わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。

バナナマヨネーズ

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第十四話

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 翌日のことだった。
 昨日に引き続き、屋敷を訪れる人物がいた。
 ただ、今回の来客は華火も知っている人物だった。
 それは、以前華火を診てくれた医師だった。医師は、元気そうに過ごしている華火を見て、にこりと微笑みを浮かべた後、ウェインに話しかけた。
 話の内容は分からなくても、自分のことを診に来たのだと、すぐに分かった華火は大人しくソファーに座ったままでいた。
 初老の医師は、ウェインとの話し合いが終わると、華火の座るソファーの側にやってきた。
 マリアによって、医師が座る椅子が運ばれていた。医師は、用意された椅子に腰掛けてから再びにっこりと、華火を安心させるような笑みを浮かべた。
 医師は、華火の頬に触れた後に、目の下を引っ張ったり、首に触れたり、身振りで舌を見せるように指示したりと、元の世界でも行うような触診を行っていったのだ。
 華火としては、当然の流れだという感じで、医師が触診しつつ何かを記入している間に、胸を見やすいようにワンピースの前のボタンを外していた。
 すぐそばで診察の様子を見ているウェインが気にはなったが、彼がいる場所からは華火の背中しか見えないだろうと考えたのだ。
 そんな軽い考えの下、華火はワンピースの前のボタンをはずして、胸の前を開いて見せたのだった。

 しかし、華火のとんでもない行動に、その場にいた全員が行動を起こしていたのだ。
 特にマリアの行動は素早いものだった。華火がボタンをはずして、ワンピースの前を開くのと同時か、それよりも早く華火の背後に周り、どこから取り出したのか、大きなタオルで華火を包み込んだのだ。
 そして、初老の医師からは想像もできない―――瞬間移動でもしたかの―――速さで、華火に背中を向けていたウェインの両目を潰す勢いで、その視界を塞いでいたのだ。
 正直何が起こったのか分からないといった顔をしていた華火に対して、マリアが怒ったよう表情で言うのだ。
 
「アマスオジョ! アラクセデマヅ! アラクンエサミスルヤギサタウェツンアヌレシミナタゴノトワダハワユ! アグンエサメリソマコナッターグオユチフグノウクヒニアソンナヅンイソニシアヘディアケサチオナマスオジョ、ウセヅンアヌオユハヘドコク。アママチコウクフ、ウセヅンウリケドゥタスンイセドゥオニグオハム!」

 真剣な瞳で華火に何かを必死に話しかけるマリアの様子から、自分が何かしてはいけないことをしてしまったのだということだけは分かった華火は、シュンと下を向いてしまう。
 落ち込む華火をマリアは優しく抱きしめて、頭を撫でながら小さな子供にでも言い聞かせるかのように優しい声で語りかけてくる。
 
「ンエサミアゾゲカウィスオム。ンエサミラーヘドヌリエテメソワマスオジョイヌテブ。アダツ、エディアプンイサガマスオジョ、ウセドナッタカナタキセディアプンイス」

 言葉の意味は分からずとも、マリアが何かを心配してくれていることが分かった華火は、小さく頷く。
 
「うん。まりあがわたしのこと思ってくれていることはわかるよ。ありがとう、まりあ、だいすき」

 そう言った華火は、この気持ちを伝えられればと、マリアにぎゅっと抱き着いて、その首筋に顔を埋めた。
 マリアに華火の思いが通じたのか、ぎゅっと抱きしめ返されたことが嬉しかった華火は、マリアを見上げながらにっこりと笑みを浮かべる。
 すると、マリアは、小さく体を震わせた後に、「ウサミグソツオツ~」と口にした後に、勢いよく鼻血を噴き出しながら、とてもいい笑顔で倒れたのだった。
 
 それに驚いた華火は、「まりあ? 大丈夫? まりあーーーー!!」と、狼狽える。
 しかし、マリアはすぐに鼻血をエプロンの端でグイっと拭い、笑顔を見せたのだ。
 そして、親指を立てながら大丈夫だと、笑顔で華火に示して見せたのだ。
 ウェインは、そんなマリアの行動に頭を抱え、医師はそんなウェインにまるで、たいへんですね……、とでもいうかのようにその肩を慰めるかのように叩いたことを、華火は知らなかった。
 
 その後、ウェインと医師が難しい顔で話し合う場面はあったものの、診断自体は問題なかったようで、医師は帰っていった。
 しかし、医師が帰った後、いつものように昼食を摂った後、ウェインは昨日に引き続き出かけてしまったのだ。
 ウェインと離れることに寂しさを感じつつも、彼にも仕事があるのだと考えた華火は、自分も何かをしなければという思いから、今日も調理場に向かうのだった。
 
 昨日お世話になった、少し強面の料理長にぺこりと頭を下げた華火は、自分に出来そうで、なおかつ調理場で働く人たちの邪魔にならない仕事を探すのだ。
 マリアは、特に華火を止めることはせずに、傍で見守ってくれていた。
 昨日は、無理を言ってクッキーを作ったこともあり、今日は調理場で働くみんなの手助けをしたいと考えた華火は、隅の方で野菜の皮を剥くメイドの少女に気が付き近づく。
 メイドの少女の手にあるのは、カブのような見た目をした橙色をした野菜だった。
 野菜だと判断したのは、山のように積まれたそれに土がついていたからだ。
 橙色をした根菜は、半分は綺麗に洗われており、残りの半分がメイドの少女の手によって皮をむかれていた。
 これなら手伝えそうだと判断した華火は、皮むきに集中するメイドの少女の傍の空箱に腰掛けた後に、近くにあった包丁で橙色の根菜の皮を剥き始めた。
 きちんと手入れがされている包丁は、とても切れ味がよく、するすると皮が剥けてしまった。
 単純作業は嫌いではない華火は、皮剥きが楽しくて、積みあがった野菜をどんどん剥いていく。
 マリアはというと、料理長に何かを確認した後に、残り半分の野菜も水洗いをしてから、華火の隣に腰掛けて、慣れた手つきで皮を剥いていた。
 ただし、剥かれた皮は厚く、刃物の扱いは慣れていても、料理に関しては不慣れということが分かる腕前だったのだが、それに対して何かを言う者はその場にはいなかった。
 皮むきをしている途中で、メイドの少女が挙動不審な行動をとり、それに対してマリアが視線で黙らせる場面はあったが、皮むきに夢中になっていた華火はそれに気が付くことはなかった。
 ただ、すべての皮を剥き終わった時、共に皮むきに励んだメイドの少女ににっこりと微笑みを向けたのだが、それに対して、メイドの少女は、頬をリンゴのように赤く染めて座り心地が悪そうにもじもじするだけだった。
 
 皮むきが終わった後、他に手伝えそうなことが見つからなかった華火は、邪魔にならないようにと、料理長にぺこりと頭を下げた後に、調理場を後にしていた。
 
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