拾いつつ……自分が考えた『最適解』をプレイ動画に纏める様になっていったわけです。出来心で公開してみたら思いの外反響がすごくて……ああ、今でもこの作品を愛している人は沢山居るんだ、僕の両親らの世代と、僕の様にこれから過去のタイトルを遊ぶ世代と、その中の『楽しい』を見つけた人がこんなに居る。
すっかり、そうやってゲーム界隈にハマり込んでしまったというわけです。
古典作品を理解すると、現在作品のオマージュなども見えてくるでしょう?興味が無かった最近のゲームも、実は過去のリメイクであると『知って』しまうと見方が変わるんです。
いつしか僕は『メージン』という名前で呼ばれる様になっていました。
特にハンドルネームなども決めて居なくて、匿名希望で適当に始めたレトロゲームプレイ動画でした。事も在ろうか僕、本名が髙橋なんですよね……まさか身バレしているんだろうかとビクビクした事もありましたが、そういう事を回避する為のノウハウは父から叩き込まれています。
結局の所、僕をメージンと知る人は世に殆ど居なくて、MFCテストプレイヤー枠に選ばれて初めて、『メージン』を知る人にその正体を明かす事になりましたね。
今後も、ヤトさんとは違って僕は父と同じくアバターに隠れてゲームに関わっていきたいかなぁ。いやぁ、僕にはかつてあったというゲーム・タレントみたいな事は無理だよ、動画クリエイターはライブ配信もよくやってるけど、僕はそういうのは全然ダメなんだ。ナッツさんと同じでゲームしている時は集中してるからお喋りできないし、しゃべりかけられるのも嫌だったりするんだよ。
そうそう、最後に。
レトロゲームを好きに成ってしまった運命として……ゲームセンター嵐っていう古い漫画作品を知ったんですが勿論、衝撃でしたよ。
両親ってば、完全なる確信犯で僕の名前を『嵐』にしたんだって!
ああ、そうかじゃぁこれは一種運命的だと僕は……なんだか不思議と嬉しかった事を覚えています。
でも……うーん、メージンっていうハンドルネームと本名と、どっちが恥ずかしいかな……。
END
ここまでお付き合いいただき、ほんとうにありがとうごさいました!!!
番外編短編9『目覚めし8つ目のプレイヤー』
これを言ったらヤトさん達、大いに驚いていたんですが実は、……親が動画共有サービスクリエイターなんですよね。具体的に誰なのか、っていうのは、会社にも明かすことはできません。何しろウチの親はそれをちゃんとした職業として成り立たせてる人だから。
背景をオープンにしている人も居るけど、父はそれとなく隠している方かな。顔出しは基本NGでアバターを立てて動画を作っている。
まさか、結婚していて子供がいて、子供も同じような事をしているなんて誰も知らないだろう。同時に、僕の親も動画サービスクリエイターだとは誰も気には気が付いていないようだ。
僕も、父も、お互い接点が在る事は世間に知られないように細心の注意を払っているからね。
だからこそ、僕は高校生なのにゲーム攻略動画を沢山作って上げる事が出来るんです。ノウハウを父から得ているし、機材なども揃える事が出来る。都合、父とは同じ機材を使う事は無いのでそこは……まぁ、家庭環境に恵まれていた、という感じかな。
存外両親は僕がゲーム好きなのに大賛成なんだ、いや……本当のことを言うと、ね。
僕は、ゲームはあんまり好きじゃなかった方だと思う。
一時期毛嫌いしていた頃もあったかな、小学生時代の反抗期頃かな?同級生たちがちょっと、そういうメディアと距離を取りたがる時があるんだけど……そういうの、分からないかな。僕の世代とヤトさん達の世代では色々違うかもしれないのだけども。
僕の父がどういう方面に向けた動画サービスクリエイターなのかは勿論、ここでも明かす訳にはいかないんだけど、ゲーム好きなのは明言されているとして実はゲームとはあまり関係無い方向かな。どうにも身バレを恐れて大好きなゲームネタでは動画を作れないと思って居る所が父にはあるかもしれない。もっとも、依頼されればプレイ動画も作るみたいだけどね。
僕の両親は互いにゲーマー同士なんだよ、そう、母もすごいゲームをする人だ。
とすると、環境が見えてくるよね?そう、僕は子供の頃からゲームに囲まれて育ったんだよ。新旧殆どの家庭用ゲーム機があって、同級生らからは無駄に羨ましがられていたな。
でも、僕には、それが……ゲームが在る自分の家っていう環境があまりにも当たり前すぎたんだ。他人がうらやむ理由がよく分からなかった。
少し年齢が上がって、そういう事を理解できるようになった時には、ゲームってそこまで楽しいものだろうか?っていう感覚が生まれ出た後だった。
抑制を一切受けずに育ったからでしょう、とレッドさんが言っていました。僕も、正しくそうだと思います。何時でもそこにあって何時でも遊べる、しかも両親が遊んでいてそれを見ていて僕は、自分でそれを遊んでみようという意欲がさほど湧かなかったんです。
むしろ、面白いよと勧めて来る両親に反発心の方が働いてしまって……それで、僕はどちらかというとゲームは嫌いな方だったと思います。
それがどうして今みたいな事になっちゃったのか、結局、ゲーマーの子はやっぱりゲーマーだと言えばそれまでなのかもしれません。僕には、潜在的にゲームにハマってしまう因子が在ったと言えばそれまででしょう。
お分かりですね、僕は新作ゲームで攻略をするのではなく、すでにやりつくされたであろう昔のゲームを再攻略する方向で『メージン』なんて渾名が付いてるんですから。
そうなんです、別段両親に唆された訳でもなくて、家の事情が事情なだけにテレビよりも動画サイトを見るような環境だったのでごく偶々、レトロゲームと呼ばれる部類のプレイ動画配信を見ていたんです。
ドット数の粗いそのゲームは、極めて単純でとても簡単そうに見えたんですよね、そしてその動画のプレイヤーがこれまた操作がヘタで。後から知るにそういうコンセプトの動画だったんですが、中学生に上がりたての僕にはそういうのがよく分かっていなかった。
その、レトロゲームがですね、僕の家にあったんですよ!
当時の機種で、当時のソフトで、動かせる環境にしてあるゲーム部屋があって僕は、その簡単そうに見えたレトロゲームのパッケージが自分の家に在る事に気が付いて……興味本位で動かして見る事にしたんです。まだ両親への反抗期から抜けて居なくて、ゲームばっかりしてるなんてダサいと思って居る頃なので両親が出かけている間にこっそりとやりました。
それは、ロードナンラーっていうゲームなんですけど……きっと分からない人が多いとは思うんですが気になる人は調べてみてください。とても古いゲームなんですが、アクション要素よりはパズルゲームに近くて、でもテクニックも必要不可欠。
動画で見たゲームとは音が違うからよく見たら、ちょっと違うバージョンの様でした。後で調べるに沢山の派生作品やバージョンがあるようでしたが、最早そんな事はどうでもよくなっていましたね。
こういう答えのある難問を解く、最短最高点を目指してひたすら解く、っていうゲームにはまり込んでしまう自分の特性を僕は、そのゲームで知ったんです。単純でやれることが限られている、今世のなかにあるゲームはその解答が極端に限られているか、無限に存在するかの両極端過ぎる気がするんですよね、だから『最適解』を求めようとする僕には『つまらなく』感じてしまうのかもしれません。これは後から考えた理由なので、本当の所はよくわからないんですよね……でも、レトロゲームと今日呼ばれているジャンルにド嵌りしてしまったのは確かな事でした。
昔っからゲームが好きで、昔のゲームも数多くコレクションしていた両親はそりゃぁもう、大喜びですよ。今のゲームに全く興味を示さなくなってしまった息子が、事も在ろうか昔自分たちが夢中になったゲームに夢中なんですから。これを喜ばないゲーマーの親は居ない、との両親の談です。
すっかりそうやって、ゲームに虜にされた事を僕は、偽る必要が無かったんですよ。
ゲームを嫌いだと言って、そうやって僕は両親に悲しい思いをさせてきました。関係を険悪にしたのは両親ではありませんでした、一方的に僕の方だったんですから。
その事をこの頃にはもう、僕は分かっていたんです。
ゲームなんて好きに成れそうにない、何をやってもつまらないし興味もわかない。
そういう息子の事、両親は相も変わらず自分のペースで接してくれていたんです。隙あらばゲームは楽しい物なんだぞとめげずに勧めて来る、そういう親なんですよ。だから僕も辟易していた時期があったのでしょう。
いつもいつもゲームの事ばかり話をしている。
時に僕を置いてきぼりでゲームの話に花を咲かせているのに、うんざりしているのはいつも僕の方でした。
きっと、羨ましかったんですよね……。
二人の話について行くには、僕のゲーム知識は圧倒的に少なかった。勿論、どういう意味なのか訊ねていれば喜んで説明してくれるし、何なら元ネタのゲームそのものを引っ張り出しかねないんですが、いや……思い出すにそこまで至れり尽くせりなのが嫌だったのかもしれません。
僕にはやる事が沢山あった。学生なんですから宿題は毎日あるし、生真面目な性格だったから先生に言われた通りの予習復習も欠かさなかった。
気が付いたら自主的に勉強する習慣が在って、僕にはゲームよりもそっちを守る事の方が大事だったんです。困った事に一度も親から勉強しろなんて言われた事がありませんね……たまにはサボってゲームしてもいいんだぞと、誘惑して来るような親です。
とにかく、そういう生真面目が幸いして塾などにかよく必要は無く、中学校に上がっても授業から遅れる事は無かったのですが……だからと言って一般人と話が合うかというとこれが、実は全くの不得手でしたね。
僕の家、テレビを全くと言って良いほど見ないんです。先ほども言いましたよね、動画サイトばかり見ている。勿論それで世間の話題に追いつく事は可能なんですが、でも……やっぱり両親がゲーム関係や仕事の動画関連ばかりを見ているともなればどうしたってピントが合いません。
両親の会話には付いていけないのに、動画サイトで得たゲームに関する知識や情報量は一般的な人を完全に凌駕していて僕の立ち位置はどちらかと言えば『ゲームオタク』である事を自覚し始めたのが中学生という時代です。
ゲームをしていないのに、ゲームは好きに成れそうにないのに。
そう云った苛立ちがゲーム好きの両親への反発となって表れていたのでしょうね。
歩み寄りたかったのは僕の方でした。
自分たちの生き方を変えるつもりが無く、いつでも自由で楽しそうで……僕は、そういう子どもの苛立ちに気兼ねしない、自分が信じた事を真っ直ぐ貫く両親が、多分……大好きだったんです。
いつもゲームばっかりしている、僕の事をそっちのけでゲームばっかりしているから僕は、その強力なライバルと戦う必要が在ると思っていたのかもしれません。ゲーム達から両親を奪う為に、拗ねた態度を取って気を引こうとしていたのかも。
でも、戦って勝つ必要なんてなかったんですよね。
戦う相手を嫌いになってどうするんでしょうか、嫌いだからそれを『殴る』のでしょうか?
それとも暴力を振るう口実として『嫌い』になってしまったのか?
それが、僕にとって立ちふさがる壁であるのなら、それを超えて向こう側を目指すなら……嫌いになって、その壁に近づきたくないと思う様では物事は解決には向かいませんよね?
一つのレトロゲームに見事にハマってしまって、どうしてもそのゲームで『最適解』を見つけたくて、僕は……正直に両親に訴えればよかったんです。
見つけた、僕が好きなゲームはこれだ、って。
そんな古いゲームが?なんて、そんな疑問を僕に投げかけるような事を両親はしませんでした。
そうだろう、それはかつて難しすぎてクソゲーなどと云われた事もあったが今にも通じる名作だよ。
何より、遊んだ人が楽しいと思えた作品が『楽しい』の正解だ。
そうして、勉強しつつ親が集めて大事にしてきたゲームを僕は、時に攻略情報などをネットの海から拾いつつ……自分が考えた『最適解』をプレイ動画に纏める様になっていったわけです。出来心で公開してみたら思いの外反響がすごくて……ああ、今でもこの作品を愛している人は沢山居るんだ、僕の両親らの世代と、僕の様にこれから過去のタイトルを遊ぶ世代と、その中の『楽しい』を見つけた人がこんなに居る。
すっかり、そうやってゲーム界隈にハマり込んでしまったというわけです。
古典作品を理解すると、現在作品のオマージュなども見えてくるでしょう?興味が無かった最近のゲームも、実は過去のリメイクであると『知って』しまうと見方が変わるんです。
いつしか僕は『メージン』という名前で呼ばれる様になっていました。
特にハンドルネームなども決めて居なくて、匿名希望で適当に始めたレトロゲームプレイ動画でした。事も在ろうか僕、本名が髙橋なんですよね……まさか身バレしているんだろうかとビクビクした事もありましたが、そういう事を回避する為のノウハウは父から叩き込まれています。
結局の所、僕をメージンと知る人は世に殆ど居なくて、MFCテストプレイヤー枠に選ばれて初めて、『メージン』を知る人にその正体を明かす事になりましたね。
今後も、ヤトさんとは違って僕は父と同じくアバターに隠れてゲームに関わっていきたいかなぁ。いやぁ、僕にはかつてあったというゲーム・タレントみたいな事は無理だよ、動画クリエイターはライブ配信もよくやってるけど、僕はそういうのは全然ダメなんだ。ナッツさんと同じでゲームしている時は集中してるからお喋りできないし、しゃべりかけられるのも嫌だったりするんだよ。
そうそう、最後に。
レトロゲームを好きに成ってしまった運命として……ゲームセンター嵐っていう古い漫画作品を知ったんですが勿論、衝撃でしたよ。
両親ってば、完全なる確信犯で僕の名前を『嵐』にしたんだって!
ああ、そうかじゃぁこれは一種運命的だと僕は……なんだか不思議と嬉しかった事を覚えています。
でも……うーん、メージンっていうハンドルネームと本名と、どっちが恥ずかしいかな……。
END
ここまでお付き合いいただき、ほんとうにありがとうごさいました!!!
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