魔力ゼロでも諦めない! 転生エンジニアがITスキルで挑む異世界革命

暁ノ鳥

文字の大きさ
28 / 32

【第27章】「ローガンの決起――結界石への大規模ハッキング」

しおりを挟む
 大厄災の封印をコード化して防ごうとするケイたちの努力をあざ笑うかのように、ローガンは裏で結界石を狙う計画を着々と進めていた。
 彼が抱える過去の絶望――魔術ギルドからの追放、家族を失った悲劇、腐敗を告発しようとしても握り潰されてきた経緯――それらが世界そのものを壊す原動力となり、今や大陸各地の都市を同時多発的な混乱へと誘うべく、ローガンは大規模なハッキングを仕掛ける。
 それは同時に、大厄災の門をこじ開けるための最終ステップでもあった。

 
 深夜、フォーグリアの城門を守る守備隊が突然の警報に慌てだした。
 
「こんな時間に、モンスターの大群が門を突破しようとしている!  どうして結界の警戒が遅れたんだ!」
 
 その声が響き渡る頃、同様の混乱が隣接するカイマールや他の中規模都市でも起きていた。
 まるで連鎖するように、結界石が期待通りに動かず、モンスターの侵入を阻む効果が一部機能しない状態に陥る。

「報告!  街中の結界端末が一斉に不具合を出しています!」

 住民たちは夜更けの静寂を破る悲鳴に包まれ、守備隊は必死に応戦するが、都市間の連携は不十分で応援が間に合わない。
 わずかの時間差で何箇所もの結界が弱体化し、モンスター群が城壁を突破してしまうのだった。

 その背後で、ローガンは闇の路地に潜み、術式端末を操っていた。
 魔術ギルドを追放された天才魔術師――彼は家族を失った絶望から、腐敗を温存する世界を「一度壊す」ことに執着している。
 ローガンは保護費制度や結界運用のデータを逆手に取り、署名のない古い結界石を中心にハッキングを進めれば、モンスター誘導も容易いと考えていた。
 ローガンの瞳には、悲壮感と破壊願望が入り混じった狂気が宿っていた。

 
 ローガンの改ざんが恐ろしいのは、単なるモンスター襲撃誘発に留まらないことだ。
 ローガンは結界石を介し、古代封印術のノードにも干渉し始める。
 フレイアが遺跡で調べた通り、大厄災を封じている術式はつぎはぎだらけで脆弱な部分が多い。
 そこで複数の都市に点在する封印ノードを同時に壊せば、大陸規模で封印が歪み、大厄災の門が実際に開いてしまう可能性があった。
 ローガンは無造作に髪をかき上げ、端末に古代ルーンを連続入力する。
 
「きっかけさえ作れば、世界は自ずと崩壊への道を転がる……。これが俺の復讐であり、破壊だ」

  結界管理装置の内部で門を開く座標が書き換わり、魔力が未知の形で流れ始めた。

 
 フォーグリアやカイマールだけでなく、保守的な領主が統治する中規模都市でも、原因不明の結界崩壊が発生していた。
 市民は自衛手段が乏しく、ギルドに助けを求めるが、大都市アステリアから派遣されるはずの援軍は混乱状態のためで滞りがちだ。
 こうして、ローガンのハッキングによる「モンスター襲撃+封印ノード破壊」という二重攻撃が各地を襲い、夜明け前には死傷者が増大し始めていた。

「大厄災……本当にそんなものが再び起きるのか」
「いや、実際に門が開かれたら、いったいどうなるんだ」

 改革派の一部は恐怖に震えながら、なんとかシステム復旧や都市間連携を試みるが、追いつかない事態となっている。


 一方、アステリアの拠点ではケイやアリア、フレイアらが終夜端末を監視していた。
 昼間の会議が終わり、一息つこうとしたところで飛び込んできた結界異常の報告。
 端末のログを読み解くと、未適用の都市を狙ってローガンが改ざんを仕掛けている形跡が連続で発見される。

「これは保守派都市を含む、セキュリティが旧来型の結界石ばかり攻撃されてます」

 アリアが画面を見ながら呆然とする。

 「しかも同時多発……どうやって止めれば?」

 フレイアは古代封印ノードの地図を広げ、「ここが壊れれば、封印の中心部分が弱り、門の座標が安定してしまうかもしれない」と震える声を漏らす。
 エレナは剣を握り、「あたしは直接現地に行ってモンスターを抑える!  しかし、複数都市に同時対応は難しいか」と苛立ちを募らせる。
 ケイは端末越しに呼吸を整え、心に蘇る前世のデスマーチをなんとか押さえ込む。
 
「俺たちがバラバラに特攻しても同じ過ちを繰り返すだけだ。だから、分担してセキュリティアップデートを段階的に適用し、改ざん余地を一つずつ潰していこう。ローガンが時間をかけた分、こっちも耐え抜くしかない!」

 ケイの言葉で、全員が一斉に動きだす。
 アリアは、都市ごとの端末に署名付き術式を遠隔で流し込み、改ざんをロックダウンさせる。
 フレイアは、封印ノードの地図を参照し、最も危険な箇所に封印の補強パッチを送り込む。一部は現地の術師に手伝ってもらい、臨時対応を行う。
 エレナは、フォーグリアとカイマールの防衛線を回り、モンスター襲来を物理的に阻止。バラバラに散る仲間をサポートするため、騎乗で移動しながら連絡を取る。
 ラヴィニアは、保守派が「魔力ゼロの失敗だ」と情報操作を始めようとするのを、政治的コネで封じ、各都市からも最低限の協力を得られるよう交渉。
 彼らは、夜のうちに大まかな作戦を練り、再び日は昇らぬうちに活動を開始した。

 アリアが涙目で笑った。
 
「こんな状況でも、やるしかないですよね」
 
 ケイは小さく頷く。

「ああ、オレたちのコード魔法が不完全だって思い知らされたけど、ここで諦めたら世界が本当に終わるからな」

 フレイアは「封印ノードを死守しないと、これ以上壊れたら、門が半分どころか一気に開くかもしれない」と危機感をあおる。
 エレナは剣を背負い直し、「いざって時はあたしが剣で守るわ。多少無茶でもやるしかない」
 ラヴィニアは「保守派もいずれ自分たちの身が危険だと理解するでしょう。今はとにかく被害を抑えます」と誓う。

 こうして、大厄災の門が開きかけるという世界規模の危機に対し、ケイたちは再び立ちあがった。
 ローガンの決起は単なるモンスター襲撃に留まらず、封印そのものを崩す宣戦布告だ。
 だが、ケイたちもコードセキュリティという武器を手に、大失敗を乗り越えて仲間と共に戦おうとしている。
 戦いはいよいよ最終局面へ――破壊か修正か。
 決着の時が近づきつつあるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

処理中です...