訛りがエグい田舎娘に扮した子爵令嬢のわたしが、可愛がった子犬に何故か求婚される話を聞きたいですか?

バナナマヨネーズ

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第二章 運命の出会いは突然に?(6)

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 翌日、アルシオーネが目を覚ますと、枕元に作った寝床で寝ていたはずのヴェルがクピークピーと可愛らしい寝息を立てて一緒の布団の中で眠っているた。それを見たアルシオーネは、微笑ましい子犬の姿に頬を緩めることとなった。
 ヴェルを起こさないようにそっとベッドを抜け出して、朝の支度をした後に屋敷の掃除と洗濯を済ませた。
 夜のうちに仕込んでいた材料で朝食を作ったアルシオーネは、ヴェルを起こしに部屋に向かった。
 まだ気持ちよさそうにスピスピと鼻を鳴らして眠っているのに笑みを浮かべながらもそっと声を掛ける。
 
「ルーちゃん、朝ですよ。一緒に朝ご飯を食べましょう」

 ダメ元でそう声をかけると、ヴェルは耳をピクリと動かした後に欠伸をして起き上がった。
 小さな前足で顔を擦りながらアルシオーネに「おはよう」とでも言うかのように「わん」と一声鳴いて尻尾を振った。
 ヴェルの可愛らしい仕草に胸がきゅんとしたアルシオーネは、ヴェルを抱きしめて「可愛い可愛い」と頬ずりをしていたが、嫌がるように小さな前足で顔をペシペシされてしまったため、残念そうにではあるが子犬を解放していた。
 
 朝食を済ませた後、露店に行く間ヴェルをどうするか悩んだ結果、残して行くのは心配だという気持ちがあったため、連れて行くことに決めたアルシオーネは、ヴェルに向かってにこやかに言った。
 
「ルーちゃん、お仕事に行かなければならないのですが、あなたを残して行くのは心配なので一緒に来てもらってもいいですか?」

 ヴェルは賢い子犬だということが短い付き合いで分かったアルシオーネは、そう声を掛けていた。
 アルシオーネの問いかけにヴェルは、小さく「わん」と鳴いて尻尾を振って見せた。
 それを見たアルシオーネは、ニコリと微笑みを浮かべてお礼を口にしていた。
 
「ルーちゃん、ありがとうございます。それでは出かけましょうか」

 こうして、ヴェルを連れて露店に向かったアルシオーネだった。
 そして、露店に着いたアルシオーネは、昨日考え付いた商品を並べていった。
 商品を並べた後に、目につくような張り紙をして商品の説明をしたのだ。
 そこに書かれていたのは、「トライベッカ産の若返り薬草茶」の文字と、領民の女性たちが飲み続けた結果十歳は若返ったとの口コミを書き連ねたのだ。ただし、張り紙の隅に小さな文字で「個人差があります」と書くことも忘れていなかった。
 アルシオーネ的には、「お茶を飲んだお客さんの中にはそう言った効果があった人もいましたよ~」程度の気持ちでその張り紙を出したのだ。
 ただ、売っているのは田舎娘のさらには、訛りがエグい少女に変わりはない状況だった。
 そのため、露店の前を通る人々は、その張り紙に興味を引かれつつも、購入には至らなかったのだ。
 
 その日、前に比べると露店の前に足を止める人の数は増えたが、実際に買っていく者がいないことに変わりはなかった。
 ただ、アルシオーネには、以前に比べると手ごたえのようなものを感じていたのだ。
 もしかすると、明日には手に取ってくれる人が出るかもしれないという希望が湧いていたのだ。
 
 何一つ売れなかった露店の商品を片付けたアルシオーネは、スターレットが訪ねて来る前に屋敷に戻る必要があるため、その日は早めに店を閉めて帰路に付いたのだった。
 
 
 屋敷に戻ってからそれほどせずにスターレットがやってきた。
 そして、ヴェルの物だと言って、様々なものを置いて行った。
 タオルやお風呂セット。子犬用の寝具などだ。
 そして、約束の金貨五百枚。
 応接室でお茶を飲みながら、改めてヴェルのことについてスターレットから説明があった。
 食事は、アルシオーネと同じメニューにして欲しいということ。
 毎日お風呂に入れてやって欲しいということ。ただし、一緒に入るのは遠慮して欲しいという言葉に、危なく昨日やらかしてしまうところだったとアルシオーネは内心冷や汗をかいていた。
 それと、週に一度様子を見に来るとも。
 基本的にはヴェルの好きに過ごさせていいと説明を受けたアルシオーネは、それにコクリと頷いて見せたのだった。
 
 スターレットは、帰り際にヴェルにだけ聞こえる声で「ここにいた方がお前にとってはあそこにいるよりもよさそうだ」と言って、ヴェルに唸られていた。
 
 こうして、アルシオーネと子犬のヴェルの一人と一匹の生活が始まったのだった。

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