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完結後推奨 番外編 西負の逃亡と密約

◆BACK-BONE STORY『西負の逃亡と密約 -3-』

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◆BACK-BONE STORY『西負の逃亡と密約 -3-』
 ※これは、本編終了後閲覧推奨の、テリー・ウィンの番外編です※

「流石だねぇ、腕っ節には自信あるというのは事実なんだ」
「でなきゃ、お前に俺を買えとは言ってねぇよ」
 酷く失敗したがな、と小さく口の中で俺は舌打ちをする。

 そう、後悔しているから誰にも言いたくない事で、結局長らく誰にも言えなかった事に。
 俺は……逃げ出す為に余りにも必死で手段を間違えたのだ。
 きっぱり言うのが今でも嫌でな……しかし、ここは覚悟をきめてはっきりと言っておこう。

 俺は自分を売ってしまった。

 誤解が生じそうな言い方だから必死に言い訳を述べるが、ようするに祖国から抜け出す為にたまたまそこにいたルルに向けて、俺を買い取ってくれと懇願したのだ。

 いや、最初はそうじゃなかったんだよ。
 俺は自分を売ろうとしたのではなく、奴の持つ特殊な移動手段に便乗するためにこっちから金を積んだのだ。
 頼むからその転位門とやらで俺もこの国の外へ連れてってくれと、頭を下げて懇願し金はいくらでも払うと願ったはずだ。俺に金のあてがあるのか?という疑問に対してはあると答えよう。
 今、全てが終わった後だからこそ俺がこうやってぶっちゃけている通り、俺は西方ファマメント国の公族ウィン家の二男坊だ。
 公族ってのは何かというとまぁ、ようするに俺らの世界で言うところの貴族様みたいなものだな。王族と言ってもいいのかもしれないがファマメント国は国王制ではなく一応、民主主義の政治手法で納められてる国だ。民主主義とはいえ長くこの体制でいるとどうしても統治体制が腐る事は往々にしてあるよな。
 一族ぐるみで国を治めようと統治者を生み出す家系の事を要するに、ファマメント国では公族と呼ぶ。
 長らく続いた統治体系に、カネと権力とをすっかり集めて常に統治者として政府を動かせる位置にある家の一つがウィン家であり、どうにも相当な古狸であるようだ。
 ファマメントの公族連中は、家を残す為のめんどくさそうな仕来たりとかは別段、無いからな、血の濃さなんて関係ないんだ。優秀なものが家を継ぐ、それがファマメント公族というものらしい。ウィン家に所縁のある者が国を統治する側にいる事が重要であって、それが二男か長男か、男女も関係ない所がある。
 公族は血で国を動かしている訳じゃない、そういう詭弁をきっちり理解しているのがウィン家と言ってもいいんだろう。
 実際、ウィン家当主は俺の姉で、女性だったりしたし。
 ああ、テリー・T・ウィンには兄弟がいるんだ。
 姉と、兄がいて俺は末弟として育てられていた。
 やや兄・姉と歳が離れている所為か姉が当主の座を退いた場合、次期ウィン家当主は俺になる……と、聞かされて育った。二男だからウィン家とは関係ない、とはいかないのだな。

 関係ありまくりだ。

 俺はその家から逃げ出してきた。逃げた理由は簡単では無いのだが、分かりやすく言うなら……ウィン家を、姉に代わって背負うってのが嫌になった、トコかな。
 よくある反抗期、なぁんてかわいいもんならよかっただろうがな。
 ……詳しく説明するとそう簡単な問題じゃねぇ。

 それはまぁ、おいおい話すとしてとにかく俺は、ウィン家から逃げ出す為にたまたまファマメント国にやってきていた遠東国のルル・クルエセルに縋る勢いで頼ったのだ。
 奴もまたイシュタル国においてようするに、公族みたいな立場の人間だ。そういう連中ってのは何かよくわからん繋がりがあって、俺はウィン家の人間としてルルがどこの人間で、何をしているのかなどを聞いていた。
 あんま好きじゃないのだが義務的に連れ出されていた『ぶとうかい』って奴でルルと、面識が出来ていたのだ。言うまでもない事だがあえて言う、武闘会じゃなくて舞踏会の方だぞ。

 ルルは国元の稼業から……ようするにエズのクルエセル闘技場経営の事だが……厄介払いされるように暇を出されていたらしい。留学という名目で各国を渡り歩いていた所、どこぞの公族が客人として迎えていたはずだ。

 そのルルがファマメント国首都レズミオでは非常に珍しい、特殊な転位門によって家に帰るという事を俺は知った訳だ。

 ファマメント首都レズミオは『魔法が使い辛い』事で有名なトコでな。その、魔法を使い辛くさせている『システム』もだいぶ古くなってガタついてきているらしいが、魔法成立妨害の結界が今も確かに働いているらしい。
 そんな事情もあって大昔から、レズミオに魔法使いがやってくる事は稀だ。同時にレズミオに魔法使いが居付く事はないし、魔法道具はあまり定着していない。
 しかし魔法が使えないのに標高五千メートル級の高地にある首都へ出入りするのが大変だという理由で、どうにも、魔導師の連中は特殊な移動魔導装置を発明したのだそうだ。かなり特殊で高度な魔導らしく一般的には出回っている代物ではない。
 ようするに値段が高い。
 非常に高額な魔法道具があるにはあったのだ。しかし高額である理由の一つに流通量は非常に少ないというのは想像に難しくないだろう、そういう道具がある事は分かるとして、いくらウィン家としてもこれを手に入れる方法は見当もつかない。

 そいつをルルは持っていやがったんだ。
 そいつで首都を出入りしているとこっそり聞いていた。

 その道具を俺は、どうしても手に入れなくてはいけなかった。
 というのもそれ以外に高い山の上に閉ざされた首都レズミオから、逃げ出せる手段が思いつかなかったからだ。自力で山を下ってしまってもいいが、ぶっちゃけ恥ずかしながら俺は今までレズミオから一度も出た事が無いのだ。……いや、レズミオでは別段珍しい話でもない。
 ファマメント国は西の大地に広いが、統治者は高く狭い首都レズミオから一歩も外に出る事なく地を支配できる。そういう体制が整ってしまっている。
 俺はまだウィン家を背負うには少し若く、ついで……やや反抗的であったりした。おかげで俺にはあまり自由が無くてな、レズミオを下る事を許されたことが無かったんだ。
 首都から全く出た事が無い、ガチガチに束縛されている訳じゃないが、首都近郊までが最大の『俺の世界』だった。
 それ以外の世界など知識でしか知らない。
 知らない世界、未知の世界が怖い訳じゃない。むしろ今属する世界の方が俺には恐ろしいと思えてしまった。
 だから逃げ出したいんだ。レズミオから逃げ出す事に迷いはなかった。
 逃げ出したくてたまらないのなら山を降りるしかない。そのように腹も据えているが長い旅になる事は分かっている、逃げだした俺に追手が付かず逃げていくのを放置してくれるという保証もない。いや、絶対追いかけられるだろう。そういうのから、俺は無事逃げ切る自信だけがほんの少し無かったのだ。
 それよりだったらその、ルルが持っているという魔法道具を使った方が断然に確実だ。
 そう思った訳である。

 いかなる手段を持ってしてもいい、最悪……力づくで奪ってもかまわない。
 最初からそうした方がよかったのかもな、と後で後悔もしたのだが元来、俺はそういう無礼な事は出来ない性分なんだからな。ホントだぞ。

 頭を下げて解決するならそうすればいい話だ。
 金で解決するなら、それで。

 ところが、俺はそのルルという男を甘く見ていたと言えるだろう。
 お願いして同情を引くか、あるいは金を積めばどうにかなる男だと思っていたのだ、甘かったと言わざるを得ない。
 ルルは俺の懇願を前に、しっかりと俺の足もとを見やがった。

 金には困っていない、だから、お金を積まれてもお前の願いは叶えられない。

 やや笑いながら言ったルルのその言葉に、俺は……奴の性根を垣間見た訳だがそれでもまだほんの少しだけだった。後に気が付くに……奴はとんでもない『狂人』である事に俺は、激しい後悔をする事になるって訳だよ。

 気がつけば俺は奴の手駒として動く事を約束させられてしまていた訳だ。
 俺もまぁ、そんな頭がいい方ではないからな……ちょっと気が動転してた事もあり、ルルの口車にほいほい乗せられてつい、
『じゃぁ、俺を剣闘士として買え』
 などと言ってしまったってワケである。


 あいつもそうなんだよな。

 あいつも、逃げだすのに必死でやり方を間違えたって言ってたっけ。
 いや、この時はまだそんな話をアイツから聞いてた訳じゃねぇけど……でも、その話を聞く事になってしまって俺が、どんな気持ちになったか分かるだろ?
 あいつは俺と同じだった。
 それで、えらく親近感が湧いたというのはようするに、こういう事情だ。
 ところが『あいつ』に向けて、実は俺もそうなんだとはすぐには言えなかった。結局言わずに終わりそうだったトコだってのに、それでも良かったのかは今も良く分からない。だって『あいつ』は俺の事なんかどーでもいいと思っているだろう。それだけは間違いない。
 事実を漏らしたのはあくまで俺の都合だ。誤魔化そうと思えば誤魔化すことだって出来ただろうに。
 どうして俺の都合をバラせなかったのかと聞かれれば……そうだな、俺の自尊心がそれを許さなかった、そんなトコか。全くアホな話だと言われそうだが自尊心ってのは大事なもんだ。
 そんなほいほい挫かれてたらどこぞの誰かみたいにMっ気が出てきてダメになるに決まっている。
 隣人にそーいう奴がいるとなおさらそう思うわな。ナッツとかもきっと俺と同じ気持ちに違いない。

 今はこうやって過去話を暴露してんだ、まぁある程度……諦めがついたというか開き直ったというか。
 こうでもしないとあの先走りやがる『あいつ』に並べないというか……。

 どんだけ時間掛けちまったんだって、苦笑いするしかねぇよ。



「武器は使わないんだって?」
 ルルの問いかけに俺はぞんざいに答えていた。
「ハンデだよ、そんくらいしてやんねぇと可哀想だからな」
 専属として登録され、小手調べといくつか設けられた戦いの舞台に出て見たが……あっさり勝てちまったな。
 ルルに呼び出されて様子を尋ねられる間俺は、もう誰にも話すつもりはない……自分の事を反芻してみる。

 ……姉が俺に漏らした言葉は正しかった。

 ハンデと称し武器を使わず、初めて殺しも許可された戦いの舞台に上がってみて理解した。

 俺は……強い。

「ヘタな買い物をした訳ではなさそうだ」
 ルルの言葉に俺は眉を潜める。
「……そう思っていたってか?」
「そりゃぁ疑いたくもなるだろう。西方人というのは物を知らない連中が多い。狭い世界に閉じこもっているから世界を知らない」
 それについては反論の余地がなかったな。
 俺は確かに世界を知らなかった。
 井の中の蛙だったから……知らなかった。

 俺は強いのだ、という事。
 この強さはある意味異常なんだって事さえ俺は……。

「しかし、少しの間に口が悪くなったね」
 苦笑して振り向くルルに俺はそっぽを向いた。

 ルルの持つ転位門に便乗し、イシュタル国エズにやって来てまだ4か月たらず。
 クルエセル登録戦士としてはボチボチ噂が流れ始めたころ合いで、闘技場ルールにも慣れて来た所だ。未だ親しい友人らしいものは出来そうにないが、コバルトのように勝手に取り巻く連中は増えつつある。
 ついで、クルエセルの10本指に数えられていた『厄介な』戦士を一人のしてやった。
 これから俺はその10本指の中に、そいつの代わりに数えられる事になるだろう。
 ルルがまず俺に下した命令はこれで、達成された事になる。
 きつく縛られている縄がほんの少しだが緩んだか……あるいは、これでようやく奴と……奴ってのはこの場合今目の前にいる男、ルルの事だが。

 ……ルルと『戦える』舞台に上がる事が出来たのかもしれない。

「さーな、お上品に喋ってるよかこっちの方が俺の性に合うんだよ」
「せめて僕の前ではもう少し、優雅に振舞ってくれないものかね」
「悪いが、俺はそこまで器用な人間じゃねーんだ」

 命令を忠実に守る事を試されたんだろう。
 そして実力を証明したからこそ……見えない舞台での戦いがこれから始まる。

 まず、専属剣闘士としてクルエセルの10本指と数えられる実力を示せと言われた。簡単だ、その一本をへし折って俺が替わりになればいいんだろう?
 ルルはそう簡単にいかないだろうと思っていたに違いない、4か月足らずで約束を達成した事を把握すると、即座俺を呼びつけてきた。
 おめでとうと、ねぎらいの言葉を掛けられるのを期待はしない。
 俺達の関係はもっと、もっと……鋭利に研ぎ澄まされた刃物を突きつけ合うような緊張のあるものだと思っている。
 俺は都合ルルには逆らえないが、隙あらば喉元に牙を立てようを窺っているし、俺がそういう感情を飼っている事はルルも分かっているだろう。
 こいつは俺に比べりゃ遥かに頭がいいしな。
「君の戦いを見させてもらったが……」
「なんだ?気に食わない事でもあるのか」
 武器を使わない俺の主義に、何か文句でもあるのだろうか。そう思ったが、ルルは満面の笑みで俺の右手を取って握る。
「逆だ、実にすばらしい。武器を帯びずにその戦闘力、君は……いずれ我が神に捧げるに相応しい者の一人となるだろう」
 我が神と語る瞬間だけ陶酔してわずかな隙らしきものを見せる。神の前に無防備に身を投げ出すような素振りをするが……果たしてそれは隙なのか、そうではないのか。
 俺は即座手を振り払って奴から距離を取る。
 我が神とルルが陶酔する相手、闘技の神イシュタルトの前では奴の狂気はあからさまになりやがる。
 むき出しの狂気はもしかすればとても危険なものかもしれない……そうも思えてくる程にな。
 俺は奴の手駒にして、いずれ奴の崇める神に捧げられる供物が一つ、か。
 っても別にイケニエに捧げられるとかそーいう訳ではない。いやまぁ生け贄には変わりないのだろうが……別に俺の命を捧げるとかそういうのではないな。
 ここ遠東方イシュタル国には特有の神様の概念があって、それが闘技の神イシュタルトってんだ。基になっているのは八大精霊の一つである中立と理力のイシュタルトだろう。信仰は国家や文化に伴って色々あるが、イシュタルトを闘技の神として崇めてるのは遠東方の島国であるイシュタル国だけであるようだ。
 しかし、俺の祖国であるファマメントも同じく偶像崇拝の禁止された『神』という概念を祭る宗教がある。それと同じようなもんだと置き換えれば理解は難しくない。
 そのイシュタルトってのはここで信じられている教義によると『戦いを望む』ものらしい。
 ルルがそりゃもー長ったらしくこの歴史について、俺に説明垂れてくれたがよく覚えてねーや。
 とにかく、色々あって戦いを儀式化して神に捧げなきゃいけないものらしいのだ。

 闘いの神イシュタルトが望み、満足する戦いを捧げる……その為の生贄の一人。
 俺一人じゃダメなのな。
 一人じゃ戦えないだろ?戦う相手が必要だ。

「それで、次はどうすりゃいい?」
 ルルは神に向ける狂気を収めて小さく笑う。
「そう急くものじゃない。時間がかかってでも、最高の舞台を整える事が重要だ」
「ふぅん、よくわからんがそーいうもんか」
 俺がそのようにそっぽを向いている間に奴はまたしても俺の傍にやってきていた。
「ふむ、」
 気配に慌てて振り返ると手が伸ばされていてそれが俺の頬をなでていた。
 どーしてこう、ここ連中は体に触れたがるのだろう。慣習の違いか?
 ……頬に軽い切り傷を負って、テーピング処置していたのを見っけられちまったようだな。
「綺麗な顔が、もったいない。せめて装備くらいちゃんと整えてはどうだい」
 どうかな?俺は……自分が綺麗だとか美形だとか意識した事は無い。やっぱ文化圏と人種の違いだろうなぁ、俺は西方では体格が良すぎる関係美形という形容詞では通ってなかったんだがな。遠東方じゃ西方人戦士は珍しい、珍しいものを『奇麗』と言うのは間違ってはいないのかもしれない。
「主義なんだよ、拳一つが」
「怪我が構わないが、死ぬのは許さんよ?」
「問題ねぇ、負けるつもりはねぇからな」
 闘うなら負けたくねぇんだ。
 戦えない、勝ち目がないと思ったから俺は『家』から逃げたのだろうか?
 そんな事を思いながら、ルルに不敵に訴えてやった。
「生活には慣れたかい?」
「ぼちぼちな、」
「下町には降りて見たか?」
「ああ、荒くれどもが多くて困るけど、そいつもいい刺激だ」
 ルルは苦笑する。
「話は聞いているが、君は一応クルエセルの看板を背負っているんだからね?」
「ふん」

 看板を背負わせておいて存分に暴れろと命令しているのはコイツなんだ、何を今更。

「それで?」
 俺はこいつと長く話すつもりはない。だから、さっさと話を切り上げようとさっきからその気配をちらつかせている訳だが……ルルの奴、察しているだろうに俺を離すつもりはないようだ。
「君は僕の客人なんだ、たまには一緒に食事にでも付き合っていただきたいものだけどね」
 俺はあたりを見回し、部屋の奥に内緒話におあつらえの様子を確認して顔をルルに戻す。
 少し離れたところにコーステーブルがありナプキンが折りたたまれ、グラスが数個控えているのが見えた。
「生憎と食事の作法なんて俺は知らねぇんだがな」
 ……テリオスは、ともかく。今の俺、テリーにはそういうの、望まれてもな。
「連れないねぇ、まぁとにかく大事な話だ。じっくり事情を説明したいのだよ」
「大事?」
「ああ、……隣のエトオノの看板を君に、決めてもらいたくてね」
 ……看板を決める?
 何の話かよく分からず、仕方がなく勧められるまま椅子に座った。
「我らが神に捧げる舞台を彩るに、あちらにも役者を立ててもらいたいのだよ」

 つまり、俺がクルエセルを背負うように運命づけようとされつつあるのと同じく……。
 隣にある別の大きな闘技場、エトオノの『生贄』も決めようって魂胆か。

 決めるのに俺を使う、そういう話だろう。
 俺は……国を治める道具になる事から逃げてきたはずなのにな、ここでもまた何かの駒として、利用される立場にあるんだよな……だからきっと気に食わないのだ、失敗したと後悔をしている。
 素直に命令に従うつもりはない、まっぴらだ。
 弱みあれこれ握られているから従順なフリはするが、ぜってぇお前の目論見通りにはしてやらんぞと心に誓いながらながらルルの話を聞いてやる事にした。



 食前酒がふるまわれ、前菜の運ばれてくる様子を横目で眺める。
 作法なんて関係なく振舞おうかとも思ったが、ここまできっちりテーブルが整っていると逆に不作法が出来ないのが俺の性分らしい。
 気がつけばマナーに乗っ取り道具使ってるのな。
 まぁいいや、誰か見ている訳じゃねぇんだし作法に則っても、不作法でもどーだって。
 そんなどうでもいい事を考えながらルルの話を聞いている。
 俺の様子にルルは満足げだな、本当、こいつの考えてる事はよくわからん。

 話は……隣のライバル闘技場、エトオノの話みたいだがあんま興味ねぇ。
 適当に聞き流していたが……ふっと物騒な単語が飛び出してきたのに視線が前を向いてしまう。
 ルルもまた、俺が反応するのを分かってたようで俺が顔を上げたのを満足そうに見ていた。

 怪物。

 この単語はそう簡単に使うものじゃねぇ。
 言語系統は『俺』テルイ-タテマツの世界とほぼ同じである様だが、単語そのもので意味が異なったり、重さが違ったりする事がある。
 あっちの世界じゃ『魔物』も『怪物』も同じような意味だろうが、こっちの世界じゃ明確に意味が違う。それはリコレクトして記憶を参照するからよく分かる。
 なぜならこっちの世界には魔物と定義される生物がちゃんと存在するからだ。
 魔物っていうのには、魔種だとか魔道だとか色々あるわけだがようするに、一般的な生物の枠を超えた生物の事で、普通ではない、的な意味でも使われる。そのあたりはアッチのニュアンスに似ている感じか。
 ところが同じ意味で『怪物』は使えない。
 『怪物』は、コッチの世界じゃ『ありえないモノ』という意味が非常に強い。

 ルルは魔物、ではなく怪物、と言った。

 エトオノには……怪物がいるのだという。
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