怪盗ダーク ―5人の怪盗、世界を欺く―

七梨

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2nd DARK

第32話 2nd DARK inside ①

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【Side : DARK】


◆◇◆


 2073年7月17日

 豪華客船レインボー号

 午前8時(出港2時間前)、客の乗船開始。

 警察はダークやDKが乗船客に混ざっていると予測し、乗船前に金属検査を実施した。
 乗船待ちの客が何か所かに分かれて、長蛇の列を作っている。

 その中に、一人の青年が松葉杖を使って乗船しようとしていた。

「お名前を教えてください」

 検査係の警官が問う。

新田修にったおさむです」

「新田さんね。……お一人ですか?」

 松葉杖を使っているのに、補助者が誰もいないのだろうか。と警官は疑問に思った。

「えぇ……、まぁ」

「そうですか。まあこの船なら移動出来ない様なことはありませんし。エレベーターも付いてますから」

「あ……、どうも」

 警官の指示で、新田は腕時計や携帯電話等の貴金属をカゴに入れる。
 そして警官は金属探査機で、新田の全身を上から下へ調べ始めた。

 最初は順調だったが、最後の最後で機械が反応する。
 松葉杖の先の方だ。
 しかし新田は表情1つ変えず、冷静に分析した。

「ネジ……じゃないですか?」

 新田の言う通り、松葉杖の先端がネジで固定されているのを確認出来る。

「……そうですね。よろしいですよ。部屋のカードキーは奥に受付があるので、そこで」

「わざわざどうも」

 新田はニヤリと笑って、松葉杖をついて船内を移動する。
 自分の部屋に辿り着くと、カードキーで扉を開け、閉めた。

 するとあろうことか、新田は松葉杖を床に置き、両足で歩き出したではないか。

「ひかるです。無事乗船したよ。タカ、ネジ作戦成功したよ」

「そうか」

 笑顔で無線で報告する新田――いや、ひかる。





 俺とじーさんとけいも、金属検査の列に並んでいる。
 俺たちは今、祖父・兄・弟という家族設定で変装中だ。

「うお、ひかるか……。声が違ったから誰かと思ったぜ」

「はは……、おれもびっくりだよ」

 まさかりさんがそう言うのは、乗船前にじーさんがひかるを変装させたからである。

「ひかるは準備が出来次第、バイキング会場の偵察だ」

「はーい。おっけー」

「じーさん! 無線ってすごいね!」

「これ健太。おじいちゃんと呼びなさい。ほほ」

 俺の横でけいをたしなめるじーさん。

「じーさんも全然キャラが変わってない」

「んん? そうかの……」

「……まぁ、別に違和感ないが」

 そして3人とも金属検査を受ける。

「安藤秀雄さんに、太一くんと健太くんですね。どうぞお進みください」

「どーもー」

 無事金属検査をクリアし、俺たちは船内へと進む。

 部屋に入るなり、俺とじーさんは別の服に着替える。
 そしてすぐさまじーさんは、中林と萩本の変装に取り掛かった。

 その横でけいが、他の奴等と無線で楽しげに会話する。

「今ねー。タカとじーさんが変装中」

「どウ? 豪華客船ハ」

「うーん。いい感じぃ、ふふふ」

「おい高英《たかふみ》、オレも乗り込んだ」 

「分かった」

 まさかりさんもじーさんの適当な変装で乗り込んだ。
 単独行動だがPCによる後方支援のため、基本部屋からは出ない。

「みんないいナ……、船乗ってないのボクだけジャン」

「おめーはいつでも乗れるだろエリンギ」

「そうだよ、ダークの為に乗ってるんだから……。おれはとても満喫出来る気分じゃないよ。今1人だし、すっごい緊張する」

「がんばレひかる。大丈夫だヨ。前回も出来たシ」

「もし迷子になったらオレがサポートしてやるから、安心しろよな。ひかるの場所はオレのPCで追尾してる」

「うん、がんばる……。タカに言われた通りマップは頭に叩き込んだけど、もしもの時はまさかりさんよろしくね……」

 じーさんの終わったと言う声で、俺は鏡を見る。
 萩本の顔だ。

「……ふ」

 面白いな。本当に。
 ここまで似せれるものとは。
 やはりこの人は天才だな。

「後はこのスプレーの中に入ったガスを、鼻を摘んで全部吸うんじゃ。声も変わるぞ」

「分かった」

 俺はじーさんに素直に従った。

 既に船は出港している。
 変装が完了するなり、俺たちはさらに眼鏡や帽子を被ってその他の荷物を持ち、けいを残して退出する。

「まさかりさん、当たりは付けたか」

「おぅ、既にマーク済み」

 まさかりさんは船内の全ての監視カメラをハッキングし、自動顔認識システムで中林と萩本を探し出していた。

「……さて、ここからは運試しだな。2人はペアで動いているようだから、チャンスはあると思うんだが」

「や、高英。お前はマジで何か持ってるかもな。2人揃って今廊下を歩いている、トイレの方向だ」

「どこのトイレだ」

「2階の船尾側だ、急げ」

「分かった。行くぞじーさん」

「了解じゃ」

 時計はまだ10時半前。天は俺たちに味方した。

 小走りで目的の手洗いに着くと、2人はちょうど手を洗っているところだった。
 付近にも中にも、部外者がいないことを確認する。

 手洗い場の外に立ち止まり、俺はじーさんと目を合わせる。
 無言でうなずき合ったその瞬間、心臓がドクンと一拍跳ねた。

 ――やり直しは効かない。ここからの作戦はノンストップだ。

 DKの仮面を装着し、俺たちは音もなく手洗い場に入り早足で2人の前に立ちはだかる。

「な、Dけ……っわ!?」

 振り向いた瞬間の中林の顔面に、多量の催眠スプレーを噴射した。
 隣でじーさんも、無言で萩本にスプレーを浴びせる。

 悲鳴すらあげることが出来ず、呆気なく2人は床に突っ伏した。

「やっぱり、麻酔銃が使えんのは厄介じゃの。上手くいって良かった」

 じーさんがぽつりと呟いた。

 確かに、スプレーとは違って麻酔銃なら遠距離で、かつ確実に相手を眠らせることが出来る。
 相手に近付くリスクが軽減出来るのだ。

 しかし今回は金属検査があった為、前回のように麻酔銃や光線銃は持ち込みが出来なかった。

「まさかりさん、監視頼む」

「りょーかい」

 まさかりさんの監視カメラで、トイレに部外者が近づかないか見張ってもらう。

 俺とじーさんはDKの仮面をすぐに取り、中林と萩本を一番奥の個室まで引きずり、中から鍵を閉めた。

 まず、2人の身ぐるみを必要最低限剥がす。
 勿論、本物の銃をここで奪う。
 そしてそれをバッグの中に詰め込み、手際良く2人をロープで縛り、猿轡を噛ませた。

 2人を個室の中に閉じ込めたい訳だが、当然外からは鍵は掛からない。

 俺とじーさんは個室から出て、個室の扉に外側から透明な粘着テープを張り、密閉する。
 そして予め用意しておいた、『使用禁止』と書かれた紙を扉の見やすい所に貼った。
 これで違和感ないハズだ。

「よし……」

 これで2人が、少なくともDKの作業が終わるまで眠ってくれればいいのだが。





 荷物を持って、俺とじーさんは一旦客室へ戻る。

「タカ? 今鷲尾と青山刑事が何か話してるよ」

 ひかるから無線だ。
 ひかるは再び新田に成り済まし、今バイキング会場の偵察をしている。

「会話の内容は?」

「いや、2階の吹き抜けから見てるから分かんないけど……。あと桜色の宝だけど、会場のど真ん中のショーケースに入れられてる」

「ど真ん中!?」

 俺は思わず失笑した。

「さすが鷲尾、自己顕示欲の塊だな。ダークを誘き寄せて、皆の前で捕らえたいという訳だ」

 確実にダークが現れるその場所を最初から狙って包囲しておけば、捕まえる可能性は高くなる訳だ。
 だがそんな手には及ばない。

「あ、でも。あれが本物かは分かんない」

「いや、高確率でレプリカだろうが。引き続き監視を続けろ」

「おっけー」

 俺は手元の小型端末で、ひかるの送ったライブ映像を確認する。
 何か会話している鷲尾と青山と、恐らく刑事がもう一人。
 すると、鷲尾が青山に何かを渡したように見えた。

「……?」

 青山が受け取ったのが本物の〝桜色の宝〟か?

 ……いや。鷲尾の性格上、結局本物は信用できない他人に預けるではなく、本人が隠し持っていると推察する。
 いずれにせよ、鎌をかけてみるまではハッキリと分からないが。

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