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第十五話
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調理場で少しの手伝いをした後は、庭園を散歩して過ごした華火は、ふとあることに気が付いた。
紫色の花弁を持つ名も知らない綺麗な花を見て、ウェインを思い出した華火は、その花に近づいたのだ。
甘い香りのする花の中に、元気のない花があったのだ。
その花には、こちらの世界に来てからたまに見かける黒い靄が絡みついているように見えた華火は、無意識にその黒い靄を追い払っていたのだ。
見ていて不快に感じる謎の黒い靄。
無意識に散らした黒い靄だったが、それが無くなったとたん、花はみるみる元気を取り戻したのだ。
これには、何気ない行動をとった華火自身が驚くこととなったのだ。
まさかと思いつつも、他の花にかかる黒い靄を散らすように指先を動かした華火は、その結果に確信する。
「やっぱり……。あの黒い靄は、よくないものなんだ」
そう呟いた華火は、すぐ近くで華火を見守るマリアを見てから、もう一度元気を取り戻した花に視線を向けた。
ウェインを思わせる、綺麗な紫色の花。
小さく拳を握った華火は心を決めていた。
「うん。わたしのやるべきことを決めたよ」
そう口にした華火は、深く深呼吸をした後に両手を祈るように組んで、力を解放したのだ。
屋敷のおおよそな範囲を想定して、球体状のバリアを展開させる。その際、バリアの中に黒い靄が入り込まないようにフィルターをかける。
そして、その中から黒い靄だけを念動力を使って消し飛ばす。
力を使った華火は、幼いころ父親に聞いた話を思い出していた。
父親は、幼い華火にこういったのだ。
「僕の家系は超能力者が生まれやすいんだって。でも、何代もの世代を経るうちに、能力者は生まれなくなっていったんだって。それで、僕の母親、つまりはーちゃんのおばあちゃんが数代ぶりに生まれた能力者で、力も弱くて、最後の超能力者だって話していたんだ。でも、はーちゃんが生まれて、はーちゃんの持って生まれた大きな力を見て、おばあちゃんは言ったんだ。はーちゃんを守れるのは、父親である僕だけだって。僕は力を持っていないけど、はーちゃんの一番の味方で理解者だからね。だから、その力を疎まないでほしいな。時には辛い思いをするかもしれないけど、その力ははーちゃんの力になってくれるものだから、だから……、だから、その力を嫌わずに受け入れて欲しいな」
幼いころは、自分の力に振り回され、聞きたくもないものを見聞きし辛い思いもした。しかし、この力を使って、自分を大切にしてくれる人たちを守れることに気が付いた華火は、自分の力をこの時初めて本当の意味で受け入れたのだった。
力を使うことに躊躇いが無くなった訳ではないが、その力で何かを守れるのだとしたら、そんな躊躇い犬にでも食わせてしまえと華火は思ったのだ。
ただ、人の心を読む力を使うことだけは躊躇いがあったのは事実だった。
過去に、母親の心を読んでショックを受けたことがあり、それからその力は使うまいと封印していたのだ。
テレパシーを使えばきっと、ウェインたちと話をすることができるかもしれない。
しかしそれは、勝手にウェインたちの心を覗き、勝手にこちらの声を聞かせるものだ。
話したいなら、もっと必死に言葉を聞き取る努力をすればいいのだ。
楽をしていいことなど何もないのだ。
だから、この時の華火は力を使って楽に言葉を理解しようとは思わなかったのだ。
一仕事終えた華火は、久しぶりに超能力を使ったせいか、少しの疲れを感じていた。
小さく欠伸をした華火に気が付いたマリアによって、あっという間にベッドの中に押し込められてしまっていたのだ。
布団を優しく、トントンと叩く心地よさに華火がうとうとしていると、マリアが優しく微笑む。
その微笑みは、どこまでも優しく華火を包み込んでいた。
眠気に逆らうことはせずに、優しいまどろみに華火は身を委ねるのだった。
どのくらい寝ていたのか、目が覚めるとベッドのすぐ横でウェインがパラパラと本を捲る姿が目に映った華火は、へにょりとした笑顔で迎えていた。
「うぇいんさん、おかえりなさい……」
ウェインは、そんな華火の無防備な笑顔に胸を押さえながら、微笑みを向けていた。
まだ眠そうな華火の頬を大きな手で優しく撫でたウェインは、まだ寝ててもいいとでもいうかのようにもう片方の手で、布団をトントンと叩く。
華火は、眠気を振り払う様に目をこすった後に、緩く首を横に振ってからその身を起こしていた。
ベッドから身を起こすと、優しい手つきでウェインは、華火の乱れた髪を梳いて整える。
華火の髪の毛を整えたウェインは、ベッドに腰掛けた後、軽い動作で華火を膝の上に乗せていた。
恥ずかしさはあるものの、ウェインの腕の中はとても落ち着くと心から感じていた華火は、無意識にウェインの胸に甘えるように頭を擦り付けていた。
素直に自分に甘える仕草をする華火に、ウェインは胸が張り裂けそうなほどの愛おしさを感じずにはいられなかった。
その想いは、とめどなく溢れてしまい、ウェインは、華火の細い腰を抱き寄せてぐっと抱きしめてしまっていた。
「アア、ハナビオネロ……。アヅンイーアワキナンノセチスオヅ」
耳元で何かを囁かれた華火は、ちょこんと小さく首を傾げると、何故かウェインにさらに抱き寄せられてしまい、ますます首を傾げるのだった。
紫色の花弁を持つ名も知らない綺麗な花を見て、ウェインを思い出した華火は、その花に近づいたのだ。
甘い香りのする花の中に、元気のない花があったのだ。
その花には、こちらの世界に来てからたまに見かける黒い靄が絡みついているように見えた華火は、無意識にその黒い靄を追い払っていたのだ。
見ていて不快に感じる謎の黒い靄。
無意識に散らした黒い靄だったが、それが無くなったとたん、花はみるみる元気を取り戻したのだ。
これには、何気ない行動をとった華火自身が驚くこととなったのだ。
まさかと思いつつも、他の花にかかる黒い靄を散らすように指先を動かした華火は、その結果に確信する。
「やっぱり……。あの黒い靄は、よくないものなんだ」
そう呟いた華火は、すぐ近くで華火を見守るマリアを見てから、もう一度元気を取り戻した花に視線を向けた。
ウェインを思わせる、綺麗な紫色の花。
小さく拳を握った華火は心を決めていた。
「うん。わたしのやるべきことを決めたよ」
そう口にした華火は、深く深呼吸をした後に両手を祈るように組んで、力を解放したのだ。
屋敷のおおよそな範囲を想定して、球体状のバリアを展開させる。その際、バリアの中に黒い靄が入り込まないようにフィルターをかける。
そして、その中から黒い靄だけを念動力を使って消し飛ばす。
力を使った華火は、幼いころ父親に聞いた話を思い出していた。
父親は、幼い華火にこういったのだ。
「僕の家系は超能力者が生まれやすいんだって。でも、何代もの世代を経るうちに、能力者は生まれなくなっていったんだって。それで、僕の母親、つまりはーちゃんのおばあちゃんが数代ぶりに生まれた能力者で、力も弱くて、最後の超能力者だって話していたんだ。でも、はーちゃんが生まれて、はーちゃんの持って生まれた大きな力を見て、おばあちゃんは言ったんだ。はーちゃんを守れるのは、父親である僕だけだって。僕は力を持っていないけど、はーちゃんの一番の味方で理解者だからね。だから、その力を疎まないでほしいな。時には辛い思いをするかもしれないけど、その力ははーちゃんの力になってくれるものだから、だから……、だから、その力を嫌わずに受け入れて欲しいな」
幼いころは、自分の力に振り回され、聞きたくもないものを見聞きし辛い思いもした。しかし、この力を使って、自分を大切にしてくれる人たちを守れることに気が付いた華火は、自分の力をこの時初めて本当の意味で受け入れたのだった。
力を使うことに躊躇いが無くなった訳ではないが、その力で何かを守れるのだとしたら、そんな躊躇い犬にでも食わせてしまえと華火は思ったのだ。
ただ、人の心を読む力を使うことだけは躊躇いがあったのは事実だった。
過去に、母親の心を読んでショックを受けたことがあり、それからその力は使うまいと封印していたのだ。
テレパシーを使えばきっと、ウェインたちと話をすることができるかもしれない。
しかしそれは、勝手にウェインたちの心を覗き、勝手にこちらの声を聞かせるものだ。
話したいなら、もっと必死に言葉を聞き取る努力をすればいいのだ。
楽をしていいことなど何もないのだ。
だから、この時の華火は力を使って楽に言葉を理解しようとは思わなかったのだ。
一仕事終えた華火は、久しぶりに超能力を使ったせいか、少しの疲れを感じていた。
小さく欠伸をした華火に気が付いたマリアによって、あっという間にベッドの中に押し込められてしまっていたのだ。
布団を優しく、トントンと叩く心地よさに華火がうとうとしていると、マリアが優しく微笑む。
その微笑みは、どこまでも優しく華火を包み込んでいた。
眠気に逆らうことはせずに、優しいまどろみに華火は身を委ねるのだった。
どのくらい寝ていたのか、目が覚めるとベッドのすぐ横でウェインがパラパラと本を捲る姿が目に映った華火は、へにょりとした笑顔で迎えていた。
「うぇいんさん、おかえりなさい……」
ウェインは、そんな華火の無防備な笑顔に胸を押さえながら、微笑みを向けていた。
まだ眠そうな華火の頬を大きな手で優しく撫でたウェインは、まだ寝ててもいいとでもいうかのようにもう片方の手で、布団をトントンと叩く。
華火は、眠気を振り払う様に目をこすった後に、緩く首を横に振ってからその身を起こしていた。
ベッドから身を起こすと、優しい手つきでウェインは、華火の乱れた髪を梳いて整える。
華火の髪の毛を整えたウェインは、ベッドに腰掛けた後、軽い動作で華火を膝の上に乗せていた。
恥ずかしさはあるものの、ウェインの腕の中はとても落ち着くと心から感じていた華火は、無意識にウェインの胸に甘えるように頭を擦り付けていた。
素直に自分に甘える仕草をする華火に、ウェインは胸が張り裂けそうなほどの愛おしさを感じずにはいられなかった。
その想いは、とめどなく溢れてしまい、ウェインは、華火の細い腰を抱き寄せてぐっと抱きしめてしまっていた。
「アア、ハナビオネロ……。アヅンイーアワキナンノセチスオヅ」
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