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ダンジョン都市ディジェーネ。そこは、多くのトレジャーハンターが拠点としている大きな都市だった。
ダンジョンとは、魔力溜が変容し、様々な恩恵を人々にもたらすというのが一般的な知識として知られている。しかし、ダンジョンがもたらす恩恵が実際にどうやって生まれているのかを知る者は少なかった。
ダンジョンからもたらされる恩恵は様々あり、ダンジョン内に現れるモンスターを討伐した際に得られる素材やアイテム。その他に、地上では見られない貴重な鉱物や、宝石などだ。
そんなダンジョンは、王家が一括で管理していた。
そのため、王都から遠い場所にあるにもかかわらず、ダンジョン都市は王家の直轄領地となっていたのだ。
そして、つい最近になってダンジョン都市に新しいダンジョンが生まれたのだ。
生まれたばかりのダンジョンは、最初に王国の騎士団が調査をしたうえで、解放される階位が決まる。
危険性が低いダンジョンは、階級の低いトレジャーハンターも入れるが、探索難易度が高いと判断された場合は、階級の高いトレジャーハンターしか入れない決まりとなっていた。
今回、数十年ぶりに新たなダンジョンが生まれた為、その調査をすべく第三騎士団が調査のためにダンジョン都市に派遣されたのだ。
そして、騎士団を率いているのが第三騎士団副団長のヴィラジュリオだった。
ダンジョンの規模や出現するモンスターの種類、危険度、採掘できる鉱物の種類などを調べるのだ。ある程度調べて、問題ないと判断した後は、トレジャーハンターにダンジョンが解放されるのだ。
ヴィラジュリオがダンジョン都市に滞在すること二週間。
ある程度の調べが付き、上級ライセンスを持ったトレジャーハンターのみに入場を許可するかどうかの検討段階に入った時だった。
ひとまずダンジョン内の調査が終わり、調査結果の精査をすることとなったが、その前に数日間の休養を騎士たちに言い渡したヴィラジュリオは、ひとりダンジョン都市を散策していた。
ダンジョン都市に来るのが初めてだったヴィラジュリオは、後学のためにといろいろと見て回っていたのだ。
王都にはない珍しいアイテムや目にしたことのない食べ物、貴重な鉱物を使った武器など、ヴィラジュリオは、それらを前に久しぶりに楽しいひと時を過ごしていた。
ゆっくりと店を見て回るヴィラジュリオだったが、そんな彼の耳に豪快な啖呵を切る幼い声が聞こえてきたのだ。
何事かと声の方に視線を向けたヴィラジュリオは、ハニーブロンドの髪の五歳くらいの少女が、ガタイのいい男たちに囲まれているという異様な光景を目にして、すぐに駆け出していた。
「あんたたち、しょれでもおとこなの? ちっかりちなしゃい! そんなんじゃ、ママをまかしぇられないわよ。わたちがみとめるおとこちか、ぜったいにママのそばにちかよらしぇないんだから!」
「ジュリアの嬢ちゃん……。頼むよ、俺たちも仕事で……」
「うっちゃい!! だいのおとこがいいわけしゅるな! わたちをたおせるくらいつよいおとこにしか、ママをまかしぇられないっていってるの!」
「だから、それは勘違いで……。ちょっとしたお礼の気持ちで……」
「ふんっ!! みえみえなのよ! わたちにはすべてまるっとおみとおちなのよ! おれいにかこちゅけて、でーとにさそうきまんまんなの! じょうきゅうはんたーなら、わたちにかってからそのおれいのきもちってやちゅをママにぶつけるのね!」
そう言って、少女は体勢を低くして拳を突き出すように構えてたのだ。
やけに様になっているその姿に、助けに入ろうと駆け付けたはずのヴィラジュリオは、ただただ目を丸くさせていた。
そして、驚くヴィラジュリオを他所に、少女は鋭い踏み込みで目の前の男たちを蹴散らしていったのだ。
ただし、軽い体から繰り出される拳や蹴りは、男たちに大したダメージを与えることはなった。
少女に全身を至る所からポカポカ叩かれ、蹴られた男たちは、それでも笑顔で言うのだ。
「ジュリアの嬢ちゃんは、将来有望なトレジャーハンターになりそうだ」
「うっしゃい! わたちは、ママのおみせをつぐの!」
「あはは! わかったわかった。それじゃ、また店に顔出すから」
そう言って、楽しそうにその場を後にしたのだ。
男たちが去ったあと、少女はあっかんべーと舌を出して、男たちの背を見送ったのだのだが、そのエメラルドグリーンに輝く大きな瞳が何気なく近くにいたヴィラジュリオを見つめたのだ。
そして、何度も目をパチパチと瞬かせた後、大きな声を上げたのだ。
「ああああーーーーーーーーーーー!!! きちゃ、とうとうきちゃわ、このときが!!」
その豪快な叫び声に、流石のヴィラジュリオも目を丸くさせるのだった。
ダンジョンとは、魔力溜が変容し、様々な恩恵を人々にもたらすというのが一般的な知識として知られている。しかし、ダンジョンがもたらす恩恵が実際にどうやって生まれているのかを知る者は少なかった。
ダンジョンからもたらされる恩恵は様々あり、ダンジョン内に現れるモンスターを討伐した際に得られる素材やアイテム。その他に、地上では見られない貴重な鉱物や、宝石などだ。
そんなダンジョンは、王家が一括で管理していた。
そのため、王都から遠い場所にあるにもかかわらず、ダンジョン都市は王家の直轄領地となっていたのだ。
そして、つい最近になってダンジョン都市に新しいダンジョンが生まれたのだ。
生まれたばかりのダンジョンは、最初に王国の騎士団が調査をしたうえで、解放される階位が決まる。
危険性が低いダンジョンは、階級の低いトレジャーハンターも入れるが、探索難易度が高いと判断された場合は、階級の高いトレジャーハンターしか入れない決まりとなっていた。
今回、数十年ぶりに新たなダンジョンが生まれた為、その調査をすべく第三騎士団が調査のためにダンジョン都市に派遣されたのだ。
そして、騎士団を率いているのが第三騎士団副団長のヴィラジュリオだった。
ダンジョンの規模や出現するモンスターの種類、危険度、採掘できる鉱物の種類などを調べるのだ。ある程度調べて、問題ないと判断した後は、トレジャーハンターにダンジョンが解放されるのだ。
ヴィラジュリオがダンジョン都市に滞在すること二週間。
ある程度の調べが付き、上級ライセンスを持ったトレジャーハンターのみに入場を許可するかどうかの検討段階に入った時だった。
ひとまずダンジョン内の調査が終わり、調査結果の精査をすることとなったが、その前に数日間の休養を騎士たちに言い渡したヴィラジュリオは、ひとりダンジョン都市を散策していた。
ダンジョン都市に来るのが初めてだったヴィラジュリオは、後学のためにといろいろと見て回っていたのだ。
王都にはない珍しいアイテムや目にしたことのない食べ物、貴重な鉱物を使った武器など、ヴィラジュリオは、それらを前に久しぶりに楽しいひと時を過ごしていた。
ゆっくりと店を見て回るヴィラジュリオだったが、そんな彼の耳に豪快な啖呵を切る幼い声が聞こえてきたのだ。
何事かと声の方に視線を向けたヴィラジュリオは、ハニーブロンドの髪の五歳くらいの少女が、ガタイのいい男たちに囲まれているという異様な光景を目にして、すぐに駆け出していた。
「あんたたち、しょれでもおとこなの? ちっかりちなしゃい! そんなんじゃ、ママをまかしぇられないわよ。わたちがみとめるおとこちか、ぜったいにママのそばにちかよらしぇないんだから!」
「ジュリアの嬢ちゃん……。頼むよ、俺たちも仕事で……」
「うっちゃい!! だいのおとこがいいわけしゅるな! わたちをたおせるくらいつよいおとこにしか、ママをまかしぇられないっていってるの!」
「だから、それは勘違いで……。ちょっとしたお礼の気持ちで……」
「ふんっ!! みえみえなのよ! わたちにはすべてまるっとおみとおちなのよ! おれいにかこちゅけて、でーとにさそうきまんまんなの! じょうきゅうはんたーなら、わたちにかってからそのおれいのきもちってやちゅをママにぶつけるのね!」
そう言って、少女は体勢を低くして拳を突き出すように構えてたのだ。
やけに様になっているその姿に、助けに入ろうと駆け付けたはずのヴィラジュリオは、ただただ目を丸くさせていた。
そして、驚くヴィラジュリオを他所に、少女は鋭い踏み込みで目の前の男たちを蹴散らしていったのだ。
ただし、軽い体から繰り出される拳や蹴りは、男たちに大したダメージを与えることはなった。
少女に全身を至る所からポカポカ叩かれ、蹴られた男たちは、それでも笑顔で言うのだ。
「ジュリアの嬢ちゃんは、将来有望なトレジャーハンターになりそうだ」
「うっしゃい! わたちは、ママのおみせをつぐの!」
「あはは! わかったわかった。それじゃ、また店に顔出すから」
そう言って、楽しそうにその場を後にしたのだ。
男たちが去ったあと、少女はあっかんべーと舌を出して、男たちの背を見送ったのだのだが、そのエメラルドグリーンに輝く大きな瞳が何気なく近くにいたヴィラジュリオを見つめたのだ。
そして、何度も目をパチパチと瞬かせた後、大きな声を上げたのだ。
「ああああーーーーーーーーーーー!!! きちゃ、とうとうきちゃわ、このときが!!」
その豪快な叫び声に、流石のヴィラジュリオも目を丸くさせるのだった。
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