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第二話 幼馴染が突撃してきた
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自室に戻ったシャロンは、急いで荷物をまとめにかかった。
必要最低限のものをトランクに詰める。
本当はこのまま飛び出していきたいところではあったが、女一人でこんな時間に外を出歩くのはバカのすることだった。
だから、少しの仮眠をとり、日が昇るのと同時に家を出ることにしたのだ。
ベッドに横になっても腹の虫は治まらない。
そして、愛する姉のことを思うと悲しくもなる。
しかし、シスコンのシャロンは、良いことを思いついたと瞳を輝かせるのだ。
シャロンが思い描いたのは、大好きな姉を追いかけて国を飛び出す自分の姿だった。
「そうよ。お姉様に会いに行こう! うんうん。いいわ、いいわよ!」
少しでも気分が上昇したシャロンは、今ならいい夢が見られそうだと目を瞑った。
そして、日が昇る前に起きだしたシャロンは、纏めていた荷物を持って、こっそりと屋敷を抜け出していた。
家を出るとき、今までのことを思い出し舌打ちをする。
勝手に事業を始めたと思ったら、即座に失敗し莫大な借金を負ったり、シャロンの目を盗んで高価な宝石や絵画を買う父と兄。
家計をやりくりするために、無駄な物を売り払い、使用人の人数も減らした。
それに文句をつける父と兄。
折角、姉が体を張って作ってくれた資金も無駄にされて、あのろくでなしで糞みたいな父と兄とこれで縁が切れると思うと清々とした。
なんだか、気持ちが軽くなった気がしたシャロンは、気持ちのいい日の出に向かって笑顔を向ける。
「うん。これから、わたしの新しい人生を始めるわよ……。んん?!!」
決意を新たにしたシャロンの瞳にその時映ったものは、鬼のような形相の大っ嫌いな幼馴染の姿だった。
門を出たところで、不機嫌そうに両腕を組み仁王立ちをするアイザックは、出てきたシャロンに顎をしゃくって見せたのだ。
幼馴染だということもあり、アイザックの意図を察したシャロンは、嫌そうな表情でそれを無視してアイザックの横を通り過ぎようとした。
すると、アイザックは、シャロンの腕を掴んであっという間に馬の背に乗せてしまうのだ。
「ちょっ! あんた、なにすんのよ!! 降ろしなさいってば!!」
シャロンが馬の上で暴れると、さっとトランクを馬に括り付け終わったアイザックが馬に乗って、シャロンの口を大きな手で塞ぐ。
「ふがふが!!」
「黙れ」
たった一言だけ言うと、アイザックは馬を走らせたのだ。
走り出した馬から降りることもできないシャロンは、早々に諦めて、アイザックの胸に背を預ける体勢になる。
アイザックは、幼馴染と言っても、正確にはシェリーの幼馴染なのだ。
今年十八になるシャロンよりも八歳年上の彼は、今年二十六歳になる。
王都を守る騎士団の副団長を務めるアイザックは、その肩書だけではなく、その秀でた容姿もあり、女性から人気があった。
ただし、シャロンにはそんなことどうでもよかったが。
アイザックは、綺麗な黒髪を背中まで伸ばしており、ハーフアップに結い上げていた。
そして、切れ長の黒い瞳は、色気があり、その瞳で見つめられた女性はアイザックに夢中になった。
細身に見えるが、騎士らしく筋肉が程よくついており、アイザックに思いを寄せる女性たちは一度は彼に抱かれたいと思うのだ。
そんなアイザックに後ろから腰を抱かれているシャロンはと言うと、馬の揺れがだんだんと気持ちよくなっていき、のんきに眠ってしまっていたのだ。
そんなシャロンを後ろから抱きしめるようにして馬に乗っているアイザックは、片手で馬の手綱を操りながら、もう片方の手で腕の中にすっぽりと収まるシャロンをぎゅっと抱きしめていた。
「くそが……。のんきに寝やがって」
そんな悪態を吐くアイザックだったが、その表情は普段彼が見せる冷静そのものな表情とは違っていて、うっすらと頬が赤くなり、どことなく嬉しそうなものだった。
必要最低限のものをトランクに詰める。
本当はこのまま飛び出していきたいところではあったが、女一人でこんな時間に外を出歩くのはバカのすることだった。
だから、少しの仮眠をとり、日が昇るのと同時に家を出ることにしたのだ。
ベッドに横になっても腹の虫は治まらない。
そして、愛する姉のことを思うと悲しくもなる。
しかし、シスコンのシャロンは、良いことを思いついたと瞳を輝かせるのだ。
シャロンが思い描いたのは、大好きな姉を追いかけて国を飛び出す自分の姿だった。
「そうよ。お姉様に会いに行こう! うんうん。いいわ、いいわよ!」
少しでも気分が上昇したシャロンは、今ならいい夢が見られそうだと目を瞑った。
そして、日が昇る前に起きだしたシャロンは、纏めていた荷物を持って、こっそりと屋敷を抜け出していた。
家を出るとき、今までのことを思い出し舌打ちをする。
勝手に事業を始めたと思ったら、即座に失敗し莫大な借金を負ったり、シャロンの目を盗んで高価な宝石や絵画を買う父と兄。
家計をやりくりするために、無駄な物を売り払い、使用人の人数も減らした。
それに文句をつける父と兄。
折角、姉が体を張って作ってくれた資金も無駄にされて、あのろくでなしで糞みたいな父と兄とこれで縁が切れると思うと清々とした。
なんだか、気持ちが軽くなった気がしたシャロンは、気持ちのいい日の出に向かって笑顔を向ける。
「うん。これから、わたしの新しい人生を始めるわよ……。んん?!!」
決意を新たにしたシャロンの瞳にその時映ったものは、鬼のような形相の大っ嫌いな幼馴染の姿だった。
門を出たところで、不機嫌そうに両腕を組み仁王立ちをするアイザックは、出てきたシャロンに顎をしゃくって見せたのだ。
幼馴染だということもあり、アイザックの意図を察したシャロンは、嫌そうな表情でそれを無視してアイザックの横を通り過ぎようとした。
すると、アイザックは、シャロンの腕を掴んであっという間に馬の背に乗せてしまうのだ。
「ちょっ! あんた、なにすんのよ!! 降ろしなさいってば!!」
シャロンが馬の上で暴れると、さっとトランクを馬に括り付け終わったアイザックが馬に乗って、シャロンの口を大きな手で塞ぐ。
「ふがふが!!」
「黙れ」
たった一言だけ言うと、アイザックは馬を走らせたのだ。
走り出した馬から降りることもできないシャロンは、早々に諦めて、アイザックの胸に背を預ける体勢になる。
アイザックは、幼馴染と言っても、正確にはシェリーの幼馴染なのだ。
今年十八になるシャロンよりも八歳年上の彼は、今年二十六歳になる。
王都を守る騎士団の副団長を務めるアイザックは、その肩書だけではなく、その秀でた容姿もあり、女性から人気があった。
ただし、シャロンにはそんなことどうでもよかったが。
アイザックは、綺麗な黒髪を背中まで伸ばしており、ハーフアップに結い上げていた。
そして、切れ長の黒い瞳は、色気があり、その瞳で見つめられた女性はアイザックに夢中になった。
細身に見えるが、騎士らしく筋肉が程よくついており、アイザックに思いを寄せる女性たちは一度は彼に抱かれたいと思うのだ。
そんなアイザックに後ろから腰を抱かれているシャロンはと言うと、馬の揺れがだんだんと気持ちよくなっていき、のんきに眠ってしまっていたのだ。
そんなシャロンを後ろから抱きしめるようにして馬に乗っているアイザックは、片手で馬の手綱を操りながら、もう片方の手で腕の中にすっぽりと収まるシャロンをぎゅっと抱きしめていた。
「くそが……。のんきに寝やがって」
そんな悪態を吐くアイザックだったが、その表情は普段彼が見せる冷静そのものな表情とは違っていて、うっすらと頬が赤くなり、どことなく嬉しそうなものだった。
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