転生したら凄腕鍵師だったんだが、なぜか美少女パーティの『心の鍵』まで解錠してしまう件 ~俺の技術は物理も概念も開けるらしい~

暁ノ鳥

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第3章:陰謀の輪郭(4)

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 暗がりから、銀色の鎧を身につけた一団が現れた。
 その中央には、優雅な黒と白の制服に身を包んだ一人の女性がいた。
 長い銀髪を後頭部でまとめ、冷たい青い瞳を持つ彼女は、まるで氷の彫像のように感情を感じさせない。
 首元には銀色の首輪のような装飾が見える。

「セラフィナ……」

 シルフィアが低い声で言った。

「そして施錠騎士団……」

 エリスも緊張した面持ちで呟いた。

「ヴァレンタイン家の跡取り……予想通り来たな」

 セラフィナと思われる女性が冷たい声で言った。
 その声には感情がなく、まるで機械のようだった。

「お前たちはここで止まるべきだ。これ以上進めば、世界の秩序を乱すことになる」
「何を言っている?」

 シルフィアが一歩前に出た。

「秩序を乱しているのはお前たちだろう!  ロード・Xと手を組み、『森の心臓』を悪用しようとしているのは!」
「無知な……」

 セラフィナの表情が僅かに歪んだ。
 それは侮蔑か、それとも憐れみの表情か。

「我々はただ、秩序を守るために行動しているだけだ。『施錠』こそが世界を安定させる唯一の方法なのだ」
「嘘だ!」

 シルフィアは剣を構えた。

「お前たちは『森の心臓』を使って封印を解こうとしている。それが世界に災いをもたらすことを知らないのか?」
「災いになるのは、むしろお前たちのような存在だ」

 セラフィナの冷たい視線が俺に向けられた。

「特に……『開く者』」

 彼女は右手の紋様を見つめていた。
 どうやら俺の能力について知っているようだ。

「お前のような存在こそ、世界の秩序を根底から覆す危険因子だ。今ここで排除する」

 彼女の言葉と同時に、騎士団の兵士たちが剣を抜いた。
 シルフィアが叫んだ。

「ここは私が食い止める!  残りは『聖域』へ急げ!」
「ふさわしくない者を通すわけにはいかない」

 セラフィナは手を前に出した。
 その瞬間、森の中に波動が広がり、木々が突然動き始めた。
 幹から伸びた枝が、俺たちの周りを取り囲む。

「森を操っている……!」

 エリスが驚いた声を上げた。

「これが施錠騎士団の力……」

 シルフィアは果敢に剣を振るい、枝を切り払った。
 しかし、次々と新しい枝が伸びてくる。

 クロエは素早く動き、小さなナイフと煙玉を投げた。
 煙が辺りを包み、一時的に視界を遮る。

「今のうちに!」

 彼女の声に従い、俺たちは森の奥へと走り出した。
 しかし、セラフィナは冷静に手を振った。
 風が吹き荒れ、煙を一掃する。

「無駄だ」

 彼女は俺たちの前に立ちはだかる。
 その動きは超人的で、風のように素早かった。

「もうこれ以上は進ませない」

 彼女は右手を掲げた。
 銀色の光が指先から溢れ出し、空気中に複雑な紋様を描く。

「『絶対施錠』」

 彼女の声と共に、俺たちの周りの空間が凍りついたように感じた。
 体が急に重くなり、動きが鈍くなる。
 まるで何かに縛り付けられたかのようだ。

「こ、これは……」

 シルフィアも剣を振り上げることができず、足元で膝をついた。

「動けない……」

 クロエも苦しそうに呟いた。

「これが『施錠』の力……」

 エリスの声には恐怖が混じっていた。
 ミーシャは恐怖に目を見開いたまま、身動きができなくなっていた。

 唯一、俺だけが何とか立っていられる状態だった。
 右手の紋様が強く輝き、セラフィナの力に対抗しているようだった。

「ふむ……さすがは『開く者』か」

 セラフィナの冷たい視線が俺に注がれる。

「私の『施錠』に耐えられるとは……だが、どこまで持つかな?」

 彼女はさらに力を込めた。
 空間の圧力が増し、息をすることさえ困難になってくる。

「くっ……」

 俺は右手を懸命に掲げた。
 『万物解錠』の力を解き放とうとする。

「万物……解錠!」

 右手から放たれた光がセラフィナの力と衝突する。
 一瞬、彼女の『施錠』が揺らいだが、すぐに安定を取り戻した。

「なるほど……確かに驚異的な力だ」

 彼女は少し興味を示したようだった。

「だが、まだ未熟すぎる。本来の『開く者』の力に比べれば、児戯に等しい」

 彼女の言葉に、疑問が湧いた。
 本来の『開く者』?  彼女は何か知っているのか?

「質問があるようだな」

 彼女は俺の表情を読み取ったようだ。

「かつて『開く者』と『閉じる者』は、世界の均衡を保つために存在した。しかし、『開く者』は常に混沌をもたらし、秩序を乱すことしかしなかった」

 彼女の表情には、過去に対する何かしらの感情が浮かんでいるように見えた。
 それは怒りか、それとも憎しみか……。

「だから、我々『施錠騎士団』が立ち上がったのだ。世界に必要なのは秩序と安定。それは『施錠』によってのみ実現する」
「それは……間違っている……」

 俺は息を詰まらせながらも言った。

「閉じることだけでは……何も生まれない……開くことで……新しい可能性が……」
「黙れ!」

 突然、彼女の感情が爆発した。
 それまでの冷静さが崩れ、激しい怒りが浮かんだ。

「お前が何を知っているというのだ!  混沌がもたらす悲劇を、お前は見たことがあるのか?」

 彼女の力がさらに増し、俺の体が宙に浮いた。

「今ここで、お前の力を永久に『施錠』してやる」

 セラフィナの手が俺の右手に伸びた。
 彼女の指から銀色の糸のようなものが伸び、紋様に絡みつく。
 激痛が走った。

「うっ……!」

 そのとき、突然の閃光が森を照らした。

「セラフィナ様!  急を要します!」

 騎士団の一人が叫んだ。

「月蝕が始まります。今すぐ『聖域』に行かなければ……」

 彼女は一瞬躊躇した後、俺から手を離した。

「後で決着をつける。今は『森の心臓』が優先だ」

 彼女は冷たく言い放ち、振り返って森の奥へと消えていった。
 騎士団の兵士たちも彼女に続いた。

 彼女が去ると同時に、『施錠』の力も弱まり、全員が再び動けるようになった。

「大丈夫か?」

 シルフィアが駆け寄ってきた。
 彼女の顔には心配の色が浮かんでいる。

「ああ……なんとか」

 右手を見ると、紋様が薄くなっていた。
 セラフィナの力によって、一時的に弱められたようだ。

「あの力は尋常ではない……」

 エリスが震える声で言った。

「『施錠』の権能を完全に使いこなしています。しかも、自然の魔力まで操れるとは……」
「でも、今は追わなきゃ!」

 クロエが急かした。

「彼女は『聖域』に向かったわ。私たちもすぐに行かないと!」

 ミーシャはまだ怯えた表情のままだったが、決意を固めたように頷いた。

「ミーシャが案内する!」

 俺たちは再び立ち上がり、森の奥へと進んだ。
 セラフィナの言葉が頭の中でこだまする。

 『開く者』と『閉じる者』……世界の均衡……。

 彼女の言葉の中に、何か重要な真実が隠されているような気がした。
 しかし今は、それを考えている暇はない。

「急ごう」

 シルフィアの声に従い、全員が足を速めた。

 森はますます密になり、木々は巨大化していく。
 そして、突然目の前が開けた。

「あれが……『聖域』……」

 エリスが畏敬の念を込めて言った。

 そこには、巨大な楕円形の空間が広がっていた。
 周りを巨木に囲まれ、中央には水晶のような透明な湖がある。
 湖の中央には小さな島があり、その上に古代の遺跡のような建物が建っていた。

「『森の心臓』はあの建物の中……」

 エリスが呟いた。

「でも、どうやって渡るの?」

 クロエが湖を見て言った。

「橋はないし、泳ぐにはあまりにも広すぎる……」
「あれを見て」

 シルフィアが湖の岸を指差した。
 そこには複数の足跡があり、セラフィナたちが通った形跡があった。
 しかし、足跡は湖の手前で途切れていた。

「彼らはどうやって渡ったんだ?」
「わかった!」

 エリスが何かに気づいたように言った。

「『領界の鍵』です!  シルフィアさんのペンダントが橋を現すはずです!」

 シルフィアはペンダントを取り出した。
 空色の輝きを放つその鍵を、湖に向けて掲げる。

「領地に続く道よ、目の前に現れよ……!」

 彼女が古代の言葉を唱えると、ペンダントが強く輝き始めた。
 湖の表面に波紋が広がり、水面から水晶のような橋が浮かび上がってきた。
 それは島まで一直線に伸びていた。

「成功した……!」
「すごい!」

 ミーシャが目を輝かせた。

「シルフィアさん、すごいよ!」
「急ごう」

 シルフィアは先頭に立ち、橋を渡り始めた。
 全員が彼女に続く。

 島に近づくにつれ、建物の姿がより鮮明に見えてきた。
 それは古代の神殿のような造りで、中央に円形の祭壇があるようだった。

「あれは……」

 クロエが島の向こう側を指差した。
 そこには、セラフィナと数人の騎士団の姿があった。
 彼らはすでに建物に足を踏み入れていた。

「間に合うか……」

 全員が最後の力を振り絞って走った。
 橋を渡り切り、建物の入り口に到達する。

「ここから先は気をつけて」

 シルフィアが警告した。

「罠があるかもしれない」

 慎重に建物の中へと進む。
 内部は予想外に広く、天井は高く、壁には古代の文字が刻まれていた。
 
 しかし、誰もそれを読む余裕はない。
 先方から声が聞こえてきたからだ。

「来たな、セラフィナ」

 男の声が響き渡った。
 おそらくロード・Xだろう。

「『森の心臓』を手に入れ、古の力を解放する時が来た!」
「静かにしていろ、ロード・X」

 セラフィナの冷たい声が響いた。

「お前はただの道具に過ぎない。本当の目的を理解していないくせに」
「な、何だと?」
「黙れ」

 空気が震えるような感覚があった。
 セラフィナが再び『施錠』の力を使ったのだろう。

 俺たちは音を立てないように前進し、ついに中央の大広間に到達した。
 そこには巨大な祭壇があり、その上に緑色に輝く宝玉が置かれていた。

 『森の心臓』だ。

 セラフィナはその前に立ち、儀式のような所作をしていた。
 ロード・Xは少し離れた場所で、まるで物のように黙って立っていた。
 彼は『施錠』で動きを封じられているようだった。

「止めるんだ!」

 シルフィアが剣を構え、飛び出した。
 セラフィナは振り返り、冷淡な笑みを浮かべた。

「もう遅い」

 彼女は手に偽りの『領界の鍵』を持っていた。
 それは確かにシルフィアのものと似ているが、異質な黒い光を放っている。

「月蝕は始まった。『施錠』の時だ」

 彼女は偽りの鍵を『森の心臓』に近づけた。

「やめろ!」

 シルフィアが駆け寄ったが、騎士団の兵士たちが立ちはだかる。
 彼女は剣を振るい、一人を倒したが、他の兵士たちに囲まれてしまった。

 クロエとミーシャも加わり、兵士たちと戦い始める。
 エリスは後方から魔法で支援した。

 俺は兵士たちの間を縫って、セラフィナに近づこうとする。

「無駄だ」

 彼女は手を振った。
 空間が歪み、俺の体がピタリと止まる。
 再び『施錠』の力だ。

「お前の『開く力』は、私の『閉じる力』には敵わない」

 彼女は余裕のある表情で言った。

「もうすぐだ。『森の心臓』が私のものになる」

 偽りの鍵が緑の宝玉に触れた。
 強烈な閃光が走り、祭壇全体が震え始めた。

「うっ……!」

 俺は必死で『施錠』の力に抵抗しようとする。
 右手の紋様が弱々しく光るが、十分な力を発揮できない。

 その時、突然ミーシャの声が聞こえた。

「トオルさん、使って!」

 彼女が何かを投げてきた。
 それは小さな緑色の石……彼女がくれた『職人の石』だった。

 石が手に触れた瞬間、右手の紋様が強く反応した。
 紋様が元の輝きを取り戻していく。

「これは……」

 石から力が溢れ出し、体内に流れ込んでくる。
 『万物解錠』の力が増幅されたのだ。

「今だ!」

 全身の力を込めて、セラフィナの『施錠』に抗う。

「万物解錠!」

 光がほとばしり、その瞬間セラフィナの力が押し戻された。
 自由を取り戻した俺は、一気に祭壇へと駆け寄った。

「何?!」

 セラフィナの驚きの声。
 偽りの鍵と『森の心臓』の間に、俺は右手を差し込んだ。

「開け!」

 右手から放たれた光が、緑の宝玉を包み込む。
 宝玉が強く脈動し始め、セラフィナの持つ偽りの鍵を弾き飛ばした。

「不可能だ……!」

 彼女の表情が崩れた。 
 しかし次の瞬間、想定外のことが起きた。
 『森の心臓』が不規則に明滅し始め、建物全体が激しく揺れ出したのだ。

「これは……何かがおかしい!」

 エリスが叫んだ。

「儀式が中断された!  システムが暴走しています!」
「なんてことを……」

 セラフィナの声には、初めて恐怖が混じっていた。

「『森の心臓』が不安定になれば、封印そのものが……!」

 天井から岩が崩れ落ち始めた。
 建物全体が崩壊の危機にあった。

「逃げるぞ!」

 シルフィアが全員に叫んだ。

「でも、『森の心臓』は?」
「今はそれどころではない!」

 全員が入り口に向かって走り出した。
 セラフィナと残りの騎士団も撤退を始めている。
 唯一、ロード・Xだけが『施錠』で動けないまま取り残されていた。

「ロード・X!」

 シルフィアが立ち止まった。
 敵とはいえ、見捨てられないのが彼女の騎士としての誇りだ。

「行くな!」

 クロエが止めようとしたが、シルフィアは既にロード・Xの元へと走っていた。
 彼女は剣を使い、彼の『施錠』を物理的に破壊しようとする。

「この恩は忘れんぞ……」

 ロード・Xは動けるようになるや否や、捻くれた謝意を示した。
 全員が建物から脱出し、橋を渡り始めた。
 セラフィナたちも別方向から逃げている。

「大丈夫かしら……?」

 橋の中央で振り返ると、建物は完全に崩れ落ち、『森の心臓』も見えなくなっていた。

「まだ危険です!」

 エリスが警告した。

「島全体が沈みます!」

 彼女の言葉通り、島が徐々に湖の中に沈み始めていた。
 全員が必死で岸を目指す。

 最後の一人がようやく岸に到着したとき、橋が水中に消えた。
 同時に、背後で大きな爆発音がした。
 振り返ると、島は完全に湖の中に沈み、その上に緑色の光の柱が立ち上っていた。

「これは……」

 エリスが震える声で言った。

「『森の心臓』の力が解放された……でも、完全な形ではなく……」
「どういうことだ?」
「セラフィナの儀式は途中で中断されました。その結果、『森の心臓』の力は不完全な形で放出されています」
「それは……良いことなのか?」
「……分かりません」

 彼女の表情には不安が浮かんでいた。

「本来の封印は維持されましたが、『森の心臓』の力が周囲に漏れ出しています。これからどうなるかは……予測できません」

 ロード・Xは騎士団が去った方向を見ていた。

「セラフィナめ……私を使って、本当の目的を隠していたとは……」

 彼の言葉に、全員が注目した。
 
「本当の目的とは何だ?」

 シルフィアがロード・Xに詰め寄った。

「お前は何も知らないようだな」

 ロード・Xは自嘲気味に笑った。

「私はただ『領界の鍵』の力が欲しかっただけだ。領地の拡大と権力のためにな。だがセラフィナは違う。彼女の目的は『森の心臓』を使って、世界中の全ての『鍵』に『施錠』をかけることだったのだ」
「世界中の全ての鍵に?」
「そう。つまり、世界そのものを『閉じる』ことだ。変化を止め、全てを現状のまま『施錠』する。それが施錠騎士団の本当の目的だったのだ」
「なんてことだ……」

 エリスが震える声で言った。

「それでは世界は前に進めない。全ての可能性が『閉じられる』ことになる……」
「だが、今回はその計画を阻止できたようだな」

 ロード・Xは俺たちを見た。

「お前たちのおかげで、セラフィナの計画は失敗した。だが、彼女はあきらめないだろう。次なる計画を立てているはずだ」
「なぜそんなことを教えてくれるの?」

 クロエが疑わしげに尋ねた。

「私を見捨てず助けてくれたからだ」

 彼はシルフィアを見た。

「私を罪に問うのは構わない。だが、セラフィナの危険性を知っておくべきだと思ってな」

 彼の表情には、珍しく真摯さが見えた。

「もう一つ知っておくべきことがある。シルフィア・ヴァレンタイン」
「何だ?」
「お前の家に着せた濡れ衣を晴らすための証拠は、私の屋敷の地下室にある。引き出しの中の黒い箱だ。鍵はかかっているが……」

 彼はトオルを見て、皮肉げに笑った。

「『開く者』にとっては問題ないだろう」
「……信じていいのか?」
「信じるか信じないかはお前次第だ。だがもう私には嘘をつく理由はない」

 そう言うと、彼は立ち上がった。

「さあ、私を捕らえるのか?  解放するのか?」

 シルフィアは剣を抜かずに言った。

「アルカニアの当局に自首しろ。そうすれば、後で裁判で証言してやる」
「ふん、騎士らしい人情か」

 ロード・Xは苦笑した。

「分かった。セラフィナへの復讐のためにも、そうしよう」

 彼は森の出口へと歩き出した。

「本当に行かせていいの?」

 クロエが心配そうに言った。

「大丈夫だ」

 シルフィアは静かに答えた。

「あの男は卑怯ではあるが、今はもう嘘をつく理由がない。それに……」

 彼女はペンダントを握りしめた。

「私の名誉を回復する方法を教えてくれた。それだけでも感謝するべきだろう」

 湖の方を振り返ると、緑の光の柱はさらに高く伸び、夜空に向かって光を放っていた。

「これからどうなるのでしょう……」

 エリスが不安げに呟いた。

「『森の心臓』の力は不安定になっています。この森だけでなく、周辺地域にも影響が出るかもしれません」
「その時はまた対処しよう」

 俺は仲間たちを見回した。

「今回は計画を阻止できた。次回も必ず」
「ええ、そうね」

 クロエが笑顔で頷いた。
 その表情には以前よりも強い自信が見えた。

「私たち、いいチームになったわ」

 ミーシャも元気よく飛び跳ねた。

「うん! ミーシャ、みんなといると強くなれる気がする!」

 シルフィアは静かに頷いた。

「確かに……一人では到底無理だっただろう」

 エリスも珍しく微笑んだ。

「皆さんと共に旅をして、研究だけでは得られない貴重な経験ができました」

 五人は互いに顔を見合わせ、そして緑の光に照らされた森を後にした。

 アルカニアに戻り、ロード・Xの屋敷からの証拠を見つけ、シルフィアの名誉は回復するだろう。
 しかし、セラフィナと施錠騎士団の脅威はまだ続いている。
 そして何より、『森の心臓』の力が不安定になったことで、今後どのような事態が起こるのか予測できない。

 しかしその時は、またこの仲間たちと共に立ち向かおう。
 『万物解錠』の力を持つ俺と、勇敢な仲間たちなら、きっと乗り越えられるはずだ。

 そう思いながら、俺たちは新たな旅路へと一歩を踏み出した。

 森の奥では、緑の光の中に、何かが目覚め始めていた。
 これは終わりではなく、新たな冒険の始まりだったのだ。
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