1 / 1
煉獄夜話
しおりを挟む
「湖州一揆」
室町時代中期。
「このままでは、ワシらは飢え死にする。どうしたものか…。」
年老いた百姓が呟いた。すると、若い百姓が声を荒げた。
「飢え死にするぐれぇなら殿様の首を討つべぇ!」
皆が頷く。
「地頭様に申し上げよう。必ずやワシらの声を聞いて下さるべぇ!」
女房と子供を抱えた百姓が叫んだ。
「皆の衆の心の内はよう分かった。されば起請文に血判すべし。」
在所に集まった百姓衆に地頭は呼びかけた。
ここに湖州一国内六十三郡の地頭らが、各々の一族郎党、家臣、百姓衆を率いて挙兵する。
その数実に十万の軍勢。
湖州の藩主は乱に敗れ首を斬られる。
この一揆勢力、つまり、「華烈六十三党」の遺伝子は、姿を変えて、現在まで続く。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「生活保護却下」
「貴方、健康ですよね?働けますよね?ジニアの求人いっぱいありますよ。」
ケースワーカーの女が冷たく言い放つ。
65歳の男性は、無残に生活保護申請を却下された。
男性は独り暮らし。身内もいない。いよいよ預貯金が底を突き始める。
じっと手を見つめ、深く考える。「そうだ。もう、あの御方に頭を下げるしかない。」と。
町内にある資源ごみ回収業者に足を運ぶ男性。
業者の社長は快く相談に乗ってくれた。
「私は決して健康じゃない。医者に通っている。なのに、断られました。外人さんや障害者には弁護士とかが付いていて、簡単に生活保護が通るのに、何で私はダメなのか?死ねと言うのか?」
男性は大粒の涙を流した。社長は男性をそっと抱き寄せて慰めた。
「お父さん、そりゃあ、気の毒だったねぇ。大丈夫だよ。私が、アンタの面倒みるからな。」
そう言うと社長は男性に20万を渡した。そして、続けて男性に話した。
「これから毎月、アンタの口座に振り込むからねぇ。心配しなさんな。」
すると、男性は泣きながら、何度も何度も頭を下げて社長に感謝した。
「お父さん、どうする?赦す?それとも。」
と社長が言うと、男性は答えた。
「あの女、クソ公務員め!親方、懲らしめて下さい!私の気が収まらない!」
男性がそう言うと、社長は頷いた。
男性を見送った後で、社長は若い社員を事務所へ呼んだ。
「お前達に仕事を頼みたい。」
その夜。二人の若い社員は、市役所の近くに車を停めていた。
「あぁ、出て来たぞ。行くか。」
市役所からケースワーカーの女が出て来た。
二人の若い社員が女にそっと近付く。すると、片方の社員が、黒い布袋を女の頭に被せた。
そして、もう片方の社員が、女の首に鎮静剤を注射した。
女は気を失った。
二人は女を車のトランクに押し込んで、そのまま走り去った。
車が、もう使われなくなった酒の醸造所に到着した。あの社長の持ち物の物件だ。
二人はトランクから女を出すと、醸造所の中へ引き摺っていった。
そして、頭に被せた袋を取ると、女の頭に口径9mmの銃弾を撃ち込んだ。
女の頭から、生温い血が滴り落ちる。
「さて、手っ取り早く終わらせようぜ。」
そう言うと二人は、女の服や下着を剥ぎ取り全裸にすると、大きな鋸で、両腕、両脚、頭部、の順に解体し、最後に胴体部を二等分すると、次の準備に取り掛かった。
醸造所のタンクには改造が施されており、劇薬でも傷んだりしない。
二人の社員は防護マスクを着用すると、バラバラに解体した女の身体のパーツと服や下着を、特集な液体で満たされたタンクの中に放り込んだ。
真っ白な泡と煙が立ち上る。
その夜二人はそのまま醸造所を後にした。
翌日、二人は再び醸造所に来ると、水などの液体をタンクに流し、硫酸を中和すると、安全を確認した後にタンクの水を排水溝に流した。
女の身体は跡形もなく溶けて無くなっていた。
女の行方は他には誰も知らない。
二人は会社に戻り、社長に報告した。
「仕事、終わりました。親分。」
社長は満足そうだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「雇用創出」
県庁近付くの洋食屋に県の土木管理課長が呼ばれた。
「困りますよ、こんな所見られたら。」
課長が言うと、相手の建設会社の社長が口を開いた。
「県道123号の工事の件はどうなってる?」
課長は答えた。
「ある程度は順調ですが、その何と言うか、少し障害がありまして…。」
すると社長はやや語気を強めて話した。
「何とかしてもらいたいね。なんなら相談に乗るよ。」
障害というのは課長の上司で、公共事業を管理する部長だった。
「その部長なら何とかこちらで話を着けておこう。あんたは予定どおり、ことを進めてくれ。」
そう言うと社長は、札束の入った封筒を課長に渡した。そして、洋食屋を出ていった。
課長は、封筒を懐にしまった。
社長の会社の事務所に若い衆が一人呼ばれた。
「こいつと話を着けてこい。」
そう言うと社長は、公共事業の責任者の部長が写っている写真を若い衆に渡した。
翌日、社長はドヤ街に来て、ホームレスや日雇い労働者らに仕事を紹介した。かなり良い条件だった。
希望者が殺到した。
社長の建設会社は雇用創出に一役かっていて、一目置かれる存在だ。
その夜、社長の若い衆の姿が、公共事業の責任者の部長の自宅前にあった。
ピッキングで玄関を開けて、自宅内に侵入すると、若い衆は居間でくつろいでいた、部長とその妻、そして12歳の息子らの頭に銃弾を撃ち込んだ。
サプレッサーを装着している関係で、部屋に、ガチン!という、かん高い金属音が響いた。
若い衆は自宅前に横付けしてあるワンボックスカーに三つの死体を積み込んだ。
社長の公共事業への入札は順調に決まった。礼として、かなりの「小遣い」が課長の手に渡った。
工事が始まった。元ホームレスや元日雇い労働者たちが、作業に汗を流した。
「おーい、これ、埋めておいてくれよ。」
社員の若い衆が、作業員らに伝えた。
ショベルカーで掘られた深い穴に、三つの大きな布袋を放り込むと、素早く土を被せた。
工事はいよいよ大詰めとなり、アスファルトの舗装作業が行なわれた。
県道は無事に綺麗に直された。
アスファルトの下の死体は最後まで見つかることはなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「不起訴処分」
「言葉の壁があるからなぁ。それで警察も面倒がるんだろうねぇ。」
町内会長は静かに語った。
近所の主婦は涙を流した。
主婦の息子は9歳だった。信号無視をした車に跳ねられて死亡した。
車を運転していたのは外国人だった。
警察は捜査はしたが、証拠が不十分という理由で不起訴処分となった。
「あの子が何をしたと言うんですか…。」
主婦は泣き続けた。
町内会長は一通り主婦の話を聞くと事務所に戻った。
事務所には取り引き相手が相談に来ていた。
「親分さん。ポリ公を黙らせることは出来ませんかねぇ。」
取り引き相手が言った。
町内会長は一計を案じた。
そして、何人かの若い衆を集めた。町内会長は若い衆に仕事を任せた。
夜になり、その日もいつもの様に不良外国人がコンビニ前に屯していた。そこに一台のバイクが通り掛かった。
バイクは二人乗りで、後部に乗った人物が、コンビニに屯している不良外国人目掛けて、マイクロUZIをフルオートで発射して銃弾を浴びせた。
外国人らは五人いたが、全員ハチの巣にされ、体中に穴を開けられた。コンビニの駐車場が鮮血で赤く染まった。
町内会長は、ある人物に事務所に来る様に命令した。電話の相手は県警本部長だった。
翌日、本部長が事務所にやってきた。彼はガタガタ震えていた。
「なぁ、おい。何で呼ばれたか分かってるんだろうな。」
と、町内会長が言う。会長は続けて言う。
「てめぇらポリ公が当てにならねぇから、こっちが代わりに町内の治安を守ってるんだぜ。外人共を取り締まれや。」
会長は低くドスの効いた声で話した。
「何で、この国の国民は万引きで簡単にしょっ引かれるのに、外人は重たい罪でも不起訴になるんだ?あ!」
本部長は土下座して頭を下げた。
「てめぇらポリ公が動かねぇなら、こっちが外人共を片っ端から取り締まるしかねぇな。」
会長がそう言うと本部長が答えた。
「それだけはご勘弁を。私の立場がありません。」
すると会長は事務所の金庫から札束を取り出すと、床に叩きつけた。
「それで手を打て、分かったか?ついでに売人が自由に商売できる様にしとけよ。かみさんやガキに死なれたくねぇだろ?」
本部長は頷くと札束を拾って事務所を後にした。
繁華街で売人がブツを売り捌く。
「いくつ欲しいの兄さん、こっちのは五万だよ。」
飛ぶように売れていく。
それを警官はただ見ていることしか出来なかった。上から圧力がかかっているからだ。
「よぉ、ポリ公、悔しいだろう。」
売人が警官を挑発し、馬鹿にした。
町内では、若い衆が外人を見つけては、血祭りに上げていた。
かねてより外国人による犯罪と、警察の不親切な対応に不満を抱いていた町民は、町ぐるみで組を擁護した。
ある若者が外国人に暴行を働いた。すると、まだ若手の熱意ある警察官が、その若者を逮捕した。
「こんな事してタダで済むと思うなよ。」
若者は吐き捨てた。
若手の警察官には小学生の息子がいたが、学校からなかなか帰宅しない日があった。
心配した母親が警官である夫に連絡しようとした時、玄関のベルが鳴る。
ドアを開けると誰もいない。しかし、その代わりに中型の段ボール箱が置いてあった。持ち上げると、そこそこの重量があった。
逮捕された若者は不起訴処分となった。無罪放免だ。
若手の警察官は、上司に抗議したが聞き入れられなかった。上から圧力が加わったのだ。
町内会長の事務所には売人から、続々とアガリが上納された。
「儲かって仕方がねぇな。」
会長は満足そうだ。
若手の警察官が帰宅すると、妻が口から泡を拭いて白目を向いて気を失っていた。部屋には段ボール箱がある。
急いで救急車を呼ぶ。
警官の夫が恐る恐る箱の中身を確認した。何やら人形の様なモノがバラバラで詰められていた。
すると、箱の中身が真っ赤であることに気付く。そしてその中には息子の写真とタイピングされた文書が同封されていた。
「これ以上余計なことはするな。今度余計な真似をすれば、次は女房を殺るぞ。」
警官の夫は青ざめ嘔吐し、その場に崩れた。
組の親分である町内会長やその若い衆のおかげで、今日も町は平和だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「資産運用」
街の中心部は賑やかだった。商業施設に様々な企業。
中でも一際目立つのは駅前中央タワーだった。この28階に「セントラル・ホールディングス」が入っていた。
「That stock is a buy. That stock is a sell.(その銘柄は買いで。そちらは売りで。)」
代表は海外市場と忙しく遣り取りしている。
会社に何人かの客人が来た。
「うちらの資金は順調みたいだね。」
客の一人が言う。
「中国はリストが高いので、香港と上海の市場からは引き上げました。シンガポールに移しましたよ。」
と代表が答えた。
客達は、資産が順調に運用されていることに満足していた。
「NY株式市場の銘柄もこちらが睨んだ通りの動きです。先物取引も成功しています。」
と代表。
「ヨーロッパ市場は?」
客の一人が質問を投げ掛ける。
「ヨーロッパは地政学的に近いということもあり、ウクライナ情勢の影響をもろに受けますからねぇ。今はまだ踏ん張り時です。」
とにかく話は盛り上がっていた。
代表は都心に出張した。ある人物達と会うためだ。
都内の高級和食店で代表が、目的の人物を待っていると、二人の人物が現れた。外務省の役人と経済産業省の役人だ。
「ケイマンとバージン諸島の口座から、御二人の国内の口座に入金させて頂きました。」
外務省官僚が言った。
「例の件なんですが…。やはりその…。リスクが高くて…。」
すると経産省の官僚も続けて言う。
「代表、どうにか考えを改めては頂けませんか?」
それに対して代表は、今までとは打って変わって冷酷な口調になった。
「あんたら、誰のカネで飯食えると思ってるんだ?自分達が何を言ってるのか理解出来ているのか?」
その日は話が纏まらなかった。
会社に戻った代表は、翌日、港へと足を運んだ。
「各組の稼いだ資金は確実に運用され、儲かっています。リヒテンシュタインとモナコで洗浄していますから安心して下さい。」
代表が言うと、取り引き相手の貿易会社社長は満足そうだ。
「あんたのおかげで我々も順調だ。地域住民の暮らしの面倒も見てやれるしね。」
社長がそう言うと、目的の貨物が海外から到着した。
「ところで役人どもが言う事聞かないそうだな。」
貨物の扉を作業員が開けるのを見ながら社長が言う。すると代表が返す。
「役に立たない役人には消えてもらうしかないですな。彼らが消えれば後釜には操り易いのが就任するはずですよ。」
代表がそう言うと貨物の扉が開いた。貨物の中にはたくさんの海外から連れて来られた女性達がすし詰め状態だった。
「まぁ、売春が上手く行かなきゃ、こいつらの臓器は売り飛ばすか。」
彼らが官僚とつるむのは人間の売り買いを円滑にしたいからだ。
数日経過して事件が起きた。霞が関で、官僚が二人銃撃され死亡したのだ。
そのニュースをオフィスでテレヒを観ながら確認する代表。
側には代表の組の中で最も腕の良い殺し屋が立っていた。
代表はその殺し屋と固い握手をかわしながら、満足そうに話した。
「やはりお前は一流だ。良くやってくれた。ありがとう。」
今日の終値は32,835円で+150円だった。
街は今日も賑やかだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「再就職」
「若者に夢と希望のある社会の実現をお約束します!」
民主自由党の候補者が街頭演説をする。それを冷めた様子で眺める男性がいる。
45歳・男性・独身・氷河期世代。
彼は一度も正社員で働いたことがない。今日は給料日であったが、手取りは僅かだった。
「12万でどうやって生活してきゃあいいんだよ。」
男性はため息をついた。
彼は重たい足を引き摺りながら、安くて狭いアパートに帰宅した。
懐中電灯で明かり取りをする。電気代を抑えるためだ。
夕飯はいつも食べない。食費に使えるカネなど無いのだ。
「明日も早い寝るか。」
男性は床に入った。
その日、民主自由党の候補者の事務所に来客があった。地元の有力者だ。
「先生、例の事業拡大の件、何卒よろしくお願いします。」
その有力者は候補者に頭を下げた。すると候補者は返した。
「その件ですが、非常に申し上げ難いですが、難しいかと。」
すると有力者が答えた。
「先生!お約束が違うじゃありませんか!!」
候補者も返す。
「貴方の会社だけ優遇する訳には参りません。お断り致します。」
すると有力者は、封筒を取り出して候補者に渡した。
中を覗く候補者。札束だ。
「困ります!こういうものは要りません!!」
封筒を突き返す候補者。すると有力者は今までの態度が豹変する。
「てめぇ、自分の立場分かってんのか?後悔するぜ。」
そう言うと有力者は事務所を出ていった。
「明日から来なくていいよ。」
45歳の男性は契約を切られた。派遣切りだ。
男性は暫くはアパートで生活したが、遂にカネが底を突き始める。
アパートを引き払う男性。その日から彼はネットカフェに寝泊まりした。
ある日のことだった。駅前で、またあの候補者が演説していた。
「何が若者に夢と希望だ!俺達の世代にはそんなもんねーんだよ!」
彼の中で何かが弾けた。
「政治家なんざ、みんな死ねばいい。ぶっ殺してやる。」
彼がそう一人事を呟くと、一人の男が近付いてきた。
「兄さん。仕事探してるかい。」
男がそう言うと、45歳の男性は静かに頷いた。
声を掛けた男に導かれる様にして、男性は、ある雑居ビルの一室に通された。
そこには60歳ぐらいの男がいた。あの有力者だ。
「そんなに世の中が憎いか?あのバカな演説野郎をぶち殺したいか?」
その有力者が男性に言った。
男性には失うものは何も無かった。
「仕事って、何をすれば?」
すると、有力者は机の引き出しから道具(拳銃)を取り出した。
「こいつで殺ってこいよ。」
有力者はそう言うと、一通り使い方を教えた。それから男性に百万を渡した。始めて見る大金だ。
思わぬ再就職だった。
男性は雑居ビルを後にした。そしていつもの様にネットカフェに入っていった。
翌日男性は、有力者からもらった百万を、田舎の母親の銀行口座に振り込むと、その足で駅前に向った。
「今日は演説無しか。」
その日から、男性はネットカフェと駅前の往復を繰り返した。
何日か経ったある日のこと。
あの候補者が駅前で演説していた。男性はズボンに忍ばせた道具に手を伸ばした。しかし、出来なかった。
やがて、ネットカフェに寝泊まりするカネも無くなった。
男性は公園で段ボールを敷いて寝泊まりした。空腹で眠れない。
あるアイデアが浮かんだ。取り敢えず、何でもいいから犯罪を犯そう。刑務所に行けば、屋根のある所で眠れるし、食事も出る。
すると、「〇〇候補をよろしくお願いします!」というスピーカーの音声が聞こえてきた。選挙カーだ。
男性は良く目を凝らして見ると、あの候補者が、選挙カーの窓から手を振っていた。
男性は所持していた道具のスライドをコッキングすると、弾丸をチャンバーに装填した。そして選挙カーに近付いた。
「あの!支持してます!頑張って下さい!応援します!」
男性がそう言うと候補者は握手を求めてきた。と、その時、男性は道具を取り出し、候補者の額に銃弾を撃ち込んだ。勢い良く血液が飛び出し、選挙カーの窓が赤く染まった。
「やった。やったよ。終わった。」
男性は逮捕された。
街の有力者は上機嫌だった。邪魔な政治家が一人いなくなった。
結局、選挙には、地元の企業を支援する政策を掲げる候補が知事に就任した。
有力者がたっぷりと資金援助して手懐けた人物だ。
有力者の会社はそのおかげで、たくさんの利益を上げた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「華烈の叛乱」
現代。
「碌でもない使い方しかしないクセに、偉そうに税金だけはふんだくっていきやがる!」
雑貨屋の店主が怒鳴る。
「くそったれの政治家や役人なんざ、ぶっ殺してやる!」
魚屋の大将が声を荒らげる。
「親分に伝えよう!俺達の気持ちを!」
八百屋の親父が訴えた。
「あんた達の意見は良く分かったよ。なら、他の組とも手を組もうじゃないか。」
集まった住民に組長が答えた。
この年、殺害された政治家の数14人。公務員の数12人。
犯人は逮捕されることはない。住民が彼らを匿うからだ。
これが、華烈六十三党の強大な権威の証である。
決して、公権力を信用してはならない。
(終)
室町時代中期。
「このままでは、ワシらは飢え死にする。どうしたものか…。」
年老いた百姓が呟いた。すると、若い百姓が声を荒げた。
「飢え死にするぐれぇなら殿様の首を討つべぇ!」
皆が頷く。
「地頭様に申し上げよう。必ずやワシらの声を聞いて下さるべぇ!」
女房と子供を抱えた百姓が叫んだ。
「皆の衆の心の内はよう分かった。されば起請文に血判すべし。」
在所に集まった百姓衆に地頭は呼びかけた。
ここに湖州一国内六十三郡の地頭らが、各々の一族郎党、家臣、百姓衆を率いて挙兵する。
その数実に十万の軍勢。
湖州の藩主は乱に敗れ首を斬られる。
この一揆勢力、つまり、「華烈六十三党」の遺伝子は、姿を変えて、現在まで続く。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「生活保護却下」
「貴方、健康ですよね?働けますよね?ジニアの求人いっぱいありますよ。」
ケースワーカーの女が冷たく言い放つ。
65歳の男性は、無残に生活保護申請を却下された。
男性は独り暮らし。身内もいない。いよいよ預貯金が底を突き始める。
じっと手を見つめ、深く考える。「そうだ。もう、あの御方に頭を下げるしかない。」と。
町内にある資源ごみ回収業者に足を運ぶ男性。
業者の社長は快く相談に乗ってくれた。
「私は決して健康じゃない。医者に通っている。なのに、断られました。外人さんや障害者には弁護士とかが付いていて、簡単に生活保護が通るのに、何で私はダメなのか?死ねと言うのか?」
男性は大粒の涙を流した。社長は男性をそっと抱き寄せて慰めた。
「お父さん、そりゃあ、気の毒だったねぇ。大丈夫だよ。私が、アンタの面倒みるからな。」
そう言うと社長は男性に20万を渡した。そして、続けて男性に話した。
「これから毎月、アンタの口座に振り込むからねぇ。心配しなさんな。」
すると、男性は泣きながら、何度も何度も頭を下げて社長に感謝した。
「お父さん、どうする?赦す?それとも。」
と社長が言うと、男性は答えた。
「あの女、クソ公務員め!親方、懲らしめて下さい!私の気が収まらない!」
男性がそう言うと、社長は頷いた。
男性を見送った後で、社長は若い社員を事務所へ呼んだ。
「お前達に仕事を頼みたい。」
その夜。二人の若い社員は、市役所の近くに車を停めていた。
「あぁ、出て来たぞ。行くか。」
市役所からケースワーカーの女が出て来た。
二人の若い社員が女にそっと近付く。すると、片方の社員が、黒い布袋を女の頭に被せた。
そして、もう片方の社員が、女の首に鎮静剤を注射した。
女は気を失った。
二人は女を車のトランクに押し込んで、そのまま走り去った。
車が、もう使われなくなった酒の醸造所に到着した。あの社長の持ち物の物件だ。
二人はトランクから女を出すと、醸造所の中へ引き摺っていった。
そして、頭に被せた袋を取ると、女の頭に口径9mmの銃弾を撃ち込んだ。
女の頭から、生温い血が滴り落ちる。
「さて、手っ取り早く終わらせようぜ。」
そう言うと二人は、女の服や下着を剥ぎ取り全裸にすると、大きな鋸で、両腕、両脚、頭部、の順に解体し、最後に胴体部を二等分すると、次の準備に取り掛かった。
醸造所のタンクには改造が施されており、劇薬でも傷んだりしない。
二人の社員は防護マスクを着用すると、バラバラに解体した女の身体のパーツと服や下着を、特集な液体で満たされたタンクの中に放り込んだ。
真っ白な泡と煙が立ち上る。
その夜二人はそのまま醸造所を後にした。
翌日、二人は再び醸造所に来ると、水などの液体をタンクに流し、硫酸を中和すると、安全を確認した後にタンクの水を排水溝に流した。
女の身体は跡形もなく溶けて無くなっていた。
女の行方は他には誰も知らない。
二人は会社に戻り、社長に報告した。
「仕事、終わりました。親分。」
社長は満足そうだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「雇用創出」
県庁近付くの洋食屋に県の土木管理課長が呼ばれた。
「困りますよ、こんな所見られたら。」
課長が言うと、相手の建設会社の社長が口を開いた。
「県道123号の工事の件はどうなってる?」
課長は答えた。
「ある程度は順調ですが、その何と言うか、少し障害がありまして…。」
すると社長はやや語気を強めて話した。
「何とかしてもらいたいね。なんなら相談に乗るよ。」
障害というのは課長の上司で、公共事業を管理する部長だった。
「その部長なら何とかこちらで話を着けておこう。あんたは予定どおり、ことを進めてくれ。」
そう言うと社長は、札束の入った封筒を課長に渡した。そして、洋食屋を出ていった。
課長は、封筒を懐にしまった。
社長の会社の事務所に若い衆が一人呼ばれた。
「こいつと話を着けてこい。」
そう言うと社長は、公共事業の責任者の部長が写っている写真を若い衆に渡した。
翌日、社長はドヤ街に来て、ホームレスや日雇い労働者らに仕事を紹介した。かなり良い条件だった。
希望者が殺到した。
社長の建設会社は雇用創出に一役かっていて、一目置かれる存在だ。
その夜、社長の若い衆の姿が、公共事業の責任者の部長の自宅前にあった。
ピッキングで玄関を開けて、自宅内に侵入すると、若い衆は居間でくつろいでいた、部長とその妻、そして12歳の息子らの頭に銃弾を撃ち込んだ。
サプレッサーを装着している関係で、部屋に、ガチン!という、かん高い金属音が響いた。
若い衆は自宅前に横付けしてあるワンボックスカーに三つの死体を積み込んだ。
社長の公共事業への入札は順調に決まった。礼として、かなりの「小遣い」が課長の手に渡った。
工事が始まった。元ホームレスや元日雇い労働者たちが、作業に汗を流した。
「おーい、これ、埋めておいてくれよ。」
社員の若い衆が、作業員らに伝えた。
ショベルカーで掘られた深い穴に、三つの大きな布袋を放り込むと、素早く土を被せた。
工事はいよいよ大詰めとなり、アスファルトの舗装作業が行なわれた。
県道は無事に綺麗に直された。
アスファルトの下の死体は最後まで見つかることはなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「不起訴処分」
「言葉の壁があるからなぁ。それで警察も面倒がるんだろうねぇ。」
町内会長は静かに語った。
近所の主婦は涙を流した。
主婦の息子は9歳だった。信号無視をした車に跳ねられて死亡した。
車を運転していたのは外国人だった。
警察は捜査はしたが、証拠が不十分という理由で不起訴処分となった。
「あの子が何をしたと言うんですか…。」
主婦は泣き続けた。
町内会長は一通り主婦の話を聞くと事務所に戻った。
事務所には取り引き相手が相談に来ていた。
「親分さん。ポリ公を黙らせることは出来ませんかねぇ。」
取り引き相手が言った。
町内会長は一計を案じた。
そして、何人かの若い衆を集めた。町内会長は若い衆に仕事を任せた。
夜になり、その日もいつもの様に不良外国人がコンビニ前に屯していた。そこに一台のバイクが通り掛かった。
バイクは二人乗りで、後部に乗った人物が、コンビニに屯している不良外国人目掛けて、マイクロUZIをフルオートで発射して銃弾を浴びせた。
外国人らは五人いたが、全員ハチの巣にされ、体中に穴を開けられた。コンビニの駐車場が鮮血で赤く染まった。
町内会長は、ある人物に事務所に来る様に命令した。電話の相手は県警本部長だった。
翌日、本部長が事務所にやってきた。彼はガタガタ震えていた。
「なぁ、おい。何で呼ばれたか分かってるんだろうな。」
と、町内会長が言う。会長は続けて言う。
「てめぇらポリ公が当てにならねぇから、こっちが代わりに町内の治安を守ってるんだぜ。外人共を取り締まれや。」
会長は低くドスの効いた声で話した。
「何で、この国の国民は万引きで簡単にしょっ引かれるのに、外人は重たい罪でも不起訴になるんだ?あ!」
本部長は土下座して頭を下げた。
「てめぇらポリ公が動かねぇなら、こっちが外人共を片っ端から取り締まるしかねぇな。」
会長がそう言うと本部長が答えた。
「それだけはご勘弁を。私の立場がありません。」
すると会長は事務所の金庫から札束を取り出すと、床に叩きつけた。
「それで手を打て、分かったか?ついでに売人が自由に商売できる様にしとけよ。かみさんやガキに死なれたくねぇだろ?」
本部長は頷くと札束を拾って事務所を後にした。
繁華街で売人がブツを売り捌く。
「いくつ欲しいの兄さん、こっちのは五万だよ。」
飛ぶように売れていく。
それを警官はただ見ていることしか出来なかった。上から圧力がかかっているからだ。
「よぉ、ポリ公、悔しいだろう。」
売人が警官を挑発し、馬鹿にした。
町内では、若い衆が外人を見つけては、血祭りに上げていた。
かねてより外国人による犯罪と、警察の不親切な対応に不満を抱いていた町民は、町ぐるみで組を擁護した。
ある若者が外国人に暴行を働いた。すると、まだ若手の熱意ある警察官が、その若者を逮捕した。
「こんな事してタダで済むと思うなよ。」
若者は吐き捨てた。
若手の警察官には小学生の息子がいたが、学校からなかなか帰宅しない日があった。
心配した母親が警官である夫に連絡しようとした時、玄関のベルが鳴る。
ドアを開けると誰もいない。しかし、その代わりに中型の段ボール箱が置いてあった。持ち上げると、そこそこの重量があった。
逮捕された若者は不起訴処分となった。無罪放免だ。
若手の警察官は、上司に抗議したが聞き入れられなかった。上から圧力が加わったのだ。
町内会長の事務所には売人から、続々とアガリが上納された。
「儲かって仕方がねぇな。」
会長は満足そうだ。
若手の警察官が帰宅すると、妻が口から泡を拭いて白目を向いて気を失っていた。部屋には段ボール箱がある。
急いで救急車を呼ぶ。
警官の夫が恐る恐る箱の中身を確認した。何やら人形の様なモノがバラバラで詰められていた。
すると、箱の中身が真っ赤であることに気付く。そしてその中には息子の写真とタイピングされた文書が同封されていた。
「これ以上余計なことはするな。今度余計な真似をすれば、次は女房を殺るぞ。」
警官の夫は青ざめ嘔吐し、その場に崩れた。
組の親分である町内会長やその若い衆のおかげで、今日も町は平和だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「資産運用」
街の中心部は賑やかだった。商業施設に様々な企業。
中でも一際目立つのは駅前中央タワーだった。この28階に「セントラル・ホールディングス」が入っていた。
「That stock is a buy. That stock is a sell.(その銘柄は買いで。そちらは売りで。)」
代表は海外市場と忙しく遣り取りしている。
会社に何人かの客人が来た。
「うちらの資金は順調みたいだね。」
客の一人が言う。
「中国はリストが高いので、香港と上海の市場からは引き上げました。シンガポールに移しましたよ。」
と代表が答えた。
客達は、資産が順調に運用されていることに満足していた。
「NY株式市場の銘柄もこちらが睨んだ通りの動きです。先物取引も成功しています。」
と代表。
「ヨーロッパ市場は?」
客の一人が質問を投げ掛ける。
「ヨーロッパは地政学的に近いということもあり、ウクライナ情勢の影響をもろに受けますからねぇ。今はまだ踏ん張り時です。」
とにかく話は盛り上がっていた。
代表は都心に出張した。ある人物達と会うためだ。
都内の高級和食店で代表が、目的の人物を待っていると、二人の人物が現れた。外務省の役人と経済産業省の役人だ。
「ケイマンとバージン諸島の口座から、御二人の国内の口座に入金させて頂きました。」
外務省官僚が言った。
「例の件なんですが…。やはりその…。リスクが高くて…。」
すると経産省の官僚も続けて言う。
「代表、どうにか考えを改めては頂けませんか?」
それに対して代表は、今までとは打って変わって冷酷な口調になった。
「あんたら、誰のカネで飯食えると思ってるんだ?自分達が何を言ってるのか理解出来ているのか?」
その日は話が纏まらなかった。
会社に戻った代表は、翌日、港へと足を運んだ。
「各組の稼いだ資金は確実に運用され、儲かっています。リヒテンシュタインとモナコで洗浄していますから安心して下さい。」
代表が言うと、取り引き相手の貿易会社社長は満足そうだ。
「あんたのおかげで我々も順調だ。地域住民の暮らしの面倒も見てやれるしね。」
社長がそう言うと、目的の貨物が海外から到着した。
「ところで役人どもが言う事聞かないそうだな。」
貨物の扉を作業員が開けるのを見ながら社長が言う。すると代表が返す。
「役に立たない役人には消えてもらうしかないですな。彼らが消えれば後釜には操り易いのが就任するはずですよ。」
代表がそう言うと貨物の扉が開いた。貨物の中にはたくさんの海外から連れて来られた女性達がすし詰め状態だった。
「まぁ、売春が上手く行かなきゃ、こいつらの臓器は売り飛ばすか。」
彼らが官僚とつるむのは人間の売り買いを円滑にしたいからだ。
数日経過して事件が起きた。霞が関で、官僚が二人銃撃され死亡したのだ。
そのニュースをオフィスでテレヒを観ながら確認する代表。
側には代表の組の中で最も腕の良い殺し屋が立っていた。
代表はその殺し屋と固い握手をかわしながら、満足そうに話した。
「やはりお前は一流だ。良くやってくれた。ありがとう。」
今日の終値は32,835円で+150円だった。
街は今日も賑やかだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「再就職」
「若者に夢と希望のある社会の実現をお約束します!」
民主自由党の候補者が街頭演説をする。それを冷めた様子で眺める男性がいる。
45歳・男性・独身・氷河期世代。
彼は一度も正社員で働いたことがない。今日は給料日であったが、手取りは僅かだった。
「12万でどうやって生活してきゃあいいんだよ。」
男性はため息をついた。
彼は重たい足を引き摺りながら、安くて狭いアパートに帰宅した。
懐中電灯で明かり取りをする。電気代を抑えるためだ。
夕飯はいつも食べない。食費に使えるカネなど無いのだ。
「明日も早い寝るか。」
男性は床に入った。
その日、民主自由党の候補者の事務所に来客があった。地元の有力者だ。
「先生、例の事業拡大の件、何卒よろしくお願いします。」
その有力者は候補者に頭を下げた。すると候補者は返した。
「その件ですが、非常に申し上げ難いですが、難しいかと。」
すると有力者が答えた。
「先生!お約束が違うじゃありませんか!!」
候補者も返す。
「貴方の会社だけ優遇する訳には参りません。お断り致します。」
すると有力者は、封筒を取り出して候補者に渡した。
中を覗く候補者。札束だ。
「困ります!こういうものは要りません!!」
封筒を突き返す候補者。すると有力者は今までの態度が豹変する。
「てめぇ、自分の立場分かってんのか?後悔するぜ。」
そう言うと有力者は事務所を出ていった。
「明日から来なくていいよ。」
45歳の男性は契約を切られた。派遣切りだ。
男性は暫くはアパートで生活したが、遂にカネが底を突き始める。
アパートを引き払う男性。その日から彼はネットカフェに寝泊まりした。
ある日のことだった。駅前で、またあの候補者が演説していた。
「何が若者に夢と希望だ!俺達の世代にはそんなもんねーんだよ!」
彼の中で何かが弾けた。
「政治家なんざ、みんな死ねばいい。ぶっ殺してやる。」
彼がそう一人事を呟くと、一人の男が近付いてきた。
「兄さん。仕事探してるかい。」
男がそう言うと、45歳の男性は静かに頷いた。
声を掛けた男に導かれる様にして、男性は、ある雑居ビルの一室に通された。
そこには60歳ぐらいの男がいた。あの有力者だ。
「そんなに世の中が憎いか?あのバカな演説野郎をぶち殺したいか?」
その有力者が男性に言った。
男性には失うものは何も無かった。
「仕事って、何をすれば?」
すると、有力者は机の引き出しから道具(拳銃)を取り出した。
「こいつで殺ってこいよ。」
有力者はそう言うと、一通り使い方を教えた。それから男性に百万を渡した。始めて見る大金だ。
思わぬ再就職だった。
男性は雑居ビルを後にした。そしていつもの様にネットカフェに入っていった。
翌日男性は、有力者からもらった百万を、田舎の母親の銀行口座に振り込むと、その足で駅前に向った。
「今日は演説無しか。」
その日から、男性はネットカフェと駅前の往復を繰り返した。
何日か経ったある日のこと。
あの候補者が駅前で演説していた。男性はズボンに忍ばせた道具に手を伸ばした。しかし、出来なかった。
やがて、ネットカフェに寝泊まりするカネも無くなった。
男性は公園で段ボールを敷いて寝泊まりした。空腹で眠れない。
あるアイデアが浮かんだ。取り敢えず、何でもいいから犯罪を犯そう。刑務所に行けば、屋根のある所で眠れるし、食事も出る。
すると、「〇〇候補をよろしくお願いします!」というスピーカーの音声が聞こえてきた。選挙カーだ。
男性は良く目を凝らして見ると、あの候補者が、選挙カーの窓から手を振っていた。
男性は所持していた道具のスライドをコッキングすると、弾丸をチャンバーに装填した。そして選挙カーに近付いた。
「あの!支持してます!頑張って下さい!応援します!」
男性がそう言うと候補者は握手を求めてきた。と、その時、男性は道具を取り出し、候補者の額に銃弾を撃ち込んだ。勢い良く血液が飛び出し、選挙カーの窓が赤く染まった。
「やった。やったよ。終わった。」
男性は逮捕された。
街の有力者は上機嫌だった。邪魔な政治家が一人いなくなった。
結局、選挙には、地元の企業を支援する政策を掲げる候補が知事に就任した。
有力者がたっぷりと資金援助して手懐けた人物だ。
有力者の会社はそのおかげで、たくさんの利益を上げた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「華烈の叛乱」
現代。
「碌でもない使い方しかしないクセに、偉そうに税金だけはふんだくっていきやがる!」
雑貨屋の店主が怒鳴る。
「くそったれの政治家や役人なんざ、ぶっ殺してやる!」
魚屋の大将が声を荒らげる。
「親分に伝えよう!俺達の気持ちを!」
八百屋の親父が訴えた。
「あんた達の意見は良く分かったよ。なら、他の組とも手を組もうじゃないか。」
集まった住民に組長が答えた。
この年、殺害された政治家の数14人。公務員の数12人。
犯人は逮捕されることはない。住民が彼らを匿うからだ。
これが、華烈六十三党の強大な権威の証である。
決して、公権力を信用してはならない。
(終)
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる