異世界創造NOSYUYO トビラ

RHone

文字の大きさ
223 / 366
本編後推奨あとがきとオマケの章

番外編短編8『エイトエレメンタラティスの守り人』

しおりを挟む
通貨計算問題答え □ 総合エンディングへ □から分岐しました


番外編短編8『エイトエレメンタラティスの守り人』


 混沌を願わないのは事実だが。
 何かを縛るに魔導師は不向きだ。

 ある程度の手ごたえは感じたがはたして、どこまで信用して良いものか。
 レッドはため息を漏らし長兄会、と呼ばれる会議会場を後にする。

 勘の良い魔導師達は気がついている。
 この世界にあった神の摂理が失われた事。
 それは魔導師にとって『不条理』と呼ばれている。
 理論的に正しい事を邪魔する物事だからだ。

 そういう不条理に邪魔された理論の事を『禁術』と呼ぶ。
 この禁を破るに、時に魔導師達は地下にもぐって秘密の研究に明け暮れる事も少なくない。

 幸い……レッドが属する長兄会は束縛に関しては強い権限を持っていた。
 制約による平和という意味では理解は得られやすい連中が集っているのだ。基本的にフリーダム尊重の次兄会ではこうはいかないだろう。

 禁呪として不条理の罷り通っていた世界は終わった。
 だからと言って今まで禁じられていたものが解放されてよいわけではない……と、その理解は得る事が出来た。
 だが、封じるが良しという結論ではない。

 あくまで現状では混乱が起こるのを阻止するに、規制を掛けて調和を図る。
 それが長兄会の目指す所だ。
 この意見にレッドも肯定的な意見を持っている。

 が、その思いを伝える事は出来ないと、転位門をいくつかくぐりぬけてたどり着く、青い空を見上げた。
 世界は封印を望むだろう。永久に、神が封じた多くの技術がよみがえる事を恐れている。
 今までなかった事がアリになるのだ。
 端的な例をあげれば三界接合技術も本来あった正しい形で生かされるのだろうが、この研究が進めば、最悪死人が蘇るようになってしまう日も来るだろう。

 いずれ全て自由に。

 それは自由の名の元に集った魔導の祖、青の魔導3兄弟の掲げた言葉だ。
 しかし3兄弟で微妙に性格が異なる。
 長兄は秩序を組んで平等を望み、末弟は成長を第一に混沌を容認する。
 次兄は知識への貪欲と自由を唱える。

 空の青は、魔導師達に受け継がれるそれらの意志を思い出させた。

 全て自由に、そうなった時に訪れる混沌と、乱れ入る世界を律する秩序を内包する自由。
 難しいバランスだったろう。3兄弟の関係を『騙る』説話が決して平穏ではないらしいという裏報告書をレッドは読んだ事がある。
 しかしその難しい事をしなければ真の自由は訪れない。

 いずれ、この世界には自由があふれる。
 トビラが開き、多くの異世界の者がこの世界を自由に変えるだろう事はよく理解している。

 レッドは顔を前に戻して……魔導都市から少し離れた丘の上から、遠く海まで見渡せる景色を眺めやった。

 山の天候は変わりやすく、季節によっては海まで見えない。
 今日は珍しく風が穏やかで、その割に空気は淀まず、冴えていた。

 恐らく世界を管理していた神々、神と呼ばれる事を良しとしなかったともいう方位神という存在は……。
 第三の扉。
 この世界の中では合法的に存在するものであり、レッドが本来属する世界的には説明のしようがないもの。その謎の扉が開くのを待っていたのだろうと、レッドは思う。ヤトもそれらしい事を聞いたと言っていた。

 その扉をくぐる事により、世界を縛り、縛られた者達はようやく自由になるのだろう。

 レッドが本来属する世界において、異なる世界へ迷い込む事が大抵現実からの逃避であるように。
 扉をくぐり、たどり着く先に多くの者は逃げ込みたいのだろうと目を細めて笑う。

 神々は去ったのではない、きっとこの世界から逃げたのだ。
 背負っていた責任を放って異世界へ逃げて行った。
 そう思えばこの突拍子もなく世界につきつけられた現実に辻褄が合う。
 去っていくには理由がいる。この世界に居たくないという理由が必要だ。

 ようするに、この世界から逃げたい。

 そう云う事だろう。

「まったく、どこの世界でも異世界目指すに動機が同じというのは、困ったものですね」

 さて、この守り手を失った世界はどうしたいのか。どのように辻褄を合わせていくのだろう。
 ここでレッド、ようやく逆説的に世界の求める意味を感じ取る。

 ああ、ようするに神々は逃げたかった。
 逃げるにトビラを開くを待っている。
 だから世界はその逃げ出したい連中が開きたいトビラが開かれてしまう前に……我々のような新しい形の守り手を呼び込んだのだろうか?

 世界の守り手は今、人に託された。
 そのように多くお膳立てをしたのでしょうね、とレッドは笑う。
 魔導師協会というものもその一つなのだろう。世界にある全ての物事がそのように集約されているのかもしれない。
 世界にイトを巡らし辻褄を合わせる、世界たる彼女の仕事は絶大だ。
 それともトビラを開いて逃げる算段をしたのは別なのだろうか?

 レッドは目を閉じ、風を感じてマントを翻す。

「実に、準備の良い事です」

 独り言を呟いて静かに、町はずれに用意してある転移門を起動させる。

 とにかくしばらく忙しくなりそうだ……と、まずは一方的な報告をするべく。
 彼が望んだ魔王の元へ、音もなく消え行った。

 

               END

 ここまでお付き合いいただき、ほんとうにありがとうごさいました!!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

完 弱虫のたたかい方 (番外編更新済み!!)

水鳥楓椛
恋愛
「お姉様、コレちょーだい」  無邪気な笑顔でオネガイする天使の皮を被った義妹のラテに、大好きなお人形も、ぬいぐるみも、おもちゃも、ドレスも、アクセサリーも、何もかもを譲って来た。  ラテの後ろでモカのことを蛇のような視線で睨みつける継母カプチーノの手前、譲らないなんていう選択肢なんて存在しなかった。  だからこそ、モカは今日も微笑んだ言う。 「———えぇ、いいわよ」 たとえ彼女が持っているものが愛しの婚約者であったとしても———、

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~

沢野 りお
ファンタジー
なんということもない普通の家族が「勇者召喚」で異世界に召喚されてしまった。 兄、橘葵二十八歳。一流商社のバリバリエリートのちメンタルに負担を受け退職後、一家の主夫として家事に精を出す独身。 姉、橘桜二十五歳。出版社に勤める美女。儚げで庇護欲をそそる美女。芸能人並みの美貌を持つオタク。あと家事が苦手で手料理は食べたら危険なレベル。 私、橘菊華二十一歳。どこにでいもいる普通の女子大生。趣味は手芸。 そして……最近、橘一家に加わった男の子、右近小次郎七歳。両親が事故に亡くなったあと、親戚をたらい回しにされ虐げられていた不憫な子。 我が家の末っ子として引き取った血の繋がらないこの子が、「勇者」らしい。 逃げました。 姉が「これはダメな勇者召喚」と断じたため、俗物丸出しのおっさん(国王)と吊り上がった細目のおばさん(王妃)の手から逃げ……られないよねぇ? お城の中で武器を持った騎士に追い詰められて万事休すの橘一家を助けたのは、この世界の神さまだった! 神さまは自分の落ち度で異世界召喚が行われたことは謝ってくれたけど、チート能力はくれなかった。ケチ。 兄には「生活魔法」が、姉には「治癒魔法」が、小次郎は「勇者」としてのチート能力が備わっているけど子どもだから鍛えないと使えない。 私には……「手芸創作」って、なにこれ? ダ神さまにもわからない能力をもらい、安住の地を求めて異世界を旅することになった橘一家。 兄の料理の腕におばさん軍団から優しくしてもらったり、姉の外見でおっさんたちから優遇してもらったり、小次郎がうっかりワイバーン討伐しちゃったり。 え? 私の「手芸創作」ってそんなことができちゃうの? そんな橘一家のドタバタ異世界道中記です。 ※更新は不定期です ※「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています ※ゆるい設定でなんちゃって世界観で書いております。

処理中です...