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飯島 禊
禊の書物庫。素晴らしき怪異
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夜は更けて山中にある屋敷では
フクロウや虫の声、
風の吹く音だけがこだまする。
私は見慣れない木の天井と
豪華な装飾の施された欄間を見て呟く。
「トイレいきたい…」
私は一緒に寝ていた飯島さんの
腕を慎重にそーっと退けて布団から出る。
「わざわざトイレで起こす事ないよね…」
飯島さんの寝顔は意外なほど穏やかで
今までの凶行が嘘みたいに思える。
全然、嘘じゃないけど。
コツコツさん…白石さんを殺してるし、
私も殺されかけた。
そういえば、白石さんはどこだろ?
ついてきていたのに姿を見てない。
まぁ…いっか。
私はこっそりと音を立てないように廊下に出た。廊下はぼんやりと照らされて
雅な風情だった。
何も知らなければ高級旅館かと思うだろう。
「大きい家だなぁ…」
歩き慣れないヒヤリとした廊下を
進む。屋敷は静まり返って、首輪に繋がったリードが廊下に擦れる音だけが聞こえた。
…にしても広い。
廊下が永遠に続いてるみたいに感じる。
そんなことを考えながら歩いていると声がした。
聞き覚えのある男性の声。
「…あぁ…綺麗だ…」
「??」
振り返ると、ある部屋のふすまの隙間から
廊下に一筋の薄明かりが漏れているのが見えた。
「?さっきまで…開いてなかったような…?」
男性の声はそちらからしている。
なんとなく好奇心に駆られて、
声の方へと進んでみる。
男性の声は大きくなり、
だんだんとその言葉の内容が
聞き取れるようになっていく。
そして、
私はゆっくりとその部屋を覗いた。
「本当に綺麗だ…死んでもなお…いや…
死んでいるからこそ…」
部屋の中でぶつぶつと呟いているのは
禊さんだった。床に座り込み、背を丸めながら本を眺めてニヤニヤとしている。
…何みてるんだろ…そんなことを考えていると禊さんがこちらにパッと振り返る。
「……ぁ!!」
「だれ…?…」
ま…まずい…!!
えっと…えっと…どうしたら…
あれこれ考えているうちに
目の前の襖が勢いよく開けられる。
スパンっと小気味良い音がして、
静寂が訪れる。
…禊さんと私は見つめあったまま
硬直している。
「……なんだよ…君か。…ちょうどいいや」
「え…何が、ちょうど…?」
禊さんは軽く私の前にしゃがむと
私の腰を持ってグイッと部屋に引きずり込む。
「え?!うぁ…!?」
彼の細い身体からは想像のつかない
強い力。
私は何が起こったのか分からなくって
ポカンと彼の顔を見つめる。
それを他所に禊さんはニヤッと笑う。
「ようこそー、僕の秘密の書庫へ。」
………は?
「秘密の書庫…?」
暗くてよく見えなかったけれど
この部屋の壁には所狭しと古びた本や巻物が並んでいる。
「うん…その通り…僕がいつも研究に使ってる部屋なんだけど…
…結界による呪術で普段は不可侵……
誰にも邪魔はされない…」
禊さんはニヤニヤしたまま、
新しい本を取り出す。
「は、はぁ。なるほど?
あの…さっき言ってたちょうどいいって?」
「あぁ、…君、逃げたい…でしょ…?
ここなら…了くんも来れないし…
作戦会議に…いい。」
「えっ!?それって協力してくれるってことですか?!本当に!?」
心がパァッと明るくなる。
それとは裏腹に禊さんは耳を塞いで
呆れたような表情をした。
「君…いちいち煩い…!
でもまぁ…そういうこと。君にいられると僕の研究にも不都合なんだ。
『贄嫁』がいるとね」
禊さんは私の頬に触れて、
首筋をなぞりそう言った。
「『ニエヨメ』って…?
なんか…
使用人さんも言ってたような…」
「あぁ…それも知らない…?
贄嫁っていうのは…」
禊さんがそう話掛けた途端、
グイッと首元が引っ張られる。
首輪が、引っ張られたみたいだ。
「っ!!やばい!了さんが起きたのかも、
もどるね!」
「あぁ…それ…了くんが…、不憫だね…
早く戻りなよ…また明日来るといい。
夜はここに居るからさ…」
「…うん!わかった!ありがとう。禊さん。」
「…ん」
禊さんは素っ気なく返事をすると少し笑った。
なんの笑みかわからなかったけど、
とにかく、味方ができた!
また明日…彼に会いに行こう。
フクロウや虫の声、
風の吹く音だけがこだまする。
私は見慣れない木の天井と
豪華な装飾の施された欄間を見て呟く。
「トイレいきたい…」
私は一緒に寝ていた飯島さんの
腕を慎重にそーっと退けて布団から出る。
「わざわざトイレで起こす事ないよね…」
飯島さんの寝顔は意外なほど穏やかで
今までの凶行が嘘みたいに思える。
全然、嘘じゃないけど。
コツコツさん…白石さんを殺してるし、
私も殺されかけた。
そういえば、白石さんはどこだろ?
ついてきていたのに姿を見てない。
まぁ…いっか。
私はこっそりと音を立てないように廊下に出た。廊下はぼんやりと照らされて
雅な風情だった。
何も知らなければ高級旅館かと思うだろう。
「大きい家だなぁ…」
歩き慣れないヒヤリとした廊下を
進む。屋敷は静まり返って、首輪に繋がったリードが廊下に擦れる音だけが聞こえた。
…にしても広い。
廊下が永遠に続いてるみたいに感じる。
そんなことを考えながら歩いていると声がした。
聞き覚えのある男性の声。
「…あぁ…綺麗だ…」
「??」
振り返ると、ある部屋のふすまの隙間から
廊下に一筋の薄明かりが漏れているのが見えた。
「?さっきまで…開いてなかったような…?」
男性の声はそちらからしている。
なんとなく好奇心に駆られて、
声の方へと進んでみる。
男性の声は大きくなり、
だんだんとその言葉の内容が
聞き取れるようになっていく。
そして、
私はゆっくりとその部屋を覗いた。
「本当に綺麗だ…死んでもなお…いや…
死んでいるからこそ…」
部屋の中でぶつぶつと呟いているのは
禊さんだった。床に座り込み、背を丸めながら本を眺めてニヤニヤとしている。
…何みてるんだろ…そんなことを考えていると禊さんがこちらにパッと振り返る。
「……ぁ!!」
「だれ…?…」
ま…まずい…!!
えっと…えっと…どうしたら…
あれこれ考えているうちに
目の前の襖が勢いよく開けられる。
スパンっと小気味良い音がして、
静寂が訪れる。
…禊さんと私は見つめあったまま
硬直している。
「……なんだよ…君か。…ちょうどいいや」
「え…何が、ちょうど…?」
禊さんは軽く私の前にしゃがむと
私の腰を持ってグイッと部屋に引きずり込む。
「え?!うぁ…!?」
彼の細い身体からは想像のつかない
強い力。
私は何が起こったのか分からなくって
ポカンと彼の顔を見つめる。
それを他所に禊さんはニヤッと笑う。
「ようこそー、僕の秘密の書庫へ。」
………は?
「秘密の書庫…?」
暗くてよく見えなかったけれど
この部屋の壁には所狭しと古びた本や巻物が並んでいる。
「うん…その通り…僕がいつも研究に使ってる部屋なんだけど…
…結界による呪術で普段は不可侵……
誰にも邪魔はされない…」
禊さんはニヤニヤしたまま、
新しい本を取り出す。
「は、はぁ。なるほど?
あの…さっき言ってたちょうどいいって?」
「あぁ、…君、逃げたい…でしょ…?
ここなら…了くんも来れないし…
作戦会議に…いい。」
「えっ!?それって協力してくれるってことですか?!本当に!?」
心がパァッと明るくなる。
それとは裏腹に禊さんは耳を塞いで
呆れたような表情をした。
「君…いちいち煩い…!
でもまぁ…そういうこと。君にいられると僕の研究にも不都合なんだ。
『贄嫁』がいるとね」
禊さんは私の頬に触れて、
首筋をなぞりそう言った。
「『ニエヨメ』って…?
なんか…
使用人さんも言ってたような…」
「あぁ…それも知らない…?
贄嫁っていうのは…」
禊さんがそう話掛けた途端、
グイッと首元が引っ張られる。
首輪が、引っ張られたみたいだ。
「っ!!やばい!了さんが起きたのかも、
もどるね!」
「あぁ…それ…了くんが…、不憫だね…
早く戻りなよ…また明日来るといい。
夜はここに居るからさ…」
「…うん!わかった!ありがとう。禊さん。」
「…ん」
禊さんは素っ気なく返事をすると少し笑った。
なんの笑みかわからなかったけど、
とにかく、味方ができた!
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